数十分後。
鉄道を使いアキハバラを目指した一行は、無事に、アキハバラの玄関口であるアキハバラ駅のホームに降り立った。
他の利用客と共に駅構内を歩き、改札を通ると、漸く出入り口に到着する。
「アキハバラ! くぅ~、いつ来てもワクワクするなぁ!!」
立ち並ぶビル群、その壁面に設けられた大小さまざまな看板には、様々なキャラクターを描いたものから原色を使ったド派手なものまで、バリエーションが豊かな他。ビル内には、アニメや漫画の専門店、更にはキャラクターグッズやゲームセンター等々、様々な店舗が入居している。
更に通りの至る所には、メイド服や燕尾服を着用した男女が声掛けを行っている他、お店の従業員或いは個人的と思しき、アニメやゲームに登場するキャラクターのコスプレをした人々が行き交い、そんな人々に許可をもらい自慢のカメラで撮影する人々もいる等々。
商店街等とはまた違う活気が、町全体に溢れていた。
「流石アキハバラ、凄い人ね」
「本当だよな」
そんな活気あふれるアキハバラを目の当たりにし、少々圧倒されるアミとカズ。
一方、バンは何度も足を運んだ事があるのか、興奮した様子で周囲を見渡していた。
「やっぱり、いつ来ても面白いな、この町は!」
「そうだね。流石は、あらゆるオタク文化が集う町。様々なジャンルを愛する人々が一同に会しているだけの事はあるね」
そんなバンに同調するかのように、凛空もそんな言葉を零す。
「あれ? この前来た時は、あのパーツ屋なかったよな。……ごめん、ちょっと見て──」
「おいバン。お前、ここに来た目的、忘れた訳じゃねぇよな?」
刹那、新しくオープンしたと思しきLBXのパーツ専門店を発見したバンは、品揃え等が気になり、早速店に向かおうとする。
だが、ハンゾウに制止され、バンは苦笑いを浮かべるのであった。
「私達は、オタクロスを見つける為に、アキハバラに来た」
「ミカの言う通りだ。バン、本当に目的、忘れてねぇよな?」
「あはは、も、勿論、忘れてないさ。……それじゃ、気を引き締めてオタクロスを捜そう!」
こうして、一行はオタクロスを見つけるべく、早速捜索を開始する。
「だけどバン、どこを捜すんだ? オタクロスはこのアキハバラにいるってこと以外、手掛かりがないんだろ?」
「聞いて回る!」
しかし、カズの言う通り、手掛かりとなる情報は少なく、捜索は困難が予想された。
それを証明するかのように、バンが通りを行き交う人々にオタクロスの事を尋ねても、オタクロスの名を知ってはいても、その居場所については知らないの返答ばかりであった。
それでも、バン達は諦める事無く、オタクロスの居場所について知らないか、通行人のみならずお店の従業員やメイドさん達にも尋ね回る。
「はぁ……。オタクロスの名前は知ってるのに、どうして誰もその居場所を知らないのかしら」
「やっぱり手あたり次第に聞き込むより、別の方法で捜した方がいいんじゃねぇか?」
しかし、まったく収穫がないまま、時間だけが経過する。
一行は、一旦聞き込みを止め、小休止を取る事に。
「けど、他の方法って言っても……」
同時に小腹を満たす為、一行は広場の一角に出店していたキッチンカーでクレープを購入すると、それを片手に近くのベンチに腰を下ろし、今後の方針を話し合っていた。
「凛空、この塩キャラメルバター、美味しいよ」
「本当だ、美味しい! ……それじゃお返しに、僕のチーズはちみつをどうぞ」
「ん……、美味しい」
そんな中、凛空とミカの二人は、互いに購入したクレープを互いに食べさせあう等、二人だけの世界に浸っている。
「……」
そんな凛空とミカの二人の様子を特に気にする素振りもなく、バン達は話し合いを続けている。
この光景を目の当たりにしたジンは、何故バン達は気にならないのか、と疑問を抱いたが、空気を読み、言葉に出すことなく、そっと心の奥にその疑問をしまうのであった。
その後、話し合っても聞き込み以外の方法が思い浮かばず、結局聞き込みを続けるという結論に達し、再び聞き込みを再開しようとした、その矢先。
不意に、何処からともなくしゃがれた声が聞こえてくる。
「おーいお前」
「ん? 今、誰かの声が?」
「山野 バン、お前の事じゃよ」
「っ! だ、誰だ!?」
突如として名前を呼ばれ、バン達は驚きと共に、声の主を捜すべく周囲を見渡す。
だが、周囲にそれらしい人物の姿は見当たらない。
「何処を見てるデヨ、ワシはここデヨ」
「バン! 見て、あそこ!」
すると、アミが何かに気がつき指を差す。
アミが指を差したその先には、ビルの屋上に設置された巨大ディスプレイが存在し。そのディスプレイには、影に覆われ素顔の分からぬ人物が映し出されていた。
「お前は誰だ!?」
「ワシか? お前たちが捜しておる"オタクロス"じゃ」
刹那、バン達は目を見開いた。
何故なら、自分達が捜していた人物の方から接触を図ってきたのだから。
「あれがオタクロス……」
「でも、どうして俺達が捜してるって知ってるんだ?」
「ウッシシシシッ! ワシはなーんでも、お見通しデヨ」
「あの、オタクロスさん、頼みがあるんです!!」
「お前たちの願いは知ってるデヨ。……じゃが、断る!」
しかし、捜している理由を知った上で断ったオタクロスに対して、カズは憤慨する。
「どうして断るんだよ!?」
「断ると言ったら断るデヨ」
「そんな……」
「くそ、どうすればいいんだよ」
とはいえ、協力するかしないかの決定権はオタクロス側にあり、その本人が断りの意志を示している以上、最早協力は望めないかに思われた。
「お願いします! オタクロスさん!」
だが、その時。
不意にアミがお願いした所、オタクロスの様子に変化が現れた。
「ぬほぉ~! お嬢ちゃん、川村 アミデヨね?」
「そ、そうですけど……」
「ぬほーっ! アミたんデヨ! アーミたーん! 萌え萌えアミたーん!」
「えぇ……」
「おいおい……」
「あ、アミたん……」
どうやら、アミの可愛さに一目惚れしたと思しきオタクロス。
しかし、その興奮ぶりに、アミやハンゾウ、それにカズやバン。更には、表情にこそ現さないものの、ミカとジンも、ドン引きするのであった。
だが当の本人は、そんなバン達の様子など気にする事もなく、一通り興奮すると、再び話を始めた。
「よかろう、アミたんの頼みじゃ、聞いてやるデヨ」
「本当ですか!」
「ただし、条件があるデヨ」
「条件?」
「そうじゃ! ズバリ、その条件とは、"伝説のLBX"を手に入れる事デヨ! さすれば、ワシへの道が開けるデヨ!」
提示された条件、そのあまりにも漠然とした内容に、カズが再び声をあげる。
「んなモン、何処にあるって言うんだよ!」
「それは自分達で探すデヨ」
「お願い、オタクロスさん! 教えて下さい、時間がないんです!」
「はわ~。し、仕方ないのぉ。では、ヒントをあげるデヨ」
しかし、アミが再びお願いすると、オタクロスはヒントを教え始めた。
それは、蛸と豚、その光と影が結び時つぐる高き山、太陽を背負いし山羊の中に我は眠れり。というものであった。
「では、待っておるデヨ」
こうして、巨大ディスプレイの映像が切り替わり、オタクロスが姿を消した所で、バン達は早速、ヒントを頼りに伝説のLBXを探し始める。
だがその矢先、不意に凛空は自身のCCMを手に取ると、送られてきたと思しきメッセージに目を通し始めた。
「ごめん、バン。急用が入ったから、ちょっと行ってくるね!」
「え? 分かった」
そして、凛空は断りを入れると、バン達と別れ、一路とある場所を目指して歩みを進めた。
アキハバラを代表する建造物の一つ、それがアキハバラタワーである。
その名の通り、アキハバラ内でも最も高いこのタワーには、アキハバラらしくマニアックな専門店の数々が入居している他。
タワー内には、アキバ系アイドルの聖地とも言うべきマキバホールも存在しており、まさにアキハバラという町を体現した建造物と言っても過言ではない。
そんなアキハバラタワーの最上階、そこに、凛空は足を進めていた。
「おぉー、よく来たデヨ、凛空」
最上階の薄暗い室内には、ダンボール箱やモニター、更にはオーディオ機器等々、様々な物が乱雑に置かれていた。
そんな部屋の主、オタクロスは、現れた凛空を笑顔で迎え入れる。
何故なら、凛空とオタクロスは既に見知った間柄だからだ。
二人の出会いの切っ掛けは、凛空の父親である蔵土がオタクロスと知り合いだった事。
蔵土が若い頃、当時から既に名の知れたハッカーであったオタクロスに、自身のスキルアップの為、ホワイトハッカーとしての知識やスキルをご教授いただきたく、彼のもとを訪ねたのが始まりであった。
当初オタクロスは蔵土の頼みを断っていたが、最終的には蔵土の熱意に根負けし、蔵土に自身が持つ知識やスキルを伝授する事となった。
その後、ご教授をいただいた後も二人の交友は続き、それは現在まで続いていた。
そんな蔵土とオタクロスの関係を、親子の会話の中で聞いた事で凛空は知る所となり、凛空は直ちに蔵土を通じてオタクロスに連絡を取り、出会う運びとなったのだ。
因みに、凛空にとってオタクロスは、複数機同時操作の技術を教わった師弟の関係でもあった。
「ま、相変わらず散らかっとるが、適当に座ってくれデヨ」
「ありがとう、オタクロス」
オタクロスの歓迎を受けた凛空は、適当な椅子に腰を下ろすと、先ほどからモニターから目を離さずにいるオタクロスに声をかけた。
「所でオタクロス。どうして、バン達に気付かれないようにここに来て欲しいってメッセージを?」
「おぉ、その事か、それはのぉ。凛空がいると、折角の"試練"が無駄になってしまうからデヨ」
「試練? それって……、伝説のLBXを見つけ出す為のさっきのヒントの事?」
「そうデヨ。最も、試練は伝説のLBXを見つけ出し手に入れるだけではないがのぉ……、ほれ、見て見るデヨ」
するとオタクロスは、自身の方へと凛空を手招きし、自身が見ていたモニターを見て見るように凛空に促す。
モニターに表示されていたのは、マキバホールに設置された監視カメラからのリアルタイムの映像らしく。
ユジンことオタレッド、そして、色違いながら彼と同じ装いをした四人の男女。オタブルー、オタイエロー、オタピンク、オタブラック。五人揃って、アキハバラの平和を守る戦隊ヒーロー"オタレンジャー"。
その五人が、バン達とLBXバトルを行っている様子が映し出されていた。
「ほほほ、流石は宇崎氏が希望を託した子供達デヨ、なかなかやるじゃないか」
「オタクロス、宇崎氏って、もしかして?」
「そうデヨ。山野 バン達が来ることも、彼らに協力してほしいという事も、タイニーオービット社の社長である宇崎氏から事前に連絡を受けていたデヨ」
「でも、それならどうしてその事をバン達に黙ってるんです?」
「素直に協力してもよかったんじゃが、それじゃと、少しばかり面白みに欠けるからのぉ。……それに、ワシなりに見極めたかったんじゃ」
「見極める?」
「そう、彼らが本当に、ワシらの希望を託すに値するかどうかをのぉ」
刹那、オタクロスはモニターから目を離すと、机の上に置いていた自身のCCMを手に取り移動を開始する。
「さて、もうすぐこの部屋に来ることだし、出迎えに向かうとするかのぉ」
「あ、待ってください!」
そんなオタクロスの後を追いかけるように、凛空も足を進め始めるのであった。
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