強力な援軍を得て勢いを盛り返したバン達は、その後、次々とイノベーター製LBXを撃破。
一方、攻守の逆転を許してしまったイノベーター側は、数の優位はあっても、バン達の勢いを止める事が出来ず。
結果、今回の襲撃作戦の責任者である二階堂は、目標の達成は困難と判断し、現場のエージェント達に撤退を指示するのであった。
「見て、バン!」
「イノベーターのLBXが、引いていく?」
「って事は、もしかして……」
「どうやら、僕達の勝利、みたいだね」
「ん、撃退、成功」
残っていたイノベーター製LBXが次々と撤退していく様子を目にしたバン達は、そこで漸く、自分達の勝利を確信するのであった。
「やったー! 俺達、勝ったんだ!」
「やったな、バン!」
「ま、私と郷田が組んだんだし、勝って当然よね」
「これで連中も、迂闊にアキハバラに手を出したらどうなるか、たっぷりと思い知っただろ」
「僕たん達を敵に回して無事だった奴はいないもん」
「これだけ痛手を負えば、暫くはアキハバラにも手を出してこない筈でーす」
「郷田、仙道、それにハッカー軍団の皆も、本当にありがとう!」
アミやカズ、それにハンゾウやキヨラ、そしてハッカー軍団の面々と勝利を分かち合うバン。
一方凛空とミカは、今回の襲撃に際して駆け付けてくれた月雅や志麻、それにノイジー・フェアリーの三人に感謝の言葉を述べていた。
「本当に、ありがとうございました」
「いや~、結局、対して活躍できずに、申し訳ない」
「そんな事ありません! 月雅さんのお陰で、パワード・ジムは破壊されずに済みましたし、ミカのピンチも救っていただいて、本当にありがとうございます!」
「うぅ、そ、そこまで言ってくれるなんて……。僕、もう感極まって涙が止まらなくなるよ」
言葉通り、今にも泣きそうな顔をする月雅。
しかし、寸での所で涙をこらえると、月雅は、決意を改めたかのように話を始めた。
「凛空くん、僕は誓うよ! このシン・ガンダムタンクをもっとパワーアップさせて、運だけじゃなく、実力でも、凛空くんに頼られる男になるとね! ……と、こうしちゃいられない! 早速帰って作業に取り掛からないと! それじゃ!!」
こうして、新たな決意表明を行った所で、月雅はシン・ガンダムタンクの更なる改良作業に取り掛かるべく、その場を後にするのであった。
「三人とも、ありがとう」
「えへへ~、どういたしまして」
「やっぱり、人助けっていいものですね」
「だな。……て、おいアルマ。いつまでしまりのない顔してんだ!」
ミカは、ノイジー・フェアリーの三人に感謝の言葉を述べると共に、気持ちを込めた握手を交わす。
すると、ミカ達の役に立てたことがよほどうれしかったのか、アルマは暫し笑みがこぼれるのであった。
「所で、三人はどうして
「えーっと、何て言ったっけ? たしか、オタ、オタ……」
「オタクロスさん、ですよヘレナ先輩」
「おぉ、そうだ! そのオタクロスって爺さんから、あんた達が困ってるから助けに来て欲しいって連絡を受けたんだよ」
一体いつの間に、ノイジー・フェアリーの三人はオタクロスと連絡先を交換したのだろうかと、素朴な疑問が浮かんだミカ。
すると、そんなミカの疑問に、ヘレナが答えてくれた。
ヘレナ曰く、連絡先を交換したのはフェアリー杯が終わった直後との事。
「にしても、あの見た事もないLBXの大群は、一体何だったんだろう?」
と、いつもの表情に戻ったアルマが、素朴な疑問を口にする。
「何にしても、こんな滅茶苦茶な事に使われたんだ。使ってる連中は、相当やべぇ奴らに違いないな」
「ミアとしては、残骸を家に持って帰って、分析してみたいです」
それに続き、ヘレナとミアも、各々の感想を述べた。
「これ以上、三人はこの件に、関わらない方がいい」
「え?」
「これは、三人が思ってる以上に、危険な事、だから」
自身も、イノベーターとの戦いに関わりを持ったが為に、命の危険にさらされた事があるミカ。
そんな経験をしたからこそ、ノイジー・フェアリーの三人にまで、同じような経験をしてほしくない。
ミカの警告には、そんな気持ちが込められていた。
「……分かった。だけど、もしも私達で役に立てることがあったら、その時は遠慮なく言ってね!」
「ん、ありがとう」
そんなミカの気持ちを汲み取ったのか、アルマを筆頭に、ノイジー・フェアリーの三人は、これ以上イノベーターとの一件に首を突っ込むのをやめると誓うのであった。
「志麻さん、ありがとうございました」
「ご子息様が困ってるんだ、助けに駆け付けるのは当然さね」
「所で、志麻さんはどうやって今回の事を知ったんです?」
「あぁ、オタクロスとか言う妙な爺さんから連絡を受けたのさ」
志麻の口からオタクロスの名が飛び出し、凛空の頭の中で点と点が線で繋がり始める。
どうやら、オタクロスが要請していた援軍とは、志麻達の事だったようだ。
「一体いつの間にオタクロスとお知り合いに?」
「あぁ、この間アキハバラで行われた、フェアリー杯って女性プレイヤー限定のLBX大会でね。……そう言えば、ご子息様の大事な女神様とそのお友達も、その大会に出てたよ」
ふと口にした疑問だったが、フェアリー杯との単語が飛び出し、凛空は、自身の軽率な発言を後悔する事となる。
「あ、あぁ、そう言えば。そんな名前の大会に、参加してたと聞きました」
とはいえ、後悔しても時すでに遅し。
凛空は、平静を装いながら、何とかフェアリー杯の話題から離れようと、別の話題への切り替えを図る。
「皆、お疲れさまデヨ!!」
すると、そんな凛空に思わぬ助け舟が現れた。
誰であろう、オタクロスだ。
「おぉ! しーまたーん!」
「ん?」
「しまたん、ワシ、見てたデヨ! しまたんの勇猛ながらも華麗なる戦いぶり! まさに、蝶のように舞い蜂のように刺す戦いぶりデヨ!」
「ふ、そこまで言われるのは、悪くないね」
オタクロスの言葉に、志麻は満更でもない様子。
「けどね……」
しかし次の瞬間、刃のように鋭い目つきに変わる志麻。
「今度、"しまたん"って呼んだら、ぶつよ」
「り、了解したデヨ!!」
志麻の凄みを利かせた声に反応するように、オタクロスは背筋を伸ばすと、今後志麻の事をしまたんと呼ばないと誓うのであった。
「あー……、お、おぉ! ノイジー・フェアリーの三人も、ワシの要請に応えてくれて助かったデヨ!」
と、気まずい空気から逃れるかのように、オタクロスはノイジー・フェアリーの三人の方へと駆けていくのであった。
そんなオタクロスと入れ替わるように、拓也が凛空の前に姿を現す。
「凛空、本当に、よくやってくれた」
「いえ、これもバン達や助っ人に駆け付けてくれた皆さん、それに、オタクロスや拓也さんのサポートがあったからです」
と、一拍置いた凛空は、更に言葉を続けた。
「そう言えば拓也さん。志麻さん達のLBXの他に、イノベーター製のLBXと思しき機体が助っ人に現れましたけど……」
「あぁ、その事については──」
凛空の質問に拓也が答えようとした、その時。
不意に、二人の方へと、複数の人影が近づく。
「っ! お前は!?」
その人影に気付いた拓也は、人影の正体を目にし、声をあげた。
「八神 英二!」
人影の正体、それは八神と、黒のスーツを身に纏った三人の男女であった。
「拓也さん、どうしたんですか!?」
すると、拓也の声にただならぬ気配を感じたのか、バン達も二人のもとへと集まる。
「拓也さん、この人、知り合い?」
「バン、この男は……」
刹那、八神達の肩に、先ほど突如として現れ加勢したジェネラルやデクーエース等が姿を現した。
「そのLBX!?」
「そうだ、この男の名は八神 英二。イノベーターで黒の部隊を率いる男だ!」
「「イノベーター!?」」
拓也の口から飛び出した八神の正体に、バン達は一様に驚きの表情を浮かべる。
「って事は、後ろにいる人たちは……」
「「じゃーん」」
「あぁ!」
そして、八神の後ろに控えていた三人の男女が、徐に見覚えのある仮面を顔に当てた所で、バン達は再び驚きの声をあげた。
何故なら、それは紛れもなく、アキレス奪取をつけ狙っていた三人組の姿そのものだったからだ。
四人の正体が判明した所で、バン達は身構える。
「我々は、イノベーターとは決別した。この国を、いや、世界を破壊と混沌の未来へと誘う海道 義光と戦う為に」
そんなバン達の様子を目にし、八神はゆっくりと、自分達が敵ではない事を説明し始めた。
「嘘を言うな!」
「嘘ではない。その証拠に、私達は先ほどの危機に際して君達に加勢してみせただろう?」
「それで信じろと?」
「これは、私自身の贖罪でもある。頼む、信じてほしい」
八神の説明に対して、まだ不信感が拭えない様子の拓也。
すると、そんな拓也に、不意に凛空が声をかけた。
「拓也さん。僕は、八神さん達の事を信じてもいいと思います」
「凛空……」
「イノベーターから抜け出すのは、簡単な事ではないと思います。それこそ、組織の幹部ともなれば命懸けなのは想像に難しくありません。そんな危険を冒してまで組織を抜け出して、尚且つ僕達の助っ人として現れたんです、なら、僕達も、八神さんの行動に報いて、八神さん達の事を信じてもいいんじゃないでしょうか?」
原作での八神の行動を心得ている凛空は、八神の言葉に嘘偽りがないと確信していた。
なので、八神が味方に加われば、彼が持つイノベーターの知識が大いに役立ち戦いを有利に進められる。との利点を交えながら、凛空は拓也を説得する。
「……分かった。今は、信じよう。だが、俺はまだ、お前の事を完全に信頼した訳ではないからな」
「それで構わない」
凛空の説得を受けて、拓也の不信感も多少は拭う事が出来たようだ。
「よし皆、ここの後処理はオタクロス達に任せて、俺達はタイニーオービット社に向かうぞ」
こうして八神の一件も一段落した所で、本来の目的の為、バン達がタイニーオービット社の本社ビルに向かおうとした、その時。
「そこまでだ! 悪党ども!!」
不意に、何処からか、バン達にとっては聞き覚えのある声が聞こえてくる。
そして次の瞬間、エントランスの一角にある瓦礫の上に、五つの影が姿を現した。
「この世に悪がある限り!」
「美貌と友情と」
「カレーパワーで」
「アキハバラの平和を守る!!」
「我ら、愛と正義のLBXバトラー!!」
「オタブラック!」
「オタピンク!」
「オタイエロー!」
「オタブルー!」
「オタレッド!」
決めポーズと共に名乗り口上を上げたのは、オタレンジャーの五人であった。
「こらーーっ!! お前らーーーっ!!」
どう見ても遅すぎる登場に、他の面々が呆気に取られている中。
おそらくオタレンジャーを呼んだ張本人であろうオタクロスが、彼らのもとに詰め寄る。
「もうイノベーターの連中は、とうに引き揚げた後デヨ!」
「「えぇ!?」」
「ワシが呼んだらさっさと来るデヨ!!」
「で、でも師匠……」
「ん、なんデヨ?」
「すぐに来いと言われましても、連絡を受けた時、丁度外回りの最中で……」
「俺も、
「私も、今日はなんだか化粧ノリが悪くて……」
「ぼ、僕も、馴染みの店の新作カレーを堪能するのに忙しかったんだな……」
「俺も、前から欲しかったLBXパーツのネットオークションで忙しくて……」
オタレッド以外の四人は直ぐに来れたのではないか。
そんな感想を抱かずにはいられない一同を他所に、オタレンジャーの五人は、オタクロスからお りを受け、一様に肩を落とすのであった。
なお、間に合うとは限らない模様