うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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ダンボールの中の戦争

 バトルの最中、突如として現れたロンド・ベルの機体群。

 その大部分を占めているのが、ブルーグレーに塗装された、ジムタイプのゴーグル式頭部を有する機体。

 ジムの持つ汎用性はそのままに、ジムの倍近い推力、良好な運動性能、装甲強度向上などなど、全体的な性能向上が図られている。

 だがその反面、機体特性に突出した面がなく、本機の開発に携わったアストナージ曰く「特長がないのが特徴」との事。

 

 そんな機体の名は"ジム・カスタム"。

 

 そして、そんなジム・カスタムを率いるのが、V字型ブレードアンテナにツインアイを有する、所謂ガンダムタイプの機体。

 ガンダムタイプらしく、トリコロールカラーを取り入れているが、赤・黄色成分は限定的で、青と白を基調にした塗装となっている。

 両前腕部に備えられた装甲カバー、脚部に備えられたスラスターユニットを有しながらも、全体的としてはシンプルな外観。

 

 ガンダムタイプの元祖たるガンダム、同機の発展機の一つとして、そして、新たな技術のテストヘッドとして開発された試作機。

 "アレックス"のコードネームを有するその名を、ガンダムN(New)T(Technology)-1。

 

 本来なら、アレックスはテストヘッドとして、開発ルームの外に出る事はなかった。

 だが、ロンド・ベルへの機体提供に際して、同隊の基幹である中隊の中隊長が提供された機体の性能に不満を示した事から、急遽、中隊長向けの機体を用意する必要に迫られた。

 要求を満たす機体の新造していては納期に間に合わない。そこで、アレックスに白羽の矢が立ち、同機を中隊長用に再調整される事に。

 そしてこの日、アレックスは遂に、ダンボールの中の戦場に降り立ったのである。

 

「チッ、バラすなって言ったのに……。まぁいい。どこの誰だかは知らないが、ド派手な登場を決めた所恐縮だが、所詮そこ(Dキューブ内)は蜂の巣の中。つまり、飛んで火に入る夏の虫だ」

 

 そんなロンド・ベルの機体群を前に、キラーは臆することなく言葉を語る。

 だがこの直後、キラーは知る事となる、Dキューブ内に降り立った機体群が、ロンド・ベルの全てではない事を。

 

(安全な場所に避難しろ。……何だ?)

 

 突如、CCMに送られてきた謎のメッセージ。

 凛空はその内容に疑問符を浮かべたが、メッセージに従い、ビーハイヴファミリーの面々の注意が逸れている隙に包囲を脱出すると、コンテナの影に身を潜めた。

 

「お前ら、新しいお客様のおもてなしの──」

 

 そんな凛空の様子に気付くことなく、キラーが新たなゲム・カモフ投入の合図を出そうとした、刹那。

 突如、海面を突き破り、白煙を吐き出しながら、小さな飛翔物体が凛空やキラー、ビーハイヴファミリーの面々の周囲に降り注ぐ。

 

「な、何だぁ!?」

「う、海からの攻撃です!」

「そんなの見れば分る! 俺は、何処のどいつが仕掛けてきたのかって聞いてるんだ!」

 

 流石にこれにはキラーも動揺を隠せない様で、怒号混じりに、急いで部下に見てくるように命令を下す。

 数人がゲム・カモフを操作し、岸壁から、攻撃地点と思しき水域を見つめる。

 だが、やはり岸壁からでは海中の様子を捉える事が出来ず、困り果てた、次の瞬間。

 

 突如、海中からビームが放たれ、一機のゲム・カモフの頭部を貫いた。

 

「な、何だぁ!?」

「う、海坊主か!?」

 

 そして、それは水飛沫をあげながら、岸壁に姿を現した。

 ゲム・カモフを一回り以上上回る巨体、黄色く光るモノアイ、機体前後両肩に装備された砲、両腕のアイアン・ネイル、大型のフェアリングシェルに四本脚。

 

 まさに海坊主の如く外観をしたその機体の名は、"ゾック"。

 

「撃て撃て!!」

 

 岸壁に上陸したゾックに対して、生き残りのゲム・カモフが各々の得物の引き金を引く。

 刹那、弾丸や弾頭の雨がゾックに降り注ぐ。

 

「やった──、何!?」

 

 如何な巨体も、あれだけの集中砲火を浴びればただでは済まない。ファミリーの誰もが、そう思っていた。

 だが、彼らが目にしたのは、大した傷もなく悠然と佇むゾックの姿であった。

 

(さすがゾックだ、なんともない!)

 

 目を見開くファミリーの面々を他所に、凛空は、心の中でゾックの頑丈さを賛称する。

 それに応えるかのように、ゾックは両肩に装備した砲から高出力のビームを放つと、生き残りのゲム・カモフを爆散させていく。

 

 そんなゾックを撃破せんと、増援と共に生き残りのゲム・カモフが攻撃を仕掛けるも、まるで移動トーチカの如くゾックの堅牢さを前に、苦戦を強いられる。

 

「クソ、たかが一機相手に、何手こずってやがる」

 

 部下の不甲斐なさに舌打ちを漏らすキラー。

 だが、それはDキューブの外で戦う者達だけに向けられたものではなかった。

 

 Dキューブ内で戦端を開いた部下達に対しても、それは向けられていた。

 

「クソ、何だこの統率の取れた動きは……、こいつら、素人じゃねぇのか!?」

「撃て撃て! 撃ち続け──、あぁ、くそ! ソルジャー021がまたやられた!」

「落ち着け! まだ予備の機体はたんまりある!」

 

 とはいえ、部下の不甲斐なさを嘆くのは、少々酷と言うもの。

 

 何故なら、相手となるジム・カスタムは、常にツーマンセル(二人一組)を意識し、互いの死角をカバーし、更には攻撃の隙を隙を与えない等。付け入る隙がなく。

 一方のゲム・カモフ側は、ある程度の連携はとれているものの、ジム・カスタム側と比較するとカバーのタイミングにズレが生じる等、付け入る隙も多く。

 また、機体の性能やプレイヤーの操作技術についても、戦況の推移に如実に表れていた。

 

「は、早い! 何だこいつの動きは!」

「駄目だ、捉えられない!」

 

 更に、ゲム・カモフ側にとって不運だったのが、別格の動きを見せる青と白の機体。そう、アレックスの存在であった。

 アレックスを狙った攻撃はことごとく、死角からの攻撃も、まるで背後に目でもついているかの如く躱される。

 

「な、何だこの連射は、動きが……、うわぁぁぁ!」

 

 出力を抑えたビームライフルの連射で動きをけん制し、動きを止めた所で、高出力の一撃をお見舞いし撃破する。

 

「は、幾ら撃たれたって、シールドで防いでいれば……。ん、何処を狙って? な、なにぃぃ!」

 

 シールドを構え防御を固めた相手には、足元に落ちていたバズーカを撃ち抜き爆発を起こさせ、それにより防御が崩れた所でビームライフルの一撃をお見舞いする等。

 プレイヤーの操作技術の高さも相まって、まさに一騎当千の活躍により、ゲム・カモフの残骸がフィールド内に積み上がっていた。

 

「調子に乗るなよ、ガンダム!」

 

 その様な状況を見るに堪えなくなったのか、後方に下がっていたキラーの操作するジーライン・ライトアーマーが、アレックスの前に現れる。

 

「どうした、どうした! 射撃は得意でも、接近戦は苦手か?」

 

 ジーライン・ライトアーマーのヒート・ランスから次々と繰り出される突き。

 アレックスは、その連続攻撃を躱す事に専念する。

 

 しかし、相手はゲム・カモフではなく、ガンダムと同等の性能を有した量産型をコンセプトに開発され、尚且つ高機動に重きを置いたジーライン・ライトアーマー。

 プレイヤーの腕前も多少は影響しているが、やはりジーライン・ライトアーマーを相手には、そう簡単に戦いの主導権を握らせてはくれない。

 

 それでも、攻撃を躱しつつ、反撃の隙を伺うアレックス。

 だが、次の瞬間、アレックスは不意にバランスを崩した。それは、フィールド内に転がっていたゲム・カモフの残骸につまずいたからであった。

 

 刹那、その隙を見逃さないかの如く、ヒート・ランスの一撃がアレックスに繰り出される。

 間一髪、その圧倒的な反応速度で何とか直撃は免れたものの、ビームライフルは中央部から貫かれ、使い物にならなくなる。

 

「ちっ! だが今度は、その青いボディに大穴を開けてやるよ!」

 

 厄介なビームライフルを破壊し、勢いに乗るジーライン・ライトアーマー。

 だが、次の瞬間、アレックスはスラスターを噴かせると、後方に跳躍した。その両手に、いつの間にか拾った、ゲム・カモフのバズーカを装備して。

 

「な!?」

 

 次の瞬間、安定性のない空中にも関わらず、アレックスは両手のバズーカを構えると、次々と弾頭を撃ち出した。

 どうやら、機体各所のスラスターを使用し姿勢制御を行っているのか、撃ち出された弾頭は大きくばらける事なく、次々とジーライン・ライトアーマー周辺に降り注ぐ。

 

 爆発、そして巻き上げられる土煙。

 ジーライン・ライトアーマーはこの爆撃から逃れようとするも、前後左右、四方に降り注いだために逃げるに逃げられない。

 刹那、退路を断たれたジーライン・ライトアーマー目掛け、土埃を突き破り、アレックスが姿を現した。

 

「にぃぃぃ!」

 

 次の瞬間、アレックスはバズーカを手放し自由になった両手を拳にすると、その拳をジーライン・ライトアーマー目掛けて振りかざした。

 刹那、火花が散ると共に、スカーの持つCCMに表示された映像にノイズが入り始めた。

 

 やがて、カメラセンサーが破損するジーライン・ライトアーマー。だが、アレックスは殴るのを止めようとはしない。

 それどころか、今度はビームサーベルを抜くと、間髪入れずにジーライン・ライトアーマーの両腕を切り落とした。

 更に畳み掛けるかのように、今度は強力な蹴りをお見舞いし、ジーライン・ライトアーマーを弾き飛ばした。

 

〈アタックファンクション、ミートチョッパー〉

 

 刹那、アレックス両前腕部に備えられた装甲カバーが開き、収納されていたガトリング砲の砲身が姿を現す。

 そして、砲身の回転と同時に唸りを上げ、弾丸が次々と放たれた。

 

 まるで嵐の如く飛来する弾丸、両腕を切り落とされたジーライン・ライトアーマーにそれを防ぐ術はなく、瞬く間に、蜂の巣と化すのであった。

 

 

 

 

 アレックスとジーライン・ライトアーマーとの戦闘に決着がついた頃、他の戦いでも、決着がついていた。

 予備の機体を使い果たしたのか、Dキューブの内外に転がるゲム・カモフの残骸の数々。そして、勝者として悠然と佇むロンド・ベルの機体群。

 

「く、くそ!」

 

 あと一歩の所で目的を達せられる筈が、ロンド・ベルの介入でご破算となり、キラーは顔を歪める。

 そんなキラーの耳に、血の気を引かせる音が、風に乗って聞こえてくる。

 

「な!」

 

 それは紛れもなく、パトカーのサイレンの音。

 キラーは、Dキューブや残骸の回収など見向きもせず、急いで埠頭から逃げ出そうとする。

 しかし、そんなキラーが目にしたのは、絶望的な光景であった。

 

 それは、埠頭を封鎖する様に列をなすパトカーの数々。更に、その間を埋めるように、大勢の警察官の他、濃紺色の出動服に投石などから身を守る防護装備、ヘルメットや盾等でその身を固めた機動隊の隊員達の姿も確認できた。

 

「君達は完全に包囲されている。無駄な抵抗はやめなさい」

 

 警察からの呼びかけに、キラーは咄嗟に思考を巡らせる。

 

(陸が駄目なら海から……。いや、泳いで逃げたって、警察に回り込まれるのがオチだ。なら、いっそそこらの鉄パイプを拾って強行突破……。いや駄目だ、できる訳がねぇ)

 

 しかし、いくら考えた所でこの難局を乗り切る手立ては思いつかず。結果、キラーが下したのは。

 

「確保! 確保!!」

 

 抗う事無く、結果を受け入れると言うものであった。

 

 

 押し寄せた警察官達により、次々と身柄を確保されるビーハイヴファミリーの面々。

 その光景を目にし、凛空の口から安どのため息が零れた。

 

「ご無事でしたか、凛空君」

「田中さん!?」

 

 そんな凛空に近づき声をかけたのは、誰であろう田中であった。

 意外な人物の登場に驚く凛空を他所に、田中は自身がここにいる事情を話し始める。

 

「実は数日前、我々は、LBXマフィアである彼ら、ビーハイヴファミリーがイノベーターと接触したとの情報を掴んだんです」

 

 曰く、その際、イノベーターからビーハイヴファミリー側にとある提案がなされたという。

 それが、イノベーターにとって邪魔者となる者の排除。

 イノベーターにとっては邪魔者が一人消え、ビーハイヴファミリーにとっては復讐を果たせるという、両者の利害が一致し、両者は手を組む事となった。

 

 そして、イノベーターからビーハイヴファミリーへ、支援物資として大量のゲム・カモフが提供されたのだとか。

 

(成程、それであれだけの数を揃えられたのか)

 

 一介のグループにしては不自然なほどに用意されていたゲム・カモフ、その仕掛けが判明し、凛空は納得した様子を見せる。

 

「ビーハイヴファミリーが凛空君を標的にして動いている所までは突き止めたのですが、具体的な計画内容については特定出来るに至らず、そこで、君の安全を確保すべく、秘密裏に身辺を警護していたんだけど。……まかさ、君をおびき寄せる為に君の大事なお友達が狙われるとは思わず、対応が後手に回ってしまい、本当に申し訳ありませんでした」

 

 凛空が相談していないにも関わらず、ロンド・ベル並びに警官隊が駆け付けられたのは、どうやら田中の属する組織のお陰だったようだ。

 

「そうだったんですか。……っ! そうだ、ミカは!?」

「ご安心を、はしご車を手配しましたから、あと数分もすれば到着し救助が開始されます」

「よかった……」

 

 田中の言葉を聞き、漸く肩の荷が下りたのか、凛空は胸を撫で下ろした。

 

「そうだ凛空君。折角の機会ですから、ロンド・ベルの隊員の方を紹介しておきましょう」

 

 田中の口から出た言葉に、凛空は一瞬驚くも、直ぐに「お願いします」と返事を返す。

 それは、アレックスのプレイヤーに興味を持ったからに他ならなかった。

 

「あぁ、こちらですよ」

 

 田中に案内され足を運んだ先、パトカー等の車輛が並ぶ中、一際目につく大型トレーラーが一台。

 田中曰く、この大型トレーラーはロンド・ベルの所有する車輛で、現場での指揮本部として使用される他、コントロールポッドを搭載し移動管制所としての機能も備えているとの事。

 因みにこの大型トレーラー、ロンド・ベルの隊員達からは"ネェル・アーガマ号"の愛称で呼ばれているという。

 

 そんな大型トレーラーの前に佇む、ジャケットを羽織った一人の男性。田中は、凛空を彼の前に案内した。

 

「ご紹介します。こちらが、ロンド・ベルの中隊長を務めている(れい)警部です」

「はじめまして、西原 凛空です」

「そうか、君が凛空君か。嶺だ、よろしく」

 

 三十歳前後と思しき、赤毛の縮れ毛が特徴的な嶺警部。

 彼と握手を交わした凛空は、嶺警部が自身の事を既に知ってるような口ぶりに対して質問を投げかける。

 

「あぁ、凛空君の事は、親父からよく聞かされていたからね」

「もしかして、嶺警部のお父さんって……、嶺部長ですか!?」

 

 嶺警部の言葉を聞き、どことなく嶺部長と似ていると思い始める凛空であった。

 

「あの、所で嶺警部」

「ん、何だい?」

「アレックスを操作していたのは、嶺警部だったんですか?」

「あぁ、そうだ。本当に、あれはいい機体だよ。俺の思った通りのタイミングで思った通りの動きをしてくれる。流石はサイバーランスだ」

 

 嶺警部からの称賛の声に、凛空は頬がゆるむ。

 

「……だけど、少し申し訳ないと思う気持ちもあるんだ。俺の我儘のせいで、大変だったんじゃないかって」

「そ、そんな事はないと思います! 開発チームの皆さんも、世界初のLBX犯罪対策部隊であるロンド・ベルに機体を提供できる事を誇りに思ってましたから、多少の我儘位、気にしてないと思います」

「そうか、ならよかった」

 

 凛空は口ではそう言っていたものの。

 実は、アレックスの納入に関しては、開発指揮を任されたアストナージが煽りを受けて休日返上となった為、恋人とのサラダ専門店デートがご破算となり、かなりの愚痴を零していた。

 との噂を、人づてに耳にしていた凛空。流石に真実を伝えるのは不味いと、嶺警部には、その真実を口外する事はなかった。

 

 

 

 

 その後、嶺警部と暫し会話を楽しんだ後、凛空は田中と共に再び埠頭の方へと足を運ぶ。

 丁度はしご車も到着し、ガントリークレーンの先端に吊るされたミカの救助が始まろうとしていた。

 

「あの、田中さん」

「はい、何でしょう?」

「彼らは、どんな罪に問われる事になりますか?」

 

 その様子を見守りながら、凛空は、両手に手錠をはめられ、腰に縄を巻かれ護送車へと連行されるビーハイヴファミリーの面々の処遇について尋ねる。

 

「そうですね、今回の彼らの行動は営利目的誘拐罪に当たりますから、一年以上十年以下の懲役。それに凛空君への脅迫罪も成立するのなら、二年以下の懲役または三十万以下の罰金、ですね」

「……そんなもの、ですか」

「え?」

「ミカをあんな目に遭わせておいて、たったそれだけの刑ですか」

「ま、まぁ、他にも余罪はありそうですし、取り調べなどでそれらが明らかになれば刑が重くなる可能性はありますよ!」

 

 凛空の放つ黒いオーラを察した田中は、慌てて補足を行う。

 すると、それを聞き、凛空の放つ黒いオーラも徐々に消えていくのであった。

 

「西原 凛空!」

 

 刹那、連行中のキラーが凛空に気がつき、声をあげた。

 

「お前に払ってもらう事は叶わなかったが、その代わり、お前の大事なお友達に代償は支払ってもらうぞ! 後悔し、苦しむがいい!」

 

 負け惜しみによる口から出まかせ、周囲の警察官達は、誰もがそう思っていた。

 だが、凛空は何故かその発言を聞くや、ミカの方へと駆けだしていく。

 

 刹那、キラーは徐に奥歯を噛みしめる。

 すると次の瞬間、ミカを吊るしていた縄が突如として切れ、ミカの体が重力に従い、固いコンクリートの地面目掛けて落下を始めた。

 

 これには救助班の隊員達や警察官達も目を見開き、慌ててミカを助けるべく動き出すも、一足遅れなのは明白であった。

 そんな中、一足早く動き出していた凛空は、地面に打ち付けられる寸での所でミカの体を受け止めると、庇うかのように抱きしめた。

 

「ん……」

 

 刹那、ミカが衝撃で目を覚ます。

 そこで彼女が目にしたのは、視界一面に広がる凛空の顔であった。

 

「りん、く?」

「……み、ミカ。だいじょう、ぶ? 怪我、してない?」

「ん……」

 

 今にも頭から湯気が出そうな程真っ赤なミカ。

 一方、凛空はミカが無事だと分り、安堵のため息を漏らした。

 

「ミカ、ごめんね。僕のせいで、ミカを危険な目に遭わせちゃって、怖かった、よね」

「ん、大丈夫。だって、凛空が助けに来てくれるって、信じてたから」

 

 刹那、ミカは自身を抱きしめる凛空の手が震えている事に気がつき、それを止めるべく、凛空の背中をポンポンと叩き始めた。

 

「ありがとう。私、もう大丈夫、だよ」

「……ミカ」

「何?」

「もう絶対に、ミカを危険な目になんて遭わせないから! ミカの事、絶対に守るから! だから──」

 

 刹那、続きを言おうとした凛空の口を、ミカの柔らかな唇が塞いだ。

 

「っ!!!?」

 

 突然の出来事に、凛空は半ばパニックに陥る。

 

「これからも、私の隣で、私の事、守ってね」

「う、うん。絶対に守るよ!」

「凛空、大好き」

「僕も、大好きだよ、ミカ!」

 

 互いに見つめ合い、そして、再び口づけを交わす二人。

 そんな二人の門出を祝うかのように、警察官達の拍手が沸き起こり、そこで凛空とミカの二人は、大勢の人々の前で告白していたという事実に気がつき、赤面するのであった。

 

 因みに、二人の告白を見ていたロンド・ベルの隊員の一人が、「これが、若さか」と呟きながら涙を流していたのは、ここだけのお話。

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