無事に二回戦を突破したリンコ達は、その勢いのまま三回戦も突破し、決勝戦へと駒を進めた。
「決勝戦の相手は高校生チームね」
「
「手強そう」
決勝戦の相手は、図夢女学院のLBXバトル部と呼ばれる、文字通りLBXバトルを楽しむ部活動の部員たち。
決勝戦に相応しい対戦相手に、リンコ達は今一度気合を入れ直す。
程なく、アナウンスと共に、リンコ達は力強い足取りでステージへと向かった。
「皆さま、お待たせいたしました! 女性達の熱く華やかな戦いの祭典、フェアリー杯もいよいよ決勝戦! 果たして、この決勝戦を制し、勝利の栄光を手にするのは果たしてどちらのチームか!?」
そして、司会者は一拍置くと、決勝戦に臨む両チームの紹介を始める。
「先ずは、そのテクニックと作戦で、名だたる強敵を撃破し、決勝へと駒を進めた、川村 アミチーム!!」
紹介が終わると共に、リンコ達に向かって観客達から声援が飛ぶ。
「対するは、自慢のカスタム機とチームワークで決勝へと勝ち上がってきた、図夢女学院LBXバトル部、"ノイジー・フェアリー"!!」
一方、相手チームの紹介が終わると共に、同じく観客達から声援が飛ぶ。
刹那、それに応えるかのように、赤毛の女性が大きく手を振り始めた。
「やー、どうもどうも! 声援ありがとう!」
「おいアルマ! みっともない真似やめろ」
「まぁまぁ、ヘレナ先輩。これくらいは大目に見ましょうよ」
すると、ヘレナと呼ばれた銀髪の女性が、アルマと呼ばれた赤毛の女性に注意を促す。
しかし、小柄で眼鏡をかけた女性に宥められ、渋々容認するのであった。
「ミア、ヘレナ! これが公式大会、決勝戦の舞台なんだね! 凄い凄い!」
「おいアルマ、少しは落ち着けよ。あんたは一応、ウチのチームのリーダーなんだからさ」
「そうですよアルマ先輩。あんまり浮かれすぎてみっともない所見られたら、後でバルバラ先生からお説教を受けちゃいますよ」
「あ、えへへ……。そうだった」
公式大会には初めて出場したのか、会場の雰囲気に呑まれ、心躍らせるアルマ。
しかし、チームメンバーの言葉に、程なく冷静さを取り戻すのであった。
「そもそも、公式大会って言っても、こんなの規模としちゃ小さい方だろ」
「そうですね。アルテミスなんかと比べれば、小規模なのは否めません」
「あ、アルテミスと言えば。決勝戦の私達の相手って、確か今年のアルテミスに出てたよね! 私テレビで見た!」
「あぁ、そう言えば。あの二人ってファイナリストのサポートメンバーだったな」
「川村 アミさんと三影 ミカさん、どちらも中学一年生ながら、アルテミスの大舞台に出場し活躍する程の実力の持ち主です」
「私達よりも年下なのにアルテミスに出場するなんて……、私達、勝てるかな?」
「アルマ、なーに弱気になってんだよ」
「そうですよ。確かに、テクニックでは相手の方が上かも知れませんが、チームワークなら私達だって負けてません! むしろ、鼻を明かしてやる位の気持ちでいきましょう!」
「お、ミア、いい事言うじゃねぇか」
「うん、そうだね! よーし、いくよ、二人とも!」
こうして、ノイジー・フェアリーの面々も気合を入れ直した所で、司会者による合図が告げられる。
「パンドラ!」
「ガーベラ」
「グフカスタム!」
「いくよ、ティターニア!」
「ザイフリート・イェーガー、いくぜ!」
「ドム・ノーミーデス、いきます!」
決勝戦の舞台となる、鉱山都市と呼ばれるフィールド。そこに降り立つ、六つの小さな戦士達。
その中でも一際目につくのが、ミアの操作するドム・ノーミーデス。
ドムをベースに熱帯や砂漠等での使用を考慮し、それらの環境に適応した改修を施した機体、"トロピカル・ドム"。
同機を火器管制用の母体とし、背部に、母体以上の巨体を誇る巨大武装ユニットを連結している。
機動力の低下を補うべくホバー推進機構を備えた武装ユニットには、プロメテウス社のお株を奪うべくプロジェクトMSから輩出された"ヒルドルブ"と呼ばれる機体の主砲が搭載されており、その大口径の主砲を用いた火力投射能力は極めて高い。
一方、そんな遠距離からの火力支援に特化したドム・ノーミーデスに対して、狙撃による支援から近接戦闘までこなす事の出来る機体が、ヘレナの操作するザイフリート・イェーガー。
ザイフリートをベースに、脚部にスラスターを増設し、右膝に狙撃姿勢用の伸縮式ニー・パッドを装着。その他、右肩や左前腕部甲に小型シールドを備えている。
そして、前記した二機の支援を受けてチームの一番槍となるのが、アルマの操作するティターニア。
プロジェクトMSから輩出された機体で、全身に装備されたスラスターと、上半身上面以外の装甲を極力薄くするという設計から、扱いが難しく使い手を選ぶ事でも知られる、その名を"ケンプファー"。
同機をベースに、全身に装甲が追加され、重量の増加対策としてスラスターも増設した他。左前腕部甲にガトリング砲も増設されている。
何れもチームカラーである薄紫と白を基調とし、まさにチームでの行動を前提とした三機は、開始の合図と共に各々行動を開始する。
「ミア、いつもみたいに後方からの援護、お願いね!」
「分かりました!」
「ヘレナ、援護お願い」
「了解!」
援護の為にその場に止まるドム・ノーミーデスを他所に、ティターニアとザイフリート・イェーガーはビルの間を駆け抜け始める。
「で、アルマ、どう戦うつもりだ?」
「とりあえず、ミアの砲撃で相手を分散させて、その後各個撃破」
「お、いい作戦だな」
「えへへ……」
「けど、相手がそう簡単に分散してくれるか?」
「その為に、ヘレナが一番いいポイントから狙撃で援護してほしいの」
「成程な。なら、狙撃に適したポイントはあそこしかないな。中央の大型マンション」
やがて、二機の視界内に、台形型の大型マンションが姿を現す。
「よし、あそこの屋上からなら、フィールド全体を見渡せそうだ」
そして、ヘレナが狙撃に適した大型マンションの屋上を視認した、次の瞬間。
「何!?」
突如、大型マンションの屋上目指し、ビルの間から何かが飛び出した。
程なく、飛び出したそれは大型マンションの屋上へと着地し、頭部の赤いモノアイを左右に動かす。
「あれって……」
「グフカスタム、けど、たった一機なんて……、何かの罠か?」
大型マンションの屋上を陣取ったのは、グフカスタム。
暫し左右に動いていたグフカスタムのモノアイが、刹那、ティターニアとザイフリート・イェーガーを捕捉したのか、二機の方を向き、ぴたりと止まった。
「罠でも何でも、各個撃破するチャンス! ヘレナ、ここから狙撃できる?」
「あぁ、勿論だ」
それに対して、ザイフリート・イェーガーは装備した狙撃ライフルを構えると、狙いを定め。
次の瞬間、引き金を引いた。
刹那、銃口から放たれた弾丸が、屋上のグフカスタム目指して空を切る。
だが、グフカスタムは身をそらし、自身に迫る弾丸の軌道を避けてみせた。
「な、避けやがった!?」
必中を期したが避けられてしまい、思わず声が漏れるヘレナ。
しかし、直ぐに気持ちを切り替えると、二射目の準備を進める。
だがその時、ヘレナは、グフカスタムが屋上の貯水タンクに電磁鞭を射出している事に気がつく。
「(何だあれ? まるで下りる為の準備のような……)っ! まさか!?」
そして、ヘレナが何かに勘付いた、その直後。
グフカスタムは、一部ガラスとなった床を蹴破ると、そのまま大型マンションの吹き抜けへと進入していく。
「くそ! 吹き抜けに入られた、これじゃ狙えない! ……ミア!」
「は、はい!」
「中央に建つ大型マンション、そこから砲撃できるか?」
「で、できます!」
「なら、やってくれ!」
「了解! 落下速度を予測して、着弾点を算出……。そこだ!」
刹那、後方に陣取るドム・ノーミーデスの大口径の主砲が火を噴き、巨大な砲弾が弾道を描いて大型マンションへと飛来する。
直後、大型マンションの外壁に弾着すると同時に、巨大な爆発と共にそのエネルギーが大型マンションの吹き抜けを襲う。
「やった、のか?」
ヘレナはやや疑問を抱きつつも、あの威力では助からないだろうと、グフカスタムが撃破されたと半ば思っていた。
だが、その直後、彼女は自身の見通しが甘かったことを痛感する。
「何!?」
何故なら、爆煙を突き破り、殆ど無傷のグフカスタムが大型マンションの中腹に降り立ったからだ。
(ミアがヘマした……、いや違う! くそ、向こうの方が一枚上手って事か!)
一瞬、ヘレナは仲間のミスを疑ったが、それが誤りだったと、グフカスタムが電磁鞭を巻き上げているのを目にし気がつく。
同時に、彼女はグフカスタムがあの砲撃を受けて無傷であった理由も気がついた。
砲撃を受ける直前、グフカスタムは貯水タンクに射出した電磁鞭を使用し、落下速度を減速させた事で直撃を免れたのだと。
自分達の行動を先読みしたかのようなこの行動に、ヘレナは、ノーマークだったリンコへの警戒感を持ち始める。
そして、リンコの次なる手を予測し始めた、その時。
ティターニアとザイフリート・イェーガー、両機に向けられたガトリングシールドの銃身が回転を始め、程なく、唸りを上げると共に幾多もの弾丸が両機目掛けて降り注いだ。
「アルマ、無事か!?」
「うん、大丈夫!」
「くそ、煙幕かよ……」
しかし、降り注いだ弾丸の数々はティターニアとザイフリート・イェーガーの装甲を叩く事はなかった。
否、初めから両機を狙ってはいなかった。
周囲に弾丸が降り注いだことにより、舞い上がった煙が煙幕の役割を果たし両機の視界を遮る。グフカスタムはそれを狙っていたのだ。
(どこからくる……)
この煙幕に乗じて仕掛けてくるであろうグフカスタムを警戒するヘレナ。
次の瞬間、煙幕を突き破り接近する微かな機影を捉えたヘレナは、狙撃ライフルを構え、間髪入れずに引き金を引いた。
そして、放たれた弾丸が煙幕を切り裂き、それは姿を現した。
「パンドラ!?」
放たれた弾丸を紙一重で躱したのは、グフカスタムではなく、パンドラ。
パンドラは狙撃ライフルから二射目が放たれる前に懐に飛び込むと、装備したホープ・エッジを振るい、狙撃ライフルの銃身を斬り落とした。
そして、銃身を斬り落としたビームの刃は、次にザイフリート・イェーガーの頭部に狙いを定める。
しかし、ザイフリート・イェーガーも易々とやられる筈もなく、腰部の内反りしたヒートナイフを咄嗟に構えると、迫るビームの刃を受け止める。
「ヘレナ、あそこ!」
「っ、本物はあっちか!?」
刹那、アルマが示した方へとモノアイを向けると、そこには、ビルの間を駆け抜けるグフカスタムの姿があった。
しかも、その進行方向は、ドム・ノーミーデスがとどまっている場所であった。
「アルマ、パンドラは私が抑えておく、グフカスタムを頼む!」
「分かった!」
グフカスタムを追いかけるティターニアを見送ると、ヘレナは、パンドラに意識を集中させる。
「スナイパーだからって、楽に勝てると思うなよ!?」
「あら、私、スナイパーの相手は慣れてるの」
「言ってくれるな!」
一度間合いを取り、暫し睨みあった後、ザイフリート・イェーガーとパンドラは鍔迫り合いを再開する。
一方、グフカスタムを追いかけるティターニアは、自慢のスラスターを噴射しグフカスタムを視界に捉えると、装備したソードオフショットガンを構え、引き金を引いた。
しかし、放たれた弾丸は、寸での所でグフカスタムが跳躍した為、虚しく空を切る。
跳躍したグフカスタムは、フィールドを横断する高速道路に降り立つと、再び駆け始める。
それを見て、ティターニアも後を追いかけようとするも、ミアがそれに待ったをかけた。
「どうしたの、ミア?」
「アルマ先輩、高速道路なら、移動ルートが限定されますから、相手の動きを予測して砲撃するのは容易です!」
「成程!」
「アルマ先輩は、万が一撃ち損じた場合に備えて先回りをしてください!」
「了解! 頼んだよ、ミア!」
「はい!」
刹那、ティターニアはスラスターを最大限噴射すると、先回りを始める。
一方、ドム・ノーミーデスは、その自慢の主砲が仰角を上げる。その様相は、まるで鎌首をもたげるているかのようであった。
「ここ!」
刹那、予測を算出したミアの声に呼応するかのように、主砲が唸りを上げた。
放たれた砲弾は、理想の弾道を描き、やがて高速道路に弾着する。
しかも、高速道路に弾着したのはその一発だけではなかった。二発、三発と、等間隔で次々と砲弾が降り注いでいく。
やがて、砲撃に耐え切れず、高速道路の一部が崩壊してしまう。
「アルマ先輩、やりましたよ!」
「……いや、まだ」
「え?」
この光景を目にし、ミアはグフカスタムを撃破したものと思い、嬉々とした声をあげる。
だが、アルマはそんなミアとは対照的に険しい表情を作ると、崩壊した現場へとティターニアを近づけた。
「っ!?」
次の瞬間、崩壊した路面が動き出し、アルマは息を呑んだ。
路面がひとりでに動く事などあり得ない、あるとすれば、それは何者かが動かしているという事だ。
やがて、路面は重力に従い、耳をつんざく音と共にティターニアの目の前に倒れた。
そして、巻き起こる砂煙の中、倒れた路面を踏みしめながら、それは姿を現した。
「あ、あぁ……」
現れたグフカスタムの姿を目にし、アルマは、機体から溢れ出す強者のオーラに気圧される。
しかし、ふと我に返ると、アルマはまるで自分自身を鼓舞するかのように、雄叫びを上げると、構えたソードオフショットガンの引き金を引いた。
「っ!」
だが、放たれた弾丸はガトリングシールドに弾かれ、有効弾は与えられない。
その間に、グフカスタムはティターニアの懐に飛び込むと、装備したヒートサーベルを振るう。
刹那、ヒートサーベルがソードオフショットガンの銃身を斬り落とした。
それを目にし、ティターニアはソードオフショットガンを手放すと、次いで、スラスターを噴射し、後方へと跳躍した。
だが、進路上に佇んでいた巨大な煙突に激突し、ティターニアは急停止を余儀なくされる。
しかし、それが逆に功を奏し、グフカスタムの偏差射撃を回避するのであった。
「今度はこっちの番だぁぁぁぁっ!!」
〈アタックファンクション、ミートチョッパー〉
刹那、お返しとばかりに、ティターニアの左前腕部甲に収納されていたガトリング砲の砲身が姿を現すと、回転と共に唸りを上げ、次々と弾丸をばら撒き始めた。
だが、ばら撒かれた弾丸の数々は、グフカスタムの周囲に降り注ぎ、肝心のグフカスタムには一発たりとも命中しなかった。
これは、ガトリング砲の命中精度が極端に悪いわけではなく。
回避方向を予測し行ったアルマの攻撃を、リンコが見破ったが故の結果であった。
「見た目は派手でも、当たらなければどうということはない」
リンコの口から呟かれた感想を耳にし、アルマは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる。
それでも、アルマは諦める事無く、ガトリングシールドの銃口を再度向けるグフカスタムに対し、スラスターを噴射すると、ティターニアを突撃させた。
回避ではなく突撃、アルマのその選択に意表を突かれたグフカスタムは反応が遅れ、結果、ティターニアの強烈なショルダータックルにより、ガトリングシールドの銃身は見事なまでにひしゃげる事となった。
「ふふふ、ははは!」
「?」
使い物にならなくなったガトリング砲をパージしながら、リンコが不意に笑い声をあげたことに、アルマは首をかしげる。
「咄嗟の状況判断、そして、その判断を躊躇する事無く実行できる度胸。流石は、妖精たちを率いるだけの事はあるわね」
「あ、ありがとうございます」
「けど、なればこそ、もう少し仲間の状況は把握しておいた方がいいわよ」
意味深な言葉がリンコの口から零れた、次の瞬間。アルマの耳に、ミアの悲鳴が聞こえた。
咄嗟にドム・ノーミーデスの方に視線を向けると、そこで目にしたのは、いつの間にか接近していたガーベラが、ドム・ノーミーデスに猛攻を仕掛けている光景であった。
「あのガンダムタイプ、いつの間に!?」
「目の前の敵に集中するのもいいけど、リーダーならば、もっと戦場全体に気を配らないとね」
どうやらガーベラは、ノイジー・フェアリーの面々がグフカスタムとパンドラに気を取られている隙に、大きく迂回し後方へと回り込んだようだ。
そんな同機の奇襲により破壊されたのか、自慢の武装ユニットをパージし、ヒート・ハルバードで応戦するドム・ノーミーデス。
しかし、ミア自身が近接戦闘を得意とするところではない為、ガーベラの猛攻に耐え切れず、程なく、ビームサーベルの一閃を受けてバトルから落伍した。
「これで、一つ……。いえ、二つね」
「え?」
「悪い、アルマ」
リンコの言葉に次いで聞こえてきたのは、ヘレナの声。
どうやら、ザイフリート・イェーガーも、善戦むなしくバトルから落伍してしまったようだ。
「これで戦況は三対一。どうする?」
「……、でも、それでも私は諦めない! ここまで戦ってきたミアやヘレナの為、応援してくれるキリー先生やバルバラ先生、それにイルメラさんや多くの人たちの為に、私は最後まで戦う!」
「その意気や良し!!」
ヒートサーベルを構え直すグフカスタム、対して、ビームサーベルを構えるティターニア。
暫し睨みあった後、遂に、両機が大地を駆けた。
「これでぇぇぇっ!!」
刹那、斬りかかる寸前にグフカスタムの胴体ががら空きになっている事に気がついたアルマは、胴体目掛けてビームサーベルの一閃を繰り出す。
だが、その光の刃がグフカスタムの胴体を切り裂く直前、アルマは、リンコの言葉を耳にする。
「勝ったぞ!」
〈アタックファンクション、ヒート・ロッド〉
刹那、アルマは気がついた、グフカスタムが無防備な胴体を晒したのは、右腕に意識を向けさせない為だと。
次の瞬間、ビームサーベルがグフカスタムの胴体を切り裂く中、右腕から射出された電磁鞭が、グフカスタム共々ティターニアをぐるぐる巻きにしていく。
そして、巻き付き終わった所で、高圧電流が両機に流されスタン状態となる。
「しまった!」
一刻も早くこの状況から抜け出したかったアルマだが、無情にも、ティターニアにトドメを刺すべく、二つの機影が近づく。
「負け、た……」
そして、勝敗を決するパンドラの必殺ファンクションが放たれる中、アルマは、相手の力量が自分達よりも一枚も二枚も上手だった事実に、絞り出すような声でそう呟くのであった。
こうして、フェアリー杯優勝の二文字は、川村 アミチームの手に渡る事となった。
決勝戦の後、川村 アミチームの三人には優勝トロフィーと、副賞としてルイ・ビット社の数量限定ポーチが授与される等、閉会式も滞りなく行われ。女性達の可憐で華やかな戦いの祭典は幕を下ろす事となった。
「あぁ……、これがルイ・ビットの数量限定ポーチ……」
閉会式を終え、観客達が次々と会場を後にする中、リンコ達は会場で優勝の余韻に浸っていた。
特に、アミは副賞の数量限定ポーチを、恍惚とした表情で眺めている。
「アミ、いつかそのポーチを手に入れたいって、言ってたもんね」
「へ、へぇー。そうなんだ」
そんなアミの様子を見つめるミカとリンコ。
「もしかして……、この大会に参加したのって、特訓はただの口実で、本当はこのポーチが欲しかったからじゃ……」
すると、不意にリンコがぽつりと呟いたその言葉に、すかさずアミが反応を示した。
「あーら、リンコ。そんな事ないわよ」
「でも、さっきの表情は……」
「な・い・わ・よ?」
「アッハイ」
アミの浮かべた笑顔の奥底にある、どす黒いオーラを感じ取ったリンコは、身の危険を回避するべく、咄嗟に肯定の返事を返すと、この話題に触れるべきではないと心に誓うのであった。
「あのー」
そんなやり取りを終えた所で、不意に、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
声の方へと振り返ってみると、そこにいたのは、決勝戦で戦ったノイジー・フェアリーの面々であった。
「確か、図夢女学院LBXバトル部の」
「はい、ノイジー・フェアリーです! 今日は、楽しいバトルをありがとうございました!」
感謝の言葉と共に一礼するアルマ、これに対して、リンコ達もお礼の言葉を返す。
「でも、流石はアルテミス出場者ですよね。私達、手も足も出ませんでした」
「だな。実を言うと、少しは勝てるかもって思ってたが、やっぱりアルテミス出場者のレベルは桁違いだな」
「そ、そんなことありませんよ。皆さんも、十分に強かったです」
「ん、アルテミスでも、通用すると思う」
「ミア、ヘレナ、聞いた!? 私達、アルテミスでも通用するってさ! えへへ……、来年のアルテミスに出場しちゃう?」
「おいおいアルマ、そりゃ飛躍し過ぎだろ」
「そうですよ、アルマ先輩。アルテミスに出場するなら、先ずは他の公式大会などで優勝しないと」
「あ、そっか」
刹那、彼女達の間に笑いが起こる。
「では、改めて。今日はありがとう! また、縁があったらバトルしてね!」
「勿論!」
「次は負けねぇように鍛えておくからな」
「はい、その時は楽しみにしています!」
「今度は、バトルだけじゃなく、LBXのお話もしたいです」
「ん、楽しみ」
決勝戦を戦った両チームは、今後の健闘を祈ると、最後に各々握手を交わし、それぞれの帰路につくのであった。