うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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少し間が空きましたが、三月初投稿です。


本当の気持ち

 凛空達四人がゴライアスへと向かっている頃。

 黄昏時の街の中に佇むサイバーランス社の本社ビル、その上階に位置する社長室。

 モノクロ家具で統一された高級感と清潔感のあるその室内で、部屋の主であり凛空の父親でもある蔵土は、白衣を纏った一人の老年男性と真剣な面持ちで話をしていた。

 

「ドクター、頼んでいた"アレ"、開発状況はいかがですか?」

「アレか、幾つかの細かな調整は残っておるが、ま、……最早完成したと言っても過言ではない」

「おぉ!」

 

 ドクターと呼ばれた老年男性の言葉を聞き、蔵土は感嘆の声をあげた。

 

「では、早速──」

 

 そして、次なる行動に移さんとした、その時。

 不意に社長室の扉が開き、とある人物が社長室に姿を現した。

 

「おや悠介さん? そんなに慌ててどうしたんですか?」

 

 その人物とは、元タイニーオービット社の社長で、今はサイバーランス社の一員として働いている宇崎 悠介氏であった。

 

「西原社長、貴方が何やら危険な事を企んでいると掴んだのでね、止めに来たんですよ」

「ははは。悠介さん、私は危険な事など、何も企んではいませんよ」

「白を切っても無駄ですよ。貴方が、こちらのドクターと呼ばれる人物に依頼して計画に必要な物を作らせているという事実は、既にこちらで把握済みだ」

「っ!」

 

 一体何処からその情報を掴んだのか、そんな質問を口にしたい衝動に駆られつつも、白を切る為に平静を装う蔵土。

 だが、どうやら動揺している事は表情に出ていた様だ。

 

「図星のようですね」

 

 悠介の言葉に、蔵土は白を切るのを諦めるのであった。

 

「いやはや、悠介さん、貴方には隠し事は通じない様ですね。……しかし、自画自賛ではないが、秘密裏に進めていたと思っていたのだが、一体どうやって?」

「弊社の技術力があればこそ、ですよ」

 

 刹那、悠介の肩に一機のLBXが降り立つ。

 流線型の細身な外観を白主体に染め上げたその機体の名は、クノイチ。

 

 クノイチの姿を目にした瞬間、蔵土は悠介がどの様な方法で情報を掴んだのかを理解するのであった。

 

「ははは、まさか、自社製品の性能の高さをこんな形で痛感する事になるとはね……」

 

 そして、一本取られたと言わんばかりに呟くと、蔵土は意を決したのか、悠介に全てを打ち明け始めた。

 

「悠介さん。私は、息子の凛空にあのような仕打ちをしたイノベーターに対して怒りを覚えずにはいられない」

 

 平静を装ってはいるが、蔵土の言葉の会話の端々からは怒りが感じられる。

 

「息子をあんな目に合わせた奴らに復讐を! その想いから、私はこのドクターに復讐装置の製造を依頼した」

 

 蔵土が語るのを他所に、悠介は改めてドクターと呼ばれる老年男性に視線を向ける。

 先天性の病気、或いは事故の影響なのだろうか。ゴーグルをつけ、左手が義手になっている他、歩行能力を補うかのように杖をついている。

 一体蔵土はこの者と何処で知り合ったのか、その姿はまさに、マッドサイエンティストと呼んでもおかしくはなかった。

 

「ドクター、アレを、悠介さんにも見せてやってくれ」

「よいのか?」

「あぁ」

「分かった、少し待っておれ」

 

 しかし、悠介はドクターと呼ばれる老年男性に警戒心を抱いた一方で、彼が製造したという復讐装置の正体について興味を抱いていた。

 一体、どの様な品物なのか。期待に胸を膨らませる悠介。

 

 程なく、一度退室したドクターが台車を押しながら再入室する。

 台車には、全高2メートル強の何かが乗っているが、生憎と布がかけられておりその姿を拝む事はできない。

 

「これが、復讐装置、ですか」

「あぁ、そうだ」

「では、完成したこいつのお披露目といくかの」

 

 そして、ドクターがかけられていた布を取り除くと、遂に復讐装置と呼ばれた物がその姿を現した。

 

「こ、これは……」

 

 その姿を目にし、悠介は息を呑んだ。

 鋼の拳、力強い脚、まさに、鋼の様な屈強な肉体を彷彿とさせる。だが、頭部の造形や色合いなどは、サイバーランス社が販売している水陸両用型のLBXの"アッガイ"を彷彿とさせる。

 それはまさに、アッガイをより人型に近づけたアッガイ型パワードスーツと呼ぶに相応しい外観であった。

 

「これこそ、私自らが"アイアン・アッガイマン"となって奴ら(イノベーター)に正義の鉄拳を食らわせるべくドクターに開発させたパワードスーツ。その名も、"アッガイマンアーマー"だ!!」

「な、自ら!? まさか、西原社長はこれを着てイノベーターの本拠地に乗り込む気なんですか!?」

「あぁ、その通りだ」

「無茶だ!」

「ほほほ、心配無用じゃ。ワシが作ったこのアッガイマンアーマーの外殻は強化・結晶化した鉄の分子配列マトリクスにより柔軟でありながら強靭な防護力を実現しており、銃弾などものともせん。更にアーマーは深海や宇宙でも活動可能な気密性を備えておる」

 

 得意げにアッガイマンアーマーの性能を語るドクター。

 曰く、現在は太陽光発電式バッテリーを動力源としているが、将来的にはエターナルサイクラーを動力源とし、飛行能力の付与や、モデルとなったアッガイ同様に光学兵器やミサイル等の武装を追加したい、という壮大な野望も続けて語るのであった。

 

 そんなドクターを他所に、悠介は蔵土に無謀な復讐計画など止めるように説得を続ける。

 

「西原社長、貴方の気持ちは理解できない訳ではない。だからと言って、何故自ら」

「悠介さん、今や社長の身でありながら正義の味方として怪人や巨悪と戦うのは珍しい時代ではない」

「それはフィクションの中の話でしょう! 西原社長、一度冷静に、考え直してください」

「私は冷静ですよ、悠介さん」

「いや、今の貴方は怒りで我を忘れている。もし、乗り込んで貴方の身に何かあれば、それこそ残された凛空君はどうなるんです!」

「っ!」

 

 残された者の悲しみ、それを知る悠介の言葉に、蔵土ははっと気づかされた。

 そして、悠介の言葉で漸く正気を取り戻した蔵土は、無謀な復讐計画を止める決断を下すのであった。

 

 因みに。

 復讐計画に使われる事はなくなったが、折角アッガイマンアーマーを作ったのにそのまま倉庫で埃を被らせるのも勿体ない、なので何かしらの有効活用はないかと協議を重ねた結果、企業キャラクターとして活用する事が決定し。一部のコアなファンを獲得するのであった。

 閑話休題。

 

 

 

 

 所変わって、サイバーランス社の本社ビルでそんな一幕があったとは露ほども知らない凛空達四人はと言えば。

 本社工場と言うだけあってネズミ一匹逃がさない程のゴライアスの警備に対し、ジンの執事の協力のもと正面から警備を突破し、無事にゴライアス内部への潜入に成功していた。

 

「カズ達、一体何処にいるんだろう?」

「おそらく、捕まっているとすればゴライアスの下層部だろう」

「早く四人を助け出さないとね」

「ん」

 

 ジンを先頭に、警戒しつつゴライアス施設内を進んでいく四人。

 程なく、幅の広い廊下を進んでいた四人の前に、不意に人影が現れた。

 

「ジン、こんな所で、一体何をしておる?」

 

 足音を響かせながら現れた人影の正体を目にし、四人の表情が強張っていく。

 何故なら、その人物とは、海道 義光その人であったからだ。

 

「ジン、聞こえていないのか? 一体ここで何をしていると聞いておるのだ」

「……お前は誰だ?」

「ジン、親に向かって、なんて口の聞き方だ」

「お前はもう、僕の知るお爺様などではない! そこを退け!!」

「どうしてしまったというのだ? ジン、私は、お前をそんな子に育てた覚えはないぞ?」

「……お前が、お前が育てたというのか、この僕を!!」

 

 珍しく感情をむき出しにするジン。

 対する海道 義光は、表情を変える事なく、徐に何かを取り出した。

 

「やれやれ、聞き分けのない子には、"しつけ"をせんとな」

 

 海道 義光が取り出したのは、一機のLBXであった。

 黒を基調としたボディに、紫色の羽と尻尾を持つその外観は、まさに悪魔と呼ぶに相応しい風貌であった。

 

「それは! AX-02、カイザ! まさか、完成していたのか……」

 

 LBXの正体を知っていた様子のジン。

 そんなジンを他所に、カイザを取り出した海道 義光は笑みを浮かべた。

 

「では、いくぞ」

「皆、応戦するぞ!」

 

 そして、四人が各々のLBXを取り出した所で、海道 義光とのLBXバトルの幕が切って落とされた。

 

 

 開始早々、カイザに迫るオーディーン・ゼノン・ガーベラの三機。

 各々の得物をカイザ目掛けて振るうも、カイザはまるで踊るかのように三機の攻撃を躱してみせる。

 更に、AFAガンダムから放たれるビームも、既に見切っていると言わんばかりに躱してみせた。

 

 しかし、それで諦める四人ではない。

 攻撃の手を緩めることなく次々とカイザ目掛けて攻撃を繰り出す四機。

 だが、その攻撃はことごとく躱され、逆にカイザの得物であるインペリアルブレードの一撃が四機に襲い掛かる。

 

「く、何でこっちの攻撃は当たらないんだ!」

 

 数では圧倒しているのに旗色が悪い現状に焦りを隠せないバン。

 すると、不意にジンが、カイザの強さの秘密を暴露し始める。

 

「やはり、既にこちらの動きを学習済みか……」

「どういう事、ジン?」

「ん、何か知ってるの?」

「あのカイザには学習能力を持つAIが搭載されている。そしておそらく、これまでの僕達との戦闘データから僕達の行動パターンを分析したんだ」

 

 すると、ジンの暴露が真実である事を裏付けるかのように海道 義光が徐に話し始めた。

 

「その通り。お前たちの行動パターンは既に分析済みだ。即ち、お前たちが勝つ可能性は……、ゼロ!!」

「そんな事、あるもんか!」

 

 戦っても無駄だと言い放つ海道 義光。しかし、バンは僅かばかりの可能性を信じてオーディーンを操作する。

 それに続くように、ジン・凛空・ミカの三人も、各々のLBXを操作する手を止めない。

 

 だが、無情にもカイザに放った攻撃は全て躱され、逆にカイザの放った攻撃を受けて四機はダメージを蓄積させていく。

 

「無駄な足掻きはよせ」

「まだだ、まだ諦めるもんか!」

 

 それでも、バンは勝利を信じてカイザに挑み続ける。

 刹那、オーディーンとカイザ、両機の得物がぶつかり合い、鍔迫り合いを演じ始める。

 

「お前たちは勝つ可能性は、ゼロ!」

「俺の、俺のやるべき事。……俺の本当の気持ち!」

 

 次の瞬間、まるでバンの気持ちに応えるかのように、オーディーンが鍔迫り合いを制する。

 

「これ以上、LBXで悲しい思いをする人を作らない! それが、俺のやるべき事、俺の本当の気持ちだ!!」

 

 刹那、バンの手にしていたCCMが変形し、同じく、オーディーンもその機体を金色(こんじき)に光り輝かせる。

 これこそ、オーディーンに搭載された特殊モード、X(エクストリーム)モードであった。

 

「っ!?」

「あれは!?」

「V、モード?」

 

 アキレスのVモード状態を彷彿とさせるXモードの発動に驚く三人。

 

「いけ、オーディーン!」

 

 一方、Xモードにより機体性能を大幅に向上させたオーディーンは、瞬く間にカイザとの間合いを詰めると、カイザに次々と攻撃を叩き込んでいく。

 やがて、カイザが立っているのもやっとな状態になった所で、トドメの必殺ファンクションが炸裂し、カイザは断末魔の如く爆発と共にその機影を四散させた。

 

 次の瞬間、四散したカイザの上半身が海道 義光の顔に直撃する。

 

「あぁ!」

 

 そして、四人は目撃する事となる。

 滴り落ちる白い液体、ホワイトブラッドと呼ばれる人工血液。顔の右半分、露わになった、ぬくもりを感じさせぬ冷たい機械の顔。

 アンドロイドである海道 義光の姿を。

 

「ま、全く、ここ、こんな、け、け、結果になろうとは、な」

 

 衝撃的な光景を目にし、言葉が出ない四人。

 一方、損傷した影響か、少しぎこちなく喋り続ける海道 義光。

 

「まま、まぁいい。今回は、ここで失礼させてもらうよ」

 

 そして、踵を返し、何事もなかったかのようにその場を後にする海道 義光。

 その背中を、四人は黙って見送る事しかできなかった。

 

 

 やがて、海道 義光が見えなくなった所で、不意にジンが悔しそうに呟く。

 

「愛情を注がれていると、本物のお爺様だと。なのに、僕は……、いつからアレをお爺様だと思って……」

「……ジン君」

「ジン! 俺達と一緒にやっつけよう! こんなひどい事をする奴らを!」

「ん、バンのいう通り」

「幾ら悪人と言えど、人としての尊厳を冒していい訳じゃない。ジン君、僕たちの手で必ず、こんなひどい事をした奴をやっつけよう!」

「皆……、ありがとう」

 

 三人の言葉に励まされ再び歩み始めるジン。

 彼に続くように、バン・凛空・ミカの三人も、再び歩み始めるのであった。

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