【急募】ヤンデレな彼女と別れる方法【助けて】   作:しろとらだんちょー

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め、メリークリスマス……(激遅)

だいぶ遅れた話題にはなりますが、評価するのに50文字以上の一言がいる仕様を変更しました。自分で設定したくせにめちゃくちゃ忘れてました……どうりで評価が少ないなぁと思ってたんですよね(自惚れ) 一言見たらすっごい褒められてて、自己肯定感がこう……爆上げでしたよね! 今は10文字にしたので、評価される際には『ヤンデレすこすこすこ侍』とでもうっといてください!


百合系姉妹 番外(中)

旅先での昼食中、耳を疑うような知らせを聞いた。何でもあの姉妹が手首や首を自ら切って、医療団の元で現在治療中らしい。あれだけ大怪我だった俺を治したぐらいだから、生死の心配はしなくていいだろう。問題なのは、なぜそんな行動を取ったのかだ。

 

あれだけ強かだった二人が死を選ぶくらいの出来事。

きっと途轍もなくショッキングだったんだろう。でなきゃ説明が付かない。ついでに言ってしまえば想像も付かない。一体どんな事が起こったんだろうか。

 

「……他人事もいい加減にしろよ、俺」

 

自分の頬を強く叩く。こうでもしなきゃまともな思考が保てない。

現実を受け容れたくない気持ちは痛いほど分かる。だって自分だからな。でもそれを理由にして逃げるのは駄目だ。今まで逃避してきた分のツケを、全部まとめて清算しなきゃいけない時だと思うから。

 

でも、それでも。

 

どこか甘い考えがあった。もしかしたら盛大な俺への嫌がらせかもしれない。俺に罪悪感を抱かせたいが為に、命を賭けたのではないかと。そう思っている部分もあった。

 

「―――やっときたのね」

 

 

覇気のない声を漏らし、暗い瞳で一人ベッドに佇むリリィの姿。

それを見た瞬間、そんなものは俺の中から一切消え失せた。

 

「な、ぜ……こんな、事を……?」

 

「悪い事をした時は、どうするんだったかしら?」

 

「……何でこんな事したんだよ」

 

「ふふっ、そうね。貴方がいなくなったから……でしょうね」

 

分かる。この言葉は嘘じゃない。

リリィの黒く揺れる瞳が十分に物語っている。しなやかに伸びた指で自分の頬をなぞると、ずれた袖から巻かれた包帯がちらりと見えた。故意か未故意か、どちらにせよ現実を直視するには過ぎた光景だった。

 

「何でっ、俺なんかがいなくなっただけでっ……!」

 

「『俺なんか』? 『いなくなっただけ』? 言葉は考えて選びなさい。この手首の傷は、伊達で付けた訳じゃないのよ」

 

「っ!」

 

だったらなんて言えばいいんだ。謙遜も卑下も心に染み付いた習慣の一つ。ましてや、自分の存在が果てしなく大きくなるなんて考えた事も無い。でも、尽きない疑問を無視してただ頭を下げる事もしたくない。考えれば考えるだけ、定まらない視線に手首が映り込む。むしろ俺の方が手首を切ってしまいそうだ。

 

「……なんて、縛り付けるつもりはないわ。私がしたくてやった事……いや、やらなきゃいけなかった事だから。貴方が背負うものは何もない。ただ愚かな私を笑えばいいの」

 

「そんな事っ、出来るかよ!」

 

「昔、私が貴方にした事。……覚えてる?」

 

「覚えてるけど……それがなんだよ!」

 

まさか罪悪感から起こした行動だとでも言い出すのだろうか。

互いが互いを愛し合う時。それが途轍もなく重い時。眺めるだけの周りでも、疎ましく思うのは当然の反応だ。生理現象だと言ってもいい。それが百合なら尚の事だ。

 

「なら分かるでしょ。昔の私と今の私、乖離していく度に酷い吐き気がしたわ。それもただの乖離だったら、どれだけマシだったか」

 

それなのに、こいつは何を宣っているんだ。

 

「貴方が好きだから、貴方の事を愛おしく思ってしまったから、穢れた過去がどうしても許せなかった。このままだとまともに愛せないからこそ、ちゃんと分かる形で償いがしたかったの。…………でも、でも! 貴方は簡単に許した! 貴方が笑顔で無かった事にするから! 私はっ、それに甘えてっ、それで……っ! 私のせいなのに、貴方のせいにしてっ……! 一番醜いのは私だった、から! だから死ななきゃって、ただ、そう思っただけ……!」

 

肩を震わす意味なんてない。目を赤くする意味なんてない。

感情が徐々に露わになっていくリリィの体から、どうしようもなく目を避けたくなる。でも離せない。『比類なき美しさで悲しむ姿が他でもない自分の影響である』という背徳的な優越感が背筋を伝って、俺の体からもわざとらしく嗚咽が漏れ出てしまう。

 

「リ、リリィは! 醜くなんかっ!」

 

「やめて。これ以上私を甘やかさないで!!」

 

「違うっ……違うんだよ……っ……!!」

 

最初はただ、百合が見たいだけだった。

指先すら触れられぬ距離から温かく眺めて、邪魔や危険が迫れば身を挺して守って、間に入ってしまいそうになったら素早く大人しく身を引く。この世で最も美しいものは〝百合〟で、いかなる理由があろうとも邪魔してはいけないと思っていたから。だからこそ、それを遵守した。……つもりだった。

実際は、自分の欲望を満たす為だけに安易に近付いて、眺めるだけと言いながら身勝手に助けて重い楔を植え付けて、挙句の果てに薄々勘付いていた思いを無視して黙って離れて行った。

 

結果はどうだ?

 

美しかった百合は枯れて、花弁や葉に傷が入った。

土足で踏み入ったのは誰だ?

要らぬ水をあげたのは誰だ?

粗雑に触って逃げたのは誰だ?

 

全部、俺だろうが。

俺が一番邪悪で、醜悪な存在だ。

 

「俺はっ! リリィもユリィも見てなくて、ただ単純にお前らが仲睦まじくしているのが好きでっ、一ミリも関わるつもりなんて無かったんだよ! 命を賭けたのだって他意なんかない。俺のくだらない命なんかより、お前らの関係の方がずっと大事で尊いって考えたからでっ! 見返りも、ましてやお前らからの好感度なんて範疇になかった! 死のうとするなんて、思ってなかった……っ! そんなつもりは無かった、無かったんだよぉ……っ!!」

 

膝を付いて床に這いつくばる。まともに呼吸も出来ない。ただ残った酸素だけで、言葉を吐き出す。

 

「本当に、ごめん……!!!」

 

荒い呼吸音だけが響く、数秒間の空白。

リリィの溜め息が耳に届いて、俺はようやく顔を上げた。

 

「また、そうやって……そういうところ、本当に気付いてないのね。けど、もういいわ。本当は私が謝りたかったけど、貴方が謝りたいのなら受け入れてあげる」

 

「え……?」

 

「許してあげる、って事よ。その代わり、貴方も私を許してくれる? 受け入れてくれる?」

 

想像よりも簡単に許された俺の罪。

呆けた俺はただ早く返事をする事しか頭になく、

 

「あ……はい……」

 

としか答えられなかった。

リリィはそれを満足げに受け取ると、頬に涙が伝った後を袖で軽く濁して、いつものように踏ん反り返って俺に声をかける。いつもは左程気にならない態度だが、今は何故だか安心する。

 

「それにしても、貴方……私の事見てなかったのね。正直な所、かなりショックよ」

 

「あ、そ、それはすまん」

 

「まぁ、今から見れば文句は言わないわ。いい? これからは私だけ見て。私だけを感じて。貴方の言う百合なんてものより、よっぽど美しい自信があるから。欲を満たすときも、発散するときも、私の傍にいて。私を使って。そうでなきゃ……どうしようかしら。一緒に死ぬ……なんて、どう?」

 

しなやかな指が俺の顔をゆっくりと撫でる。見慣れた筈の顔が近くにあるだけで心臓が逸り、その瞳に覗かれるだけで脳みそが異常に馬鹿になる。吐息が耳にかかっているのはわざとだろうか。ならば即刻止めて欲しい。体が溶けて無くなりそうになる。

 

ただ、意外にも早く吐息は切り上げられ、少しだけ寂しさを覚える。が、今度は唇同士が付きそうな距離で、真剣な眼差しで伝えてくる。その眼差しの中にある瞳は、いつか見た黒色だった。

 

「……これからユリィにも会いに行くと思うけど、色々と気を付けてなさい。あの子は私より重症だし、私に無い可愛げを持っているから。決して、絆されないように、ね?」

 

「はひ……」

 

「貴方はもう、私のものだから、ね?」

 

いつからリリィの物になったのか。

それを考える暇すらないまま、三十分程愛と控えめの懺悔を囁かれた。




はて、重症とは傷だけでしょうか
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