うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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妖精の残香

 フェアリー杯から二日ほどが経過したこの日、凛空の姿は、再びアキハバラにあった。

 と言っても、今回は大会などに参加すためではなく、バン達と共に解読コードのデータ回収、その進捗状況を確かめる為だ。

 

「おぉ、よく来たデヨ」

 

 部屋の主であるオタクロスに出迎えられ、オタクロスの部屋へと足を運んだ凛空達。

 バンは部屋に到着するなり、早速回収作業中のハッカー軍団に進捗状況を尋ねに向かう。

 

 一方、残された面々は、オタクロスが用意した飲み物を手にしながら雑談に興じ始めた。

 

「そうじゃ……。アミたん、ミカたん、フェアリー杯、優勝おめでとうデヨ!」

「ありがとう、オタクロス」

「ん」

 

 その最中、不意に、オタクロスの口から祝福の言葉が飛び出す。

 すると、事情を知らないカズは首をかしげると、フェアリー杯について尋ね始めた。

 

「そのフェアリー杯って言うのは、何なんだ?」

「女性プレイヤー限定のLBX大会よ。カズ達には黙ってたけど、私達、それに出場してたの」

「秘密の、特訓」

「へぇー、そんな大会まで開かれてたのか。知らなかったな、凛空」

「え!? う、うん、そうだね……」

 

 不意にカズから話を振られ、慌てて自身も知らなかったていで返事を返す凛空。

 

「おぉ、そうじゃ! お前ら、ワシがフェアリー杯で撮ってきた写真、見るデヨ?」

「え? オタクロス、写真なんて撮ってたの?」

「勿論! アミたんやミカたん、それに素晴らしい女性プレイヤーの活躍をバッチリこのカメラで収めたデヨ!」

 

 これ以上フェアリー杯の話題を深掘りされるのはよろしくないと、何とか別の話題に切り替えようと凛空が適当な話題を探し始めた、刹那。

 オタクロスがカメラを取り出しながら放ったその言葉を耳にし、凛空は心臓が縮み上がるのを感じた。

 

「へぇー、よく撮れてるじゃない」

「おぉ、こんな感じの大会だったのか」

「でも、何だか、紗枝さんの写真が多い様な、気がする」

「ほ、本当だね……」

「偶々デヨ。ほれ、アミたんやミカたんたちの素晴らしい写真もこの通りじゃ!」

 

 カメラのアルバム機能を使い、保存された写真に目を通していく凛空達。

 写真に収められた志麻やノイジー・フェアリー等の対戦相手を目にし、思い出話に花を咲かせるアミやミカ。

 

 一方、凛空は女装した自身の写真が今にも出てくるのではないかと、気が気ではなかった。

 

「おぉ、そうじゃ。お前はこの子の事、知ってるデヨ?」

「っ!!」

「んー、誰?」

「およ、リンコたんの事を知らないデヨか? アミたんの友達じゃから、てっきりクラスメイトか何かじゃと思っておったが……」

 

 そして遂に、凛空の恐れていた一枚が、カメラのモニターに表示される。

 それは紛れもなく、凛空がリンコとして、ステージ上でバトルを行っている一瞬を収めた写真であった。

 

「確か、アミ達のクラスにこんな子いなかったよな、な凛空?」

「そ、そうだね、うん」

 

 平静を装いながら質問に答える凛空。

 すると、そんな凛空の様子を目にし、アミが笑いをこらえ始める。

 

「俺のクラスにもリンコなんて名前の女子はいねぇし……、そもそも、学校でこんな子、見た事なかったような」

「およ、それは不思議デヨね。凛空よ、お主もリンコたんの事については何も知らないデヨ?」

「う、うん。見た事、ない、かな」

 

 このままではカズやオタクロスに、否、二人を通じて多くの人々に自身の黒歴史が知られてしまう。

 凛空はこの人生最大の危機を回避するべく、咄嗟に、アミに対して視線で助けを求めた。

 

(助けて、アミ!)

(うーん、どうしようかな~?)

(お願いだよ!!)

(そうだ、最近、ミソラ商店街にあるクレープ屋さんで期間限定の白桃バニラクレープが発売されたの、凛空なら、知ってるわよね?)

(う、うん。昨日、ミカと一緒に行ったばかりだから……)

(私もそれ、食べてみたいな~)

(分かった)

(なら、交渉成立ね)

 

 この間、たったの二秒。

 交渉を終えたアミは、早速助け舟を出し始めた。

 

「そうだ、言い忘れてたんだけど、リンコちゃんって、別の学校に通ってる子なの」

「なーんだ、通りで見た事無い訳だ、な凛空」

「そうだね」

「成程、そう言う事だったんデヨね」

 

 その後、アミの助け舟もあり、リンコの話題から別の話題に逸らす事に成功する。

 こうして、人生最大の危機を辛くも脱した凛空は、立役者であるアミにそっと近づき小声で感謝の言葉を伝える。

 

「ありがとう、アミ」

「それよりも、約束、忘れないでよ?」

「う、うん」

 

 当分アミには頭が上がらないだろう、そんな事を思いつつ、凛空はその後も、皆との雑談に興じるのであった。

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