【急募】ヤンデレな彼女と別れる方法【助けて】   作:しろとらだんちょー

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いや短すぎるって
なるはやで次話投稿します


弟子系後輩(上)

「ふむ……やはり吾輩の期待に応え得る者はいない、か。掲示板なるものは偏屈者が多いと聞いたのだが、如何せん偏屈すぎるな。茶化すばかりでまともに取り合わん」

 

机上に広げられたノートパソコンをそっと閉じ、椅子にもたれ掛かって大きく溜め息を吐く男。

かの男こそ、刻一刻と迫りくる現世への脅威に立ち向かうべく仲間集めに奔走する、選ばれし『アルバニア』のその一人。そして尚且つ、理解不能な単語を連ねてスレ民を困惑と爆笑の渦に巻き込み、女児向け玩具のパチモンと化した道化師の一人。

 

紅喰(あかじき) 蒼牙(そうが)である。

 

「はぁ、憂うばかりだ。このままでは吾輩一人で闘う事になってしまうぞ」

 

いつ件の〝奴ら〟が来るのか。

その〝奴ら〟はどんな脅威なのか。

問い質しても返ってくる答えは更なる妄言。

 

そう、彼は決して役作りやファッションとして厨二病を患ったのではない。本気で『アルバニア』としての責務を全うし、世界を救おうとしている。生粋かつ純粋。ある意味で選ばれた存在なのである。そんな選ばれた存在、紅喰蒼牙の憂い。理由は何も一つだけではなかった。

 

「もー! 師匠ぉ、また他のコ探そうとしたでしょ!」

 

そう、それは弟子である逆月(さかつき)ミアの存在である。

 

「こーんな優秀な弟子がいるのに、何で他のコ探そうとするのー!」

 

「それは受け取り方に語弊があるな、我が弟子よ。弟子を乗り換えようとしているのではない、仲間を増やそうとしているのだ。来たるべき時は近い……一人でも多くの戦力を確保しておきたいのでな」

 

「ん~~~!! そんなの同じだよっ、師匠と私だけで十分でしょー!」

 

「いいや、貴様はまだ未熟だ。それに――」

 

高校三年生である蒼牙とは違い、ミアはまだ一年生の身。同クラス・同学年でないのはもちろんの事、同部活に所属している訳でもない。どのようなコミュニティにおいても接点を持つ筈のない二人が一緒にいるという事、傍目からすれば非常に珍妙な光景である。事実、いくつかの下らない噂も蔓延っている。やれ『弱みを握られている』だの『本当は兄妹なんじゃないの』だの。だが、それだけならば蒼牙も憂う事はなかった。問題なのは、ミアの容姿である。

 

健康的で適度に焼けた肌。

風が吹く度に靡くボブカットの黒髪。

はっきりとした涙袋と二重を備えた瞳。

そしてチャームポイントである八重歯。

 

元より芸術品としてこの世に産み落とされたと話されても信じてしまいそうな程、完璧に出来過ぎた容姿をしていたのだ。それに加えて、成長途上でありながら既に完成に近いカラダ。馬鹿げた噂や邪推が飛び交う理由もいくつか推測が付くだろう。しかし先程言った通り、蒼牙はそれを左程気にしていない。むしろ多少の槍玉であれ話題に挙がっているのなら、良しとする傾向すらある。なら何故憂いているのか。

 

『シネ!!チョーシのんな!!』

『どういう関係かは知りませんがあまり逆月さんに近寄らないでください』

『まじで何でお前なの???』

 

「……いや、何でもない」

 

そう、実害が出始めていたのだ。

最初の頃は蒼牙も『奴らの仕業か!?』などと宣っていたが、〝乱雑に罵詈雑言が書かれた手紙を靴箱に入れるだけ〟の低レベルな嫌がらせをする筈もないとすぐに気付く。そしてその原因が自分の弟子である事に気付くのも、そう時間はかからなかった。ただ実害とは言っても、今のところはたかが手紙。憂いてはあるものの、そこまで本腰を入れて取り組まねばならない程の事ではなかった。

 

「えーっ、何それぇ! きーにーなーるー!!」

 

「揺らすでない」

 

むしろ蒼牙としては〝弟子がここまで人気である〟という事実に鼻が高いまである。だがやはり、アルバニアとしてはまだまだ能力不足。指南に費やせる時間も日を重ねるごとに少なくなっている為、先行きに対する不安は拭えない。だから尚更、新たな人材確保に尽力しているのだった。

 

「んぅ~~……でもさぁ、探してもいないでしょ? 結局……」

 

「そうだな、あまり理解はされん。崇高すぎるが故……な。だがそれも想定の範囲内。焦らず、波長の合う者を探し続ければ一人くらいはいるだろう」

 

「――じゃあ、もしいたら私は用済み?」

 

鋭い声色、鋭い目線。

急な寒暖差に弱い魚がいれば、まず間違いなく死骸に成り果てる豹変。しかし恒温動物である蒼牙には効かなかったようで、特に気にする素振りなく飄々と答える。

 

「何故そうなる。未熟とはいえど、貴様も立派なアルバニアなのだ。自らの意思で離脱を決意するのならばまだしも、吾輩が独断で立ち去る事を命じるなどありえん」

 

志を強く宿した声、瞳。

〝世界の為〟という後ろ盾がある限り、一挙手一投足から放たれる輝かしい光は途絶えない。故に、滲み出た僅かながら確かなその〝闇〟も、知覚する間もなく搔き消えてしまうのだった。

 

「ふーーん? じゃあいいやっ! 師匠ぉ、修行しよっ!」

 

今はまだそれでいい。

 

今は、まだ。

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