うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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キングへの道

 アキハバラタワーの最上階、オタクロスの部屋へと戻ってきた凛空とミカは、少しばかり落胆した様子のバン達から、不在の間に一体何が起こったのか、その説明を受けた。

 

 曰く、オタクロスと共にインフィニティネットの障害を突破し、更にはゴットゲートを突破して、無事にメタナスGXの内部に潜入したバンとカズ。

 だが、メタナスGX内には、イノベーターが解読コード防衛のために用意したバーチャルLBX、ハーデスが待ち構えていた。

 ハーデスの高い性能の前に苦戦するバンとカズ、そして、絶体絶命のピンチに陥り、解読コードを目の前にして手が届かないかと思われた、その時。

 山野博士がハンターの後継機として設計した機体、北欧神話に登場する狼の姿をした巨大な怪物と同じ名を持つ、その名を"フェンリル"が姿を現した。

 同機の力を借りたことで形勢逆転となり、バンとカズは、見事ハーデスを撃破する。

 

 こうして最後の障害も排除し、後は解読コードを回収するだけと思われた、その時。

 突如としてメタナスGX内の空間が崩壊し、それに伴い、解読コードを含めたメタナスGX内の全てのデータが散り散りとなり、インフィニティネットという広大な電子の海に流出してしまったという。

 

「こうなっては、流石のワシでもお手上げデヨ。広大なインフィニティネット中に流出したデータを、一片も余すことなく回収するなんて無理ポ」

「そんな!」

「オタクロスさん、何か方法はないんですか?」

 

 何とか散らばったデータを回収する方法はないものかとアミがオタクロスに尋ねると、オタクロスは不敵な笑みを浮かべた。

 

「ウヒョ、それはアミたんの頑張り次第デヨ」

 

 オタクロスの言葉に、アミは嫌な予感がしたが、次の言葉を聞き、それが杞憂であると知る。

 

「丁度、一週間後にLBX大会"アキハバラキングダム"が開催されるんデヨ。……その大会に出場し、優勝してくるべし!!」

「データを回収するのと、その大会が何の関係があるの?」

 

 アミが口にした疑問は、凛空を除く面々も同様に抱いたものだった。

 すると、アミの疑問に答えるべく、オタクロスは手にしていた杖に備えられたボタンを押す。

 

「説明しよう!! インフィニティネット中に散らばったデータの回収には莫大な時間と人手がかかる。これは、流石に伝説の超ハッカーと呼ばれるオタクロスと言えど、容易にできる事ではない」

 

 刹那、まるで80年代の男性アイドルを彷彿とさせるかのような衣装を身に纏った壮年男性のホログラムが出現し、オタクロスの代わりに説明を始める。

 

「そこで、考えられる方法はただ一つ、アキハバラ中にいる腕利きのハッカー達を集め、特設チームを作る事だ!」

「と、言う訳デヨ。あー、面倒くさい説明はこいつに限るわい」

「あ、あの。これは?」

「ん、これか? こいつは"シブネキクゾウ"、ワシのオリジナル音声合成装置デヨ。四半世紀ほど前には、初音ミク、なんて呼ばれたやつもあったのぉ……」

 

 ホログラムの正体が判明した所で、不意にカズが疑問を投げかけた。

 

「あのさ、ハッカーって、アキハバラにいる奴じゃなきゃ駄目なのか?」

「ん? どういう事デヨ?」

「凛空の会社の人に手伝ってもらうんだよ、サイバーランスってIT企業だろ、なら、わざわざ大会に出なくてもハッカーを集められるんじゃないかって思ってさ」

「おぉ、確かにそりゃいい考えだな!」

 

 カズの提案にハンゾウが賛同するも、オタクロスはそれを一蹴した。

 

「凛空の親父さんの会社にも、確かにアキハバラの腕利きにも引けを取らん優秀なハッカーはいるじゃろう。しかし、今回データを回収するのに必要な数には足りないデヨ」

 

 オタクロスの説明を聞き、カズは発言を引っ込める。だが、直後に新たな疑問を提起した。

 

「だったらさ、オタクロスがハッカー達に『お前ら集まれー』って言えば済むんじゃないのか?」

「ハッカー達はアキハバラで真に力があると認められた者。即ち、"キング"の言う事しか聞かないのだ!」

「なんだそれ!?」

 

 すると、再びシブネキクゾウがオタクロスの代わりに説明を行う。

 

「え、オタクロスさんがそのキングじゃないの?」

「ショボーン……」

 

 アミのふとした疑問に、オタクロスは意気消沈した様子を見せる。

 

「因みに、現在のアキハバラのキングは、"マスターキング"と呼ばれる人物である!!」

「キングの名前がマスターキングだぁ!?」

「ややこしいバトルネームを付けたものね」

 

 現在のアキハバラの頂点に立つ者の名を聞き、ハンゾウやキヨラが呆れた表情を浮かべるのを他所に、バン達はマスターキングについてオタクロスに質問を投げかける。

 

「オタクロスより強いのか、そのマスターキングって?」

「いいや! 実力はワシの方が上デヨ!!」

「じゃあ、どうして?」

「ぐぬぅ……、ヤツの許しがたい振る舞いにワシはつい……。ムキーッ!! 思い出しただけで腹が立つデヨ!!」

「一体何があったんだよ?」

「兎に角じゃ!! アキハバラキングダムに出場・優勝し、アキハバラの頂点に立つキングにお前らがなれば、ハッカー達の力を借り、データを回収する事が出来るのじゃ!! という訳でお前たち、CCMを見るデヨ!」

 

 立腹気味のオタクロスの言う通り、バン達は各々のCCMを取り出すと、インストールされたアプリに目を通し始めた。

 

「裏LBXランキング、これは?」

「説明しよう! 裏LBXランキングとは、アキハバラキングダムに出場する為の番付システムである。アキハバラキングダムの出場には条件があり、この裏LBXランキングにおいて100位以内に入らなければ、大会への出場資格を得る事が出来ない。因みに、ランキングの80位以降は入れ替わりが激しく、出場の可能性は決して低くはない」

「成程……」

「因みに、この裏LBXランキングの製作に関してはオタクロスがせ──、せせ──、したもの、であり」

 

 シブネキクゾウが裏LBXランキングについて説明を行っていると、突如として音声が途切れ途切れとなり、またホログラムにもノイズが走り始めた。

 

「せせせ、製作。した──、したたた、で、あり」

「あぁぁぁっ! ワシのキクゾウたんがぁ!」

 

 刹那、装置から煙が噴き出すと、シブネキクゾウはその姿を消した。

 

「あぁ……、ショボーンデヨ」

「あの装置も古くなってたから、寿命だったのかもね。そうだ、この際だから、新しい音声合成装置を作るのはどうかな? 今度は、可愛い女の子をモデルにしたもの、とか」

 

 落ち込むオタクロスに、凛空が励ましの声をかける。

 すると、凛空の言葉を聞き、落ち込んでいたオタクロスがハッと顔を上げた。

 

「そうじゃ! アミたん、是非とも新しい音声合成装置のモデルに……」

「お・こ・と・わ・り、よ!」

「……ショボーン」

 

 しかし、アミに断られ、オタクロスは再び肩を落とすのであった。

 

「あぁ、そうじゃ、お前さん達の現在の順位はアプリ内で確認できるから、確認しとくデヨ」

 

 そんなオタクロスに促され、バン達は早速、自分達の現在の順位を確認し始める。

 

「俺は231位かよ!?」

「212位ねぇ……」

「143位、か」

 

 予想を下回る順位だったからか、驚きの表情を浮かべるハンゾウ・キヨラ・ジンの三人。

 

「俺、260位!?」

「私は、……243位!?」

「えぇ! アルテミスで優勝しているのに、俺、150位!?」

 

 カズとアミも同じく驚きの様子だったが、中でも一際驚いていたのがバンであった。

 

「裏LBXランキングは、独自の集計システムで、アルテミスなどの公式大会の成績は反映されていないからね。アルテミス優勝者だからって、ランキングの上位になれるって訳じゃないんだ」

「そう言えば、そう言う凛空は一体何位なの?」

「ミカの名前も載ってないぞ」

 

 そんなバンに声をかけた凛空。

 すると、ふと気になったのか、アミやカズが凛空とミカの二人の名前を探し始める。

 

「もしかして、二人ともランキング外?」

「……違う、もっと、上」

 

 悪気はなかったものの、何気なく呟いたバンの一言にミカは少々眉を顰めると、もっと上の順位を探すように言う。

 

「もっと上って……、50位以内って事か!?」

「あ、あぁ、あった! えぇ、ミカ、38位なの!?」

 

 漸くミカの名前を見つけ、その横に表示されていた順位を目にし、目を丸くするバン。

 すると、ミカは少々誇らしげな表情を浮かべた。

 

「でも、まだ凛空の名前はないわよ」

「おいおい、まさかもっと上だって言うのか……」

「あ、見つけた! ……っ! き、9位ぃ!?」

 

 そして、程なく凛空の名前をランキングのトップテンで見つけ、驚きの声をあげるバン達。

 因みに、更にその上の順位にオタクロスの名前も載っていたのだが、凛空の順位の衝撃で目に入らなかった様だ。

 

「って事は、もう凛空とミカの二人は、もう大会への出場資格があるって事か」

「こうしちゃいられない! カズ、アミ、俺達も100位以内を目指して頑張ろう!」

「ちょっとバン、頑張るって言っても、どうやって順位を上げるのか知ってるの?」

「あ、それは……」

「自分よりも順位の高いものにバトルをして勝てばランクアップ、負ければランクダウン。どうじゃ、簡単なシステムデヨ」

「よーし、そうと分れば、早速行こう!」

「あぁ、大会までに残された時間も多くはないしな!

 

 順位の変動原理を理解したバン達は、早速自らの順位を上げるべく、意気盛んにオタクロスの部屋を後にすると、アキハバラの町に繰り出していく。

 そんなバン達を見送り、部屋に残った凛空・ミカ・オタクロスの三人。

 

「さてさて、あの子達が一週間で何処まで順位を上げるか、楽しみデヨ」

「バン達なら、100位以内なんて、直ぐ」

「そうだね」

「それじゃ、ワシはコーヒーブレイクでもしてくるかのぉ。……凛空、ミカたん、二人とも、一緒に飲むデヨ?」

「じゃ、お言葉に甘えて」

「ん」

 

 三人はその後、オタクロスが用意したコーヒーやジュース、それにお菓子で一休みした後、オタクロスは作業を始め、凛空とミカの二人は、作業で手が離せないオタクロスの代わりにお使いに出かけるのであった。




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