秋も深まり、めっきり日脚も短くなってまいりました。
朝夕は寒気がひとしお身にしみるようになりましたが、皆様、お変わりなくお過ごしで──。
え? そんなのいいからさっさと本編読ませろ?
それでは、本編をどうぞ。
インフィニティネット中に散らばった解読コードのデータ、その回収作業が始まってから、丁度一週間が経過したこの日。
バンや凛空をはじめとした面々は、ハッカー軍団のヤマネコからの連絡を受けて、アキハバラタワーの最上階にあるオタクロスの部屋に足を運んでいた。
「凄い! 本当に一週間でデータを全部回収するなんて!」
「ま、俺っち達にかかれば、これ位造作もねぇよ」
「にしても、本当に凄いわね」
「これ程の作業スピードなど、私達ハッカー軍団以外では到底真似できないのでーす!」
「ネットで僕たん達に敵う奴なんていないもん!」
一行を出迎えたハッカー軍団の面々から説明を受けたバン達は、その作業の速さに感心する。
それに対して、ハッカー軍団のグンソウ、そして魔女の様な風貌のマジョラムの二人は鼻高々の様子。
「俺達ハッカー軍団のメンバーはアキハバラ中だけじゃねぇ、日本中にいる。だから、その数は何千、何万、或いはそれ以上にもなる。これこそ、俺達ハッカー軍団最大の強みだ」
最後に、ヤマネコが話を締めくくった所で、バンが本題である解読コードのデータの話を切り出した。
「所で、肝心のデータは?」
「あぁ、回収したデータはオタクロスの手で復元作業中だ。こいつが一番繊細で神経を使う作業だからな、オタクロスが一番適任なんだよ」
繊細とは真逆なイメージしかないオタクロスに任せて大丈夫なのだろうかと、そんな不安が一瞬過ぎるバン・アミ・カズの三人。
だが、専門家であるヤマネコが言うのだからと、三人はヤマネコの言葉を信じ、奥の部屋に籠っているオタクロスの作業が終わるのを待つのであった。
とはいえ、やはり待っているだけでは手持無沙汰になる為、雑談に興じ始める一行。
「そう言えば、今日はジンの奴は来てないな」
その矢先、不意にカズの口から、この場にいないジンの名前が飛び出す。
「ここに来る前に連絡したら、用事があって来れないって言ってたけど……」
「ジン君なら、今頃サイバーランス社の本社ビルにいる筈だよ」
「え? どういう事?」
「ジン君、プロトゼノンの事で誠司さんに話したい事があって言ってたから。多分、これまでのバトルを経てジン君が感じたプロトゼノンの改善点などの意見を伝えたいんだと思うよ」
凛空の口から語られた理由を聞き、納得した様子を見せる他の面々。
と、ジンの真面目なテストプレイヤーっぷりに、カズの口から「俺なんて面倒くさがって、そんな報告しねぇだろうな」なんて言葉が零れると、それに対してアミが「それじゃテストプレイヤーの意味がないじゃない」と、ツッコミを入れ、そこで笑いが起こるのであった。
程なく、笑いも収まった所で、バンが別の話題を切り出し始めた。
「そう言えば知ってる? 年末にも開業する、LBXがテーマのテーマパーク!?」
「あ、知ってる知ってる! 確か、伊豆諸島にある無人島を丸ごとテーマパークにしたのよね」
「俺もこの前のLマガで見たぜ! 今から開業が楽しみだよな!」
「ん、楽しみ」
それは、国内、いや世界初となるLBXがコンセプトのテーマパークの話題。
その特徴は何と言っても、話の中にも出てきた、島一つを丸ごとパークの敷地にしている事で、敷地内には、来園者の玄関口となる港の他、来園者の宿であるホテル、コンセプトであるLBXにちなんだアトラクションの数々。
更に、ここでしか手に入らない限定グッズを取り扱っているショップや、来園者の舌を満足させるレストランの数々。
更に更に、パーク内では定期的にショーやパレード、LBXをコンセプトにしている事から、大規模なバトル大会の開催なども予定されている。
まさに、五感全てを使って楽しむ事の出来るテーマパークと言える。
その後も、このテーマパークに関する話題で盛り上がり、やがて、話しに一区切りがついた所で、不意にエレベーターの扉が開き、何者かが部屋に足を踏み入れる。
「あれ? 拓也さん?」
「郷田に仙道も」
それは誰であろう、拓也にハンゾウ、それにキヨラの三人であった。
「三人とも、どうして?」
「実は、オタクロスさんから間もなく解読コードのデータの復元が完了するという連絡を貰ってね」
「で、俺はそんな拓也さんから連絡を貰って来たって訳だ」
「となると、仙道も?」
「勘違いするな! 私はもう郷田の舎弟でも何でもないから!」
拓也とハンゾウが足を運んだ理由が判明した所で、バンはハンゾウの舎弟となったキヨラの理由を導き出す。
しかし、キヨラ曰く、どうやらあの舎弟の関係はアキハバラキングダムが終わった後に解消されたとの事。
「ならどうして?」
「べ、別に、気になったとかじゃなくて! ただ暇してた時に、偶々郷田から連絡が来て、丁度いい暇つぶしになると思って来ただけよ! 勘違いしないでよ!」
「ははは、仙道、お前はやっぱ仲間想いの良いやつだな!」
「ば! だから、違うってば!」
「照れんな、照れんな!」
キヨラの肩に手を置き、笑みを見せながら彼女を褒め称えるハンゾウ。
一方、キヨラは顔を赤くしながら反論するものの、何処かまんざらでもないようだ。
と、そんな二人がたわむれ合っていると、不意に、アミがハンゾウの首元で光り輝くプレートネックレスの存在に気がついた。
「郷田、そのネックレスは?」
「おぉ、これか。こいつは誕生日プレゼントだ」
「へぇ~、結構似合ってるじゃない。それって、リコ達から?」
「いや、こいつはリコ達からのもんじゃねぇ」
「じゃぁ、誰から?」
「こいつは誕生日メッセージと一緒に封筒に入ってたんだが、生憎と、メッセージカードにも封筒にも、差出人の名前は書いてなかった」
ハンゾウの口から語られる、差出人不明の誕生日プレゼント。
プレゼントを贈った当人は、何故自身の素性を隠すのか、話を聞いたバン達は各々考えに耽る。
と、不意に、キヨラが声をあげた。
「差出人が誰であれ、郷田にプレゼントを贈るなんて、世の中にはとんだ物好きもいたものね」
相変わらず郷田に対して厭味を口にするキヨラ、という捉え方をするバン達。
だが、事情を知る凛空は、バン達とは別の捉え方をしていた。
「ふ、物好きか……、確かにそうかもな。けど、俺は嬉しかったぜ、そんな物好きからの誕生日プレゼント」
「お、お目出度いわね! 何処の誰かも分からない奴からのプレゼントを喜ぶなんて!」
「確かに名前は分からねぇ、けど、こいつをプレゼントしてくれた奴が、俺の事を大切に思ってるって事は分かるぜ。メッセージカードのメッセージからも、それはひしひしと伝わった」
プレートネックレスに手をやりながら、嬉しそうに話すハンゾウ。
すると、そんなハンゾウの様子を目にし、キヨラは頬を赤らめ始める。
「ほ、本当にお目出度い野郎ね! あー馬鹿馬鹿しい! もう付き合ってられないわ!」
「そうは言っても、何だかんだでいつも付き合ってくれてサンキューな、仙道」
「っ!!」
感謝の言葉と共に、ハンゾウは屈託のない笑みを見せる。
刹那、キヨラは顔を真っ赤にしてそっぽを向くのであった。
そんな一幕を経た所で、部屋の奥から、カランコロンと下駄の音が聞こえてきた。
「おぉ、皆、集まっとるようじゃの」
皆の視線が一斉に向けられたその先にいたのは、誰であろう、オタクロスであった。
「オタクロス! もしかして、データの復元作業が終わったの!?」
「うむ」
「っ! てことは!?」
「あぁ、それは勿論、バッチのグーじゃ!」
オタクロスが差し出したUSBメモリーを受け取ると同時に、バン達の表情が一斉に明るくなる。
「漸く、揃ったのね。バン、今度こそ、これを人類にとっての希望にしないとね」
「あぁ。絶対に絶望なんかに……、イノベーターの手には渡さない! 今度こそ、俺達の手で守ってみせるんだ!」
だが、バンが口にした決意を聞くや、他の面々の表情も同意するかの如く引き締まった。
「よし、バン、早速タイニーオービット社に行くとしよう」
「はい!」
「だが念のため、俺達は電車を使ってタイニーオービット社に向かう。俺の乗ってきた車は、囮として使う」
「うむ、それがよいじゃろう。イノベーターも、ワシらが解読コードのデータを回収しておることは既に掴んでおる筈、故に、強硬策を取ってくるやも知れんからの、奴らの目を欺くにはよい作戦デヨ」
拓也の言葉に一瞬疑問符を浮かべたバン達だったが、オタクロスの補足説明を聞き、納得したような表情を浮かべる。
こうして、改めて協力してくれたハッカー軍団やオタクロスにお礼を述べた所で、タイニーオービット社の本社ビルに向かい始めるバン達。
だが、エレベーターに乗り込もうとしたその時、不意に、部屋中に緊急事態を知らせるかの如く警報音が部屋中に鳴り響き始めた。
「え? 何!?」
「う、何事デヨ!?」
突然の事に戸惑いを隠せないバン達を他所に、オタクロスは年齢を感じさせない敏捷な身のこなしで机の前に移動すると、素早くキーボードを打ち込み始めた。
「む! これは……」
刹那、モニターに、監視カメラが捉えたと思しき映像が映し出される。
そこは、バン達も見慣れたアキハバラタワーのエントランス。だが、映し出されたライブ映像に映っていたのは、目を疑う光景であった。
「た、大変だ!?」
そこに映し出されたのは、トラックが正面からエントランスに突っ込んだ衝撃的な光景。
自動ドアや柱の一部を破壊し、割れたガラスや壊れた内装の一部が散乱する、まさに目を覆いたくなるような惨状であった。
「急いで救助に向かわないと!!」
「待つデヨ、バン!」
この惨状を目にしたバンは、早速現場に向かおうとするが、そんなバンをオタクロスは制止する。
「どうしてだよオタクロス!?」
「よく見るデヨ、幸い、エントランスにいた人々に怪我人が出た様子はないデヨ」
「でも、トラックの運転手が……」
「これを見るデヨ」
すると、オタクロスはキーボードを使い、トラックの運転席を拡大してモニターに映し出した。
「この通り、運転席には運転手の姿は見当たらないデヨ」
「ほ、本当だ!」
そこに映し出されたのは、無人の運転席。
運転手が自力で運転席から脱出した様子も見られない事から、どうやらこのトラックは無人運転だった事が窺える。
この奇妙な事故の光景にバン達が首をかしげていると、不意に、トラックの荷台のコンテナのサイドドアが開き始めた。
刹那、コンテナの中から、次々と小さな影が飛び出し始める。
「っ! あれは!?」
小さな影の正体、それを目にしたバン達は、一様に目を見開く。
それは、これまでバン達の前に幾度も現れ対峙してきた悪の尖兵。
デクーやデクーエース、それにアヌビスやインビット等。
イノベーターが使用するLBXの数々であった。
更新が滞っている間も目を通し、感想を書いたり、評価してくださった読者の皆様、本当にありがとうございます。
今後も、不定期になるとは思いますが、ご愛読のほど、よろしくお願い致します。