うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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本編更新を楽しみにしていた皆様、本当に申し訳ございません。
イナイレ最新作のイナダン参戦を記念して、特別編第八弾となります。

当初の想定よりもボリュームが大きくなったので、今回は前編と後編の二部構成となってります。


英雄たちのバトルローグ 前編

 西暦2054年。世界を騒がせたミゼル事変から四年の時が経過し、当時の記憶も人々の中から薄れ、世界はすっかり事変以前の平穏な日々を取り戻していた。

 同時に、ミゼル事変解決の立役者とも言うべき少年少女達。レジェンドプレイヤーと呼ばれる彼ら彼女らもまた、一学生として、各々の日々を送っていた。

 

「あ、こっちこっち!」

「ん、お待たせ」

「よし、これで全員揃ったな」

「だね!」

 

 とある金曜日の夕暮れ時。シブヤタウンの一角にあるファミレスの店内に、レジェンドプレイヤーと呼ばれた少女達の姿があった。

 他のお客さん同様、各々が通う学校の帰りに来たのだろう。四人共、通っている学校の制服に身を包んでいる。

 川村 アミ、古城 アスカ、花咲 ラン。そして、最後に合流した三影 ミカ。

 それぞれの夢や将来の為に別々の高校に通っている四人。その四人がファミレスに集まったのは、参加者の一人であるアミが発起人となり、放課後に女子会をしようと残りの面々を誘ったからだ。

 因みに、本当ならジェシカ・カイオスも誘いたかったが、彼女はA国を活動拠点としている為、やむなく断念していた。

 

「それじゃ、早速始めましょうか!」

「じゃ、先ずはドリンクバーを注文」

「シェア用にフライドポテトと……サラダはチキンのサラダでいいよな?」

「ん、それでいい」

「あ、追加でミートドリア頼んでもいい?」

「ラン、がっつり食べるの?」

「今日の授業はとりわけハードでさ、もうお腹ペコペコ」

「いいわよ、どんどん注文しちゃって」

 

 開始早々、設置されていたタブレット端末を使って次々と料理を注文していく四人。

 数分後、四人の座るテーブルは、店員が運んできてくれた料理の数々で瞬く間に埋め尽くされた。

 

「皆、今日も授業お疲れ様! 乾杯!」

「「「乾杯!!」」」

 

 アミの乾杯の挨拶と共に、グラス同士のぶつかる音が鳴り響く。それを合図に、各々が注文した料理に手を付けていく。

 アミとアスカはフライドポテト、ランはミートドリア。そしてミカは、ランがおすすめしたパンケーキだ。

 

「ん、これ美味しい」

「でしょでしょ!」

「パンケーキ自体はほのかな甘み、でも、添えられたアイスの甘みも相まって十分な甘さ。そして、フランボワーズソースの香りと酸味が組み合わさって……ん、美味しい」

「だよねだよね!」

「そんなに美味しいんだ……私も後で注文しようかしら」

「だったら俺も」

 

 こうして料理に舌鼓を打ちつつ、四人は様々な話題で盛り上がり始める。

 各々が通っている学校の事、美容やファッション。更には、最近ハマっているドラマや映画。そして、LBXについて。

 女の子同士、プレイヤー同士だからこそ、共感し合い情報交換する事が出来る。

 

「そういや、ランはこの店に誰かと来た事あるのか?」

「え?」

「だって、ここのパンケーキが美味しいって、前に食べた事なきゃおすすめできないだろ?」

「あ、あぁ、えっと……」

 

 そんな中、アスカがふとした疑問を口にする。

 すると、何故かランは言い淀み。更には、誤魔化すようにドリンクを飲み始める。 

 

「ランは以前、"ユウヤ"と"二人っきり"で、パンケーキ食べてたのよね」

「んぶっ!!」

 

 刹那、アミの口から飛び出した爆弾発言を聞き、ランは飲んでいたドリンクを吹き出しそうになる。だが、何とか寸での所で堪える。

 一方、アスカとミカは、親友の恋愛模様に興味津々ですと言わんばかりの視線をランに向ける。

 

「アミ、み、見てたの!?」

「覗き見するつもりはなかったの。ただ、お店の前を通りかかった時に偶然、ね」

「あ、あうぅぅ……」

「それで、何処かの帰りに寄ったのか? それともファミレスデート?」

「ん、詳しく」

「二人とも、そんなに食いつかないでよぉ!」

 

 口では嫌がっているものの、当時の状況を詳しく話すまで解放させてもらえない事を、ラン自身も理解していた。

 なので、深呼吸して気持ちを落ち着かせた後、ランは当時の事を告白し始めた。

 

「……切っ掛けは、この前のテストの点数が赤点ギリギリだったからで──」

 

 ラン曰く、テストの結果が散々だと知ったユウヤが次回のテストで挽回できるようにと、自宅ではなく外での勉強会を提案したのが事の始まり。

 図書館や行政施設の学習スペースなど、様々な候補の中から二人が選んだのが、このファミレスであった。

 こうして二人はお店で勉強会を始めたのだが……LBXや空手の事なら苦にならないが、勉強となると途端に集中力が続かなくなるラン。

 そこでユウヤは、一計を案じる事にした。

 

「それで、ユウヤが出す問題に正解したらパンケーキを一口食べられる。逆に、不正解なら食べられないどころかユウヤが食べちゃう事になって──」

 

 それが、パンケーキをダシにしてランのやる気を引き出す、と言うものであった。

 

「で、上手くいったの?」

「えっと……」

「上手くいかなかったのか?」

「じゃなくて……」

「なら、どうなったの?」

「結局教科書問題は正解できなかった。けど、ユウヤがさ、誰でもわかる簡単な問題を出してくれたの! お陰で美味しいパンケーキを食べられたんだ! 何だかんだ言っても、本当にユウヤって優しいよね、えへへ……。それにしても、ユウヤにあーんしてもらったパンケーキ、美味しかったなぁ……」

 

 恍惚とした表情を浮かべながら、当時の事を語り終えるラン。

 一方、勉強会した話と言う名の惚気話を聞かされた残りの三人は、一斉に席を立つと、ドリンクバーに珈琲を取りに行くのであった。

 

 因みに、彼女達の周囲のテーブルに座っていたお客さん達も同時にドリンクバーに向かっていたのは、ここだけのお話。

 

 

 

 

「あー、美味しかった!」

「ん、満足」

「全くだ」

「それじゃ、そろそろお開きにする?」

 

 美味しい料理に楽しい会話で盛り上がった女子会も終了の時間が迫っていた。

 延長を希望する者もいない様で、お手洗いなどを済ませて、あとはお会計……と思われたその時。

 

「「「「Crazy(クレイジー) IV(フォー)ーーーッ!!」」」」

 

 突如、店内に女性の金切り声が響き渡る。

 四人はもとより、店内にいた他のお客さん達も、一斉に声のする方へと視線を向ける。

 店の出入り口、そこにいたのは、派手な格好に身を包んだ四人の女性と、撮影スタッフと思しき数人の男性達の姿であった。

 

「おはナマスジュール! Crazy IVの"クレ"でーす!」

「おはモーニングジョルノ! Crazy IVの"アズ"だよー!」

「おはグーテンチャオ! Crazy IVの"ジジ"だお!」

「おはボンウマガ! Crazy IVの"しー"っす!」

「「「「Crazy IVのー、クレイジーテレビ―の時間だよー(だおー)(ーっす)!!」」」」

 

 撮影用のカメラに向かって特徴的な挨拶を行う女性四人。どうやら、四人は配信者の様だ。

 

「さて、今日やって来たのはここ! シブヤタウンにあるファミレスでーす!!」

「おー! 金曜の夕方だけあって、店内はキラキラJK達で一杯だー!」

「これは今回の企画、大いに盛り上がりそうだお!」

「んじゃ、そろそろ今回の企画内容、発表するっす!」

「今回の企画はー……これっ!! "Crazy IVとLBXバトルして勝つまで帰れま四円(しえん)"!!」

「「「わーっ!! パチパチ―ッ!!」」」

 

 動画の企画が発表された瞬間、店内にざわめきが起こる。

 当然であろう、彼女達は、自分達とバトルして勝つまで店から出られないと勝手に宣言したのだから。

 

「あの人達、何言ってるの?」

「勝手すぎる……」

「何なのよ、勝手に私達を巻き込まないでよね」

「あ、思い出した!?」

「アスカ、あの人たちの事、何か知ってるの?」

「この間、ヒロとセンシマン解説系の動画を見てた時に話題に上がってさ。なんでも、最近注目を集めてる女性配信者グループなんだって」

「へー」

「尤も、注目を集めてるのは人気だからじゃないらしいけどな。えっと、何だっけ、えん……」

「それって、もしかして炎上系?」

「そうそれ! 過激な発言や迷惑行為を繰り返して注目を集めてるんだよ!」

 

 アスカの説明を聞き、残りの三人はCrazy IVの非常識さが腑に落ちるのであった。

 一方、Crazy IV側は、店内のざわめきなど何処吹く風と言わんばかりに話を進めていく。

 

「んじゃ早速、Dフィールド展開ーっ!!」

 

 だが次の瞬間、ざわめきは悲鳴に変わった。

 何故なら、クレの合図と共に店を囲むようにエネルギーフィールドが展開され、文字通り逃げる事が叶わなくなったからだ。

 

「あれって、まさかグランドスフィア!?」

 

 エネルギーフィールドを見たアミは、それが、ミゼルとの最終決戦の際に使用されたグランドスフィアと同様の物であると見抜く。

 強化ダンボール技術の完成形とも呼べるグランドスフィア。その特徴は、内外の衝撃を百パーセント吸収するというもの。しかし、展開するには複数の端末を配置する必要があり、最終決戦当時は、護衛の機体を含め約一万機ものLBXを投入し展開していた。

 あれから約三年の歳月が経過し、グランドスフィアに関する技術がある程度広まった事で自動化並びに効率化が進み、数機の端末で半径百メートル内でフィールドを展開する事が可能となった。

 

 最も、ある程度普及したとは言え、まだまだ個人で所有できる技術ではない。

 故に、Crazy IVの背後には、強力なパトロンがいるのだろう。

 

「展開完了、イェーイ!」

「それじゃ早速──」

「ちょっと君達! 勝手なことをされちゃ困るよ!!」

 

 刹那、店の奥から店長らしき男性が飛び出すと、Crazy IVに注意を行う。

 しかし、Crazy IV側は全く聞く気がない。

 

「ちょっとスタッフー! 撮影のジャマだからさ、このウザイ店員達、奥に閉じ込めといてー!」

 

 クレの指示と共に、撮影スタッフの後ろに控えていた数人の屈強な男達が動き出す。そして、店長をはじめとする店員達を店の奥へと追いやった。

 

「それじゃ、邪魔者もいなくなった所で、早速バトルの開始だよーっ!」

「「「イェーイッ!!」」」

「さぁ、最初のお相手は、誰かな誰かなー?」

「バトルしようよー」

「勝てば帰れるんだお? バトルするお!」

「さぁさぁ、やるっす!」

「ちょっと貴女達!!」

 

 店内の多くの者が恐怖する中、突如、毅然とした声が響く。

 声の主は、誰であろうアミだ。

 

「貴女達のやっている事は立派な営業妨害! それに、逮捕・監禁罪に該当する立派な犯罪行為よ!!」

「そうよ、勝手に関係のない人達を巻き込まないで!」

「ちょっとは周りの事を考えろよな!」

「ん、迷惑」

 

 更にラン、アスカ、ミカの三人も続き。四人は他のお客さん達を守るように、Crazy IVの前に立ち塞がる。

 これに対してCrazy IV側は鬱陶しそうな表情を一瞬見せるも、直後に四人がレジェンドプレイヤーと呼ばれた少女達と気づくと、途端に目を見開いた。

 

「嘘! もしかして、レジェンドプレイヤー!?」

「本当だ! 四人共、テレビやネットで見たことある顔だ!」

「凄いお! 感動だお!」

「こんな所でレジェンドプレイヤーの皆さんに会えるなんて……うひょっ! 早速同接がえげつない事になってるっす! これは神回間違いないっす!」

「ちょっと、勝手に盛り上がらないでよ!」

「あーごめんごめん。で、何だっけ?」

「貴女達のやっている事は迷惑以外の何物でもないの! だから、今すぐフィールドの展開を解除して、皆を開放しなさい!」

「……発言の意味が不明なんだけど」

 

 どうやら、Crazy IV側は相手がレジェンドプレイヤーであろうと聞く耳を持たない様だ。

 

「あ、貴女は、自分達のしている事が沢山の人達に迷惑をかけているって事が分からないの!?」

「あ、そうなんだ。で? それが何か問題?」

「な!?」

「ルール守ってお行儀よくやって……そんなテンプレな動画じゃ、再生回数もいいねも稼げねぇんだよ!!」

「っ!」

「上り詰めたレジェンドプレイヤーの皆さんには分からないでしょ、私達凡人の苦労なんて!」

「他者よりもバズり! 他者よりも推され! 他者よりも魅了する! 上り詰める為には、何でもやらなきゃだめだお!」

「そうっす! あたし達は、配信活動に全てを捧げてるんっす!!」

「そう、身体も、人生も……そして、心も!」

 

 刹那、クレが通常のDキューブよりも三倍は大きい、特別なDキューブを展開させる。

 

「ねぇ、バトルしてよ、私達と」

「え?」

「言ったでしょ、私達とバトルして勝てば帰れるって」

「そちらがバトルに勝てば、皆を解放するお」

「その代わり、負けたら、あたし達のチャンネルにずーっと出演してもらうっす!」

「何よそれ、おかしいわよ、そんなの!」

 

 刹那、Crazy IVの面々が狂気的な笑みを浮かべる。その瞬間、アミは理解した。彼女達が常軌を逸している事を。

 最早、話し合いで解決は不可能。ならば、残された手段は一つ。

 アミは残りの三人と視線で会話を行うと、自らのLBXを取り出す。続いて、残りの三人も各々のLBXを取り出した。

 

「……分かったわ。そのバトル、受けて立つ!」

 

 程なく、特別なDキューブを挟んで両者が対峙する。

 

「沢山の人達が私達を見ている」

「負けるはず、ない」

「この同接数こそ、その証」

「ヒヒヒッ!」

 

 

「「「「世に狂気のあらんことを!!」」」」

 

 

 そして、Crazy IVの掛け声と共に、戦いの幕が切って落とされた。




後編はクリスマスに投稿予定ですので、どうぞお楽しみに。
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