シーカー本部へと到着した凛空達は、到着早々、元イノベーターの一人である
「全く、馬鹿やってんじゃないよ! そーゆー危ない事は、私達大人に任せておけばいいんだよ!」
「でも、何だかんだで一番心配してたのって、ボスですよね」
「そうそう、もう心配で気が気じゃないって感じだったッス」
反省しているかのように項垂れる凛空達を他所に、真野は、部下である
「自分達がやった事は、十分理解できてるようだな」
「ごめんなさい……」
「いや、謝らなければならないのはこちらもだ」
「対応が後手に回ったから、かしら?」
拓也の発言に瞬時に反応したのはキヨラであった。
「……そうだ。君達が勝手な行動を取ったとは言えな」
「じゃ、お互い様ね」
「ふ、そんなところだ」
そして、拓也とキヨラのやり取りが一段落ついた所で、バンの口から、ゴライアスで得た情報の数々が拓也達に伝えられる。
それを聞いた拓也達は、一様に重々しい表情を浮かべた。
「まさか……、海道がアンドロイドだったとは……」
「しかも、その偽物海道に偉そうに命令してる奴もいたんだぜ」
「誰かまでは、分からなかったけど」
「我々の敵は海道 義光ではなかった……、のか」
自身の復讐の相手であった海道 義光のまさかの結末に、拓也は複雑な表情を浮かべる。
そんな拓也を他所に、真野の発した意味深な発言に、凛空達が反応を示していた。
「もしかして、フェアリーテイル計画について、何か情報を掴んだんですか!?」
バンが真野に対して質問を投げかける。
すると、その質問に答えたのは真野ではなく、自身の気持ちに踏ん切りをつけた拓也であった。
「実は、バン達が来る前に、檜山から連絡があったんだ」
「レックスから! で、何て!?」
「檜山は、イノベーターの最終計画、即ちフェアリーテイル計画の全容を探り当てたんだ」
曰く、フェアリーテイル計画とは、"サターン"と呼ばれる全長310メートル、総重量約6万トンにも及ぶ航空機、その形状から航空機よりもロケットに近いそれにドングリを内蔵した自律稼働型LBXを搭載。
同機を使用し、東太平洋上の人工島に造られた世界最大のエネルギープラント、世界中にエネルギーを供給している事から別名"世界の心臓"とも呼ばれる"タイラントプレイス"を強襲・破壊。
これにより生じた世界的なエネルギー危機に際し、エターナルサイクラーを使用しエネルギーを独占、世界を手中に収める。
拓也の口から語られたフェアリーテイル計画の概要を聞き、バン達はその壮大なスケールの内容に愕然とするほかなかった。
「タイラントプレイスはその重要性から、24時間365日、世界最高峰のセキュリティによって守られている。……だが、ドングリを内蔵した自律稼働型LBXを何千何万と投入されたのでは、おそらく太刀打ちはできないだろう」
重苦しい空気がシーカー本部内に漂い始める。
だがその矢先、ふと、アミが何かに気付いたかのように声をあげた。
「ちょっと待って。世界的なエネルギー危機に際してエネルギーを独占する事が目的なら、どうして、イノベーターはエターナルサイクラーのサンプルユニットを私達に返したのかしら?」
「あ、そう言えば!」
「あのいけ好かねぇ野郎は、グラビティポンプが完成したから必要ねえって言ってたが?」
「そのグラビティポンプって、要は爆弾の製造マシンでしょ。エターナルサイクラーの様にエネルギーは生み出せないんじゃない?」
「っ! なら仙道は、連中がサンプルユニットを返した理由が分かるのかよ!」
「そんなの、分かる訳ないでしょ」
「なんだそりゃ! てっきり、得意のタロットカードでわかってるのかとばっかり……」
「郷田、タロットカードで何でもかんでも分かる訳ないでしょ、馬鹿じゃない?」
「っ! 馬鹿とは何だ、馬鹿とは!」
「言い得て妙でしょ」
「こんの……。ふ、そうだ。俺が馬鹿なら、お前はタロットカード馬鹿、だな」
「っ!! 私が馬鹿ですって!」
「言い得て妙、だろ」
「郷田、あんたのお馬鹿さ加減には、ほとほと愛想が尽きるわ!」
「俺だってな──」
ふとした切っ掛けで痴話喧嘩に発展してしまったハンゾウとキヨラを他所に、他の面々はイノベーター側の不可解な行動の理由を推測する。
しかし、結局納得のいく答えを導き出す事はできなかった。
「よし、やった!」
こうして、新たな謎が残り、ハンゾウとキヨラの痴話喧嘩も一段落がついたことろで、先ほどからキーボードを操作していた真野が喜びを声をあげる。
それに反応するように、他の面々が真野の方に視線を向ける。
そこで彼らが目にしたのは、モニターに映し出されたとある施設の衛星画像であった。
「これは……、イノベーター研究所の衛星画像か!」
「えぇ、衛星をハッキングしました」
「「流石です(ッス)、ボス!」」
真野が元凄腕ハッカーとして手腕を振るい得た衛星画像。
その画像の中央部には、巨大な発射台と、発射台に固定された巨大なロケットの先端部が映し出されていた。
「これは?」
「これが、サターンだ」
「これが、サターン……」
衛星画像、更にはモニターに表示されたサターンの概略図を目にし、凛空達はその威容に息を呑んだ。
そんな中、ジンが何かに気がつきモニターの一角を指差す。するとすかさず、真野が指差した個所を拡大する。
そこに映っていたのは、ベルトコンベアを使ってサターンに搬入されている大量の、妖精とも小悪魔とも見て取れるLBXの姿であった。
「完成していたのか……」
「ジン、知っているのか!?」
「あれは自律稼働型LBX、フェアリー。僕達がゴライアスで戦ったカイザ同様に、学習能力を持ったAIが搭載されている。このAIの基となっているのはAX-00のVモード……、即ち、フェアリーはAX-00の完成型とも言うべきLBXだ」
「ドングリを内蔵した自律稼働型LBXとはこいつの事か!」
その名に反した悪魔の如く所業。
フェアリーテイル計画は何としてでも阻止しなければならない、それはこの場にいる全員の共通認識であった。
「このサターンが発射されるまで、あと25時間って所みたいだね」
「25時間……、それまでにイノベーター研究所に乗り込んで発射を阻止できれば……」
「難しいと思うわ」
拓也の呟きに里奈が反応する。
「おそらく、サターンの打ち上げ準備の段階に入ったという事は、研究所の警備レベルも最高レベルに引き上げられている可能性が高いわ」
「まず間違いないだろう。警備用のドローン等はもとより、完全武装した赤の部隊も展開している筈だ」
里奈の説明に八神の補足を聞き、イノベーター研究所への潜入が如何に難しいかを痛感する。
「だが、発射の直前ならば、ドローンも警備の兵達も安全区画に退避する筈だ」
「八神さんの言う通りッス! 民間のロケット打ち上げと同様、発射時は燃焼したガスが周囲に撒き散るッス。だから、安全のため周囲一帯は無人になる筈ッス!」
一拍置いて発せられた八神の言葉、更に塀太の補足を聞き、まだチャンスが残されている事に気がつく。
「成程、その時を狙えば……。所で、それは発射のどれ位前なんだ?」
「そうッスね……。おそらく、発射30分前位ッス!」
「30分前、かなり際どいタイミングだが……。我々に残されたチャンスはそこしかない」
チャンスは一度きりしかないが、必ずやものにしてみせる。
拓也の言葉の節々からはそんな気概が感じられた。
「最終決戦、ですね」
「あぁ、これが俺達シーカーとイノベーターとの最後の戦いだ」
この国の、否、世界の命運がかかった決戦の時が近づいている事実に、一同の緊張感はさらに高まっていく。
「最終決戦というのなら、それ相応の陣容で臨まなければいけませんね」
その時、ふとシーカー本部の扉が開き、聞き慣れた声と共に複数の人影が現れる。
「田中さん!」
「嶺!」
その正体は田中、そして嶺警部をはじめとするロンド・ベルの面々であった。
「皆さんがここにいるという事は……」
「此度の戦い、我々も、そして嶺警部をはじめとしたロンド・ベルも参加させてもらいますよ」
「事は最早一刻の猶予もない所まできている。だから俺達ロンド・ベルも、全力で協力します」
「有難い!」
「ロンド・ベルも参戦してくれるなら百人力だぜ!」
「は、相変わらずお気楽ね……」
力強い助っ人の登場に浮かれる郷田達。
しかし、キヨラの言う通り、ロンド・ベルが加わったからといって楽観視するのは間違いだ。
「この戦い決して負けてはならない。だから、それ相応の備えも必要だ……。バン!」
「え!? 俺?」
「バン、渡しておきたいものがある」
どうやらその事は拓也も理解しているらしく、不意に名を呼ばれ驚くバンを他所に、拓也は結城に連絡を取りあるものを持ってくるように指示を出す。
数分後、シーカー本部にやって来た結城から、バンはあるものを受け取る。
「これは……、LBXの装備?」
「これは"ビームガーター"と言う装備で、タイニーオービット社研究開発部のテクノロジーの粋を集めて作った最強のシールドさ」
「最強のシールド……」
「ナノサイズで再現した強化ダンボールの素子を電磁波によって結合させビームシールドとして展開する。更にその重量は非常に軽く、LBXの機動にほとんど影響を与えない」
「スゲーッ! これでオーディーンも文字通り最強だな!」
「流石は天下のタイニーオービット社ね!」
結城の説明を聞きまるで自分の事のように喜ぶカズとアミを他所に、バンは今一度受け取ったビームガーターを見つめる。
「褒めてくれている所申し訳ないんだけど、完成にこぎつけられたのは霧島さんの協力があってこそなんだ」
「霧島さんって、アスカ工業の元社長の?」
「そうだよ」
「成程、確かに強化ダンボールの発明者なら、強化ダンボールの素子の取り扱いについては誰よりも詳しい筈だわ!」
「霧島さんも望んでいるんだよ。LBXが兵器ではなく、強化ダンボールの中で戦う玩具であり続ける事を」
霧島の思いが込められたビームガーターを今一度見つめたバンは、程なく、顔を上げ口火を切った。
「俺、必ずイノベーターの野望を止めてみせます! LBXが皆を笑顔にする玩具であり続ける為に!!」
そして、自らの決意を口にするのであった。
「では、丁度いい流れですので、凛空君」
「え、僕?」
バン達のやり取りを眺めていた所、まさか自身の名が呼ばれるとは思っていなかったのか、不意に田中から名を呼ばれ少々驚く凛空。
「西原社長から貴方宛ての荷物を預かっていたんですよ」
「父さんから?」
話の流れからしてバンと同様にLBX用の装備か何かだろうかと凛空は予想したが、田中が持ってきた荷物の正体は、予想を遥かに超える品物であった。
「こ、これは……」
姿を現したのは、白亜を基調に赤いラインが特徴的な、まるで白亜の巨艦を彷彿とされる鋼鉄の脚。
「何でも、来年度の販売を目指している歩行アシストスーツの試作品で、強化・結晶化した鉄の分子配列マトリクスの外殻により柔軟性と強靭性を両立し、これを装着すればトップアスリート並みの強靭な足腰を手に入れられるとか」
「へぇ……」
「更に新型の太陽光発電式バッテリーを搭載し、稼働時間は従来品と比べ約三倍もの時間を誇るとか」
「……」
「因みに、この試作品の名前は"あるくエンジェル"と言うそうです」
(最終決戦に車椅子じゃ色々と不便だろうから用意してくれたんだ、うん、そうに違いない。……これを装着して人間バレルロールを行えなんて他意はない、筈)
これは親心以外の何物でもないと自分自身に言い聞かせると、凛空は車椅子を降り、あるくエンジェルを装着する。
謳い文句に偽りはない様で、まるで自分の足ではないかの様な力強い脚力に凛空は感嘆の声をもらした。
「あぁ、因みにオプションで色々なパーツを付けられると言ってましたよ」
「オプション?」
「確か……、掃除に便利な高圧洗浄オプションの"ゴットフリート"や送風オプションの"バリアント"。普段使い出来る電波増強オプションの"プラズマブースター"等があるそうです。因みに、ブースターのキャッチコピーは"速さが足りないあなたに"、だそうですよ」
何処かで聞いた事のあるオプションパーツの名前の数々に、凛空は再び心の中で先ほどの言葉を繰り返すのであった。
こうした一幕を経つつ、最終決戦に向けての準備は着々と進んでいくのであった。
更新が滞っている間も目を通し、感想を書いたり、評価してくださった読者の皆様、本当にありがとうございます。
今後も、不定期になるとは思いますが、ご愛読のほど、よろしくお願い致します。