うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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エリシオンやペルセウス等のLBX再販を記念して、特別編第六弾です。
今回のお話は、昨今話題の社会問題をテーマとしております故御不快な思い等されるかもございませんが、ご了承の程宜しくお願い致します。


多々買う運命に抗う、自由の為に──

 少年ミゼルが引き起こした世界的な大事件、後にミゼル事変と呼ばれるようになった事件から二年の月日が経過した西暦2053年。

 事変により傷ついた都市もこの二年で見事復興を果たし、事変当時の混沌とした世界情勢も、今やかつての平穏な日々を取り戻していた。

 更に、事変の重要なファクターの一つであったLBX、Little Battler eXperience(小さな戦士の体験)の頭文字を取ってそう呼ばれる小型のホビー用ロボットもまた、人々に恐怖を与える兵器ではなく人々を笑顔にする玩具として、強化ダンボールの箱の中に戻っていった。

 

 そして、ミゼル事変解決の立役者とも言うべき少年少女達。

 今やレジェンドプレイヤーと呼ばれる彼ら彼女らもまた、英雄から一人の学生に戻り、各々の日常生活を送っていた。

 

 

 

「おーい、皆!」

 

 その内の一人、高校生となった山野 バンの姿が、地元であるミソラタウンのミソラ商店街にあった。

 

「待たせたな、バン」

「お待たせ」

「これで全員集合だね」

「ん」

 

 そんなバンのもとに集まった四人の男女。

 バンと同じレジェンドプレイヤーであり無二の友人達、同じく高校生となった青島 カズヤ・川村 アミ・西原 凛空・三影 ミカの四人。

 

「それじゃ、キタジマに行こう!」

 

 ミゼル事変当時ミソラ第二中学校に在校していた五人だが、中学卒業後は、各々の夢や将来の為別々の高校に進学していた。

 バンは、父親でありLBXの発明者でもある山野 淳一郎博士と同じ道に進むべく工業系の高校に。

 カズは、自身の実力に見合った高校に。

 アミは、弁護士という夢の為、有名法学部のある大学の付属高校に。

 凛空は、サイバーランス社の跡取りとして国内でも有数の名門高校に。

 ミカも、凛空の恋人として凛空と同じ高校に。

 

 この為、高校からは中学の時の様な頻度で会う事が少なくなった五人だが、それでも月に数度、週末などに時間が合えばこうして集まっていた。

 そしてその際、五人にとって憩いの場所であるキタジマ模型店で、気分転換と技術維持を兼ねたLBXバトルを楽しむのが定番となっていた。

 

「所で、今回も駄目だったのかヒロの奴ら?」

「うん。ヒロやランは受験の年だから、二人とも受験勉強で忙しいみたいなんだ」

「去年の僕達も、今頃から本格的な受験勉強が始まってなかなか集まれなかったしね」

「あー、そういやそうだったな」

 

 集合場所からキタジマ模型店へと向かう道すがら、男性陣は今回不参加だった残りのレジェンドプレイヤーの話で盛り上がる。

 

「そういや、ヒロとランってどこの高校目指してるんだ?」

「ヒロ君はアスカさんの通ってる高校を目指してるんだって、この間サイバーランス社主催のイベントで一緒になった時に話してくれたよ」

「ランは実家の道場を継ぐために体育科のある高校を目指してるって言ってた」

「へー成程な。……所で、バンと凛空は二人の受験勉強を手伝ったりしてるのか?」

「手伝いたい気持ちは山々なんだけど、目指す学校に通う先輩として自分がヒロ君に勉強を教えるってアスカさんに言われたから、ね」

「アスカの奴そんな事言ったのか!? 大丈夫なのかよ……。アスカって確か、高校通いながらサイバーランス社のイメージガールも務めて、更にプロとして大会とかにも出てるんだろ? 勉強手伝う時間あるのかよ」

「ヒロ君とイメージモデルの仕事で一緒になった時とか、時間を見つけて手伝ってるみたいだよ」

「成程なぁ」

「俺も、ランの受験勉強はユウヤに任せてあるから手伝ってないんだ」

「ユウヤって、灰原 ユウヤか!? あいつ確か、ミゼル事変の後世界中を旅してまわるとか言ってなかったか?」

「何でも今はランの実家に居候させてもらってるみたいなんだ。で、その代わりにランに勉強を教えてるんだって」

「ふーん成程な」

 

 その後、日本国内ではなくA国が活動拠点となっている残りのレジェンドプレイヤー、海道 ジンとジェシカ・カイオスの話などで更に話が盛り上がる男性陣。

 

「でね、トキオシアデパートの近くに新しくできたフルーツ専門店のバナナジュースがとっても美味しかったの! だから今度、ランやアスカも誘って四人で飲み行きましょう!」

「ん、いいよ」

 

 一方の女性陣はスイーツの話題で盛り上がるのであった。

 

 

 

 

 それから程なく。目的のキタジマ模型店に到着した一行は店の自動ドアを潜る。

 

「皆、いらっしゃい!」

「よぉ、来たな!」

 

 すると、五人にとって顔馴染みであるキタジマ模型店を営む二人の男女が、五人を元気に迎え入れる。

 

「こんにちは店長、沙希さん」

 

 店長である北島 小次郎とその妻の沙希。

 二人と挨拶を交わした五人は、LBXバトルの前に北島夫妻を交えて雑談に興じ始める。

 

「にしても、去年までの賑わいぶりが嘘みたいだ」

「ははは。ま、繁盛するのは嬉しかったが、やっぱり俺としては、お前たちみたいな常連客と喋る時間が作れる今の方が性に合ってるさ」

「あたしとしては、あのまま二号店を出してもよかったんじゃないかって思ってるけどね」

「そう言うなよ沙希……」

 

 ミゼル事変後、バン達レジェンドプレイヤーが文字通り世界中から注目の的となったその余波を受け、キタジマ模型店は開店以来の大繁盛が続いた。

 日本国内はもとより世界中からバン達に憧れるLBXプレイヤー達が殺到し、北島夫妻は連日大忙しであった。

 だが、人の心は移ろいやすし。

 半年、一年と時が経つにつれ、徐々に落ち着きを取り戻し始め。今では、ミゼル事変以前の様な、地元の常連客達が足を運ぶ地域密着店に戻っていた。

 

「ねぇ店長、お店の状態が前に戻ったのなら、どうして商品が品薄状態なの?」

 

 店内を見回していたアミが、ふと、そんな疑問を北島店長にぶつける。

 すると、北島店長は話すかどうか暫し悩んだ末、バン達に商品が品薄状態となっている原因を話し始めた。

 

「実はここ最近……、"転売目的"かも知れない客が来ていてな」

「「えぇっ!?」」

「勿論、店でも購入個数制限等の転売対策は行ってるんだが……」

 

 曰く、転売目的で訪れていると思しき客は一人ではなく複数。しかもその客達は全員グループのメンバーらしく、決まって入れ替わりに来店する。

 更に他の常連客の目撃証言によると、近隣の店舗でも赤の他人を装う同様の方法で転売目的の購入を次々と行っているのだとか。

 

「一応声はかけてみたんだが、連中口裏を合わせてるのか、知り合いじゃないとか個人で楽しむために購入してるの一点張りでな」

「制限内で購入してるから、こっちとしてもそれ以上追及しづらくてね……」

「それってもう確信犯じゃない!」

「ひでぇ!」

「許せない……」

 

 困り果てている北島夫妻に、憤りを露にするカズ・アミ・ミカの三人。

 一方、バンは拳をぎゅっと握りしめ、静かに怒りを滲ませる。

 

 ミゼル事変直後、LBXは兵器にもなり得るという潜在的な危険性から、流通や使用に制限を求める声が上がった。

 しかし、バン達をはじめとしたLBXプレイヤー達の啓蒙活動により、今ではそうした声もなくなり。更にはプロリーグが設立されるなど、LBXは逆境をはねのけ、世界最高のホビーという地位を築きつつあった。

 所が、そんな中での転売行為。

 イノベーターやオメガダイン、更にはミゼル。それらとはまた別の角度でLBXを利用し悪事を働いている者達がいる。

 LBX発明者の父親を持ち、世界中の誰よりもLBXを愛していると自負するバンにとって、許されざる事であった。

 

「……」

 

 その一方、凛空はと言えば。

 顎に手を当て何かを考えている様子。

 

「店長」

 

 程なく、考えがまとまったのか、凛空が口火を切る。

 

「そのお客さん達って、毎回決まった日に来てるんですか?」

「あぁ、決まって土曜日にな」

「土曜日って、今日!?」

 

 転売目的の客がやって来る場面に出くわすかもしれない、その可能性が出てきた事に驚く凛空。

 だが直後、冷静さを取り戻すと、再び北島店長に質問を投げかける。

 

「時間も決まってたりします?」

「確か……、大体同じ時間帯だった筈だ。あぁ、あと一時間程でその時間帯だな」

「だったら、もしそのお客さん達が来店したら、その時──」

 

 そして、凛空は北島店長にとある提案を持ち掛け、客が来店する時を待つのであった。

 

 

 

 

 それから一時間後。

 不意に店の自動ドアが開き、一人の男性客が来店する。

 リュックを背負い、灰色のパーカーのフードを深々と被ったその男性客は、来店するや否や買い物かごを手にLBX販売コーナーに足を運ぶ。

 そして、まるで高値で売れる商品を調べているかの如く、手にしたスマホ型CCMの画面を見ながら手にした商品をかごの中に入れていく。

 

「あの人が例の……」

「個人で楽しむっつっても、あの量は異常だろ」

「確かに、アーマーフレームのみのパッケージをあんなに買うのはおかしいわ」

「メーカーやアーマーフレームの種類も、皆バラバラ」

「これは決まりだね」

 

 そんな客の様子を、バン達五人は店のカウンターの奥から覗いていた。

 

 

 程なくして、買い物かごを一杯にした男性客が清算の為にカウンターに足を運んだ。

 

「お客様、申し訳ないのですが、御精算の前にクイズに答えてもらってもよろしいでしょうか?」

「……は?」

「実は当店では、転売対策の一環としてクイズに正解したお客様のみの商品をお売りしているんです」

っち。そっすか、ならさっさとお願いします」

 

 本当にLBXを楽しみ愛しているのなら簡単に答えられるクイズ。これこそ凛空が持ち掛けた提案の中身であった。

 一瞬小さく苛立ちを露わにした男性客だったが、どうやら素直に応じてくれたようだ。

 

「では問題。LBXの正式名称をお答えください」

「……は?」

「LBXを楽しんでいるのなら、当然答えられる問題ですよ」

「あぁ……、と……、り、リト、いやリタだったか。ビー、ビー? エックスって何だよ

 

 LBXプレイヤーならば答えられて当然の問題、しかし男性客は答えに窮している。

 

「別の問題もありますが?」

「あるのかよ! なら別のだ!!」

「では。お客様がご購入を希望しているこのサイバーランス社製LBX"ディランザ"のアーマーフレームはどのタイプですか?」

「はぁ!?」

 

 因みに、パッケージに描かれた重厚な外観の通り、ディランザは重量級パワータイプのブロウラーフレームに分類される。

 これもLBXプレイヤーならば答えられて当然なのだが、やはり男性客は答えに窮する。

 

「あ、アレだよ。ほら、アレだろ、アレ!」

「アレとは、どのタイプの事ですか?」

「だから……」

 

 やがて、男性客は口ごもる。

 だが、次の瞬間。

 

んなクイズなんてどうでもいいだろうが!! さっさと清算しろよ! こっちは客だぞ!!

 

 男性客は開き直り、捲し立てるように清算を要求し始めた。

 

「早くしろよ、オラ早く!!」

「ちょっと!!」

「あぁ?」

 

 刹那、店のカウンターの奥から事の成り行きを見守っていたバン達五人が姿を現す。

 

「貴方にそんな事を言う権利があるって言うの!?」

「何だテメェらは、関係ないやつは口出すな!!」

「いいやあるぜ!」

「ん、大有り」

「本当にLBXが大好きなら、店長の出したクイズに答えられた筈だ。それを答えられないのは、LBXをただの金儲けの道具としか見てないからだ!!」

「例え犯罪行為でなくとも、貴方のやってることは道徳的に許されるものじゃない!」

「な、な……」

「転売目的の購入はもう止めろ!」

「っ!!」

 

 バン達の言葉を聞き、自身の正体がバレている事に気がついたのだろう。

 次の瞬間、男性客は逃げるように店から出ていってしまう。

 

「「やったー!!」」

 

 その姿を目にし、バン達は転売目的の客を撃退できたことに喜びを分かち合う。

 しかし、それも束の間。

 

 

 再び自動ドアが開くや、先ほど逃げたと思われた男性客を筆頭に、数人の男達が入店してくる。

 どうやら、近くで待機していた仲間を引き連れて戻ってきた様だ。

 

「な、仲間を引き連れて来たって、あんた達みたいな迷惑な客にはもう商品は売らないぞ!」

 

 若干声が上擦っているものの、北島店長は毅然とした態度を見せる。

 

「は! 折角いい穴場を見つけたと思ってたが、客に商品買わせねぇ店なんて、こっちから願い下げだっつの!!」

「お前たちが転売目的で購入しなければ、店長だって快く売ってるさ!」

「うるせぇっ!! 黙れ!!」

 

 バンに痛い所を突かれた男性客はそう吐き捨てるや否や、仲間の男達に指示を飛ばす。

 刹那、仲間の男達はスマホ型CCMと共に、105ダガーやウィンダム等のLBXを取り出した。

 

 男達のこの行動に不穏な空気を感じ取るバン達。

 次の瞬間、リーダー格の男性客が大声で叫んだ。

 

俺達の邪魔をしたらどうなるか、お前ら、思い知らせてやれ!!

 

 刹那、仲間達のLBXのメインカメラに光りが灯る。

 

そぉら行け!! 奏でろレクイエムを!!

 

 そしてLBX達が持ち主の手を離れ店内に散らばると、装備したビームライフルの銃口を商品棚などに向けた。

 

全ては、白き清浄(資本主義)なる世界の為に!!!

 

 次の瞬間、銃口から放たれた光の軌跡が、商品棚に並ぶ商品たちに次々を貫いていく。

 

「「っ!!」」

「あ、あぁ!」

「あはははっ!! いいぞ、もっとやれ!!」

「や、やめろ! やめてくれっ!!」

「やめろだ? 誰がやめるか!! これは俺達の邪魔をした者達への当然の報い!! とくと聞くがいい、このレクイエムを!!」

 

 北島店長の悲痛な声に耳を貸す事もなく、男達のLBXを使った破壊行為は続けられる。

 一方、カウンターの裏に隠れたバン達は、この状況を打開するべく動き出す。

 

「皆! 俺達であのLBXを止めよう!」

「それはいいけどよ……」

「バン、忘れちゃったの?」

「私達、今日、LBX持ってきてない」

「……あぁ、そうだった!?」

 

 だが、出鼻を折られる事実に気づかされる。

 実は今日、いつもとは趣向を変えたLBXバトル、具体的には店のレンタルLBXを使ったバトルを楽しむべく、バン達は愛用のLBXを持ってきていなかった。

 

「僕は一応、持ってきてるけど……」

「あ、それってもしかして、今度会った時に見せてくれるって言ってた試作機!?」

「うん」

「凄い! って言っても、あの数を相手に一機だけじゃ……」

 

 凛空の腕前をもってしてもあの数を相手に戦うのは厳しいのではないか。

 せめて、もう一機でもLBXがあれば。

 

 その時、北島店長の声が響いた。

 

「バン! これを使え!」

「これは……」

 

 刹那、北島店長がバン達にある物を手渡す。

 

「アキレス!」

「ハンター!」

「クノイチ!」

「アマゾネス」

 

 それは、かつてバン達が愛用していたLBXであった。

 

「今日はレンタルLBXでバトルを楽しむって聞いてたからな。お前たちの為に用意しておいたものだ!」

「店長……、ありがとう!」

「あ、凛空の分もちゃんと用意してるが、お前には必要ないみたいだな」

「はい、僕にはこれがありますから」

「おぉ、凄い! それが試作機!?」

「ちょっとバン! 今は見惚れてる場合じゃないでしょ!」

「っと、そうだった。……それじゃ皆、反撃開始だ!」

「「おぉ!!」」

 

 こうして、戦士達を手にしたバン達は、反撃に打って出る。

 

 

 

 

 店内はさながら、戦場と化した都市の様であった。

 瓦礫の如く散乱する商品の破片。悲鳴の如く鳴り響く破壊音。

 そんな戦場の支配者たる男達のLBXは、破壊のレクイエムを奏で続ける。

 

「待て!!」

「……あぁん?」

 

 だが、そんな彼らの演奏を阻止するものが現れる。

 誰であろう、バン達だ。

 

「もう一度だけ言う、店内を滅茶苦茶にするのはやめろ!」

「馬鹿が! やめろと言われてやめる訳ねぇだろう!!」

 

 刹那、まるで見せしめの様に、一機のウィンダムが棚に飾られていたフィギュアの腕をビームサーベルで切り落とした。

 更にそれで終わらず、切られた衝撃で倒れたフィギュアに更なる斬撃を加えるべくじりじりと歩み寄った──次の瞬間。

 

 一筋の閃光がウィンダムの胴体を貫き機能停止に追い込んだ。

 

「何だ!?」

 

 リーダー格の男性客は慌てて店内を見渡し下手人を探し出す。

 やがて、カウンターの上で大型の高エネルギービームライフルを構えるLBXを発見し、彼は目を見張った。

 

「何だ……、あのLBXは」

 

 青を主体としたカラーリング、額のV字型ブレードアンテナにツインアイの頭部。

 背部の主翼、肩部や足裏などに内蔵したサブスラスターは、同機が高い機動力を有している事を物語っている。

 高エネルギービームライフルに大型シールドの他、主翼内部の大型ビーム砲や腰部のレールガンにビームサーベルと、強力な武装の数々を保有。

 サイバーランス社が培ってきた技術の粋を集結させ生み出された、ガンダムの名を冠した試作機。

 その名は、ライジングフリーダムガンダム。

 

 そして、そんな同機の両脇をアキレス・ハンター・クノイチ・アマゾネスの四機が固める。

 

(あの青い羽付きの奴は見た事ねぇが、両脇の四機はどいつこいつも旧式ばかり……。)

 

 刹那、リーダー格の男性客は笑みを浮かべると、仲間たちに向けて叫ぶ。

 

「お前ら! 小生意気なガキ共に身の程をわきまえさせてやれ!!」

 

 それを合図に、ライジングフリーダムガンダムが飛翔し、残りの四機がバトルフィールドたる店内に降り立つ。

 今まさに、戦いの幕が切って落とされた。

 

 

 ジェットストライカーを装備し空戦能力を有するウィンダムがライジングフリーダムガンダムと空中でバトルを繰り広げる一方。

 地上でも、激しいバトルが展開されていた。

 

「旧式だからって、舐めないでよ!」

 

 散乱する商品の破片を掻い潜り、自機目掛けてビームライフルを乱射する105ダガー達。

 彼らの攻撃を巧みに躱すクノイチは、すれ違い様に、両腕に装備したコダチを振るう。

 次の瞬間、105ダガー達は次々と倒れ込み、再び起き上がる事はなかった。

 

「……そこ」

 

 別の場所では、ビームサーベルを振るう105ダガー達を相手に、アマゾネスが華麗な動きで相手を翻弄していた。

 勿論、攻撃を避けてばかりいるのではなく、隙を見てパルチザンの一撃を食らわせ、相手の数を徐々に減らしていく。

 

「……やらせない」

 

 刹那、一機の105ダガーが攻撃対象をアマゾネスから商品に切り替え、ビームライフルを構える。

 それに気がついたミカは、瞬時にアマゾネスを商品の前に飛び出させると、放たれた閃光をハードバックラーを使い防いでみせた。

 

「くっ!」

 

 因みに、商品を守りながら戦っているのはアマゾネスだけではない。

 アキレスもまた、アキレスシールドを商品の前に突き立てると、身軽になった機体でバトルフィールドを駆ける。

 

「そこだ、必殺ファンクション!」

 

 そして、必殺ファンクションのトライデントを繰り出し、三機の105ダガーを纏めて撃破する。

 だが、倒しても倒しても、相手の戦力が底をつく気配がない。

 

「カズ! 援護してくれ!」

 

 堪らずバンは、近くで戦っているカズのハンターに援護を求める。

 だが返ってきたのは、意外な答えであった。

 

「んな事言われたって、このハンター、近接戦用にカスタマイズされてるからな……」

 

 カズの言葉の通り、北島店長が用意したハンターはブロードソードとライトバックラーを装備しており、標準装備のハンターライフルを装備していない。

 これではバンの期待に応えられない。カズの脳裏をそんな一文が過ぎった、次の瞬間。

 

「必殺ファンクションがあるだろう!」

「っ! そうだった!」

 

 バンの言葉に気付かされたカズは、すぐさまCCMを操作する。

 次の瞬間、機械音声と共に必殺ファンクションのスティンガーミサイルが炸裂。ハンターの背部から発射されたミサイルが105ダガー達に降り注ぎ爆炎の中に消していく。

 

「よっしゃ! ……ん?」

「あ!」

 

 刹那、バンとカズは何かに気がつくと上空を見上げた。

 そこには、ビームライフルを乱射する二機のウィンダム目掛け、ビームサーベルを構え突撃するライジングフリーダムガンダムの姿があった。

 

 難なく攻撃を掻い潜り一機のウィンダムを一刀両断にする。しかし、もう一機は未だに健在。

 旋回するライジングフリーダムガンダム目掛けビームライフルの銃口を向けようとした、その時。

 死角から何かが襲い掛かると、それはウィンダムの胴体を切り裂いた。

 その正体は、ライジングフリーダムガンダムが突撃前に放っていた大型シールド。実はこのシールド、上部先端や側面展開のウイングからビームブレイドを発生させる事が出来る他、遠隔操作と単独飛行が可能な為、一種の投擲武装としても使用する事が出来るのだ。

 

「あれで最後……」

 

 ウィンダムを全機撃破し制空権を確保したバン達。

 戦局は、バン達に大きく傾きつつあった。

 

「く、くそう!!」

 

 この状況に焦りの色を隠せないのは、誰であろうリーダー格の男性客。

 勝つ見込みしかない筈が、蓋を開ければ敗戦が濃厚。

 この直視しがたい事実に、男性客の表情は歪んでいく。

 

「このまま……、むざむざ負けてられっかぁ!!」

 

 刹那、リーダー格の男性客は背負っていたリュックから何かを取り出すと、徐に店の中心目掛けて投げた。

 店の中心に降り立ったのは、既存のLBXを上回る巨大な存在。

 橙色に輝く複数の目を持つ凶暴な形相、巨大な翼と尻尾には巨大な剣の如く武装を有し、両腕にはエネルギー銃を装備している。

 黒く彩られた堅牢な装甲に覆われたその様相は、まさに西洋のドラゴンを彷彿とさせる。

 

 LBXを破壊するために生まれた正真正銘の兵器の名は、キラードロイド・ワイバーン。

 

「あれは! キラードロイド!?」

「嘘! 何でキラードロイドが!?」

 

 かつてバン達はキラードロイド・ワイバーンと幾度か戦った事があった。

 故に、その危険性については充分に理解していると同時に、この危険な兵器が二度と利用されないように、関係者達の手によって設計図などの情報が秘匿された事も知っていた。

 だからこそ、目の前にキラードロイド・ワイバーンが現れた事実に驚愕せずにはいられなかった。

 

「オタクロスから聞いた事がある……」

 

 そんな中、凛空は以前オタクロスから聞いたキラードロイドに関する話を始めた。

 曰く、ミゼル事変後何者かの手によりキラードロイドの設計図情報がダークウェブに流出し、その性能に目を付けた一部の組織が再び量産を行っているとの事。

 しかし、バン達が戦ったオリジナルそのままの性能で量産されている訳ではなく、オリジナルが備えていたKフィールド発生装置の排除や素材の変更、更には搭載する人工知能も単純なものに変更する等。

 所謂コストパフォーマンスを重視して量産されているとの事。

 

「つまり、量産し易くなった分、俺達が戦ってたヤツよりも弱くなってるって事か」

「でも、弱くなったって言っても、強敵である事に変わりはない」

「うん、ミカの言う通りだ」

「それでも、勝たなくちゃね」

「いくぞ、皆!!」

「「おぉ!!」」

 

 キラードロイド・ワイバーンの咆哮と共に、バトルは最終局面を迎えた。

 

「ちっ! スゲー弾幕は変わらずかよ!」

「いいぞワイバーン! そのまま奴らをハチの巣にしろ!」

 

 両腕のエネルギー銃から放たれる光の弾幕を前に、バン達は攻めあぐねていた。

 

(このまま長引けば店の被害が拡大する……、だったら!)

 

 そんな中、凛空は意を決すると、ライジングフリーダムガンダムをキラードロイド・ワイバーン目掛けて突撃させた。

 

「先ずは青い羽付きからだ!!」

 

 刹那、キラードロイド・ワイバーンは突撃していたライジングフリーダムガンダムに対して両腕のエネルギー銃を向け発射態勢に入る。

 だが、その直後。

 

〈アタックファンクション、ハイマットフルバースト〉

 

 ライジングフリーダムガンダムが展開した全砲門が一斉に火を噴く。

 規格外の大火力であるそれはキラードロイド・ワイバーンに降り注ぎ、両腕や翼を吹き飛ばした。

 それだけにとどまらず、遅れて飛来したシールドブーメランがキラードロイド・ワイバーンの頭部を切り裂いた。

 

「これで、終わりだ!!」

〈アタックファンクション、JETストライカー〉

 

 刹那、飛行形態に変形したライジングフリーダムガンダムの全身が青い光に覆われるや、そのまま猛スピードでキラードロイド・ワイバーン目掛けて突撃する。

 次の瞬間、青き閃光となったライジングフリーダムガンダムが無防備となったキラードロイド・ワイバーンの胸のコアを貫く。

 

 そして、断末魔のごとき咆哮を最後に、キラードロイド・ワイバーンは巨大な鉄塊と化したのであった。

 

 

 

 

「そ、そんな……」

 

 切り札であるキラードロイド・ワイバーンを倒され愕然となるリーダー格の男性客。

 

「何で……、青い羽付きの奴は兎も角、他の四機は旧式の筈なのに……、何で勝てねぇんだ」

「あぁ! リーダー、あ、アイツら!」

「っ! バカ野郎! 急に大声出すな!」

 

 焦燥感に駆られていた事もあって、突然声をあげた仲間を怒鳴りつけるリーダー格の男性客。

 しかし、怒鳴りつけられた仲間は構わずに話を続けた。

 

「アイツら、レジェンドプレイヤーだ! 間違いねぇ!!」

 

 バン達を指差しながら放ったその一言に、リーダー格の男性客や他の仲間達は一瞬思考が止まる。

 程なく、正気を取り戻したリーダー格の男性客は暫くバン達を見つめると、やがて顔を青ざめさせた。

 

「あ、あぁ、あぁ!! あの顔! 間違いねぇ!!」

「だから言ったでしょ!」

 

 成長期という事もあり言われるまで気がつかなかったのだろう。

 だが漸く、相手をしていたのがレジェンドプレイヤーだと理解した一行。

 

「くそ! まさかレジェンドプレイヤーが相手だったとは……」

「ど、どうするんだリーダー?」

「んなモン、決まってんだろ」

 

 リーダーの次なる一手を固唾を呑んで見守る仲間達。

 刹那、リーダー格の男性客はバン達に背中を向けると、次の瞬間、一目散に店の自動ドア目掛けて走り出し始めた。

 そう、逃走を図ったのだ。

 

「ははは! あばよノロマども! もうこんな店、二度と来ねぇ──」

 

 捨て台詞と共に逃走を成功させたと思われた、次の瞬間。

 自動ドアが開いた先で待っていたのは、自由ではなく、行く手を阻むように佇む人影であった。

 

「っ! おいテメェ! んな所で突っ立ってんじゃねぇ!! さっさと退け!」

「すまないが、それはできない相談だな」

 

 この発言が更に、リーダー格の男性客の神経を逆撫でにする。

 

「っテメェ! ふざけてんじゃねぇぞっ!!!」

 

 刹那、リーダー格の男性客は目の前の人物に対して殴りかかった。

 だが、振るわれたその拳は相手の顔面を捉える事無く、相手に軽々と受け止められてしまう。

 しかも、相手は受け止めた状況を利用し背後に回り込むと、同時に背中へ腕をひねりあげた。

 

 途端に痛みに顔を歪めるリーダー格の男性客。

 一方、相手は冷徹な表情を浮かべたまま、降伏勧告のごとき台詞を言い放つ。

 

「やめておけ。本気で喧嘩した所で、お前が俺に敵う筈なのだからな」

 

 刹那、力量差を思い知ったからか、それとも痛みに耐えきれなくなったか。

 リーダー格の男性客は膝から崩れ落ちてしまう。

 

 すると、そんなリーダーの姿を見ていた仲間達も、観念したように逃走を諦めるのであった。

 

 

 こうして決着がついた所で、一連の流れを見守っていたバン達が声をあげた。

 

「「八神さん!?」」

 

 見事な手際でリーダー格の男性客を制圧した人物、それはバン達にとっても顔馴染みの人物。

 表向きには八神探偵社の代表として、裏では総理大臣直属のエージェントとして活動している八神 英二その人であった。

 

「何だい何だい……、八神さんだけで片が付いちまったじゃないか」

「私達の出る幕、なかったですね」

「ま、無事に片が付いてよかったッス!」

 

 と、黒のスーツを身に纏った三人の男女。

 八神の部下である真野 晶子・細井 将志・矢壁 塀太の三人が、文句を垂れながら入店する。

 

「えぇ、真野さん達まで!?」

「皆、どうしてここに!?」

「実は、カズヤから連絡を受けてな」

「カズから?」

 

 実はカズ、高校入学を機に八神に弟子入りして探偵見習として修業中の身であった。

 

「転売ヤーたちがくるって聞いた時、連中が逆上したら何しでかすか分からないと思ってな。そこで師匠達に応援を頼んでたんだ」

「本当はもっと早く駆け付けたかったんだが、運悪く渋滞につかまってな」

「そうだったんだ……」

「けど、ナイスタイミングだったぜ師匠!」

 

 その後、転売ヤー達一行は警察に身柄を引き渡すべく八神達が連行していき。

 こうして、一連の騒動は決着を見るのであった。

 

 

「すまんな皆、後片付けまで手伝ってもらって」

「そんな、気にしないでよ店長」

 

 とは言え、彼らによって荒らされた店内の後始末は残っており、バン達は率先して手伝っていた。

 

「だけど……、お店の中、滅茶苦茶になっちゃったね」

「ん」

「ははは、これ位。沙希がバトルでヒートアップし過ぎて店を半壊させた時に比べれば大した事ないさ!」

「ちょっとあんた!」

 

 バン達にこれ以上心配をかけさせまいと気丈に振舞っているのか、それとも……。

 いずれにせよ、北島店長の心が折れていないことは間違いない。

 

「皆……、今日は本当に、本当にありがとうな。そうだ、片付けが終わったら、お礼に家で飯でも食べていってくれ! いいよな沙希?」 

「勿論よ! 皆の為に、腕に縒りをかけてご馳走を作ってあげるわ!」」

 

 そして、北島夫妻の笑顔と共に、営業を再開の日がそう遠くない将来である事もまた間違いないだろう。

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