うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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忍者と侍と、時々ジュース

 一方その頃、アキハバラキングダムへの出場を断念した凛空と、その看病をしているミカの二人はと言えば。

 主催のタイニーオービット社がネット上の特設サイトで行っているアキハバラキングダムの中継を利用して、凛空の自宅からリモート観戦を行うべく、その為の準備を行っていた。

 

「お菓子は今用意するから、ちょっと待っててね」

「ありがとうございます、凛空のお母さん」

 

 依然として自室のベッドで安静にしている凛空に代わり、ミカが観戦のお供のお菓子やジュースを用意する事となった。

 その為に足を運んだキッチンで、凛空の母親である衣咲と共に盛り付け等を進めるミカ。

 

「あらあら、そんなに畏まらないで。私の事は、お義母さんって呼んでくれていいから」

「え?」

「うふふ、やっぱり女の子はいいわね。一緒に料理したり、おそろいの格好をしてショッピングしたり……。ミカちゃんがうちの子だったらよかったのに。あ、でもそれじゃ、凛空と結婚できないわよね」

「っ!」

 

 お菓子の用意を行う衣咲は、用意したグラスにジュースを注ぐミカとの会話を楽しむ。

 この数日、凛空の看病の為に足繁く通うミカの様子から、既に二人の関係について察している様子の衣咲。

 すると、衣咲の口から零れた結婚の二文字に反応したのか、ミカの手元が狂い、注いでいたジュースをこぼしてしまう。

 

「あらあら、大変!」

 

 刹那、それを目にした衣咲は近くに置いていたタオルを手に取ると、慌ててミカのもとに駆け寄る。

 

「お洋服にかからなかった?」

「はい、大丈夫です」

「そう、よかった」

 

 衣咲は気遣いながら、手に取ったタオルでミカの手にかかったジュースを優しく拭いていく。

 

「うふふ、やっぱり女の子ね。手の柔らかさが凛空とは大違い」

「凛空のお母さんの手も、とっても柔らかくて、温かい、です」

「あら、ありがとう」

 

 衣咲の笑顔につられ、ミカの口元もほころぶ。

 やがて、手にかかっていたジュースを拭き取り終えた所で、再び衣咲が話を始めた。

 

「ミカちゃん、凛空の事、好きになってくれて、ありがとうね」

「……」

「あの子、うちの人に似て、時々一人で突っ走っちゃう所があるけど、そんな時でも、優しく見守って支えてあげてね」

「はい、お義母さん」

「ふふ、それじゃ、さっさと用意しましょうか。いつまでもミカちゃんを独り占めしてちゃ、凛空が不貞腐れちゃうものね」

「はい」

 

 そして、衣咲とミカの二人は、お菓子やジュースの用意を再開するのであった。

 

 

 

 

 それから程なく、凛空の自室に、お菓子やジュースをのせたトレーを手にしたミカが入ってくる。

 

「凛空、持ってきたよ」

「ありがとう、ミカ」

 

 ベッドで安静にしている凛空は、ミカにお礼を述べると、彼女が持ってきてくれたジュースを受け取り、早速口にする。

 

「試合、もう始まった?」

「もうすぐかな」

 

 机にトレーを置き、自身もジュースの入ったグラスを手にしたミカは、ベッドの横に置いた椅子に腰を下ろす。

 二人の視線の先には、ネットに接続し、中継を映し出した大型テレビが存在し。その画面には、大会の司会進行役を務める、その名前の如く雰囲気を醸し出す壮年男性、角馬 王将(かくま おうしょう)による熱のこもったトークが繰り広げられていた。

 

「流石は、タイニーオービット社が主催なだけはあるね。Lマガでも紹介された事のあるチームが沢山出場してる」

 

 出場チームの紹介がなされる中、メテオトレインやサイバーナイツ等、有名なチームの名が連なる。

 勿論、その中にはバン達やオタレンジャー等、見知ったチームの名も存在していた。

 

「郷田さん、今日も素敵」

「バン、大丈夫かな」

「ん、郷田さんが一緒だから、大丈夫だと思う」

「確かに、郷田先輩だけなら問題はないんだろうけど……」

 

 刹那、凛空の不安を煽り立てるかの如く、ハンゾウとキヨラが突如としていがみ合い、バンが仲裁に入る様子が映し出される。

 

(はぁ……。未来を知っているとはいえ、実際に目にすると、やっぱり先が思いやられるな)

 

 内心ため息を漏らす凛空を他所に、会場では、アキハバラキングダム初戦の組み合わせが発表されていく。

 

「バン達のチームは第二試合か」

「凛空、沙希さんって、強い?」

「ん~、沙希さんがバトルしている所って見た事がないから、なんとも……」

 

 初戦でバンのチームと戦う事となった沙希、その未知数の実力に、関心を抱くミカ。

 一方、原作で描かれた実力を知っているとはいえ、この世界での沙希の実力を知らぬ凛空も、興味を惹かれるのであった。

 

 

 チームから選出された一名が代表として戦う一回戦、その緒戦の組み合わせが発表され、各チームのメンバーが試合に向けて各々準備を始める。

 やがて、一回戦のの初戦、ハッカー軍団対メテオトレインの試合が幕を開けた。

 

 試合開始早々、仕掛けたのはハッカー軍団のリーダー格である小柄な少年、ヤマネコが操作するメイド型LBX、頭部のツインテールを模したパーツが目を引く、"レッドリボン"。

 機敏な動きで相手のブルドの懐に飛び込むと、装備したバルキリーレイピアで必殺の一撃をお見舞いする。

 刹那、その一撃に耐えられず、ブルドは無残にも爆散してしまう。

 

「成程。ハッカーとしての腕前だけじゃなく、LBXの腕前の方も、相当あるみたいだね」

 

 ハッカー軍団の初戦を観戦し、その感想を呟く凛空。

 一方ミカの関心は、この後行われる第二試合にハンゾウが出るのか否か、に向けられていた。

 

 程なく、ホコ天コロシアム中央に設けられたステージに、初戦に挑むバン達が姿を現す。

 

「さぁ、続きまして一回戦第二試合! 一人でのエントリーとなりました北島 沙希、公式大会などへの出場経験はありませんが、果たして、彼女は一体どんなバトルを見せてくれるのか!? ……それに対するは山野 バンチーム。試合に臨むのは、本年度アルテミスの優勝者、期待の新星山野 バン!!」

 

 角馬 王将の熱のこもった紹介と共に、両者がDキューブの前に立つ。

 そして、両者が意気込みを語るのを他所に、角馬 王将が両者のLBXの紹介を行う。

 

「北島 沙希の使用するLBXはクノイチ弐式。一方の山野 バンはオーディーン。二人は模型店の店員と常連客という間柄、しかし、真剣勝負に情けは無用! 果たして、二人はどんなバトルを見せてくれるのか!?」

「あんたー! キタジマ模型店の為に頑張るよー!」

 

 刹那、中継用のマイクが沙希の声を拾う。

 それを聞き、ミカが思い出したかのように喋り始めた。

 

「そう言えば、前に沙希さんが言ってた。アキハバラに、キタジマの二号店を出店したいって」

「え、そうなの。でも、確か店長は地域密着型にこだわってた筈だけど」

「ん、店長に相談したら、全然乗り気じゃないって愚痴ってた」

「成程。だから、アキハバラキングダムに出場したのか。優勝してキングになれば、出店も夢じゃないからね」

 

 沙希の出場理由が判明した所で、クノイチ弐式とオーディーンがDキューブ内に投入され、戦いの火蓋が切って落とされる。

 

 

 バトル開始と同時に仕掛けたのは、クノイチ弐式。

 クノイチ弐式その名が示す通り、クノイチの改良強化型で、従来の機動性を維持しつつ、その洗礼された外観を崩さぬように装甲がドレスアップされている。

 沙希の使用する機体はパーソナルカラーの黄緑色に塗装され、基本装備であるクロガネノコダチに代わり、薙刀・斬鉄を装備している。

 

 また、北島店長がチューニングの指南役を務めたからか、オーディーンに向かって突撃するその機動力は、市販されている同型機を上回り、オーディーンと負けずとも劣らぬ程であった。

 

「沙希さん、凄い気迫だね」

「ん」

 

 ハンドルを握ると性格が変わる人がいるように、沙希はLBXを操作すると性格が変わる様だ。

 クノイチ弐式が誇るスピードを生かし、オーディーンに対して次々と突撃攻撃を繰り出す。その怒涛の攻撃に、オーディーンは避けるので精一杯な様子。

 そんなバトルを眺めていると、再びミカが、ふと思い出したかのように喋り始めた。

 

「そう言えば、前に店長が言ってた。沙希さん、バトルをするとヒートアップし過ぎて、子供相手でも容赦しなくなし、お店の備品を壊しそうになるから、お店でのバトルはさせないようにしてるって」

「へぇ……」

「でも、前に一度、沙希さんがキタジマで、店長とバトルしてる所を見た事がある」

「え?」

「その時は、沙希さんが勝ってた」

 

 一体いつから始めたのかは分からないが、今ではLBXの師匠である北島店長を倒す程の実力を持つまでに至った沙希。

 そんな沙希が操作するクノイチ弐式は、フィールドである神殿のジオラマの柱を、その跳躍力でまさに忍びの如く縦横無尽に飛び回り、オーディーンを翻弄する。

 

「確かに、あれはちょっと危険だね」

「ん」

 

 試合を観戦しながら、凛空とミカは、沙希の相手をしている北島店長に、心の中で労いの言葉をかけるのであった。

 

「郷田先輩がバンにアドバイスしてる、珍しいな」

「アドバイスする郷田さん、素敵」

 

 防戦一方のオーディーン。

 そんな状況を見兼ねてか、ハンゾウがバンにアドバイスを送り始める。

 更には、キヨラも得意のタロットカードを交え、バンにアドバイスを送る。

 

 二人からのアドバイスを受けてバンは冷静さを取り戻したのか、バトルの流れが変わり始める。

 

 薙刀・斬鉄による突きや薙ぎ払いを躱しながら、隙を見て足払いを仕掛けるオーディーン。

 刹那、足払いを嫌ってか、跳躍し、空中からの攻撃を仕掛けるクノイチ弐式。

 すると、オーディーンはそれを待っていたかのように、リタリエイターをクノイチ弐式目掛けて投擲する。

 

 まさかそんな攻撃方法を取るとは予想できず、直撃し地面に落下するクノイチ弐式。

 何とか立ち上がるものの、落下時に受けたダメージで脚部に不調をきたしてしまう。

 それをオーディーンが見逃す筈もなく、必殺ファンクションのグングニルが繰り出され、巨大な光の槍がクノイチ弐式を貫き、勝敗が決する。

 

「クノイチ弐式、ブレイクオーバー! 山野 バンの逆転勝利です!!」

「沙希さん、負けちゃったね」

「ん。でも、バンと以外だったら、勝ててたかも。カズとなら、確実に勝ててた」

「あはは……」

 

 カズが引き合いに出され、苦笑いを浮かべる凛空であった。

 

 

 

 

 その後、ジュースとお菓子をつまみつつ、観戦を続ける凛空とミカ。

 一回戦の各試合も順調に進み、いよいよ、一回戦最後の試合、海道 ジンチーム対ジェイソン・クロサワの試合が行われようとしていた。

 

「海道 ジンの使用するプロトゼノンを相手に、"北欧のサムライ"ことジェイソン・クロサワの使用するムシャカスタムは、どの様なバトルを見せるのか! それでは、Ready……」

「Let's ブシドー!!」

「プロトゼノン!」

 

 金髪でちょんまげを結い、小袖や袴、更に保護具や模造刀を背負うという、間違った解釈の侍という出で立ちのジェイソン・クロサワ。

 そんな彼が操るのは、頭部と右腕をムシャ、左腕と脚部がカブト、そして胴体がショウグンと、ブシドーシリーズの三機種で構成されたカスタム機。

 

「バトルスタート!」

 

 合図と共に、戦いの幕が切って落とされ、さぞ激しいバトルが展開されると思われた。

 

「やぁやぁI am北欧のサムライ、ジェイソン・クロサワでござる! 昨日のFriend、今日のEnemy。ここでMeetがAnniversary! いざいざ、尋常にBattle、バートル!」

 

 だが、何故かジェイソン・クロサワは歌舞伎のポーズと共に、名乗りを上げ始めた。

 

「拙者のムシャカスタム。柳生新陰流からInspireした、Secret Artsでござる! 必殺のBlow、躱せるものなら、躱してみるでござ~る!!」

 

 しかし、そんなジェイソン・クロサワのノリに付き合うジンではなく。

 気づけば、ブースターを点火させ懐に飛び込んだプロトゼノンの一撃が、無防備なムシャカスタムに炸裂し、一瞬の内に勝敗が決するのであった。

 

「え……。む、ムシャカスタムブレイクオーバー! 海道 ジンの勝利!!」

 

 そのあまりにも一瞬の出来事に、会場内は一時静寂に包まれるも、ジンの勝利が告げられると、大歓声が沸き起こる。

 

「流石はジン」

「秒殺の皇帝、健在」

「だね」

 

 こうして、無事に一回戦の全試合が終了し、二回戦に向けての準備を兼ねた休憩時間が取られる。

 と同時に、CMが流れ始めた。

 

「ジュース、入れてくるね」

「ありがとう」

 

 きりが良いので、ミカは空になった二つのグラスを手に、キッチンへと向かう。

 一方、そんなミカを見送った凛空は、ミカが戻ってくるのを待ちながら、画面に流れるCMを眺めるのであった。

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