うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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彼と彼女の事情

 アキハバラキングダムという次なる目標を定めた日から数日後。

 アキハバラキングダムへの出場資格である裏LBXランキング100以内浮上を目指し、この日もバンは、アキハバラの町に繰り出していた。

 

「よし、これでまたワンランクアップだ!」

 

 上位ランカーとのバトルに勝利し、無事に自身の順位が浮上した事を確認したバンは笑みをこぼす。

 

「この調子なら、何とかアキハバラキングダムまでに間に合いそうだな」

 

 そして、裏LBXランキング100位以内浮上という目標が達成できそうだと確信を得たバンは、少し休憩を取るべく、自販機を探し始めた。

 程なく、自販機を見つけジュースを購入すると、ジュースを片手に、バンは休憩を取り始める。

 

(さっきの感じなら、後三戦位はいけるな)

 

 ジュースを飲みながら、バンはこの後のバトルの予定を組み立てていく。

 そして、ジュースを飲み終わり、空き缶をゴミ箱に捨てて次なるバトルの相手を探しに向かおうとした、その時。

 

 ふと、バンの耳に聞き慣れた声が飛び込んできた。

 

「バーン!」

「あれ、アミ! それにカズも!」

 

 声のする方に振り返りバンが目にしたのは、アミとカズの二人の姿であった。

 

「もしかして、二人も順位上げに?」

「そうよ」

「まぁな。……あ、因みにアミとは、さっきそこで偶然会ったんだ」

 

 どうやら二人とも、アキハバラの町にやって来たのはバンと同じ目的の様だ。

 

「そうだバン、今どれくらいに順位になった?」

「今俺はねぇ……」

「うぉ、マジかよ! もうそんなに順位上げてきたのか」

「アミとカズは、今どれ位?」

「私はねぇ……」

「俺は、こんな感じだ」

 

 そして、お互いの現在の順位を報告し合う三人。

 やがて、お互いの現在の順位の報告を終えると、三人は、お互いの健闘を祈るのであった。

 その直後、バンは目の前を行き交う通行人の中に、見知った人物を発見し声をかけた。

 

「あ、ジンだ! おーい!」

 

 それは誰であろう、ジンであった。

 

「やぁ、バン君。それにアミさんにカズヤ君」

「珍しいわね、こんな所で会うなんて」

「ひょっとして、お目当てのメイド喫茶に足を運びに……」

「裏LBXランキングの順位を上げるために足を運んでいたんだ」

 

 カズの冗談口は、ジンの眼光により、文字通りに秒で噤む事となった。

 

「所で、バン君達もランキングを上げに?」

「うん、そうなんだ。あ、ジンは今どれ位なんだ?」

「どうせ俺達と一緒で、そんなに変わってないんじゃないか」

「僕の現在の順位はこれだよ」

「な、もう100位以内!」

 

 ジンが提示した現在の順位を目にし、カズは一際驚きの様子を見せる。

 そんなカズの様子を目にし、ジンはうっすらと、勝ち誇ったかのような笑みを浮かべるのであった。

 

 こうして、ジンの現在の順位も判明した所で、バンは嬉しそうにジンに声をかける。

 

「そうだジン、折角の機会だからさ、俺、もっとジンと話したい!」

「そう言えば、私達ってあんまりジンと話した事なかったわよね」

「転校してきた時も、殆ど無視されてたしな」

「あぁ、いいとも」

 

 親睦を深めるべく、会話を始める四人。

 好きな食べ物や暇な時間の過ごし方などなど、他愛もない話で盛り上がる四人。

 特に、LBXに関する話題は、必然的に大いに盛り上がった。

 

 こうして、お互いの口も大分軽くなってきた所で、ふと、ジンが質問を投げかけた。

 

「凛空君とミカさんに関する事なんだけど……」

「凛空とミカ?」

「あの二人は、お付き合いをしているのかい?」

 

 ジンが投げかけた質問、それは、凛空とミカの恋愛関係についてであった。

 

「ん~、多分、正式に付き合ってるって訳じゃない、かな」

「……なっ!!」

 

 刹那、バンの返答を聞き、ジンは目を見開いた。

 二人で行動している事も多く、手をつないだり、二人だけの世界を作る事もある。その雰囲気たるや、どう見ても恋人同士のそれ。にも関わらず、付き合っていない。

 驚かない訳がなかった。

 

「ま、そういう反応になるよな」

「ねー」

 

 そんなジンの反応を目にし、カズとアミはさもありなんといった表情を浮かべた。

 

「ほ、本当に二人はお付き合いをされていないのかい……」

「多分。だって、凛空からミカに告白した、なんて話、聞いた事ないし」

「付き合う事になったって報告もないしな」

「所謂、友達以上恋人未満ってやつよね」

「そ、そうなのか……」

 

 衝撃的な事実を知り、愕然とするジンであった。

 

 

 

 

 一方その頃、バン達が、自身とミカの恋愛関係の話題で盛り上がっているとは露程も思っていない凛空は。

 

「っ、くしゅん!」

 

 アキハバラの町のとある裏路地で、くしゃみを出していた。

 

「凛空、大丈夫?」

「う、うん、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう、ミカ」

「ん、ならよかった」

 

 そんな凛空を心配するミカ。

 

「チッ、バトルの最中に他人の心配なんて、随分と余裕かましてくれるじゃない!」

 

 だが、そんな二人の様子を目にし、苛立ちを露わにする者がいた。

 誰であろう、仙道 キヨラその人であった。

 

 そして、キヨラが口にした通り、現在彼女は、ミカと一対一のLBXバトルを行っている最中であった。

 

 

 何故、キヨラはミカとバトルをする運びとなったのか。

 それは、数十分前に時を遡る。

 

 既にアキハバラキングダムへの出場資格を得ていた凛空とミカの二人は、陰ながらバン達を応援するべく、アキハバラの町にやって来ていた。

 そして、バン達を探して町の中を歩いていた、その時であった。偶然、キヨラと出会ったのだ。

 

「丁度いい。……西原 凛空、私とバトルよ!」

 

 開口一番、キヨラは凛空にLBXバトルを申し込むと、Dキューブを展開させる。

 この一方的な展開に困惑する凛空。すると、キヨラは更に言葉を続けた。

 

「お前を倒せば、ちまちまとバトルしなくても、確実に100以内は達成できる。友達思いの郷田やバンはお前に遠慮してるみたいだが、私は遠慮なんてしない! さぁ、勝負よ!」

「そ、そんな、急に言われても……」

「男なら覚悟を決めて、さっさと勝負を受けなさい!」

 

 強い口調で勝負を迫るキヨラ、困惑する凛空。

 刹那、キヨラと凛空の間に、ミカが割って入った。

 

「凛空が、困ってる」

「だから何よ?」

「凛空を、困らせないで」

「困らせようなんて思ってないわ。彼が、男のくせにうじうじとして勝負を受けないのが悪いのよ」

 

 刹那、ミカの眉がピクリと動き、同時に眼光が鋭くなる。

 

「なら、その勝負、私が受ける」

「み、ミカ!?」

「いいでしょ」

「……、いいわ」

 

 まさかの展開に、凛空は目を見開き、ミカに考え直すように言おうとするも、ミカは「大丈夫」の一点張りであった。

 そして、心配する凛空を他所に、ミカとキヨラは、互いにDキューブの前に立つ。

 

 刹那、キヨラはお得意のタロットカードを一枚取り出した。

 

(ストレングス)の正位置。見せてあげるわ、力量の差というものをね!」

「……」

 

 こうして、キヨラとミカの戦いの火蓋が切って落とされたのだ。

 

 

 凍えるような一面氷の世界。

 南極と呼ばれるフィールドで、ジーライン・ライトアーマーとジョーカーMk-2は激しい攻防を演じていた。

 

 足元が氷という不安定な足場ながら、両機は自慢の機動性を生かして立ち回る。

 一進一退の戦いを繰り広げる両機だが、お互いに決定打に欠け、バトルは長期戦の様相を呈していた。

 

「(チッ、案外やるじゃない、あの女。……これ以上の持久戦はこちらが不利、なら)これで決める!」

 

 刹那、ジョーカーMk-2お得意の残像が出現し、ジーライン・ライトアーマーを三方から包囲する。

 そして、三方からの同時攻撃を仕掛けた。

 

 これに対して、ジーライン・ライトアーマーは、装備したヒート・ランスを足元の氷に突き刺した。

 次の瞬間、ヒート・ランスの熱で氷が溶け、更には水が蒸発し水蒸気が発生、その勢い凄まじく、まるで水蒸気爆発の如く周囲を覆い尽くした。

 

「それで煙幕のつもり!」

 

 しかし、ジョーカーMk-2はそんな水蒸気に臆することなく突撃し、ジーライン・ライトアーマー目掛けてジョーカーズソウルを振るう。

 刹那、甲高い金属音が水蒸気の中から発せられた。

 

 勝った。確かな手応えを感じ、キヨラは勝利を確信する。

 だが、水蒸気が晴れるや否や、キヨラは目を見開いた。何故なら、そこで目にしたのは、ジョーカーズソウルの一撃を受けて傷ついたジーライン・ライトアーマーの"シールド"だったから。

 

「馬鹿な! 本体は何処!?」

 

 忽然と姿を消したジーライン・ライトアーマーを探すべく、周囲を見回すジョーカーMk-2。

 そんなジョーカーMk-2の背後の氷に、突如としてヒビが入り始める。

 

 そして次の瞬間、氷を突き破り、ジーライン・ライトアーマーがその姿を現した。

 

「っ! 後ろだと!?」

「これで、終わり」

〈アタックファンクション、ファランクス〉

 

 咄嗟に回避しようとするも間に合わず、ジョーカーMk-2は無防備な背後に必殺ファンクションのファランクスを受け、その機能を停止させるのであった。

 

 

 

 

 バトルを終えて、勝利の喜びを凛空と分かち合うミカ。

 一方キヨラは、Dキューブ等を回収すると、小さく舌打ちし、足早にその場から立ち去るのであった。

 

(くそ! まさか、あの女があんなに強かったなんて、誤算だったわ……)

 

 歩を進めながら、キヨラは先ほどのバトルの反省会を行っていた。

 

(やっぱり、懐に飛び込まれてからでも対処できるように、もっと機動性を強化すべき? いや、これ以上機動性を強化しようとすれば、ただでさえギリギリな装甲を削る事になる。そうなれば、分身時の負荷に耐えられない……)

 

 ジョーカーMk-2の更なる強化を模索するキヨラだが、これ以上の強化は難しく、手詰まり感を感じていた。

 

(やっぱり、根本から見直すほかないわね。けど、今更ジョーカー以外の機体なんて……)

 

 頭を悩ませるキヨラ。そんな彼女の背後に、ふと、人影が現れる。

 

「よぉ、そこの嬢さん」

「あ?」

 

 不意に声をかけられ、足を止めて振り返るキヨラ。

 そこで彼女が目にしたのは、オールバックにサングラス、青いジャケットに赤いネクタイという、少々怪しい出で立ちの男性であった。

 

「何?」

「もしよかったら、少し俺と付き合ってくれないか?」

「あ、おっさん、ナンパ? もしそうなら、さっさと失せな。今私は、虫の居所が悪いんだ」

 

 そんな見た目の男性に対して、キヨラは臆するどころか睨みつける。

 すると、キヨラの気迫に押されたのか、半歩下がる男性。だが、男性は逃げ出すことなく話を続けた。

 

「ま、まてまて! 俺は君にとっていい話を持ってきたんだ!」

「いい話?」

「こ、ここじゃ何だ。向こうで話さないか」

 

 半信半疑ではあったが、少し興味をひかれたキヨラは、男性と共に人気の少ない場所へと移動する事に。

 

「で、私にとっていい話って言うのは?」

「その前に、先ずは自己紹介をさせてくれ。俺の名は、"コブラ"。とある人物のエージェントをしている」

 

 白く輝く歯を見せながら、自らをコブラと名乗った男性。

 そんなコブラ本人の事などあまり興味がないのか、キヨラはさっさと本題に入れとせっつく。

 

「まぁそう慌てなさんな。お嬢さん、今年のアルテミスに出場してただろ、見てたぜ。予選敗退とはいえ、お嬢さんのバトルは──」

「おい、いいからさっさと本題に入れ!」

「っ! わ、分かった分かった! 実はな、俺の雇い主がアルテミスでのお嬢さんのバトルに感銘を受けてな。是非とも、これを使って欲しいとの事で、俺がこうして足を運んだ訳だ」

 

 刹那、コブラは手にしていた銀色のアタッシュケースをキヨラに差し出す。

 受け取ったキヨラは、早速中身を確認するべく、銀色のアタッシュケースを開いた。

 

「っ! これは……」

 

 中身を確認したキヨラは息を呑んだ。

 銀色のアタッシュケースの中に入っていたのは、頭部のセンサーや背中のマント等、何処かジョーカーを彷彿とさせる黒を基調としたLBX。

 

「コードネーム、"ナイトメア"。ジョーカーの後継機として開発された機体だ」

「ジョーカーの後継機!」

「ジョーカーの後継機というだけあって、その機動力は折り紙付きだ。最も、その分操作のクセはジョーカー以上だが……。ジョーカー使いのお嬢さんなら、そいつもうまく使いこなせるだろ」

 

 ナイトメアと呼ばれた機体を一通り観察し終えたキヨラは、この機体を自身に渡した理由をコブラに尋ねる。

 

「使ってくれというなら、有難く使わせてもらう。けど、タダじゃないんでしょ?」

「ふ、流石は箱の中の魔術師と呼ばれているだけの事はある。鋭いな」

 

 刹那、コブラは一拍置くと、話を続けた。

 

「クレジットを寄こせなんて無粋な事じゃない。今後とも、山野 バンに協力してやってほしい。それが、ナイトメアを引き渡す交換条件だ」

「協力?」

「あぁ、簡単だろ」

 

 バンの名前がコブラの口から飛び出し、キヨラは一瞬怪訝な表情を浮かべる。

 しかし、今の自分自身が求めていた理想の機体が手に入る。そんな誘惑を前に、キヨラの心は揺れ、そして……。

 

「いいわ、その条件、吞もうじゃない」

「なら、取引成立だな。それじゃ、俺はこれで失礼する」

 

 自身の役目を終え、その場を後にするコブラ。

 一方、条件を受け入れナイトメアを手に入れたキヨラは、早速ナイトメアのチューニングについて考えを巡らせるのであった。




ご愛読いただき、そしてご意見・ご感想、評価やお気に入り登録等、本当にありがとうございます。大変励みになります。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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