うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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戦場に咲く一輪の花

 無事に二回戦へと駒を進めたリンコ達。

 一回戦の残りの試合を観戦しながら、次の対戦相手となるチームについて話し合う。

 

「そう言えば、私達の次の対戦相手って、一体誰なのかしら?」

「うーん。トーナメント表にも、シークレット・シードとしか書いてないからね……」

 

 ガーベラの修理を行っているミカを他所に、アミとリンコの二人は、会場内の一角に設けられた大会のトーナメント表に目を向ける。

 そこには、出場チームの数々と共に、シード枠として出場し、次の対戦相手となるチームも記載されている筈なのだが。生憎と、現在その枠にはシークレット・シードとしか書かれていない。

 一人なのか複数なのか、現時点では、全てが謎に包まれた次の対戦相手。

 

「ま、どんな相手でも、私とリンコなら楽勝よね!」

「え、次はぼ──、私が出るの?」

「当たり前じゃない。次の試合は二対二なんだから」

「リンコ、頑張って」

「わ、分かった」

 

 全く情報のない対戦相手に少々不安を抱きつつも、リンコは次の試合に出る事を了承するのであった。

 

 

 

 

 そして始まった二回戦。

 一回戦同様、第一試合から激しいバトルが繰り広げられ、観客達の熱気も高まっていく。

 

「それでは、続きまして、川村 アミチーム対シークレット・シードの試合を始めます!」

 

 アナウンスが流れ、試合に臨むアミとリンコは表情を引き締める。

 

「ですが、その前に。シークレット・シードのご紹介です!!」

 

 司会者のアナウンスが流れた、刹那。

 会場の一角にスモークが噴射されると、そのスモークをくぐって、とある人物が姿を現した。

 

「ワシ、参上! ……デヨ」

「えぇ!? 次の対戦相手って、オタクロス!!」

(っ! 何でここにオタクロスが!!?)

 

 まさかのオタクロスの登場に、驚きを隠せないアミとリンコ。

 

「ウッシシシシッ!驚いたデヨ、アミたん?」

「驚いたに決まってるじゃない! というか、この大会って女性限定の大会よ、どうしてオタクロスが?」

「おぉ、実はワシはただの応援デヨ」

「応援?」

 

 刹那、スモークをくぐって、二つの人影がアミ達の前に姿を現した。

 その姿を目にした瞬間、アミ達は再び目を見開く。

 

「ちょっとおっさん! なーにアタイ達よりも目立ってんだよ!」

「少しは、分をわきまえてください」

「すまんすまん」

 

 何故なら、現れたのがアミ達の見知った人物。矢沢 リコと霧野 紗枝であったのだから。

 

「えぇ! リコに、紗枝さん!?」

「もしかして、二人が、次の対戦相手?」

「でも、どうして?」

「ふふーん。アタイもシーカーの一員だからね、リーダーやあんた達と肩を並べて戦えるように腕を磨こうと思ってね」

「それで、私が相談を受けて、この大会への出場を勧めてみたんです」

「そうだったのね。あれ、なら紗枝さんはどうして?」

「私も、少しでもお力になれればと思って」

 

 まさかの対戦相手に驚愕するアミとミカ。

 一方、リンコは別の意味で心が穏やかではなかった。

 

(なな、何でこうも次々と知り合いが!!)

 

 女装しているなんてバレた日には、彼女達からどんな目で見られるか。

 戦々恐々とするリンコを他所に、アミ達は更にやり取りを続けた。

 

「でもまさか、二人がシークレット・シードなんて思わなかった」

「何か、理由が?」

「う~ん、それがアタイにも分かんなくってよ」

「どういう事?」

「エントリーしたの、そこのおっさんなんだよ」

「オタクロスが?」

「ウッシシ、可愛い孫……、うぉっほん! 紗枝たんからリコたんと共に出場すると聞いて、微力ながら力を貸してやったんじゃ。実はワシ、主催のルイ・ビットの会長とはちょっとした知り合いでの、そこでちょーと、お願いしたという訳じゃ」

 

 オタクロスと霧野が祖父と孫の関係だと知っていれば、身内びいきが過ぎると思った事だろう。

 ただ、二人の関係を知らないアミ達は、女性に甘いオタクロスらしいと、少々呆れる程度の感想を抱くだけであった。

 

「所でアミたん。そちらの可憐なお嬢さんは、誰デヨ?」

 

 刹那、オタクロスがついにリンコの話題を切り出し、リンコは肩をびくっと震わせた。

 

「あぁ、彼女は私達の友達の、伊織 リンコちゃん」

「ぬほぉ~、リンコたん、いいお名前デヨ! 初めまして、ワシは伝説の超ハッカーにしてオタ道の伝道師、オタクロスデヨ!」

「は、始めまして……」

 

 あまり顔を見られないようにしながら、オタクロスとの握手に応えるリンコ。

 すると、不意にオタクロスが疑問を口にする。

 

「んん? すまぬがリンコたん、以前何処かで会った事があったかのぉ?」

「そ、ソンナコトナイデスワ、タニンノソラニデハ?」

 

 正体がバレたのではとの焦りから、つい声が裏返るリンコ。

 そんなリンコの様子を目にし、アミは笑いをこらえるのであった。

 

「そうじゃったか、気のせいか」

 

 こうして、何とか危機を乗り切った所で、いよいよ、試合が始まる。

 

 

「リコは分かるけど、紗枝さんって、やっぱり強いのかしら?」

「ん~、情報がないから何とも。けど、宇崎社長の練習相手をしている可能性も無きにしも非ずだから、油断せずにいこう」

「そうね」

 

 ステージに設置されたDキューブの前に立つアミとリンコは、対峙するリコと霧野に聞かれぬ様、小声で話す。

 そして、話しに区切りがついた所で、司会者による合図が告げられる。

 

「パンドラ!」

「グフカスタム!」

「いけ、クイーン!」

「さくら☆零号機」

 

 戦場となるジャングルに降り立つ四機。

 刹那、アミは、霧野の愛機がさくら☆零号機である事に驚く。

 

「あれって、確かオタクロスが自作した……」

「アミたん、一体いつから、さくら☆零号機が一つしかないと錯覚していたデヨ? 実用・観賞用・布教用、三つ用意するのはオタクにとって常識デヨ!」

「そ、そうなんだ……」

 

 アミがとりあえず納得した所で、バトルの開始の合図が告げられ、戦いの幕が切って落とされる。

 

 

 

 

「おそらく二人は、遠距離からの攻撃を軸に仕掛けてくると思う」

「なら、懐に飛び込めば、こっちのものね!」

 

 リコのクイーンはクイーンズハート、霧野のさくら☆零号機は、無反動のような見た目をしたライデンランチャーと呼ばれるランチャー系の武装を装備している。

 この両機の武装から、中・遠距離では強いが、近接戦闘では弱いと踏んだアミとリンコは、近接戦闘を仕掛けるべく、クイーンとさくら☆零号機に接近を試みる。

 

「甘いよ! あんた達が近接戦を仕掛けてくる事ぐらい、お見通しさ!」

「近づけさせません!」

 

 しかし、そんなアミ達の魂胆など、リコ達にはお見通しだったらしく。

 接近を試みるパンドラとグフカスタムに対して、クイーンズハートの弾丸の雨と、ライデンランチャーの弾頭の数々が、両機に襲い掛かる。

 

 この弾幕を前にして、パンドラとグフカスタムは接近を断念すると、木々の中へと一旦姿を隠す。

 

「逃げても無駄だよ!」

〈アタックファンクション、グレイスミサイル〉

「これで!」

〈アタックファンクション、ナパームボム〉

 

 すると、木々の中に姿を隠した二機をいぶり出すかのように、クイーンとさくら☆零号機がそれぞれの必殺ファンクションを繰り出し、二機が隠れているであろう地点に、ミサイルと弾頭が降り注ぐ。

 次の瞬間、パンドラとグフカスタムが堪えきれず、開けた場所に姿を現した。

 

「見つけたよ!」

 

 自慢のホバー機構を使い上空に待機していたクイーンは、二機の姿を発見するや否や、クイーンズハートの引き金を引く。

 刹那、上空から降り注ぐ弾丸の数々を、パンドラは俊敏な動きで躱し、グフカスタムはガトリングシールドで防ぐ。

 

「リコさん、援護します!」

 

 すると、大きく跳躍したさくら☆零号機が上空に姿を現し、構えたライデンランチャーの引き金を引く。

 バックブラストの発生と共に撃ち出された弾頭はグフカスタム目掛けて飛来する。

 それを見て、グフカスタムはガトリングシールドの銃口を弾頭に向けると、弾幕を放つ。

 

 刹那、弾頭が爆発し、周囲に爆煙をまき散らした。

 

「くそ、煙に紛れて隠れやがった」

「どうします、リコさん?」

 

 その爆煙に乗じ、姿を消したパンドラとグフカスタム。

 

「とりあえず、一旦様子を見る。リンコとか言う奴はよく分からないけど、アミの方は頭が切れるから、迂闊に突っ込むと返り討ちに遭うかもしれないからな」

「分かりました」

 

 それに対して、クイーンとさくら☆零号機は追撃を中断し、様子を見る事にした。

 

 

 一方、追撃を逃れ木々の奥に姿を隠したパンドラとグフカスタムは、次の一手について話し合っていた。

 

「思ったよりも、相手の火力が高かったわね」

「これだと、正面から仕掛けるのは、少々無謀かな」

「なら、どうする?」

「そうだね……。なら、搦め手でいこうか」

「どういう事?」

「それはね──」

 

 何やら妙案を思いついたリンコは、アミにその内容を伝える。

 それを聞いたアミは、賛意を示した。

 

「なら、早速実行ね!」

「タイミングは任せたよ」

「オッケー!」

 

 刹那、木々の影に姿を隠していたパンドラとグフカスタムが飛び出す。

 当然ながら、それを見逃すクイーンとさくら☆零号機ではなく、たちまちクイーンズハートとライデンランチャーが火を噴いた。

 

 だが、今度は躱すばかりではなく、グフカスタムもガトリングシールドで応戦し。

 パンドラもまた、ホープ・エッジの間合いに捉えるべく、その機動力を生かしてクイーンに迫る。

 

「頑張るデヨ! 撃ち負けるなデヨ紗枝!」

 

 オタクロスの応援を受けて、弾幕を躱しつつライデンランチャーを発射し続けるさくら☆零号機。

 一方、グフカスタムはそんなさくら☆零号機と一定の距離を取りつつ、まるで何処かに誘うかのような動きを見せる。

 

 やがて、暫し撃ち合っていたさくら☆零号機の背後に、フィールドを横断する様に流れる川が姿を現した。

 

 グフカスタムがそれを確認した、次の瞬間。

 突如、スラスターを噴射し、さくら☆零号機目掛けて駆け始めた。

 

「え!?」

 

 そして、驚く霧野を他所に、懐に飛び込んだグフカスタムはさくら☆零号機に対して強烈なタックルをお見舞いする。

 強烈なタックルにより弾け飛ばされたさくら☆零号機は、軌道を描きながら、川に向かう。

 

 だが、川に向かって弾け飛ばされたのは、さくら☆零号機だけではなかった。

 同じく、パンドラの強烈な蹴りを受けて、クイーンもまた、同様に弾け飛ばされていた。

 

 そして、クイーンとさくら☆零号機が川へと落水した、その直後。

 

〈アタックファンクション、ヒート・ロッド〉

 

 グフカスタムが右腕に内蔵したワイヤー状の電磁鞭を、川目掛けて射出する。

 次の瞬間、ワイヤーを伝って高圧電流が川へと流れ、落水したクイーンとさくら☆零号機にも、水中を伝って流れ込む。

 

「しまった!」

「これでトドメよ!」

〈アタックファンクション、蒼拳乱撃〉

 

 こうして、行動不能状態となったクイーンとさくら☆零号機に対して、パンドラから放たれたエネルギー弾が襲い掛かる。

 最早防御も回避もできないクイーンとさくら☆零号機は、エネルギー弾の直撃を受けて、同時に撃破されるのであった。

 

 

 

 

「やられたよ。やっぱり強いな」

「本当に、まさかジオラマの仕掛けをあんな形で利用するなんて、思いもしませんでした」

「でも、リコも紗枝さん、想像してたよりも強くてビックリしちゃった」

「へへ、特訓してるのはアミ達だけじゃないからな」

 

 試合を終えて互いの健闘を讃え合うアミ・リコ・霧野の三人。

 一方リンコは、オタクロスに声をかけられていた。

 

「リンコたん。川を利用したあの作戦、リンコたんが考えたんデヨ?」

「え、えぇ、まぁ……」

「ほほぉ~! テクニックのみならず頭も切れるとは、まさに才色兼備。リンコたん、凄いデヨね!」

「あ、ありがとうございます」

「んん~、しかし。リンコたんのLBXの動き……、何処かで見た事があるような気がするんじゃが……」

「っ! お、オタクロスさん、私、機体の修理に取り掛かるので、これで失礼します!」

 

 これ以上喋り続けるとボロが出る、それを悟ったリンコは、話を切り上げると、オタクロスの前から逃げるように立ち去るのであった。

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