うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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強襲揚陸波

 アキハバラタワーのエントランスで激闘が繰り広げられているのと同時刻。

 アキハバラから北西に数十キロも離れた山岳地帯の一角。ダムを隠れ蓑に、その地下に建造された大規模な研究施設。

 所有者であるイノベーター、その実動部隊の一つである黒の部隊。

 

 八神が組織を裏切り少なくない部下と共に組織を抜けた為に部隊の再編がなされ、その際、同部隊を率いる事になったのが、誰であろう、元部下の一人である二階堂 友紀人(にかいどう ゆきと)であった。

 

「ふ、存外、彼らも大したことはないようですね」

 

 施設の司令室にて、現在、赤の部隊協力のもと、黒の部隊が主導し行われているアキハバラタワー襲撃作戦の戦況を目にしながら、二階堂は独り言ちる。

 

「ふふふ、素晴らしい。先生(海道 義光)の夢が現実のものとなるのは、最早時間の問題だ」

 

 敬愛する海道 義光の夢、その実現の為に自身が多大な貢献をもたらさんとしている事に、二階堂は満足げな様子。

 

「二階堂司令、未確認のLBXが出現した模様です!」

「何? モニターに出せ」

「は!」

 

 オペレーターからの報告を聞き、二階堂は指示を飛ばすと、現場のライブ映像を映し出したモニターに視線を向ける。

 

「何だ、この珍妙なLBXは?」

 

 そこに映っていたのは、シン・ガンダムタンクの雄姿であった。

 

「所々、サイバーランス社製のLBXに造形が似ていなくもないが……。おい、現れたのはこの一機のみか?」

「は、確認できたのはこの一機のみです!」

「見た所、火力はありそうですが、所詮はタンク。数を差し向け囲んでしまえば簡単に墜ちる」

 

 そして、二階堂は一拍置くと、再び口を開いた。

 

「ならば、作戦に変更はない! このまま一気に畳みかけろ!」

 

 シン・ガンダムタンクの参戦は作戦の障害にはならない、そう判断した二階堂は、作戦続行を指示するのであった。

 

 

 

 

 そんなやり取りが、遠く離れたイノベーターの研究施設で行われている等露も知らない月雅は、シン・ガンダムタンクを操作しイノベーター製LBXに戦いを挑んでいた。

 

「むむ、やはりフィールドのバトルとは違うな……」

 

 しかし、普段慣れ親しんでいるDキューブ内でのバトルとは異なり、現実世界でのバトル、その勝手の違い少々困惑の様子。

 それでも、独特な走行音を奏でながら、シン・ガンダムタンクは戦場と化したアキハバラタワーのエントランスを走行する。

 

「そこ!」

 

 装備したハイパーバズーカを構えると、狙いを定め、間髪入れずに引き金を引く。

 刹那、発射された弾頭がデクー改に命中し、撃墜スコアが足される。

 

「この調子でどんどんいくぞ!」

 

 これで更に勢いを増したシン・ガンダムタンクは、両肩に装備したショルダー・キャノンによる砲撃を加え、目に付いたイノベーター製LBXに攻撃を仕掛ける。

 こうしてまた撃墜スコアを稼いだ所で、ふと、味方と思しき機体が、数機のイノベーター製LBXに囲まれているのを発見する。

 

「今助けますよ!」

 

 接近しつつ、ハイパーバズーカとショルダー・キャノンの一斉射撃を行うシン・ガンダムタンク。

 この攻撃により、包囲の一部が崩れた隙に、味方の機体は包囲を脱出。シン・ガンダムタンクとの合流を果たすのであった。

 

「助かった、ありがとう」

「おや、その声は……。ミカさんでしたか!」

 

 シン・ガンダムタンクのお陰で危機を脱したのは、ミカの操作するガーベラであった。

 

「では、ミカさん! 僕が援護しますので、ミカさんは──」

「っ! あぶない!」

「へ?」

 

 ガーベラと合流を果たしたので、二機での連携攻撃を提案しようとした月雅。

 しかし、次の瞬間、何かに気がついたミカが危険を知らせる。

 

 刹那、飛来した砲弾が二機の周囲に弾着すると、次々と爆発を起こす。

 

「ぬわ!?」

 

 咄嗟に跳躍し難を逃れたガーベラとは対照的に、シン・ガンダムタンクは咄嗟に回避する事が出来ず、爆発の影響で吹き飛ばされてしまう。

 

「あ! お、起き上がれない!? ミカさん、た、助けてください!」

 

 至近弾ではあったが、何とか機能停止を免れたシン・ガンダムタンク。

 しかし、災難はまだ続いた。

 なんと、吹き飛ばされた弾みに、シン・ガンダムタンクは横転してしまったのだ。

 

 必死に操作して自力で起き上がろうとするも、それは叶わず。堪らず、ミカに助けを求めるも、どうやら着地した先で新手との戦闘が始まり、助けに行ける余裕はない様だ。

 

「あ、あぁ! ちょ、ちょっと待って!」

 

 そんなシン・ガンダムタンク目掛け、数機のインビットが、格好の獲物を見つけたと言わんばかりにゆっくりと近づいてくる。

 抵抗し追い払いたい所だが、生憎と先ほど吹き飛ばされた際に、装備していたハイパーバズーカを無くしてしまった他。

 ショルダー・キャノンも、この状況では撃つことが出来ない。

 

 まさに、絶体絶命の危機であった。

 

 

 

 

「ふ、やはり、大した脅威ではなかったか」

 

 今まさに、最後を迎えんとしているシン・ガンダムタンクの様子をモニター越しに眺めながら、二階堂は独り言ちる。

 

「さっさと片付けろ」

 

 そして、トドメを刺すように指示を出した、次の瞬間。

 突如、シン・ガンダムタンクにトドメを刺そうとしてた数機のインビットが、謎の銃撃によりその機能を停止させる。

 

「な、何事だ!?」

 

 目を見開く二階堂に対し、オペレーター達は必死に原因の究明を行う。

 程なく、モニターの映像が切り替わり、先ほどの銃撃の下手人と思しき機体が映し出された。

 

「っ!」

 

 紫を基調とした重厚な外観、その見た目通りの高威力を誇る大口径の大型ライフル。

 その姿を目にした瞬間、二階堂の脳裏にとある男の顔が、組織を裏切った大罪人の名が。そして、同時に強烈な怒りが込み上げる。

 

「や、やがみぃぃぃぃっ!!!」

 

 下手人の名は、LBXジェネラル。

 そして、それを操作しているのは他でもない、二階堂の元上司にして今や組織の裏切り者、八神 英二(やがみ えいじ)その人であった。

 

 刹那、二階堂の怒りに更に油を注ぐかの如く、デクーエースと二機のデクー改が姿を現し、バン達の加勢を始めた。

 

「八神! 今度こそ、今度こそ、そのすました顔を滅茶苦茶に──」

 

 再戦に向けて意気込みを語っていた二階堂だが、そんな彼の言葉を遮るかのように、モニターに、一筋の光が走った。

 

「っ!? な、何の光ぃ!?」

「て、敵の援軍です!」

「何だと!?」

 

 次々ともたらされる報告に、二階堂はその表情をコロコロ変える。

 

「な、何だこのLBXは!?」

「サイバーランス社製のLBX、ゲルググMの改良型と思われますが、詳細は不明です」

 

 三度切り替わったモニターに映し出された、まるで戦場を見渡すかの如くベンチの上に陣取ったマリーネ・ライターの姿。

 

「二階堂司令! 更に複数の敵の援軍を確認!」

 

 更に、オペレーターからの報告を聞き。

 二階堂の脳裏に、勝利という名の二文字が、音を立てて崩れる光景が思い浮かぶのであった。

 

 

 

 

「一体どうなってるんだ? 同士討ちを始めたと思ったら、今度は別のLBXか!?」

「ねぇ、あのLBXって」

「マリーネ・ライター……」

 

 勿論、混乱しているのはバン達も同じであった。

 しかし、マリーネ・ライターを見た事のあるアミとミカは、瞬時に心強い援軍が現れたのだと理解した。

 

「随分と手を焼いてるねぇ」

「志麻さん」

「ま、これだけ数がいたんじゃ、流石の女神さんも手を焼くか」

 

 刹那、フェアリー杯で死闘を演じた、サイバーランス社のテストプレイヤーの志麻が、応援団と思しき屈強な男達を引き連れ姿を現した。

 

「けど安心しな、ここからは楽させてあげるよ。……お前たち、準備はいいね!?」

「「へい!!」」

 

 次の瞬間、マリーネ・ライターの左右に、応援団の男達が操作するゲルググMが次々とその姿を現した。

 その姿はバン達にとって、まさに志麻の言葉通り、重圧が薄れるものであった。

 

「フフフ、……選り取り見取り」

 

 しかし、ある程度の数が加勢したと言っても、依然としてイノベーター製LBXの方が数では圧倒的に有利である事に変わりはない。

 だが、志麻は相対するイノベーター製LBXの大群を目にし不敵な笑みを浮かべると、自信ありげに言い放つ。

 

「さぁ、いくよ!」

 

 そして、掛け声と共にベンチの上から戦場へと飛び出したマリーネ・ライター。

 それに続くように、ゲルググMも次々と戦場へと飛び出していく。

 

 マリーネ・ライターを先頭に、戦場を駆けるゲルググMの集団。それはまさに、巨大な波の様であった。

 その進路上にいたイノベーター製LBXは、次々と襲い掛かるビームと弾丸の雨に耐え切れず、瞬く間にスクラップと化していく。

 

「凄い……」

 

 その圧倒的な破壊力に目を奪われるバン達。

 しかし次の瞬間、彼らの視線は、突如としてエントランスの一角で起こった爆発に向けられる事となる。

 

「今のは、一体?」

「あ、あれ!」

 

 何かに気がついたアミの声に導かれ、他の面々もアミの指さす方向へと視線を向ける。

 そこで一行が目にしたのは、三機のLBXと、それを操る三人のプレイヤー。

 

「ノイジー・フェアリー!?」

 

 フェアリー杯の決勝戦で死闘を演じた、図夢女学院LBXバトル部の三人の姿であった。

 

「あ、アミちゃんにミカちゃん! おーい、久しぶり! また会ったね!」

「おいアルマ、今は暢気に再会を喜んでる場合じゃねぇだろ!」

「そうですよ、アルマ先輩。今は、あの正体不明のLBXの大群を追い払う事に専念しないと」

「っと、そうだった! よーし、ミア、ヘレナ、いくよ!」

「おう!」

「はい!」

 

 刹那、ドム・ノーミーデスの大口径の主砲が火を噴き、弾着地点にいた数機のイノベーター製LBXを爆炎の中へと消す。

 それを合図に、ザイフリート・イェーガーの援護を受けたティターニアが、まるで踊るかのように、イノベーター製LBXを撃破していく。

 

「俺達も、負けてられない!」

 

 こうして心強い援軍を得たバン達は、勢いを盛り返し、攻勢に転じるのであった。

 

 

 

 

「失礼します、貞松司令」

「ん、何だ?」

「黒の部隊が、アキハバラタワーより撤退を開始した模様です」

 

 バン達が攻勢に転じ、暫くした頃。

 イノベーターの研究施設の一角にある、赤の部隊の司令官、貞松 四郎(さだまつ しろう)の執務室。

 そこで、部屋の主である貞松が、部屋にやって来た部下からの報告を受けていた。

 

「ふ、所詮は青二才の浅知恵か」

 

 刹那、貞松は嘲笑うかのように、白い歯をこぼした。

 

「所で、例のアレはどうなっている?」

「は! 既に搬入作業の方は完了しております! ご指示があれば、いつでも」

「よろしい。……ならば、本物の"物量作戦"というものを見せてやるとしようか」

 

 そして、再び部下からの報告を受けた貞松は、不敵な笑みを浮かべると、新たに発動する作戦の為、部下を引き連れ執務室を後にするのであった。

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