【急募】ヤンデレな彼女と別れる方法【助けて】   作:しろとらだんちょー

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抱擁系彼女(上)

学歴、高校中退。

趣味、ゲームと漫画とネットサーフィン。

特技、なし。

長所、なし。

短所、多すぎて書けない。

容姿、クソ。

 

こんなドがつく底辺な俺でも一つ……いや、二つだけ分かる事がある。

一つは俺が恵まれている事。もう一つは、彼女と俺は釣り合っていない事だ。

 

順を追って話そう。

元々能が無かった俺は、成績不振と人間関係で問題起こして自主退学した。『家にいても気まずいだけだから』って始めたバイトも、当然長続きしなかった。そりゃそうさ。だって馬鹿なんだから。親だって、何度頭を下げた事か。でも下げる度に言われるんだよ。

 

『いいよ。もうお前には期待してないから』

 

酷くないか?

俺だって、まともに生きられるんなら生きたいよ。でも無理なんだよ。それを一番俺が分かってる。だけど諦めきれずに、町内のボランティアとか頻繁に参加してた。ボランティアした日の夜は、自然と安心して眠れたんだよな。『こんな俺でも役に立てるんだ!』って嬉しさで満たされるからかな。

 

でもその嬉しさも一日しか持たない。

ボランティアが開催されない日は地獄だ。ゴミ拾いとかしてどうにか正気を保ってたけど、周りに同じような人がいない分苦しかった。学生服とかスーツを見ると、余計に吐き気がした。『あぁ、惨めだ』って何回思ったかな。でも自分で自分の価値を見出せないから、周りからの評価だけで生きてくしかないんだよな。どうしようも、ないんだよな。

 

 

って、そうやって生きてきた。

けど、ある日出会ったんだよ。いつものようにボランティアしてる時だったかな? ちょっとベンチで休憩してたら、いきなり隣に女が座ってきてさ。しかも真隣り。まだ端があるのに、俺の体に触れるように座って、『何がしたいんだろう』って思ったよ。

 

『いつも来てますよね。このボランティア』

 

最初の言葉は確かこれだった。

俺もその女には少し見覚えがあった。でも少しだけ。気に留めた事なんて無かった。

 

『あ……私、日鴉(ひがらす) ルミナって言います。カタカナで、ルミナです』

 

やっぱ名は体を表すって言うのかな。優しいクリーム色の髪と青色の瞳に、細い鼻と整った唇と泣き黒子もあって、すっごい綺麗な顔だった。それこそ直視出来ないくらいに。まぁ、元々人の顔を直視出来ないタイプだけどさ。それでも別次元だった。『こんな俺に話しかけてくるなんて何か裏があるだろ』とも思ったよ。でも目があまりにも純粋だった。

 

『設営とか片付けも手伝ってて、すごいなぁって前々から思ってたんです。ほら、願書とか履歴書とかに書く為だけにやってる人もいるじゃないですか。そういう人は大抵そこまでやってないんです。だから、すごい……優しいなぁって』

 

全く以て違う。

それで言ってしまえば、俺はこのボランティア以外に履歴書に書けるものがない。でもそんな弁明出来る訳ない。それから先、俺はずっとルミナの中では〝優しい人〟だった。だから簡単に仲が深まった。

 

それである日、打ち明けたんだ。

『俺に生きる価値なんてない! 俺は浅ましい人間だ!』って感じで。

そうしたら、ルミナは何て言ったと思う?

 

『大丈夫だよ、そのままでいいよ』

『辛かったよね。苦しかったよね。でも、これからは抱え込まないで?』

『私でよければ、話聞くから……ね?』

 

本当に聞こえの良い言葉ばかりだった。でも、もうそれで良かった。疑うなんて出来やしない。例えこの言葉が嘘でも、甘く受け入れてくれる奴なんてこの先現れないだろうから。だから俺は最大限甘えた。ルミナの家にも住み始めたし、着る物も食べる物も全部全部ルミナに寄りかかった。セックスも何回かお願いしたと思う。我ながら最低だった。でもそれも受け入れてくれた。

 

 

んで、つい先日。

多分、ルミナも機嫌が悪かったんだと思う。『仕事が多くて終わらない』って前から言ってたし、現に家の中でも作業してるのは何度か見かけた。そのときもそうだった。無言でパソコンに向き合って、束になった資料と何度も睨めっこしてた。俺も……何でだろうな。それを見て、何か嫌だったんだよ。いつもはずっと俺に構ってくれるし、何よりも俺を優先してくれる。

 

それでいきなり抱き着いてみたんだ。きっとすぐに喜んでくれるって思って。

そしたら何て言ったと思う?

 

『今はやめて。仕事中だから』

 

いつもじゃ考えられないくらい、冷たい声だった。

信じたくなかった。だから俺は甘えた声を出して、体を絡めさせた。

 

『――やめてって言ってるでしょ!!』

 

今度は、真反対に大きな声だった。

 

『この仕事、少しでも納期が遅れたらダメなやつなのに! この前も言ったでしょ? 仕事中は邪魔しないで、って! それなのに邪魔ばっかりして、私の言葉なんて全然聞いてくれない! 何なの? 暇なの?なら、一度くらい働いてみてよ!! 私の事理解してよ!! 私だって、新斗(にいと)くんと一緒に遊びたいんだよ!! でも我慢してるんだよ!? だからっ……! 邪魔しないでよ……!』

 

ルミナは泣いていた。ここで俺は初めて、自分の犯した罪の重さを知った。頭がぐらぐらして、手が震えて、何も言い返せなかった。ただ、部屋を出るしかなかった。部屋を出て、自室に入って、椅子に座って、ようやく思考がまとまってくる。

 

そうだ。俺は甘えすぎて、自分の事しか考えてなかった。ルミナに持て囃されて、自分には途轍もない価値があるんだと錯覚していた。結局、何も変わってない。自己肯定欲の化け物だったあの頃と、何も変わっちゃいない。醜さも、弱さも、愚かさも。

 

そこで俺は思い立った。

 

働こう。そして別れよう、と。

 

まともに動かない俺の頭の代わりに、掲示板の皆はアルバイトを薦めてくれた。別れ方は後々考えよう。今日は一旦寝て整理して、明日から本格的に始めよう。大丈夫、今までみたいな〝先延ばしの明日〟じゃない。俺の今の〝明日〟は、ちゃんと決意した〝明日〟だから。




がんばれ、はたらけ、わかれるな
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