うちの父親は変態企業の社長です   作:ダルマ

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三基のカメラから、凛空の熱い視線が突き刺さる

 研究所内の通路をひた走ること数分。

 一行は、とあるエレベーターの前で再び足を止めた。

 里奈曰く、このエレベーターを使う事で目的の研究所中枢、司令室のある地下60階に降りる事が出来るとの事。

 

 程なく、一行の乗り込んだエレベーターは、地下60階を目指して動き始めた。

 

「しっかし、少々拍子抜けだったな……」

「何が?」

「敵の本拠地って言うだけあってもっと警備が厳重かと思ってたが、まさかここまでお粗末とはな」

「発射の時刻も迫ってるし、陽動作戦が上手く言ってるって事じゃないの?」

「にしても、ここまで何もねぇと逆に不気味ってもんだぜ」

悪魔(デビル)の正位置……。確かに、この状況は少々不気味ね」

 

 ここまで順調に進んでいるのはいい事だが、逆に順調すぎて不気味さを感じずにはいられない。

 だが次の瞬間、そんな不気味さを吹き飛ばすかのように、サターンの発射が間近に迫っている事を告げるアナウンスと警告音が鳴り響く。

 

「兎に角今は、サターンの発射を阻止する事が最優先だ!」

 

 拓也の言葉と共にエレベーターは地下60階へと到着。

 一行は、司令室を目指して再び走り始める。

 

「この先が、目的の司令室よ!」

 

 幾つかの扉を潜り、通路を走る一行に対して、里奈の口からゴールが目前に迫っている旨が伝えられる。

 そして、一行の目の前に司令室の出入り口と思われる扉が姿を現す。

 

 だが、姿を現したのは、ゴールの扉だけではなかった。

 

「何だ、アレは?」

 

 一番に気がついた拓也に続き、残りの面々も扉の前に佇む小さな影の存在に気がつき足を止める。

 まるで門番の如く佇む小さな影の正体は、白を基調とした装甲にマゼンタの翼を持つ十機のLBX。

 

「あれは、フェアリー!?」

 

 それは紛れもなく、フェアリーテイル計画の要である自律稼働型LBXのフェアリーであった。

 

(フェアリーが十機!?)

 

 フェアリーの登場に驚く一行。最も凛空だけは、原作の十倍もの数が登場した事に驚いていた。

 

「っ、不味い! 柱の陰に隠れろ!」

 

 刹那、数機のフェアリーが装備したビームサブマシンガンの銃口を一向に向けると、間髪入れずに引き金を引く。

 次の瞬間、光の弾幕が飛来するも、拓也のお陰で一行は寸での所で通路の柱の陰に身を隠し難を逃れた。

 

「ゴール目前で待ち伏せとは、やってくれるぜ!」

「全くね……」

「時間がない、皆、頼む!」

 

 程なく、光の弾幕が止んだ瞬間を見計らい、バン達が各々のLBXを取り出す。

 そんな中、凛空だけは、愛用のAFAガンダムではなく別の機体を取り出していた。

 

 その機体の正体は、リニアモーターカー事件の際に使用したザク・フリッパー。

 ただし以前とは異なり、右肩部に12連装のミサイルポッド、左腕部にパイルバンカーを追加し、更に脚部を中心に改良を加えられている。

 

「凛空、AFAガンダム、使わないの?」

「うん。フェアリー相手には、こっちの方が有効だからね」

 

 凛空の言葉の意味をミカが理解するのは、フェアリーとの戦闘が始まってからであった。

 

「皆、いくぞ!!」

 

 バンの掛け声と共に、各々が操作する機体がフェアリー目掛けて駆ける。

 だがその直後、一行は驚くべき光景を目の当たりにする。

 

「な!?」

「消えた!?」

「そんな馬鹿な!」

 

 まるで風に吹かれた煙のように、フェアリー達がその姿を消したのだ。

 この予期せぬ展開に、各機の足が止まる。

 

「逃げたのか?」

「いや、まだいる……」

「っ、後ろよ!!」

 

 刹那、死角となる背後から数機のフェアリーが姿を現し、手にしたビームサブマシンガンを放つ。

 だが、各機とも寸での所で回避に成功する。

 

 しかし、今度はインペリアルブレードを装備した数機のフェアリーが姿を現し、各機に襲い掛かる。

 だが、歴戦を潜り抜けてきただけはあり、バン達はこの攻撃に冷静に対処し凌いでみせる。

 

「凄い、これがビームガーターの力!」

 

 最強と銘打つだけの事はあると、バンが感嘆の声をあげるのを他所に、他の機体は反撃に打って出る。

 しかし、フェアリー達は俊敏な動きで攻撃を躱すと、再び姿を消してしまう。

 

「また消えた!」

 

 学習能力を持ったAIが搭載されている点が厄介以下と思われていたフェアリーだが、それ以上に、光学迷彩による隠蔽機能が一番厄介である事を痛感するバン達。

 幾らバン達が手練れとは言え、姿が見えない敵を相手にするのは骨が折れる。

 何かいい手はないものか、そんな願望がバン達の脳裏を過った、その時。

 

「皆、任せて!」

 

 不意に凛空が声をあげる。

 刹那、ザク・フリッパーの三つ目が光を放つと、通路内のスキャンを開始した。

 

「スキャン完了! 皆、フェアリーの位置を皆のCCMに送るよ!」

「サンキュー凛空!」

「位置が分かればこっちのものね!」

「よし、皆行くぞ!!」

 

 共有された位置情報をもとに、バン達は再び反撃に打って出る。

 既に光学迷彩が看破されたとは思いもよらなかったのだろう、フェアリー達は同じ戦法で攻撃を試みるも、待ってましたとばかりにハカイオー絶斗の絶・破岩刃により一機がやられる。

 同じくゼノンの一撃により、更に一機が落伍する。

 

 流石に味方が二機もやられてはフェアリー達も異変を感じずにはいられなかったのだろう。

 最早光学迷彩は役に立たないと判断したのか、フェアリー達は光学迷彩の使用を止めると、真っ向からバン達に挑む。

 

 だが、その判断が誤りであった事を、フェアリー達は文字通り身をもって知る事となる。

 

「遅れんなよ、仙道!」

「それはこっちの台詞よ!」

 

 パワー自慢のハカイオー絶斗とスピード自慢のナイトメア。

 言い合いながらも、何だかんだと息の合ったコンビネーションによりフェアリー三機が葬られる。

 

「カズ、任せたわよ!」

「オッケー!!」

 

 近接戦の得意なパンドラと狙撃が得意なフェンリル。

 幾度もペアを組んでいただけの事はあり、互いの特性を生かした見事な連携によりフェアリー一機を葬る。

 

「これで!」

「終わりだ!!」

 

 オーディーンとゼノン。

 この二機は性能もさることながらプレイヤーの腕前も相まって、それぞれ一機ずつ、合計二機のフェアリーを葬った。

 

「……」

 

 ガーベラもまた、自慢の機動性を生かした戦いで一機のフェアリーを葬り去る。

 こうして、残ったフェアリーは一機だけとなった。

 

「これで!」

 

 刹那、最後のフェアリー目掛けて、ザク・フリッパーが脚部に装備した推進用スラスターを噴かせる。

 足裏に装備したホイールと相まって、ザク・フリッパーは甲高い走行音と共に通路を滑走しながら一気に距離を詰める。

 これに対して、フェアリーは装備したビームサブマシンガンを放つも、凛空の操作と機体の加速性能も相まって、光弾は空しく空を切るばかり。

 それどころか、ザク・フリッパーの装備したM-120A1が火を噴くや、ビームサブマシンガンを撃ち抜かれ、フェアリーは攻撃手段を失ってしまう。

 

 しかし、ザク・フリッパーの猛攻はそれで終わらない。

 

「仕留める……!」

〈アタックファンクション、アサルト・コンバット〉

 

 次の瞬間、再びM-120A1が火を火を噴き、放たれる弾丸の数々がフェアリーに襲い掛かる。

 更には、12連装のミサイルポッドからミサイルが発射され、フェアリーの退路を塞ぐかのように周囲に降り注ぐ。

 爆発音と銃声が木霊する中、ザク・フリッパーは一気にフェアリーの懐に飛び込むと、左腕部のパイルバンカーを打ち込む。

 悲鳴の如く破壊音が響き渡るが、まだ終わりではない。最後に、トドメとばかりに超至近距離でM-120A1を一発撃ち込む。

 

 刹那、フェアリーは断末魔の如く爆発と共に、その姿を爆炎の中に消した。

 

 戦いを終え、硝煙の臭いと共に周囲に広がるフェアリーの残骸達。

 この光景を前に、ザク・フリッパーは暫し佇む。

 まるで、一足先に自由になったもののために黙祷を捧げているかの様に。

 

 

 それから程なく、機体を回収し終えた一行は、司令室の扉を潜るのであった。

 

 

 

 

 潜入部隊が順調に事を運んでいる一方、陽動部隊の方はと言えば……。

 

「くそ、また一機やられた!」

 

 迎撃の第一波を撃退し、続く第二波に多少苦戦しつつも、嶺警部率いる第二陣が加わった事で撃退に成功する。

 こうして順調に事が運ぶかと思われた、その矢先。

 第三波となるイノベーター製LBX達が出現した所で、戦況に変化が生じた。

 

 第三波として姿を現したのは、それまでのデクータイプやインビット等とは異なる機体だった。

 見た目通りの高火力を誇るトロイが二機。そして、二機を率いるのは"一つ目の巨人"の名を冠した機体。

 モノアイ式の頭部に備えたドリル状の巨大な角、先端に鉄球を備えた尻尾に、強靭な肉体の様な装甲。

 両手で保持した大型ハンマーと相まってモデルとなった巨人を彷彿とさせる機体、その名を、サイクロプス。

 

 新手はたったの三機ながらも、陽動部隊は苦戦を強いられていた。

 凶暴なデスバレルから繰り出される圧倒的な弾幕、見た目通りの圧倒的な威力を持つサイクロプスの攻撃。

 これらの破壊力を前に、陽動部隊は徐々にその数を減らしていた。

 

「く! 何か手はないのか……」

 

 突破口を見いだせず、部隊を率いる嶺警部も焦りの色を隠せない様子。

 最早これまでなのか、そんな考えが嶺警部の脳裏を過った、その時。

 不意に、アレックスの背後から巨大な影が姿を現した。

 

「っ! 貴方は!」

 

 アレックスが振り返ると、そこには一人の巨人。もとい、LBXの目線では巨人に見える、とある人物の姿があった。

 

「どうして貴方がここに!?」

「嶺警部、今はそんな事よりも、この状況を打破するのが最優先ではないかね?」

「確かにそうですが……」

「ふむ。見た所、苦戦しているようだね」

 

 すると、とある人物は羽織っている白衣のポケットからある物を取り出し、それをアレックスに差し出した。

 

「これは?」

「私が試験的に作ったビームライフルで、一射ごとに弾倉型カートリッジを排出する仕様上、継戦能力や連射速度に難があるが、それでもその威力は従来の物を大きく上回る。言うなれば、"ビームマグナム"とでも呼べる品物だ」

「ビームマグナム……」

「これを使えば、戦局を一気に覆せるはずだ。……だが」

「何か問題が?」

「実は、その威力に比例して電装系への影響が大きく、使用する機体が要求出力に達していない場合、使用すると腕部が動作不良を引き起こしてしまう」

「まさかアレックスは……」

「残念ながら、その機体は要求出力を満たしてはいない」

「つまり、撃てるのは一発だけ」

「そう言う事だ」

 

 チャンスは一度きり。その事実を知った嶺警部の表情に戸惑いや不安はなかった。

 寧ろ、一発もあれば十分、という雰囲気さえ感じられた。

 

「全機、よく聞け!」

 

 刹那、嶺警部は生き残っている陽動部隊の面々に新たな指示を飛ばす。

 すると、陽動部隊の機体達が早速任務を遂行するべく動き出した。

 

 犠牲を出しながらも、陽動部隊の機体達は、徐々にサイクロプスや二機のトロイを目的の位置に誘導していく。

 そして、三機が一直線に並んだ、その時。

 

「落ちろぉ!!」

 

 アレックスが、構えていたビームマグナムの引き金を引いた。

 次の瞬間、エネルギーのスパーク光を帯びた強力なビーム弾が放たれる。

 

 放たれたビーム弾は先ずサイクロプスを貫くと、続いてその後方にいたトロイ、更にその後方にいたもう一機のトロイを貫いた。

 微妙なずれこそあれど、三機の胴体には見事なまでの穴が開けられており、最早三機が戦闘を継続できないのは誰の目にも明らかであった。

 

「これ程とは……」

 

 その威力に嶺警部が舌を巻いた、次の瞬間。

 コントロールポッド内に警報音が鳴り響くと共に、モニターにアレックスの右腕部が動作不良を引き起こしたとの表示が現れる。

 

 勝利の代償を確認した嶺警部は少し間を置くと、再び生き残った陽動部隊の面々に新たな指示を飛ばす。

 

「タイムリミットだ。全機、回収地点まで後退する!」

 

 応答と共に、生き残った陽動部隊の機体達が次々と回収地点を目指して移動を開始する。

 その様子を確認し、嶺警部もアレックスを回収地点に移動させようとした、その時。

 ふと、モニターの端に、とある人物が研究所の扉に向かって走る姿が映し出されている事に気がつく。

 

「博士! 何処に行くんです!」

「すまない、私にはまだやらねばならないことがあるんだ!」

 

 嶺警部の制止の声を振り切るように、博士と呼ばれたその人物はやがて扉を潜ると、研究所内部へと姿を消すのであった。




イノベーターとシーカー、エターナルサイクラー、バン、凛空、LBX。
縺れた糸を縫って、運命のカウントダウンが刻まれる。
戦いの果てに織りなされる、神の企んだ紋様は何。
未明の空に描かれた壮大なるドラマ。
その時、彼らは叫んだ。
レックス! と。


次回「飛翔」
いよいよ、キャスティング完了!
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