アキハバラタワー最上階にあるオタクロスの部屋を後にし、アキハバラの町に再び繰り出した凛空とミカ。
二人がその足で向かったのは、アキハバラ内でも一際ディープな場所、その名を裏路地。
一体何処から仕入れてきたのか、希少価値の高い限定品から非売品、果ては聞いた事のない企業等が開発したという怪しい一品などなど。裏路地には、そんな品揃えの店が多く立ち並んでいる。
「ねぇ、凛空。どこに行くの?」
「ん~、確かこの辺りにいた筈なんだけど……」
そんな裏路地に足を運んだ二人。
ミカの質問に、先頭を行く凛空は答える事無く、誰かを探すように裏路地を見回していた。
「あ、いた!」
そして、程なくお目当ての人物を見つけ出すと、凛空はその人物のもとへと歩み寄り、ミカもその後に続いた。
「すいませーん!」
「ん? おや、誰かと思えば、アルテミスで僕を打ち破ったラッキーボーイとラッキーガールじゃないか!」
「お久しぶりです」
「ん、どうも」
「まさか二人とここでまた出会えるなんて、まさに
凛空が声をかけた人物、それは誰であろう、第三回LBX世界大会アルテミスの予選Fブロック第二回戦で戦った、ガンダムタンクのプレイヤーその人であった。
「そうだ、こうして再び出会えたのも何かの縁。折角だから自己紹介しておこう。僕の名前は
「西原 凛空です」
「三影 ミカ」
ガンダムタンクのプレイヤーこと月雅と自己紹介を終えた凛空は、改めて月雅に裏路地にいた理由を尋ねる。
「実はね、今日アキハバラに来たのは、ガンダムタンクを販売していたお店の店主さんから連絡があってね。それで、お店に寄る為に来たんだ」
曰く、予選二回戦で敗退したものの、アルテミスに出場した月雅の姿を目にし、店の店主が大変感銘を受けたとの事。
そして、店主は感銘を与えてくれた月雅に連絡を取り感謝の気持ちを伝えると、月雅にとある新商品を紹介したのだという。
「そして、これがその新商品だよ!」
どうやら、月雅はその際に紹介された新商品を気に入ったようで、早速購入したようだ。
月雅は自身のバッグから新商品を取り出すと、凛空とミカにひけらかした。
「その名も、
頭部の二本のブレードアンテナ、胸部の排気ダクト、背部に備えたビームサーベルにトリコロールカラー等。
それらの特徴は、紛れもなくガンダムを象徴するものばかり。だが、頭部や腰部に備えられたパイプ、左肩のスパイクアーマー。そして、何よりも決定的に違うのが、モノアイ式のカメラセンサー。
その姿を目にした時、凛空の脳裏にとあるモビルスーツの名が浮かび上がった。
その名は、"にせガンダム"。その名の通り、ザクⅡにガンダムに似せた外装を取り付けた擬装モビルスーツである。
因みに、月雅曰く、NISEガンダムのNISEは、
また、店主曰く、このNISEガンダムはガンダムタンク同様に世界最高峰の職人が丹精込めて作り上げた逸品で、世界に二つとなく、一般的なLBXの実に30倍の性能を有しているとの事。
「どうだい、素晴らしいだろ? あぁ、こんな素晴らしいLBXと巡り合い、尚且つ手に入れられるなんて、やっぱり僕はラッキーボーイだよ」
「そ、そうですね……」
もしも、NISEガンダムがモデルとなったにせガンダムと同じならば、外装は似せても中身はザクⅡ、その性能が30倍にパワーアップしているとは考え辛い。つまり、性能の一件は店主の口から出まかせの可能性が高い。
最も、物珍しさで言えば世界に二つとないが、残念ながら希少価値は高くはないだろう。
それでも、月雅は店主が出まかせを言っている等、微塵も疑う素振りを見せず、店主の言葉を完全に信じ切っていた。
そんな月雅の様子を目にして、凛空は本人の幸せの為に、余計な事を言わないようにするのであった。
因みに、ミカもそんな凛空の考えを察したのか、同じく、特に突っ込む事はなかった。
「おっと、それじゃ僕はこの辺りで失礼するよ。早速家に帰って、このNISEガンダムをチューニングしなくちゃならないからね!」
「はい、それじゃ」
「また、ね」
「二人とも、それじゃ!」
爽やかな笑顔と共に、月雅は裏路地を後にする。
そんな月雅の後姿を見送りながら、凛空とミカの二人は、月雅の純粋さを心配するのであった。
月雅を見送り終えた凛空は、用件を終えたので、ミカと共にアキハバラタワーに戻るべく再び歩きだした。
だがその矢先、凛空の耳に聞いた事のある声が聞こえてくる。
その声の方に視線を向けると、そこには見た事のある少年が、年下の子供達に何やら熱く語りかけていた。
「いいですか、宇宙英雄センシマンは、平和を愛する心、救いの手を差し伸べる勇気。そして、正義の素晴らしさを僕達に教えてくれるんです!!」
「ふーん、そ。それじゃ、僕達もう行くね」
「またね、ヒーローオタクのお兄ちゃん!」
「あ、ちょっと! 話はまだ終わって……。行っちゃった」
だが、少年の熱意に対して特に興味がなさそうな子供達は、小走りにその場を後にする。
一方、その場に取り残された少年、大空 ヒロは、大好きな宇宙英雄センシマンの素晴らしさを伝えられなかった事に少々肩を落とすも、直ぐに気持ちを切り替えると、今回アキハバラにやって来た目的、平和を守るためのパトロールを再開する。
「久しぶり、ヒロ君」
「あぁ! 凛空さんじゃないですか!」
声をかけられ、凛空の存在に気がついたヒロは、凛空との再会に歓喜の表情を浮かべる。
「お久しぶりです! あ、もしかして隣にいるのって、アルテミスで一緒に出場していた!?」
「三影 ミカ、よろしく」
「はわぁ~、まさか本人に会えるなんて、僕、感激です!! あ、僕は大空 ヒロと言います!」
ミカから差し出された手を、ヒロは緊張からか少々ぎこちない動きで握り返すと、握手を交わす。
こうしてお互いに自己紹介を終えた所で、ヒロがアルテミスの感想を語り始める。
「凛空さん、優勝は出来ませんでしたけど、ファイナリスト、おめでとうございます!」
「ありがとう」
「凛空さんが使ってたLBX、あれって所謂ガンダムタイプ、ですよね!? 予選で見せたあの高機動性、やっぱり背部に装備したスラスターユニットが繰り出す大推力が──」
目を輝かせながら熱く語るヒロ。
そんなヒロに対して、凛空が笑みを浮かべていたが。
「凛空、少し困ってる?」
「あはは……。嬉しいのは嬉しいんだけどね、この熱量は、ちょっと慣れなくて」
内心では少々困っている事をミカはお見通しの様で、ヒロに聞こえないようにこっそりと話すのであった。
「それに、お二人の息の合った連携も凄くて……。あ、すいません! 僕ばっかり話しちゃって」
「気にしてないよ。所で、一つ聞きたいんだけど、ヒロ君はどうしてアキハバラに?」
「よくぞ聞いてくれました! 実は僕、宇宙英雄センシマンが大好きで、将来は宇宙英雄センシマンになる事が夢なんです! それで、夢をかなえる為に、修行の一環として怪しい場所をパトロールしていて、今日はこのアキハバラにやって来たんです!」
「宇宙英雄センシマン、何それ?」
「えぇ!! ミカさん、宇宙英雄センシマンを知らないんですかぁ!?」
「知らない」
「いいですか、宇宙英雄センシマンというのはですね──」
と、ヒロが宇宙英雄センシマンを知らないミカに対して熱く語り始めた、その時。
これは長くなると直感した凛空が、話を逸らすべく、パトロールについて尋ね始めた。
「そうだヒロ君! パトロールの途中じゃなかったの?」
「あ、そうでした、忘れてました!」
何とか話を逸らす事に成功し、内心安堵のため息をもらす凛空。
「そうだ! お二人とも、折角ですから、僕と一緒にアキハバラの平和を守るパトロールをしませんか!?」
「ん、面白そう」
「え?」
所が、何故か話はパトロールに参加する流れとなり、気がつけば、凛空とミカはヒロのパトロールに同行する事となった。
「ヒロ君、聞いてもいいかな?」
「何でしょう?」
「どうして裏路地なの? まぁ、裏路地は怪しげなお店も多いけどさ」
「実は最近、裏路地で怪しい人物が増えているとの情報をキャッチしまして、それで今回、パトロールを行う事にしたんです!」
ヒロと同行しパトロールを行っている最中、凛空は素朴な疑問をヒロにぶつける。
返ってきた答えを聞き、情報の出所など、ツッコミたい衝動に駆られるも、凛空はぐっとこらえると、当たり障りのない返事を返すのであった。
そんな一幕を挟みつつ、三人がパトロールを続けていると、三人の目の前から、何やら不穏な空気が流れてくる。
「あれって」
「うん、どう見てもただ事じゃないよね」
不穏な空気の発生源。それは、どう見てもガラの悪そうな金髪とモヒカンヘアーの男性二人が、一人の少女に絡んでいるというものであった。
「お二人とも、早速事件に遭遇です! さぁ、あの女の子を助けに行きましょう!」
「あ、ヒロ君! ……仕方ない、行こう、ミカ」
「ん」
そんな光景を目にするや否や、駆け出したヒロに僅かに遅れ、凛空とミカの二人も少女のもとへと向かう。
「あん? なーんだ、テメェら。見せもんじゃねぇんだぞ、怪我したくなきゃとっとと向こうに行きな!」
「シッシッ!」
「貴方達二人からビンビンにおいますよ! 悪のにおいが!」
「あぁ、何だ? 変なのは格好だけにしときな」
「おい小僧、もう一度言うぞ、怪我したくなきゃ、とっとと向こうに行っちまいな!」
ガラの悪そうな二人から、最後通告ともとれる言葉を受けるヒロ。
だが、ヒロは臆することなく、不敵な笑みを浮かべた。
「フッ、どうやら、話して通じる相手じゃなさそうですね」
「おいコラ! なに勝手に話進めてんだ!」
「小僧、それ以上言うなら冗談じゃ済まねぇぞ」
「大人しくしてくれないのなら、大人しくしてもらうまでです!」
「このガキ! そんなに怪我したいんなら、お望み通りテメェのその顔、ぶっ潰してやるよ!」
話が平行線を辿る中、遂に、堪忍袋の緒が切れたのか、金髪の男性がヒロの顔面目掛けてその握り拳を振るった。
金髪の男性の握り拳は、鈍い音と共に、ヒロの顔面に直撃する。
これにはヒロも耐えられない、と思われた、次の瞬間。
「……貴方のパンチはその程度ですか? そんなパンチでは、僕には傷一つつけられませんよ!」
顔面を殴られたにもかかわらず、ヒロは気を失うどころか、むしろ覚醒したかの如く、覇気を纏い始める。
「こ、このガキ!」
「まさか!?」
「地球を……、いや宇宙を汚す邪悪な悪め! この僕がいる限り、貴方達に明日はありません!!」
「まさか宇宙英雄とはな! くそ、こうなったら!」
「やっちまうぞ!」
刹那、ガラの悪そうな二人の姿が、まるで特撮ヒーローに登場する戦闘員のような姿に変化する。
「キーッ!!」
「キーッッ!!」
しかも、何処に隠れていたのか、同じ姿をした戦闘員が次々と現れる。
「アクギンガフィールド、展開ぃぃっ!!」
刹那、辺り一面が光に包まれる。
そして、光が収まると、そこに広がっていたのはアキハバラの裏路地ではなく、まるでDキューブの中のフィールドのような風景。
「これは、アクギンガフィールド! しまった、このフィールド内ではやつらは3倍の力を発揮できてしまう!」
「キーッ、その通り! 宇宙英雄、ここが貴様の墓場よ!」
「ですが、例えどんな状況でも、正義が悪に屈するなどあり得ません! いきますよ!」
次の瞬間、ヒロがポーズと共に「勇気転身!」と叫ぶと、ヒロの体が光に包まれる。
そして、光が収まると、ヒロの姿が一変、赤いマントに胸元のSのマーク、その姿はまさに、ヒロの大好きな宇宙英雄センシマンそのものであった。
「キーッ! 現れたな、宇宙英雄センシマン!」
「宇宙英雄センシマン、只今参上! この俺がいる限り、悪は栄えさせない!」
「キーッ、生意気な! だが、幾らセンシマンとはいえ、この数を相手にして何処まで戦えるかな?」
「む……、流石にあの数は一筋縄ではいかないか」
戦闘員の圧倒的な数を前に、少々弱気になるセンシマン。
だが、そんなセンシマンに、心強い味方が現れる。
「センシマン、僕も一緒に戦うよ!」
「私も」
「凛空さん、ミカさん!」
それは誰であろう、凛空とミカの二人であった。
「でも二人とも、生身で戦うのは危険ですよ」
「大丈夫、僕達も、センシマンと同じく心に勇気を宿しているから!」
「ん」
刹那、凛空は右手を高らかに掲げると、「出ろぉぉぉっ!!
直後、地響きと共に地面から鎧のようなものが出現すると、次々と凛空の体に装着されていく。
そして、最後に頭部の兜を彷彿とさせるパーツを装着し、その手にナイトソードとナイトシールドを持ったその姿は、まさに銀色の鎧を身にまとった騎士を彷彿とさせるガンダム。
その名を、
「コネクト、ジーライン・ライトアーマー」
〈システム起動、スキンフィールド展開、……コネクト・コンプリート〉
ミカも、自身のCCMを高らかに掲げると、何らかのシステムを起動させる。
刹那、彼女の体にジーライン・ライトアーマーを模したパーツが装着されていき、強固な装甲パーツと太ももなどの生身の部分が混在する、まるでジーライン・ライトアーマーのコスプレをしているかのような姿となる。
「さぁ、いこう、センシマン!」
「平和を、守る為」
「はい!」
こうして、変身を終えた三人は、戦闘員たちとの戦いを開始するのであった。
やぁ皆、店長だ!
今日は、作中に登場したにせガンダムについての豆知識だ。
四コマ漫画、元祖!SDガンダムにて登場したこの機体は、文字通りガンダムの偽者だ。
ザクⅡがガンダムに復讐を果たすために自らガンダムになった姿なのだが、あまりにもそっくりだったため、作中では味方からも追われる羽目になったぞ。
後年の作品では、本機のインスパイアを受けた機体が数多く登場しているぞ。
では! また。