うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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贖罪

 アキハバラキングダムにおいて山野 バンチームが見事優勝を飾り、リーダーを務めたバンがアキハバラの新たなキングに就任した翌日。

 バンは、アミとカズの二人と共に凛空の自宅に足を運んでいた。

 

 その目的は、凛空のお見舞いと共に、解読コードの回収状況について報告する為であった。

 

「バン、ちょっと……」

「何、ミカ?」

 

 凛空の自室に入るや否や、先にやって来ていたミカに呼ばれるバン。

 そして、ミカの言う通り、彼女の近くに足を運んだ、次の瞬間。

 

「っ!」

 

 バンの額に痛みが走る。

 その正体は、ミカの放ったデコピンであった。

 

 この突然のミカの行動に理解が追い付かず、呆気にとられるバン。

 一方、ミカはこれでスッキリしたのか、満足げな表情を浮かべるのであった。

 

 

 色々と腑に落ちない部分はあるものの、我に返ると、本来の目的を果たすべく、凛空が安静にしているベッドへと近づくバン。

 

「おめでとう、バン!」

「ありがとう」

 

 アミとカズ、それにミカが他愛もない話で盛り上がるのを他所に、まずは、昨日アキハバラキングダムの終了後に電話で伝えた祝福の言葉を、改めて伝える凛空。

 そして、それを終えた所で、バンが本題を切り出し始める。

 

「そうだ、ネット中に散らばった解読コードのデータ回収についてだけど」

「うん」

「ハッカー軍団の協力を得て、無事に回収作業が始まったんだ」

「よかったね、バン」

「うん。と言っても、全て回収し終えるには一週間程かかるらしいんだ」

 

 無限の広がりを見せる電子の海、インフィニティネット。そんな中から散らばったデータを一片も余すことなく回収する。

 おそらく、常人では数か月単位もかかってしまうであろうものを、たったの一週間で完了させると断言する辺り、ハッカー軍団の技量の高さが伺える。

 

「そっか。所でバン、回収が終わるまでどうするの?」

「うーん。じっと待ってるのもなんだから、ジン達とLBXバトルで特訓、かな」

「バンらしいね」

「そう言う凛空は? 確か、明日から動いてもいいんだよね」

 

 こうして本題を終えた所で、漸く安静期間が終了する凛空の予定についての話題に変わる。

 

「そうだな……。動けるって言っても、激しい運動はまだ控えた方がいいから、ミカと一緒に散歩、かな」

 

 彼女と一緒に散歩する、それを世間ではお散歩デートと言うのだが、バンは特に気にする素振りもなかった。

 

 

 

 

 そして、翌日。

 安静期間が終了し、漸く自宅から外に出た凛空は、昨日バンに話した通り、とある女性と共に若者の街として知られるシブヤタウンに足を運んでいた。

 

「ちょっと、さっきから何きょろきょろしてるの?」

「いえ、何でもないです!」

「そ、なら行くわよ」

「は、はい。(あぁ、こんな所ミカに見られたらどうしよう……)」

 

 しかし、凛空の隣を歩く女性は、愛する彼女、ではなく。仙道 キヨラであった。

 何故、凛空はキヨラと共にシブヤタウンに足を運ぶ事になったのか。

 

 事の発端は、凛空が自宅を出た直後。

 凛空は、自宅前で意外な人物が待ち構えていた事に気がつく。

 その人物とは誰であろう、仙道 キヨラだ。

 

「仙道さん? 珍しいですね、どうしたんですか?」

 

 何故自宅の場所を知っているのかは兎も角、凛空は、キヨラに用件を尋ねる。

 刹那、キヨラは周囲に人気がない事を確認すると、用件を切り出し始めた。

 

「西原 凛空、私と付き合え!」

「ぇ!」

 

 次の瞬間、キヨラの口から飛び出した突然の告白に、凛空は驚嘆する。

 だが、凛空の反応を目にし勘違いしていると気づいたのか、キヨラがすぐに訂正を始める。

 

「勘違いするな! 私の買い物に付き合えって事だ!」

「え、あぁ、成程……」

「大体、私はお前みたいな優男よりも、力強くて頼り甲斐のある男の方が……って、そうじゃなくて!」

 

 その後、何故か、聞いてもいないのに好きな異性のタイプを語り始めたキヨラ。

 しかし、余計な事を口にしていると気がつき、慌てて口を噤む。

 

「兎に角、買い物に付き合ってもらうわよ!」

「え、あ、ちょっと!」

 

 恥ずかしさを誤魔化すかのように、凛空の手を掴み、半ば強引に連れていくキヨラ。

 こうして凛空は、キヨラの買い物に付き合う事となったのであった。

 

 そして現在、シブヤタウンに到着したキヨラと凛空の二人は、店を探しつつシブヤタウンを歩き回っていた。

 

「あの、仙道さん」

「何?」

「買い物に付き合うのはいいんですけど、どうして僕なんですか? 荷物持ちなら、他にも適役な方が……」

「お前は荷物持ちで誘ったんじゃない。相談に乗ってほしいから誘ったの」

「相談?」

「そうよ、プレゼント選びの相談。お前はアイツとも親しいし、他の奴よりも口が堅そうだから言いふらす心配もないでしょ」

「えっと……、理由は分かりましたけど、一体誰に渡すプレゼントなんですか?」

「誰って、それはご……、察しが悪いわね!」

 

 名前を言いかけてやめるキヨラ。

 一方、凛空は何とか聞き取れた頭文字から、該当する人物を探し始める。

 程なく、該当する人物を探し当てた凛空は。

 

(あー、そう言えば先輩、もうすぐ誕生日だったな)

 

 先日のアキハバラキングダムの中継で見せたキヨラの言動を踏まえ、それが何を意味するのかを察し、それ以上の詮索を中止するのであった。

 

 

 その後、二人は幾つかのメンズアクセサリー店を巡り、幾つかの候補の中から、最終的にシンプルなデザインのプレートネックレスを購入するのであった。

 

「今日は付き合ってくれて助かった」

「いえ、僕の意見が何処まで参考になるか分かりませんけど」

「いや、これならアイツも喜ぶだろ」

 

 無事にプレゼントを購入し、満足そうな笑顔を浮かべるキヨラ。

 そんな彼女の表情を目にし、凛空も、自然と口角が上がった。

 

「頑張ってくださいね、仙道さん」

「っ! い、言われるまでもないわよ! それじゃ!」

 

 刹那、キヨラは赤面すると、足早にその場から立ち去るのであった。

 そして、そんなキヨラの背中を見送った凛空も、自宅に帰るべく帰路につくのであった。

 

(あ、そう言えば……。ミカに今日の事、何て話そう……)

 

 その道中、凛空は今日の出来事をミカにどうやって伝えるか、頭を悩ませるのであった。

 小さな影が、物陰から自身の事を監視しているとは知らずに。

 

 

 

 

 翌日。

 学校に登校した凛空は、安静期間の間会えなかったリュウ達クラスメイトに温かく出迎えられる。

 そして、暫く久々の会話を楽しんだ所で、ミカやバン等、お馴染みの面々と顔を会わせる。

 

「おはよう、ミカ」

「おはよう」

 

 昨日の一件がある為、内心ビクビクしつつも、ミカと挨拶を交わす凛空。

 すると、ミカは特に怒っている事もなく、いつもと変わらぬ様子。

 

(あれ、昨日の事……、気にしてないのかな?)

 

 とはいえ、クラスメイトの前だから言い出さないだけかもしれないと、凛空の不安はまだ残ったままであった。

 しかし、授業が始まり、昼休みが始まり、午後からの授業が始まっても。

 何度となく言い出す機会があったにも関わらず、ミカの口から、昨日の事についての話題は出てこなかった。

 

 この事から、凛空は取り越し苦労だったのではと思い始め。

 気がつけば、いつの間にか不安は消え。そして、放課後を迎えていた。

 

「凛空、ちょっと、いい?」

「うん、いいよ」

 

 クラスメイト達が次々と教室を後にする中、不意に声をかけてくるミカ。どうやら、何処かについてきてほしい様だ。

 ミカの後についていき、教室を後にする凛空。

 そのまま校舎を後にし、足を運んだのは、スラムであった。

 

 何度となく足を運んだスラムの入り口を潜り、スラムに足を踏み入れたミカは、迷うことなくスラムの一角に足を運んだ。

 そこは、スラム内でも人気のない場所の一つ。

 

「ここ」

「ここ?」

 

 程なく、ミカが足を止めたのは、とある廃屋の扉の前。

 

「入って」

「え、う、うん……」

 

 ミカに促され、凛空はその扉に手をかけると、ゆっくりと扉を開く。

 重厚な音と共に開かれた扉、その先で凛空が目にしたのは、薄暗く、古びた椅子とベッドが置かれた部屋の光景であった。

 

「ここに何かあるの?」

 

 取り立てて変わった様子もない部屋。

 そんな部屋に足を踏み入れた凛空は、ミカに自身をこの部屋に誘った理由を尋ねる。

 

 すると、次の瞬間。

 扉が閉まる音と共に、扉の鍵がかかった音が響き渡る。

 その音に反応するように、凛空は慌てて振り返る。

 

「ミ、カ?」

 

 そこで凛空が目にしたのは、扉を塞ぐかのように佇むミカの姿であった。

 

「どうしたの、一体……」

「ね、凛空」

 

 いつものミカとは異なる、艶気を含んだ低い声。

 そんな声で自身の名を呼ばれた瞬間、凛空は、体中に電気が走るのを感じた。

 

「あの、ね」

 

 そして、妖艶な眼差しと共に、じりじりと迫るミカ。

 一方、凛空の脳内では、この状況から導き出されたミカの行動の意味を理解すると、それを合図に、理性と欲望がア・バオア・クー攻略戦の如く熾烈な戦いを繰り広げ始めた。

 

「っ!」

 

 刹那、ミカの伸ばした手に押され、凛空の体が古びたベッド目掛けて倒れる。

 軋む音共に、ベッドにその体を横たえさせる凛空。

 

 だが、その直後。更に凛空の欲望を揺さぶる出来事が起こる。

 それは、ベッドに倒れた凛空の体に、ミカが馬乗りになってきた事だ。

 このあまりの出来事に、凛空の思考回路はショート寸前となる。

 

「ミ、ミカ! まま、待って待って! い、幾ら何でもその、まだ早いと思うんだ! 僕達まだ中学生だし、やっぱり清く正しいお付き合いを──」

 

 それでも何とか理性を保ち、思いとどまらせようと凛空。

 すると、不意にミカが、青いリボンに手をかけると、ツインテールに結んだ髪をほどき始めた。

 

 刹那、ミカの綺麗な青い髪が踊ると共に、シャンプーの香りだろう、凛空は柑橘系の爽やかで繊細な香りを感じ取った。

 

「凛空……」

「っ!!」

 

 次の瞬間、ダメ押しとばかりに、ミカが耳元で自身の名を囁き、再び凛空は体中に電気が走るのを感じた。

 と同時に、理性と欲望の戦いも、Sフィールドが突破される等、佳境を迎えていた。

 

「ミカ……」

 

 最早、覚悟を決めるしかない。

 凛空は意を決すると、ミカの顔を見つめようと、視線を動かした、その時。

 

「これ、何?」

「……へ?」

 

 凛空が目にしたのは、自身のCCMの画面を見せつける、先ほどまでの妖艶な雰囲気とは打って変わって、氷のように冷たい雰囲気のミカの姿であった。

 

「──!!」

 

 そして、ミカのCCM画面に映し出された画像を凛空が目にした、刹那。

 脳内の煩悩が吹き飛ぶと共に、血の気が引いていく。

 

 画面に映し出された画像。

 それは、一体いつの間に、一体誰が撮ったのか。

 昨日、凛空がシブヤタウンでキヨラと共に、とある人物への誕生日プレゼントを選んでいる最中を収めた写真であった。

 

「前に、言ったよね? 裏切ったら、承知しないって」

「ご、誤解だよ! これは──」

「こ・れ・は?」

 

 ミカの言葉の端々から感じる彼女の怒り、それを感じ取った凛空は、キヨラに心苦しく思いつつ、包み隠さず本当の事を説明する。

 

「だから、これは誤解なんだ!」

「……」

 

 一通り説明を終えた所で、ミカに理解を求めるも、ミカは未だに馬乗りになり凛空の自由を奪っていた。

 

「ちゃんと説明せずに裏切ったと誤解させてしまった事は謝るから、だから!」

「……」

「本当にごめん」

「……」

「ねぇ、ミカ。どうしたら許してくれるの? 僕、なんでもするから、だから──」

 

 なんでもする、その言葉が凛空の口から飛び出した、刹那。

 突如、ミカは馬乗りを止めて凛空を解放する。

 

 この突然のミカの行動に、凛空がきょとんとしていると、不意に、何かが凛空の視界に飛び込んできた。

 

「これは……、クノイチ?」

 

 それは、クノイチ。しかも、市販の標準色ではなく、ピンク色に塗装された個体。

 この塗装のクノイチを使用している人物の顔が脳裏に浮かんだ、その時。

 

 ふと、鍵がかかっていた筈の扉が開く音に気がつき、凛空は扉の方へと視線を向けた。

 

「アミ……」

 

 そこで目にしたのは、扉を開けて部屋に入ってきたアミの姿であった。

 

「どうして、ここに?」

「さぁ~、どうしてでしょう? ね、ミカ」

「ん」

 

 意味深な笑みを浮かべ、何やら意味深なやり取りを行うアミとミカ。

 そんな二人の様子を目にし、凛空の額から嫌な汗が吹き出し始める。

 

「所で凛空。さっき言った事、本当よね?」

「え、な、ナンノコト……」

「あら、とぼけたって無駄よ」

 

 刹那、アミは自身のCCMを取り出すと操作を始める。

 次の瞬間、アミのCCMから、先ほど凛空が口にしたなんでもする発言が流れ始めた。

 

「さっきの凛空の発言は、この通り、ちゃーんと録音済みよ」

「言い逃れは、無意味」

「うふふ。ねぇミカ、凛空にどんなお願い、聞いてもらおっか?」

「ん、今から楽しみ」

 

 録音された音声が終了し、アミとミカ、それぞれの反応を目にし、凛空は悟った。

 先ほど提示されたシブヤタウンでの写真の出所を、そして、この部屋に足を踏み入れた時点で、既に二人の計略にかかっており、所謂"詰み"の状態だった事を。

 

 同時に、今回の計略を主導したであろうアミに対して、尊敬と畏怖の念を込め、"汚い"、と思わずにはいられなかった。

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