うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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本年最後の投稿になります。来年もご愛読のほど、よろしくお願いいたします。


僕たちの未来(ゆくえ)

 深くさらに深く、闇の底へと沈み続け、やがて、凛空の意識は闇の底に横たえる。

 それからどれ程の時が過ぎたのだろう。

 ふと、凛空は目を覚まし起き上がると、状況を確認するべく周囲を見回した。

 

「何処だ、ここ?」

 

 彼の目に映るのは、何処までも、果てしなく続く暗闇。

 上下左右、何処を向いても見えるのは暗闇ばかり。結局、ここがどの様な場所かは分からなかったが、ここが現実世界でない事だけは凛空も理解できた。

 

「確か、受け渡し場所の交差点にバンと共に向かって、それから……」

 

 何故自分がこの様な場所にいるのか、その手掛かりを探るべく、記憶を辿る凛空。

 そして彼は、自身が撃たれた事を思いだす。

 

「っ! そうだ、確かに僕は撃たれて……」

 

 ふと、撃たれたであろう腹部をまさぐってみるものの、撃たれた跡は何処にも見当たらない。

 見落としたのかと、再び腹部に手を伸ばした、その時。

 

 ふと、凛空は誰かの視線を感じ、顔を上げた。

 

「君は?」

 

 そこで凛空が目にしたのは、年端も行かない男の子の姿であった。

 

「ふふ」

「ねぇ、君、名前は?」

「ふふ」

 

 名前を尋ねても、少年はあどけない笑顔を返すだけ。

 その後も、少年の名前を尋ねてみるものの、結果はすべて同じ。

 

 やがて、凛空は少年の名前を諦め、別の質問を始める。

 

「ねぇ君、君はここだ何処だか知ってるの?」

 

 だが、少年は凛空の質問に答える事無く、再び笑顔を浮かべる。

 やはり、質問するだけ無駄なのか。そんな考えが凛空の脳裏を過った、次の瞬間。

 

「……ここは、狭間の世界。生と死の間に位置する狭間の世界」

 

 少年が、ゆっくりと凛空の質問に答え始めた。

 

「狭間の世界……」

「そう、つまりお兄さんは、まだ完全に死んではいない。と言っても、お兄さんが……、お兄さんの魂がここに留まり続けている限り、お兄さんの肉体は死んだも同然だけどね」

 

 刹那、不意に凛空の目の前に空中モニターが現れ、とある病室の映像を流し始めた。

 心電図の音が響き渡る中、人工呼吸器を装着され病室のベッドに横たわっていたのは、誰であろう凛空自身。

 

 どうやら、魂が戻らなければ、現実世界の凛空の肉体は昏睡状態のままの様だ。

 

「ねぇ教えて! どうすれば僕は現実世界に戻る事が出来るの!?」

「うーん、どうしよっかな?」

「お願い! 僕はこんな所で立ち止まってちゃいけないんだ!」

「……うん、いいよ。教えてあげる」

「本当!?」

 

 凛空の必死の訴えが通じたのか、少年は凛空の魂が肉体に戻る方法を伝え始めた。

 

「簡単な事だよ。バトルして、勝てばいいんだ」

「バトル?」

 

 少年の口から飛び出したバトルという単語。

 その単語を聞いた瞬間、凛空の脳裏にLBXバトルが思い浮かぶ。

 

「今お兄さんが考えている通り、LBXを使ったバトルだよ」

「っ!?」

 

 自身の考えを読まれ驚く凛空。

 しかし、ここが現実世界ではなく狭間の世界と呼ばれる摩訶不思議な場所ならば、他人の考えを読む位造作もないのだろうと、直ぐに気持ちを落ち着かせる。

 

「それじゃ、早速始めようか!」

「え?」

 

 刹那、少年の掛け声と共に、果てしなく暗闇が広がっていた空間が、瞬く間に変化する。

 溢れんばかりの熱気と歓声、眩いばかりの照明、そして開放的な空間。

 それは凛空も見覚えのある、第三回LBX世界大会アルテミスが開催された、お台場ビッグスタジアムのアリーナであった。

 

「これは……」

 

 刹那、凛空はいつの間にか、愛用のCCMと銀色に輝く機体、騎士(ナイト)ガンダムを手にしていた事に気がつく。

 これも摩訶不思議空間の為せる業かと、少々感心する凛空。

 

「さぁ、お兄さん、バトルステージはこっちだよ」

 

 と、凛空は少年に呼ばれ、アリーナの中央ステージへと足を運ぶ。

 刹那、ファイナルステージの時と同様に特別ステージが姿を現し、特別なDキューブがせり出した。

 

「所で、これからバトルをする訳だけど、僕の対戦相手は? もしかして、君?」

 

 辺りを見回しても、少年以外、対戦相手となるべき人物は見当たらない。

 だが、少年は首を横に振った。

 

「違うよ。お兄さんの対戦相手は……」

 

 少年が対戦相手の情報を言いかけた、次の瞬間。

 突如、Dキューブ内に禍々しい光が集約し始める。

 

 そして、集約した光は、凛空が見ている前で人の形へと変化した。

 

「これは……」

 

 大鎌"ケルベロス"を装備し、圧倒的な巨体と禍々しい雰囲気を醸し出すその機体は、紛れもなく、バンとカズがメタナスGX内で対峙したバーチャルLBX。

 冥界の神の名を冠した、ハーデスであった。

 

「これがお兄さんの対戦相手だよ」

 

 まさかの対戦相手に、少々面を食らう凛空。

 だが、覚悟を決めると、凛空はDキューブ内に騎士ガンダムを投下させる。

 

「それじゃ、……バトルスタート!」

 

 そして、少年の掛け声と共に、戦いの幕が切って落とされた。

 

 

 

 

 開始と同時に火山遺跡を駆け、一目散にハーデスの懐に飛び込む騎士ガンダム。

 そしてナイトソードによる斬撃を繰り出すも、ハーデスの見た目通りの強固な装甲の前には、その効果は今一つであった。

 

「く!」

 

 刹那、反撃とばかりにハーデスがケルベロスを振るう。

 だが、騎士ガンダムはその大ぶりな攻撃を躱すと、一旦距離をとる。

 

(がむしゃらに攻撃して勝てる相手じゃない……、となると、装甲の薄い関節部を狙う!)

 

 そして、攻撃方針を決めた所で、騎士ガンダムは再び火山遺跡を駆ける。

 迎え撃つべく振り下ろされたケルベロスの一撃を躱し、再びハーデスの懐に飛び込んだ騎士ガンダムは、ハーデスの関節部目掛けて斬撃を繰り出す。

 

 すると、手応えがあったのか、騎士ガンダムは関節部を狙い更なる斬撃を繰り出し始める。

 

 だがハーデスも、いつまでもやられっぱなしという訳ではなかった。

 騎士ガンダムが関節部を狙って攻撃してくるのを逆手に取り、騎士ガンダムが攻撃を仕掛けたのを見計らい、その巨大な手で騎士ガンダムを捕まえる。

 

「しまった!」

 

 凛空はハーデスの巨大な手の中から騎士ガンダムを逃がそうと必死に操作するも、騎士ガンダムは全く身動きが取れない。

 刹那、必死にもがく騎士ガンダムを嘲笑うかのように、ハーデスはその腕を振り上げる。次の瞬間、勢いよく振りかぶり、騎士ガンダムを地面に叩きつけた。

 

 更に追い打ちとばかりに、ケルベロスを振るい、騎士ガンダムを弾き飛ばした。

 

「く……」

「あれ~、お兄さん、このままじゃ負けちゃうよ~」

 

 CCMの画面に機体各部が限界寸前であるとの表示が表れる等、一転してピンチを迎えた凛空。

 だが、凛空はまだ、諦めてはいなかった。

 そんな彼の気持ちに応えるべく、騎士ガンダムも、ふらつきながらも立ち上がる。

 

 しかし、そんな意志を完全に折にかかるかの如く、ハーデスがその巨体を揺らしながら騎士ガンダムに迫る。

 

 刹那、振るわれたケルベロスの先が騎士ガンダム目掛けて迫る。

 次の瞬間、寸での所でナイトシールドで防御した事で大事には至らなかったが、その代わり、ナイトシールドが弾き飛ばされてしまう。

 

「シールドが!」

 

 防御手段を失ってしまった騎士ガンダム。だが、ハーデスはそんな騎士ガンダムの事情などお構いなしに、再びケルベロスを振るう。

 二撃目を紙一重で躱す騎士ガンダム。そして、三度ケルベロスを振るうハーデス。

 騎士ガンダムは何とか躱し続けるものの、やはり、いつまでも躱しきれるものではない。

 

 やがて、ケルベロスが騎士ガンダムの頭部を捉える。

 

「く!」

 

 だが、騎士ガンダムはナイトソードを盾代わりに、ケルベロスの軌道を逸らす事に成功する。

 こうして、ナイトソードを盾代わりにハーデスの攻撃を防ぐ騎士ガンダムだが、やはり本来の用途以外での使用は、大きな負荷をかける事になる。

 

「な!?」

 

 何度目かの攻撃を防いだ、その時。

 ナイトソードは、負荷に耐えられなくなり、音を立てて折れてしまう。

 

「あ~あ、折れちゃった。これじゃもう、お兄さんに勝ち目はないね」

 

 武器を失い、最早勝利は絶望的。

 そんな状況にもかかわらず、凛空はまだ、闘志を燃やしていた。

 

「まだ、まだ諦めちゃいない!」

 

 折れたナイトソードを握り締め、騎士ガンダムはハーデスに立ち向かう。

 だが、そんな騎士ガンダムを嘲笑うかのように、ハーデスの強烈なパンチが炸裂し、騎士ガンダムは宙を舞う。

 

「だから言ったのに。お兄さん、もう諦めちゃいなよ?」

「……だ。まだ、諦めるもんか!」

 

 それでも、まだ闘志を燃やし続ける凛空。

 

「僕はまだ、こんな所で立ち止まる訳にはいかないんだ! より良い未来を切り開く為、そして、ミカと添い遂げる為にも!!」

 

 そんな凛空の気持ちに応えるかのように、火花を散らしながらも、騎士ガンダムは再び立ち上がる。

 

「どんなに強がったって、もうお兄さんが勝つ確率はゼロだよ!!」

 

 刹那、騎士ガンダムにトドメを刺すべく、ハーデスがケルベロスを振り上げる。

 最早これまで、と思われた、その時。

 

「っ!?」

 

 突如、何処からともなく眩いばかりの光を放つ発光体が現れ、ハーデスは動きを止める。

 ハーデスの周囲を数度旋回した発光体は、やがて騎士ガンダムの目の前に移動し、動きを止めた。

 すると、発光体の光が徐々に収まり、同時に、別の物体が姿を現し始める。

 

 それは、銀色に光り輝く騎兵槍状のスピア。

 そのスピアを目にした瞬間、凛空は、反射的にCCMを操作した。

 

「何!?」

 

 刹那、騎士ガンダムがスピアを手に取ると、勢いそのままにハーデス目掛けて渾身の突きを繰り出す。

 すると、斬撃ではびくともしなかったハーデスの巨体が、数歩後退した。

 

 この事態に驚く少年を他所に、騎士ガンダムは更に攻勢をかける。

 二撃目、三撃目と、攻撃を繰り出す度にハーデスの巨体が揺れ動く。

 

 だが、ハーデスも負けじとばかりに、再びケルベロスを振りかざし。

 次の瞬間、スピアとケルベロスがぶつかり合う。

 

「うぉぉぉっ!!」

 

 暫し、激しい押し合いを繰り広げた後。

 凛空の気迫が乗り移ったかの如く、騎士ガンダムのランスがケルベロスを弾き飛ばした。

 

「これで、トドメだ!」

〈アタックファンクション、ホーリーランス〉

 

 刹那、天使の翼を得た騎士ガンダムが上空に舞い上がると、聖なる光を纏ったスピアをケルベロス目掛けて投げつける。

 そして、ケルベロスにスピアが直撃した次の瞬間。ケルベロスの巨体から光が漏れだし、やがて、断末魔の如く巨大な閃光と共に、ケルベロスはその姿を消した。

 

「あ~あ、負けちゃった」

 

 まさかの逆転劇に残念がる少年。

 一方凛空は、Dキューブ内から騎士ガンダムを回収すると、死力を尽くして戦ってくれた相棒に感謝の言葉を贈った。

 

 

 

 

「さぁ、バトルに勝ったよ。約束通り、僕を現実世界に戻して!」

「……、分かった」

 

 すると少年は、不意に凛空の胸元を軽く突く。

 刹那、凛空の身体が宙に浮き、徐々に上昇していく。

 

「本当は、お兄さんともう少しお話したかったけど、これでお別れだね。さようなら」

 

 少年が別れの言葉を贈る中、凛空はふと背後を振り返る。するとそこには、眩いばかりの光の門が存在していた。

 どうやら、あの光の門を通る事で現実世界へと戻る事が出来るようだ。

 

「あ、そうだ! 君、名前は!?」

 

 そんな光の門に吸い寄せられていく最中、凛空はふと、少年の名前をまだ聞いていなかった事を思いだす。

 すると、少年はあどけない笑顔と共に、口を開いた。

 

「僕の名前は、"リンク"だよ!」

「リンク。偶然だね、僕と同じ名──、っ!」

 

 少年の名前が自分と同じ名前であると知り親近感をもった、次の瞬間。凛空は気がついた。

 ダンボール戦機の住人となったあの日、目を覚ました病室で目にした自分自身の顔。

 

 少年の顔が、その時の顔に瓜二つな事に。

 

「まさか、君って……」

「お兄さん! 立ち止まらず進み続けてね! 例え、困難が行く手を遮っても!!」

 

 刹那、リンクは凛空に向かって拳を突き上げる。

 

「必ず、必ずやり遂げてみせるよ! だから──」

 

 それに応えるかのように、凛空は力強く答えるものの、言い終わる前に光の門へと吸い込まれてしまった。

 刹那、光の門が消え、周囲が再び暗闇に染まる。

 

 

「大丈夫、見守ってるよ。……だって、お兄さんは、僕が生きた証だから」

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