うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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光芒のアキハバラタワー

 トラック荷台のコンテナより飛び出したイノベーター製LBXの数々は、手にした得物を使い、破壊活動を開始しする。

 鳴り響く銃声、悲鳴、逃げ惑う人々。アキハバラタワーのエントランスは、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。

 

「むぅ……。どうやら、ワシらが想像しているよりも、イノベーターの動きの方が早かった様デヨ」

「くそ! イノベーターめ、まさかこんな強硬手段を取ってくるとは!」

 

 破壊されずに済んでいる監視カメラの映像を目にした拓也は、目的の為ならば破壊も厭わないイノベーターのやり方に、歯を食いしばり怒りを露わにする。

 刹那、モニターに映し出されていた監視カメラの映像が一瞬にして暗くなる。

 モニターは正常に作動していいる事から、どうやら、映像を送っていた監視カメラがイノベーターの凶弾により破壊されてしまったようだ。

 

「皆、イノベーターを迎え撃とう!」

「でもバン、敵は物凄い数よ!」

「そうだぜバン、幾ら何でも俺達だけじゃ……」

 

 と、正義感の強いバンが、早速エントランスにいるイノベーター製LBX達の撃退を提案する。

 しかし、アミやカズが懸念している通り、カメラが破壊される前の映像に映ったイノベーター製LBXの数は、ざっと千は下らない。

 

 幾らバン達の操作の腕前が凄くとも、たった数機で千機もの敵を相手に戦うのは無謀という他ない。

 

「でもこのままじゃ、アキハバラタワーが……」

「バン。今の僕達は、一刻も早くその解読コードのデータを持って、タイニーオービット社に行かなくちゃならない。幸い、イノベーター達のいるエントランスとは逆の方向に非常口があるから、それを使えば彼らに気付かれずにアキハバラタワーから脱出できる筈だよ」

「っ! 凛空! それじゃ、あの破壊活動を見過ごせって言うの!?」

 

 凛空の言葉を聞き、バンは、今にも掴みかかりそうな勢いで凛空に詰め寄る。

 確かに、大局を見れば、凛空の言う事は正しいだろう。それに、イノベーターの目的がバン達が手にした解読コードのデータである事は明白だ。

 故に、バン達がアキハバラタワーから一刻も早く離れれば、それに気がついたイノベーター側がこれ以上の破壊活動は無意味だと、当初の予定よりも繰り上げて撤収する事で被害を最小限に抑えられる可能性もある。

 

 とはいえ、イノベーターの悪事を見過ごすのは、正義感の強いバンには耐え難いのだろう。

 頭では理解できても心が追いつかず、やり場のない気持ちが募っていく。

 

「でも……」

「え?」

「泣いている人達がいるのを見過ごすなんて、やっぱりできないよね」

 

 刹那、凛空の口から零れた言葉を聞き、バンは一瞬呆気に取られるが、凛空の決意に満ちた目を見据えるや、一転、彼の決意に応えるかのようにやる気に満ち溢れた。

 

「やろう、凛空!」

「勿論!」

「あらら、まさか凛空が火付け役になるなんて、こういう場合、いつもストッパーなのに」

「だな」

「でも、二人がやる気じゃ、私達だけ逃げるなんて事もできないわね。というか、イノベーターの悪事を見過ごすなんて、何だか癪に障るもの」

「あぁ、その通りだ」

 

 そんな二人に感化されてか、アミとカズの二人も、一転して乗り気になる。

 

「よっしゃ、それじゃ、イノベーターの野郎どもを派手にぶっ倒すとするか!」

(ストレングス)の正位置……。いいわ、乗り掛かった船だし、手伝ってやるわよ」

「キング、俺っち達も協力するぜ! 俺達のアキハバラを、その象徴とも言えるアキハバラタワーを滅茶苦茶にした落とし前、連中にきっちりつけさせないとな!」

「そうだもん!」

「その通りでーす!」

 

 更に、ハンゾウやキヨラ、それにハッカー軍団の面々も、賛同するかのように各々が意気込みを語る。

 

「バン、凛空。ワシも協力するデヨ!」

「ありがとうオタクロス!」

「でもオタクロス、LBXの大群が暴れている場所に行って大丈夫なの?」

「あぁ、安心せい、ワシはここから機材を使ってのサポートに徹するデヨ」

 

 十代どころか五歳児とも張り合える気持ちの若さとは言え、やはり身体の方は、無理が利くものではない。

 それを心配した凛空だったが、やはり自分の身体の事はよく分かっている様で、オタクロスの言葉を聞き、凛空は安心した様子。

 

「おぉ、それから。ハッカー軍団が加わったとは言え、数の上ではまだまだイノベーターが有利なのは違いないデヨ。そこで、強力な助っ人を今から呼ぶデヨ!」

 

 更に、オタクロスは少しでも戦いを有利に進められるよう援軍の要請を始めた。

 

「バン、凛空。頼んだぞ!」

「「はい!」」

 

 そして、オタクロスと共にサポート役に回った拓也の言葉に力強く返事を返すと、バン達は早速迎撃準備に取り掛かる。

 各々が自身のLBXの機体チェックを行う中、ふと、凛空の傍に近づく人影があった。

 

「ミカ、どうしたの?」

「ん、ちょっと……」

 

 人影の正体、それは誰であろうミカであった。

 

「さっきの、凛空の姿……」

「あ、あはは。ガラじゃなかったかな?」

「ん、そんなこと、ない。様になってた」

「ありがとう、ミカ」

 

 暫し見つめ合う凛空とミカ。

 程なく、凛空が再び口を開いた。

 

「ミカ、頑張ろう!」

「ん!」

 

 そして、お互いに決意を新たにした所で、バンから出陣の掛け声がかけられる。

 それに応えた二人は、他の面々と共にエレベーターに乗り込むと、決戦の地であるエントランスに向かうのであった。

 

 

 

 

 安全な場所へと非難する人々の波をかき分けながらエントランスへとやって来た一行が目にしたのは、既に避難が完了し人気が全くないエントランスを、イノベーター製LBXの数々が、我が物顔で闊歩し破壊活動を続けている光景であった。

 

「いくぞ、皆!」

「「おぅ!!」」

 

 そんな破壊の限りを尽くすイノベーター製LBXを撃退するべく、バンの掛け声と共に、各々が相棒となるLBXを戦場に投入する。

 

「先手必勝、先ずは一発、食らいやがれ!!」

〈アタックファンクション、超我王砲(チョウガオーキャノン)

 

 先ず狼煙を上げたのは、ハンゾウの操るハカイオー絶斗。

 ハカイオー絶斗の胸部にある二門の砲口から放たれた強力なビームは、射線上にいたイノベーター製LBXの数々を瞬く間にスクラップへと変貌させていく。

 

 それを合図に、残りの機体も、各々の得物を使いイノベーター製LBXに立ち向かっていく。

 

 オーディーン、パンドラ、ガーベラ、レッドリボンの四機は、その高い機動力を生かし、文字通り斬り込み隊長として、目に付いたイノベーター製LBXを装備した得物の錆にしていく。

 また、ナイトメアも、ナイトメアズソウルによる一撃をお見舞いするのみならず、その高い機動力でイノベーター製LBXを翻弄すると同士討ちを誘う。

 更に、そんな五機に後れを取るまいと、ハッカー軍団が使用する、その見た目通りメイドをモチーフとしたメイド型LBX、グレイメイド。同機の中でも近接用の武器を装備する機体の数々が斬り込んでいく。

 

 そんな前衛を援護する様に、フェンリル、パワード・ジム、更に遠距離用の武器を装備したグレイメイドの数々が、イノベーター製LBXに対して弾丸や砲弾の雨を降らせていく。

 

「これでも食らうもん!」

〈アタックファンクション、ナパームボム〉

「一撃必殺、でーす!」

〈アタックファンクション、トライデント〉

 

 グンソウとマジョラム、それぞれが操るグリーンリボンとブルーリボンからそれぞれの必殺ファンクションが繰り出され、直撃を食らったイノベーター製LBXが次々と残骸をまき散らす。

 

「っ! 倒しても倒しても、次から次へと湧いてきやがる!」

「本当に、きりがないわね」

 

 だが、倒せど倒せど、次から次へと新手が現れる状況に、珍しくハンゾウとキヨラの口から弱音が零れる。

 また、オタクロスの戦況サポートにより、バン達は統制の取れた戦いを行えているものの、イノベーター側の数の暴力は凄まじく。

 徐々に落伍していく機体も増え、更には、バン達の操る機体にもダメージが蓄積し、その継戦能力が徐々に削られている事は明白であった。

 

(……まさか、このタイミングでイノベーターが仕掛けてくるなんて。……こんな事なら、"あの"機体の調整をもっと前倒しにしておくべきだったな)

 

 狙いを定めたアヌビスをハイパーバズーカで仕留めた凛空は、新たな標的を探しつつ、考えに耽る。

 後悔しても手遅れなのは理解しているが、やはり、後悔の念に駆られてしまう。

 

 と、そんな凛空の心理がパワード・ジムに伝達したのか、パワード・ジムの動きが僅かに止まる。

 その瞬間を、近くにいたインビットは見逃さなかった。

 パワード・ジム目掛けて飛び掛かると、自慢のクローをパワード・ジムの胸部目掛けて突き立てる。

 

 だが、次の瞬間。

 鋭利な得物で貫かれたのは、パワード・ジムではなくインビットの方であった。

 

「凛空、大丈夫?」

「あ、あぁ。ごめん、助かったよ、ミカ」

「ん、油断しないで」

 

 ミカに感謝の言葉を述べると、凛空は余計な事を考えるのを止め、目の前の戦いに集中するべく気持ちを切り替える。

 

 

 その後も、狙いを定めて確実に敵を仕留めていた、その時であった。

 不意に、視界内にいた味方のグレイメイドが、突然の爆発と共にその姿を消した。

 

「何だ!?」

 

 この光景を目にした凛空は、直ちに周囲を見渡し、爆発の原因を探り始める。

 

「おい、アレ!」

 

 すると、同じく先ほどの光景を目にして、凛空同様に周囲を見渡していたカズが、何かを見つけたかのように声をあげた。

 

「あれは……」

 

 カズの声に反応し凛空が視線を向けた先にいたのは、初めて見る形状のイノベーター製LBX。

 上半身は、イノベーターの代名詞とも言えるデクーを流用したものだが、下半身は、それまでのデクーシリーズとは異なり、その重厚感を更に際立たせる無限軌道となっている。

 更に、無限軌道の積載量を生かすかのように、両肩にキャノン砲を二門装備している。

 

 まさに、"デクータンク"と呼称するに相応しい見た目のLBXであった。

 

(イノベーターの新型!? コンセプトとしてはガンタンクと同じか……)

 

 その積載量を生かしたキャノン砲の大火力と射程をもって、遠距離からの攻撃を主体とする。

 ただし、ガンタンクと異なり、両腕が武器腕ではなくマニピュレーター式の為、万が一の近接戦にも対応し易いなど、汎用性に関してはガンタンクよりも高い事が窺える。

 

「でも、だったら!」

 

 刹那、デクータンクの装備した二門のキャノン砲が火を噴き、飛来した砲弾はパワード・ジム目掛けて空を切る。

 しかし、パワード・ジムはスラスターを噴かせ飛来する砲弾を躱すと、そのままデクータンクに向けて突撃する。

 パワード・ジムの接近を阻止せんと、デクータンクは右腕に装備したスキャッターガンを発射するも、パワード・ジムは飛来する弾丸をシールドで防ぐ。

 

 そして、パワード・ジムが間合いに入った、次の瞬間。

 パワード・ジムは巧みなスラスター操作と共にデクータンクの背後に回り込むと、抜刀したビームサーベルでデクータンクを切り裂いた。

 

 ガンタンクと同じコンセプトという事は、即ち近接戦が弱いという弱点も同じことを意味している。

 それを見抜いた凛空の勝利であった。

 

 

 

 

「敵の数も半数を切った、ここが踏ん張りどころデヨ!」

 

 CCMからオタクロスの檄が飛ぶ。

 漸く、敵の数も半数を下回った様だが、それに対して喜びの表情を見せる者はいない。

 

 半数を下回ったとは言え、イノベーター製LBXの大群は味方の屍を踏み越え、次々と凛空達の前にその姿を現す。

 一方凛空達は、これまでの戦闘で機体の損耗も看過できない水準に近づいており、またプレイヤー自身も、疲労の色が濃くなり始めた。

 

(何とか態勢を立て直したいけど……)

 

 その為、何とか一旦後退して態勢の立て直しを図りたいと考える凛空ではあったが、次々と襲い掛かるイノベーター製LBXの大群は、それを許す暇すら与えない。

 

(ここは全員で必殺ファンクションを繰り出して、その隙に後退するか……)

 

 後退する為の算段を立て始めた凛空。

 だが、再び考えに耽り始めたことで、パワード・ジムの操作がおざなりになってしまう。

 

 刹那、そんなパワード・ジムの近くに、デクータンクのキャノン砲から放たれた砲弾が弾着する。

 

「っ! しまった!」

 

 幸い、弾着したのがシールドを保持していた側だった為、機能を停止するまでには至らなかったが。

 CCMに表示された機体状況は、最早限界寸前を示す赤い表示が機体の各所に現れていた。

 

 と、そんな瀕死のパワード・ジムにトドメを刺すべく、その手にナイルブレードを装備したアヌビスが姿を現し、パワード・ジムに迫る。

 

 

 この危機に気付いたミカは、何とか助けに向かいたかったが、複数のイノベーター製LBXに囲まれ叶わず。

 他の面々も、目の前の敵の対処で手一杯で、助けに行ける余裕はなかった。

 

 最早、これまでか。

 そんな考えが凛空の脳裏を過った、その時。

 

 突如、パワード・ジムに迫っていたアヌビスが爆発と共に姿を消した。

 

「え? 一体、何が……」

 

 この突然の出来事に凛空が困惑していると、ふと、何処からか聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「ふぅ、間一髪間に合うとは、やっぱり僕はラッキーボーイだね!」

「つ、月雅さん!?」

 

 声の主、それは誰であろう、第三回LBX世界大会アルテミスの予選Fブロックで凛空達と死闘を演じ、自らをラッキーボーイと信じて止まないLBXプレイヤー、月雅 循その人であった。

 

「やぁ凛空くん、大丈夫かい?」

「え、えぇ、助かりました」

「それは良かった!」

「と、所で、どうして月雅さんがここに? あ、もしかして、オタクロスが言っていた助っ人って、月雅さんの事だったんですか!?」

「ん? オタクロスという人が誰かは知らないけど、僕が駆け付けたのは、今日偶々アキハバラに来てみたら、アキハバラタワーで何か事件が起こったって話を聞いてね。それで駆け付けてみれば、なんと凛空くん達が見慣れないLBXの大群と戦ってるじゃないか。しかも、凛空くん達が押されている。ならば、加勢しない手はないと思ってね」

 

 どうやら、月雅はオタクロスが要請していた援軍ではなく、偶々イノベーターのアキハバラタワー強襲を知りはせ参じたようだ。

 しかし、偶然とはいえ、今の凛空達にとっては心強い援軍であった。

 

「凛空くん、君は一旦下がるといい。ここは、僕が引き受ける」

「でも月雅さん、大丈夫なんですか?」

「ふ、心配ご無用。何故なら、僕は"生まれ変わった幸運の女神"がついているからね!!」

 

 月雅の声に反応するように、それは姿を現した。

 ガンダムタンク、月雅が幸運の女神と信じて止まない機体。

 だが、生まれ変わったとの言葉通り、その姿は以前のものとは異なっていた。

 

 最大の変化、それは、THE ORIGIN版を彷彿とさせるショルダー・キャノンを両肩に装備している点であった。

 おそらく、火力の強化の為の追加装備なのだろうが、ならば専用に設計されているガンタンクを使用した方が、断然使い勝手はいい。

 

 しかし、月雅の気持ちを汲み、凛空は余計な事を言わないのであった。

 

「さぁ、名も知らぬLBX達よ! ここからは、僕とこの"シン・ガンダムタンク"が相手をしてやろう!」

 

 そして、月雅は生まれ変わったガンダムタンク、シン・ガンダムタンクと共に、イノベーター製LBXの大群に挑み始めるのであった。

 

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