アミ達を救出するべくゴライアス施設内を進む凛空達四人。
警備員や作業員たちに見つかる事無く順調に下層部へと進んでいた四人だったが、その時は突然訪れた。
「これはこれは、ジン様ではありませんか」
「しかも、お急ぎの様で、一体どうしたんです?」
廊下の真ん中に置かれたDキューブ、そして、Dキューブの前に立つ、不敵な笑みを浮かべた五人の男達。
「っ! お前たちは!」
「デ……」
「デクー
ジンはもとより、彼らを以前目にした事のある凛空も彼らの名前を口にしようとしたが、その直後、その時自身が"凛空"ではなく"リンコ"だった事を思い出し、瞬時に言葉を飲み込むのであった。
「おや、まさかジン様が我らの名前を覚えておいでだったとは……」
「これはこれは、恐悦至極にございます」
「ジン、あの人たちは?」
「彼らは、神谷重工の精鋭部隊、デクー5。僕は以前、彼らと神谷重工の社員向け内覧会で戦った事があるんだ」
ジンの説明を聞き、バンやミカがデクー5の事を理解した所で、デクー5の隊長格である男性が口火を切る。
「クククッ。ジン様、残念ながらここから先は関係者以外立ち入り禁止となっています、速やかにお引き取りを」
「それは、できない相談だな」
「……では、実力を行使させていただきます!!」
刹那、男達はそれぞれが操るデクーシリーズを取り出す。それがどういう意図化を理解した凛空達も、それぞれのLBXを取り出そうとする、だが。
「三人とも、ここは僕に任せてくれ」
ジンの制止の声に、バン・凛空・ミカの三人はLBXを取り出そうとしていた手を止める。
「え!? でもジン!」
「頼む」
「……分かった、ジンがそう言うなら」
「頼んだよ、ジン君」
「頑張れ」
「あぁ、任せてくれ」
そして、ジンの言葉を信じ、三人はジンにLBXバトルを託すのであった。
「クククッ。ジン様、まさか以前の様に簡単に勝てるとお思いで?」
「我らのデクー、以前のものと同じと思ってもらっては困ります」
「今回使用する我らのそれは、究極にまでカスタマイズした機体」
「更に、前回の反省もきちんと踏まえています」
「さぁ、いきますよジン様!」
Dキューブを挟み相対するジンとデクー5。
それぞれの機体がバトルの舞台へと降り立ち、いよいよ、LBXバトルの幕が切って落とされる。
「「覚悟してくださいジンさ──、ま?」」
それは、余りに一瞬の出来事であった。
LBXバトルの幕が切って落とされたと同時に、ゼノンが、五機のデクーシリーズの間を、疾風の如く駆け抜けた。
次の瞬間、五機のデクーシリーズは断末魔の爆発音とともに、その無残な姿を曝け出した。
秒殺、否、文字通りの瞬殺であった。
「行こう、皆!」
圧倒的すぎる力量の差を見せつけられ、開いた口が塞がらないデクー5の男達。
そんな呆然とする彼らを横目に、凛空達四人は、再び下層部を目指して歩み始めるのであった。
同じ頃、目の前のモニターに映し出された映像を目にし、悔しさに顔を歪ませる男性が一人。
誰であろう、名呉社長である。
彼は凛空達にデクー5を差し向け捕縛を試みたが、その目論見は呆気なく崩れ去った。
「く! こうなれば……」
だが、名呉社長は諦めなかった。
目の前のコンソールを操作すると、最後に、エンターキーを押そうとした、その時。
「見苦しいね、そういうの」
「っ!」
不意に聞こえた声に、名呉社長は肩をビクっと震わせながら、エンターキーを押そうとした手を止める。
そして、声の方へと振り返ると、そこには扉に寄りかかる、金髪ポニーテールに眼帯という容姿の青少年の姿があった。
「こ、コウスケ様!?」
「勝者に潔く道を譲るのは敗者としては当然の事。それを後ろから撃とうなど、美しくない」
名呉社長に説教を垂れる、コウスケと呼ばれた青少年。
彼は、神谷グループの会長である神谷 藤吾郎の息子で、その名を神谷 コウスケという。
「し、しかしコウスケ様。このままでは最下層に……」
「それでいいんだよ」
「え!?」
「そこが僕と彼らとの戦いの舞台となるんだ、何も問題ない」
「で、ですが……」
「何だい? まさか、"神に愛された男"であるこの僕が、敗北するとでも?」
「い、いえそのような!」
「なら、これ以上余計な事はしないでくれるかい、名呉社長」
「かしこまりました」
こうして名呉社長から言質を取ったコウスケは、部屋を後にすると、一路最下層に向かうのであった。
まさか敵に助けられていたとは夢にも思わない凛空達四人は、漸く下層部へとたどり着いた。
そして、廊下を進んでいた、その時。ふと、聞き慣れた声が四人の耳に聞こえてくる。
「この声、郷田さん!」
その声にいの一番に反応したミカは、小走りに声のする方へと向かう。
若干遅れて残りの三人も声のする方へと向かい。程なく、四人は制御室と書かれたドアプレートの付いた扉の前で立ち止まった。
扉の向こうからは、「さっさと出しやがれ!」との声や、何とか扉を蹴り破ろうとする打撃音が聞こえている。
「もしかしたらカズ達も一緒かも!?」
「今、ロックを解除する」
刹那、ジンはゼノンを操作し、扉の脇のコントロールパネルにアクセスすると、程なく、扉のロックを解除する。
「皆、無事か!?」
制御室に足を踏み入れると、そこにはカズ・アミ・ハンゾウ・キヨラの四人の姿があった。
「皆、よかった……、本当によかった」
「バン!? それにジンにミカに、凛空も!?」
「どうしてここに!?」
「皆が捕まったかもしれないって拓也さんから連絡を受けてね」
「ん、助けに来た」
「そうか、助かったぜ。……所でバン、お前、もう大丈夫なのか?」
「あぁ、もう平気さ!!」
ハンゾウの問いに対するバンの答えを聞き、カズ・アミ・ハンゾウの三人はバンの復活を喜ぶ。なお、遠巻きに見ていたキヨラも、小さな笑みを零していた。
「所で凛空、お前、もう動いて大丈夫なのか?」
「正直に言うと、少し無茶してます。でも、無茶しているのは郷田先輩達も同じですから」
「ふ、そりゃそうか」
凛空の身体を心配するハンゾウを他所に、バン達はモニターに映し出されている生産ラインの様子を気にかけていた。
「あれ、何を作ってるんだろう?」
「まさかあれは……」
「何か知っているのかジン!?」
「おそらく、あの生産ラインで作られているのは、エターナルサイクラーを応用した兵器だと思う」
「エターナルサイクラーを!?」
「しかも、これ全部かよ!」
「でも、一体どんな兵器なのかしら?」
「僕が知る情報通りなら、おそらく、あれは"ドングリ"と呼ばれるメガトン級の超小型爆弾だ」
ジンの、文字通りの爆弾言葉に、残りの面々は驚きの声を上げる。
「……所で、メガトン級って、どれぐらいの威力なんだ?」
「……はぁ、まったく」
「おい仙道、何だそのため息は!」
「あんたの学のなさがまさかここまでだったとはと呆れただけよ」
「なら、お前は説明できるのかよ!」
「メガトンは重量の単位で、1メガトンは100万トンになるわ。そして、このメガトンという単位は、主に"核兵器"の威力を表すときに使われる」
「っ! 核兵器!? って事は、あそこで作られてるのが全部!?」
キヨラの説明を聞き、ハンゾウは驚愕の表情を浮かべる。
核兵器に匹敵する威力を有する超小型の爆弾。しかも、核兵器と異なり、所謂"死の灰"を撒き散らす心配もない為、その使い勝手は核兵器以上。
そんな恐ろしい兵器をイノベーターが手に入れたという事実は、バン達に、イノベーターの野望を何としても阻止しなければならないとの決心をさらに強く固めさせるのであった。
「そうだ、それよりも聞いて! 海道 義光の事なんだけど……、イノベーターのトップは海道 義光じゃないみたいなの」
「俺達見たんだ、アイツが誰かの指示で動いてたのを」
その矢先、不意にアミとカズが口にした言葉を聞き、バンとジンは案の定と言わんばかりの言葉を口にする。
「何、何か知ってるの?」
「海道 義光は人間ではない。アンドロイドだ」
刹那、ジンは自身のCCMを取り出すと、アミ達にとある写真を見せる。
それは、先ほどバトルした際に撮られたもので、顔の右半分が機械の顔になっている海道 義光の写真であった。
「嘘……」
「オイオイ、マジかよ……」
「これが、海道 義光の正体……」
「……」
こうしてカズ・アミ・ハンゾウ・キヨラの四人も海道 義光の正体を知った所で、バンが口火を切る。
「よし皆、エターナルサイクラーを取り戻しに行こう!」
刹那、バンを先頭に、一行は制御室を後に、エターナルサイクラーが保管されているであろうゴライアスの最下層に向かうのであった。
最下層へとつながるエレベーターを降り、一本道を進んだその先。
そこで一行が目にしたのは、広々とした円形の空間。そして、バリアに守られ、台座に安置されたエターナルサイクラーの姿であった。
「ねぇバン、あれって」
「間違いない、エターナルサイクラーだ!」
漸く目的のエターナルサイクラーを見つけたと安堵した、次の瞬間。
「それが欲しいのか?」
「っ! 誰だ!?」
奥から、足音を響かせながら人影が現れる。
その正体は誰であろう、神谷 コウスケその人であった。
「っ、テメェは!?」
「おや、また君達か……。一度で懲りないとは、まったく、愚かだね。愚行という言葉を知らないのかい?」
「バン、ジン、凛空、ミカ、気をつけて」
「こいつはヤバい奴だ。俺達、こいつにやられて捕まっちまったんだ」
どうやらカズ・アミ・ハンゾウ・キヨラの四人は、コウスケとのLBXバトルに一度敗北している模様。
故に、四人は目の前に現れたコウスケに対して警戒感を露わにした。
「……神谷 コウスケ」
「ジン、知ってるのか!?」
「神谷グループ会長の息子だ。……それに、LBXプレイヤーとしても天才的なセンスを持っている。確か、LBX工学を学ぶためにA国に留学したと聞いていたが、まさか帰国していたとは」
ジンの説明をバン達が聞き入っているのを他所に、凛空は、ミカとのコソコソ話に興じていた。
「ね、凛空。一流企業の御曹司って、皆、半裸なの?」
「えっと……、ミカの知ってる具体例が特殊なだけであって、殆どの人は普通だよ」
「ん、そっか」
そんな凛空とミカを他所に、コウスケは再び口火を切る。
「海道 ジン君、だったかな? 君だよね、海道先生の恩を仇で返したという少年は」
一拍置き、コウスケは更に言葉を続ける。
「海道家の人間として育てられたと言っても、所詮、その体に流れるのは平民の血。海道の名を名乗るには分不相応だ。やはり、高貴な家柄には高貴な血を持つ者こそ相応しい。そうは思わないかい、西原 凛空君?」
不意に話を振られ驚いた凛空だったが、一拍置いた後、凛空は答えを返し始める。
「僕はそうは思いません。高貴な血を引く人でも能力や才能がない人は沢山いますし、逆もまた然り。人は、血筋だけで決まるものじゃないと思います」
「そうか。……では、イレギュラー要素は抹消しよう、それが世界のルール」
「バン、ジン、ミカ!」
「よし!」
「あぁ!」
「ん!」
刹那、コウスケが展開させたDキューブに各々の機体が降り立つ。
なお、カズ・アミ・ハンゾウ・キヨラの四人は、捕まった際にCCMを没収された為、観戦に回っている。
「君達に、格の違いというものを思い知らせてあげるよ。この美しき愛機、ルシファーでね!!」