うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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激突

 チームから選出された一名が代表として戦う三回戦。この後の決勝戦に向けて負けられない大一番。

 山野 バンチームからは、自ら名乗りを上げたハンゾウが臨み、多少危なげな場面はあったものの、無事に勝利を飾る事が出来た。

 一方の海道 ジンチームからはアミが臨み、リュウや、観戦に回ったオタイエローからの熱烈な応援に気を散らせる事もなく、危なげなく勝利を勝ち取る。

 

 こうして、マスターキングへの挑戦権をかけた、チーム総出のアキハバラキングダム決勝戦。その対戦カードが、山野 バンチーム対海道 ジンチームに決定した。

 

「ミカ。決勝戦、どちらのチームが勝つと思う? やっぱり、郷田先輩がいるバンのチーム?」

「ん、そう言いたい、けど。……バランス的には、ジンのチームの方が有利」

「あぁ、確かに」

 

 決勝戦開始を待つ間、凛空とミカの二人は、決勝戦の勝敗予想を行う。

 

「バンのチームは、遠距離からの攻撃手段が、郷田さんの必殺ファンクションだけ。対して、ジンのチームには、カズのフェンリルがいる。カズは、一対一じゃ頼りないけど、チーム戦なら、あの狙撃の腕は頼りになる」

「ミカからお墨付きをもらえるなんて、教官としては喜ばしい限りだね」

 

 カズが以前使用していたハンター、そして今回から新たな相棒となったフェンリル。

 そのどちらもが長距離からの射撃能力に重きを置いた機体である為、カズのプレイスタイルも自然と援護を主体としたものとなり、ミカの言う通り、一対一のバトルなどではその性能を生かしずらい。

 だが、三対三の決勝戦のようなバトルならば、期待の性能も、カズのプレイスタイルも十二分に生かす事が出来る。

 

 加えて、フェンリルの装備するドミニオンライフルは、ハンターの装備していたハンターライフルよりも威力が高く、侮れない相手である。

 

「それに、アミとジン、あの二人は、頭が切れるから」

 

 更に、アミとジンの二人に関しても、それぞれの使用するLBXの性能もさることながら、最大の強みは機転が利く事だろう。

 戦況に応じて的確な指示を飛ばす事の出来るその能力は、山野 バンチームにはない強みだ。

 

 更に言えば、海道 ジンチームは山野 バンチームに比べてギスギスしている事もないので、不安要素はかなり少ない。

 

(あぁ、何だか改めて考えると……。本当に、原作でジン達に勝てたのって奇跡的だったんだな)

 

 それに対して山野 バンチームは、不安要素を上げれば枚挙にいとまがない。

 バン達の勝利を信じてはいるが、ジン達が勝った場合の想定を頭の片隅で始める凛空であった。

 

 

 

 

 やがて、CMが明けると、いよいよ待ちに待った決勝戦開始のアナウンスが流れ始める。

 

「会場の熱気も最高潮になってまいりましたアキハバラキングダム! いよいよ始まります、決勝戦! この決勝戦を制し、マスターキングへの挑戦権を獲得するのは、果たしてどちらのチームか!?」

 

 角馬 王将のアナウンスと共に、中央ステージにバンとジン、両チームが姿を現すと、Dキューブの前に立つ。

 

「それでは決勝戦、Ready……」

「いけ、オーディーン!」

「ハカイオー絶斗!」

「ナイトメア!」

「パンドラ!」

「フェンリル!」

「プロトゼノン!」

 

 そして、各々の愛機がDキューブ内に投下され、Dキューブ内に広がる草原に降り立つ。

 

「バトルスタート!」

 

 刹那、合図と共に、戦いの幕が切って落とされた。

 

 

 開始早々、ナイトメアが飛び出し、ジンチームに向かって突撃を行う。

 だが、そんなナイトメアと同様に、プロトゼノンもまた、僅かに遅れてバンチーム目掛けて突撃を開始。

 必然的に、両機は相対する事となる。

 

 これを見て、オーディーンが慌ててナイトメアの援護に駆け付けようとするも、その行く手を阻むかのように、フェンリルの装備するドミニオンライフルから放たれた光弾が飛来し、身を隠さざるを得なくなる。

 一方、ハカイオー絶斗も、瞬く間に距離を詰めてきたパンドラの俊敏な動きに翻弄され、援護に駆け付ける余裕などなかった。

 

「連携に難があるとは言っても、連携できない訳じゃない。むしろ、無意識の内に連携できる分、意識するより精度が高く厄介」

「阿吽の呼吸?」

「まさにそれだね。だからこそ、ジン達はバン達を分断させ、各個撃破を狙ってきた」

「つまり、ジン達の作戦に、まんまとハマった?」

「だね」

 

 中継を眺めながら、凛空はグラスを手に取ると残っていたジュースを飲み干す。

 実は、そのグラスはミカが飲んでいたグラスだったのだが、凛空は全く気がついていない様子。

 一方、それが所謂間接キスだと理解したミカは、頬を赤らめるのだが、凛空は中継に集中していた為、そんなミカの様子にも気づく事はなかった。

 

「開始早々に激しいバトルが展開しております! おぉっと、ナイトメアの猛烈な攻撃を受けて、プロトゼノンは防戦一方か!? いや、今度はプロトゼノンが仕掛けた!!」

 

 武装の中では重量級に分類されるハンマー系の装備、それを装備するナイトメアとプロトゼノンの戦闘は、まさにダイナミックかつハイレベルなものであった。

 互いの得物で激しい鍔迫り合いを演じながら、何とか一撃を浴びせようとする両機。

 

 そんなナイトメアとプロトゼノンの戦闘を他所に、オーディーンとハカイオー絶斗の両機は、対峙するパンドラとフェンリルに対して防戦一方であった。

 だが、絶・破岩刃を使い土煙を巻き上げると、それを煙幕代わりにし、一旦岩陰に身を潜める事に成功する。

 

「さて、バン達、次はどう出る?」

 

 身を潜めたオーディーンとハカイオー絶斗の捜索を行うパンドラとフェンリル。

 やがて、そんな両機の視界内を横切るように、オーディーンがその姿を現した。

 

「いた! カズ、援護お願い!」

「任せろ!」

 

 オーディーンの追撃を開始するパンドラ。

 一方、フェンリルは岩山の上から援護するべくオーディーンに狙いを定めるも、位置が悪く、岩々に射線が切られてしまう。

 

「くそ、ここじゃ狙い辛い……。そうだ、あそこなら!」

 

 射点を変えるべく周囲を見渡し、射点に適した岩山を見つけたフェンリルは、移動を開始する。

 やがて、フェンリルはその跳躍力を生かして岩山の頂上に辿り着くと、狙いを定めるべく、ドミニオンライフルを構えた。

 だが、その時。

 

「もらったぜ!!」

〈アタックファンクション、超我王砲(チョウガオーキャノン)

 

 突如近くの岩陰からハカイオー絶斗が姿を現すと、フェンリル目掛けて超我王砲(チョウガオーキャノン)を発射した。

 だが、狙いが定まっていなかったのか、放たれた強力なビームは、フェンリルの脇にある巨大な岩に命中する。

 

「へへ、何処狙ってんだ!」

「カズ、早く逃げて!」

「へ?」

 

 だが直後、カズは思い知る事となる、超我王砲(チョウガオーキャノン)は元々フェンリルを狙ったのではなく、巨大な岩を狙ったのだと。

 

「うわぁぁっ!!」

 

 超我王砲(チョウガオーキャノン)の直撃を受けて、巨大な岩がフェンリル目掛けて倒れる。

 油断していたカズは反応が遅れ、フェンリルは倒れた岩の下敷きとなってしまった。

 

 

 こうして、フェンリルが落伍した所で、バトルの流れを決定的なものにするべく、今度はバンチームが仕掛ける。

 ナイトメアはお得意の残像を出現させると、プロトゼノンに同時攻撃を仕掛け始める。

 

 一方オーディーンとハカイオー絶斗は、数の優位を生かしてパンドラに攻撃を仕掛ける。

 

「流れ、変わった」

「うん。でもまだ、決定的じゃない」

 

 刹那、ナイトメアの残像攻撃に対して手も足も出ないプロトゼノンに対し、キヨラが勝負を決めるべく、再び残像を出現させると同時攻撃を仕掛ける。

 これでフェンリルに続きプロトゼノンも落伍か、と思われた、次の瞬間。

 オベロンの突きが、残像ではなくナイトメア本体を捉え、弾き飛ばした。

 

「何!?」

 

 見破られる筈のないイリュージョンを見破られ、目を見開くキヨラ。

 一方、見破ったジンは、淡々と種明かしを口にする。

 

 曰く、注意深く観察すれば、三体の内、ほんの僅かながら先行して動く一体が存在する。その先行する一体こそが本体。

 

 最も、理屈は分かっていても、実際に戦闘の最中に本体と残像を見分けるのは至難の業。

 それをやってのけたのは、ジンの力量があればこそだろう。

 

「くそ!」

 

 そんな力量を持ったジンに対し、キヨラは諦める事無く攻撃を仕掛ける。

 だが、先ほどの突き攻撃でのダメージが響き、ナイトメアの動きが少しばかり鈍る。

 その少しの差が、ジンに対しては決定的となった。

 

 オベロンの強打を受け、近くの岩肌に叩きつけられるナイトメア。

 更にトドメとばかりに、必殺ファンクションのブレイクゲイザーを叩き込まれ、ナイトメアはバトルから落伍する事となった。

 

 これで戦況はイーブン、かと思われた。

 だが、オーディーンがパンドラの動きを封じている隙に、死角からハカイオー絶斗の超我王砲(チョウガオーキャノン)が放たれる。

 弾着の直前、パンドラへの蹴りを利用し射線から逃れるオーディーン。直後、逃げ遅れたパンドラに超我王砲(チョウガオーキャノン)が命中し、爆発と共にパンドラもバトルから落伍するのであった。

 

「おぉっと! ここでパンドラもブレイクオーバー!! 海道 ジンチーム、残るはプロトゼノン一機だが、果たして、オーディーンとハカイオー絶斗相手に、どう戦うのか!?」

「俺を忘れてもらっちゃ困るぜ!!」

 

 角馬 王将の実況が響き渡った、次の瞬間。

 突如、フェンリルが下敷きとなった巨大な岩に変化が起こり始める。

 

 刹那、岩が砕かれ、フェンリルがその姿を現す。

 

「ブレイクオーバーしてなかったのか!?」

「あれは……、シャイニングダガー!?」

「そ、ドミニオンライフルを失っても接近戦を戦えるようにカスタマイズしたのさ。アミのアイデアでな」

 

 フェンリルが装備した一対のダガー、シャイニングダガー。

 まさかフェンリルが近接戦闘用の装備を有しているとは思わず、バン達は苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「おーっと、ここでまさかのフェンリル復活!! さぁ、これで数は二対二、果たしてどうなるのか!?」

 

 ヒートアップする角馬 王将の実況を他所に、両チームはまるで互いの出方を窺うかのように睨み合う。

 そんな状況が暫し続いた後、遂に、静寂を突き破るかのようにプロトゼノンが動き出した。

 

 それに応じて、オーディーンが動き出し、遅れてフェンリルも動く。

 だが、一番に動き出しそうなハカイオー絶斗は動く気配がなかった。

 

 程なく、オーディーンがプロトゼノンとフェンリルの二機と激突する。

 しかし、幾らオーディーンと言えど、やはり二機を同時に相手にするのは少々分が悪い様だ。オーディーンは二機の攻撃を防ぐので精一杯の様子。

 

 だが、バン達にとっては、それこそが望んだ形であった。

 

〈アタックファンクション、超我王砲(チョウガオーキャノン)

 

 不意に、三機目掛けて超我王砲(チョウガオーキャノン)が放たれる。

 すると、事前に発射される事が分かっていたかのように、オーディーンが射線上から退避する。

 僅かに遅れ、プロトゼノンとフェンリルの二機も、巻き込まれる事なく射線上から退避する。

 

「ちっ、両方避けやがった!」

 

 どうやら、バン達はオーディーンが二機を足止めしている間にハカイオー絶斗の超我王砲(チョウガオーキャノン)を発射、どちらかを巻き込む魂胆だったようだ。

 

 刹那、バン達の作戦に勘付いたのか、プロトゼノンがブースターを点火させると、一気にハカイオー絶斗に向かう。

 

「やらせるかよ!」

 

 次の瞬間、ハカイオー絶斗の胸部砲口にエネルギーが収束すると、プロトゼノン目掛けて、再び超我王砲(チョウガオーキャノン)が放たれる。

 迫るビームに対して、プロトゼノンは逃げる素振りも見せず突っ込んでいく。

 

 刹那、巨大な爆発が発生し、周囲に大量の爆煙が立ち込める。

 

「やったか!」

 

 これを目にし、ハンゾウは勝利を確信する。

 だが、次の瞬間、爆煙を突き破り、左腕を失ったプロトゼノンが姿を現した。

 

「何!?」

 

 驚くハンゾウを他所に、プロトゼノンは瞬く間にハカイオー絶斗の懐に飛び込むと、ハカイオー絶斗の胸部目掛けてオベロンを突く。

 片腕ながらも、オベロンの一突きは見事ハカイオー絶斗の胸部砲口に命中し、超我王砲(チョウガオーキャノン)を封じる事に成功する。

 

「く、やってくれるじゃねぇか!」

 

 唯一の遠距離攻撃手段を失った事で、戦闘は、必然的に接近戦の様相を見せる。

 オーディーンとフェンリル、プロトゼノンとハカイオー絶斗。

 各々が各々の得物を振るい、相手に一撃を浴びせんと激しくぶつかり合う。

 

 そんな中、一際激しく攻め立てるのが、プロトゼノンであった。

 片腕とは思えぬ程、殴る蹴るの猛攻をハカイオー絶斗に対して仕掛けるプロトゼノン。

 その猛攻を受けて、ハカイオー絶斗自慢の装甲は傷つき、LPも心許なくなっていく。

 

 一方、そんな二機とは対照的に、オーディーンとフェンリルの戦闘は、オーディーンが優勢であった。

 慣れない近接戦闘でオーディーンと戦っていたフェンリルだが、やがて、一瞬の不意を突かれ、リタリエイターによる一突きを食らい、上空に弾き飛ばされた。

 

 その瞬間、ハカイオー絶斗はオベロンの強打を受けつつ、その両腕でプロトゼノンの動きを封じると、頭部のスラスターを噴かせる。

 

「バン!」

「っ! よし! 必殺ファンクション!!」

 

 プロトゼノン共々、ハカイオー絶斗が向かった先はフェンリルの落下地点。

 刹那、ハンゾウの取った行動の意味を理解したバンは、必殺ファンクションのグングニルを繰り出した。

 

 落下の最中、躱す事もできずに巨大な光の槍に貫かれるフェンリル。

 更に、丁度近づいていたハカイオー絶斗とプロトゼノンも、その威力を前に、それぞれが蓄積していたダメージも相まって、その機能を停止させた。

 

 その瞬間、勝利の二文字が、山野 バンチームの頭上に点灯するのであった。

 

 

 

 

「ふぅ……、バン達、何とか勝ったね」

 

 多少不安だったものの、何とかバン達が決勝戦を制し、安堵の表情を浮かべる凛空。

 

「ミカ?」

 

 と、ミカからの反応がない事に気がつき、ふとミカの方に視線を向ける。

 すると、そこには、俯き、体を小刻みに震わせているミカの姿があった。

 

「(……ま、まさか、バンが郷田先輩を巻き添えにして勝ったことに、怒ってる?)……あの、ミカ、さん?」

「……何?」

「怒って、る?」

「……別に」

(あぁ、無茶苦茶怒ってる……)

 

 ミカが相当ご立腹であると理解した凛空は、何とかミカの機嫌を直すべく、思考を巡らせ始める。

 

「そ、そうだミカ!」

「……、何?」

「ケーキでも食べようよ! 確か、冷蔵庫に母さんが作ってくれたカップケーキが入ってたはずだからさ!」

 

 刹那、ミカは押し黙ってしまう。

 「まさか、この提案は間違いだったか」と凛空の脳裏に不安がよぎった、次の瞬間。

 

「好きなだけ、食べていい?」

「……う、うん、勿論!」

「取ってくる」

 

 目を輝かせるミカ。そして、ミカは早速カップケーキを取りにキッチンへと向かった。

 こうして、思わぬ所でバンの尻拭いをする羽目になった凛空は、安堵のため息を零すのだった。

 

 因みに、美味しそうにカップケーキを頬張るミカの姿を見られたので、凛空にとっては災い転じて福となすのであった。

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