【急募】ヤンデレな彼女と別れる方法【助けて】   作:しろとらだんちょー

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短い……ミジカイ……
繋ぎなんで許して欲しい


弟子系後輩(中)

赫喰蒼牙の朝は早い。

日が薄く上り始めた頃には既に意識は明瞭で、今日一日の行動を明確化する為の瞑想を行う。一日の中で唯一穢れの無いその瞬間だからこそ、純粋な選択肢や思考が生まれる。一流のスポーツ選手も励行している有意義な行為、蒼牙自身の揺るぎない価値観や信念もこの瞑想から来ているといっても過言ではない。

 

約15分後。

蒼牙は静かに黙想と座禅を解くと、次の段階へと行動を移す。それは一体何か?

 

ごく普通の朝食である。

 

両親は仕事の関係上、朝起きている事は稀だ。

だから蒼牙は基本的に自分で朝食を用意する。具体的な内容としては、全焦げのパン・想定外のスクランブルエッグ・弾けて原型を留めていないソーセージ・零れた牛乳である。そう、見て取れるように蒼牙の料理センスは壊滅的なのだ。それも常軌を逸するほどに。

 

これが女の子に限った話であれば、『少し抜けている部分がある方が可愛いものよ』などといった擁護の言葉も出てくるのだろう。しかし蒼牙は男、場は静寂に包まれたキッチンときている。何一つ慰められる要素はなく、淡々と〝料理が下手である〟という現実を認識するしかない。瞑想のおかげか、左程ダメージを受けていない様子を見せる蒼牙だったが、着々と机に広がった牛乳を拭くその背中は、どこか哀愁が漂っているようにも見受けられる。

 

約30分後。

朝食を食べ終わり片付けが始まるが、時計が指し示す時間は未だ5時半すら超えない。

 

ここで蒼牙は再び瞑想に入り、今度は〝奴ら〟や世界について深く考える。

救うべき世界の美しい部分、醜い部分。何か一つでも曖昧な解釈を残してしまっては、力に迷いが生まれてしまう。そしてその迷いは誰かの命を奪う形で露呈する。それを避ける為にも、蒼牙は今日も寸分の違いなく世界を観測する。個人の器を大きく超越した考え方に誰しもが笑うだろうが、人間という存在に対して後ろめたさのない評価を下している点に関しては、それ相応の賞賛を送られても何らおかしくない。

 

だが、勿論その賞賛はない。求めてもいないのだ。

 

人知れず、ひっそりと、自らが愛する世界の為に粉骨砕身で励む。

決して自己への陶酔ではない事を理解する者は、残念ながらこの世に存在しない。

 

ただ一人を除いて。

 

◇◇◇

 

逆月ミアの朝は早い。

夜が明ける時よりもずっと早く自分という存在を認識して、同時にその全てを己が師に向ける。これから始まる師の一日に、少しでも多くの幸福が訪れるようにと、遠くから祈るように捧げる。そこに修行という観念は介在しておらず、ただただ純粋な畏敬の念から来る行動だった。

 

約1時間半後。

祈祷に似た行為を口惜しそうに切り上げ、ようやく布団から離れてリビングへと足を運ぶ。少し目を動かした先にはテーブルに並べられた昨晩の夕食があり、ミアの健康を案ずるようなメッセージが傍に添えられていた。それをミアは、一瞥もせずにゴミ箱へと投げ捨てる。

 

「……じゃま」

 

続いて夕食もシンクの隅へ流す。

一般的に見れば特に問題のない、むしろ微笑ましさすら感じる夕食だったにも関わらず、何の躊躇いもなく業務的に生ゴミへと変えていく。憤りを見せている訳でも、不快感を露わにしている訳でもない。ミアは感情の読めない表情のまま、全ての皿が空になるまで延々とそれを続けた。

 

―――やがて片付いた事を確認すると、途端にミアは笑顔を見せる。

 

それに関しては理由は明確だ。

己が師の昼食を作る時間がやっと訪れたから。元々は自分の弁当を作るついでに申し出た事だったが、意外にもそれは了承された。ならば持ち得る材料と実力を注ぎ込んでこその弟子というもの。目まぐるしく回る日々の中で、『師匠の役に立てた』という喜楽が充足を満たす数少ない瞬間の一つでもあるのだ。

 

「今日の師匠はぁ……ハンバーグかなぁ?」

 

今までもこの天啓に近い予測は、高確率で蒼牙の胃袋を刺してきた。

膨大なデータベースからなる高精度のAIにも勝るともいえる正確無比なおかず選択。勿論、師だけに特化した能力は弁当作りだけではない。凡人から見て万能だと思われる部分は全て、ミアは師の為に使っている。それは〝弟子〟としてなのか、はたまた一人の異性としてなのか。

 

「喜んでくれるかなぁ……」

 

心底嬉しそうに料理を作り弁当箱に詰める姿から、ある程度予想は付く。

だがそこに少しでも弟子としての矜持がないとも言い切れない。

唯一明白である部分を挙げるとするなれば、どのような意味合いであれ師を心から愛しているという事。

 

時間はようやく4時を回る。

ミアの一日はまだ始まったばかりであった。




いやホントに短いな
隅々まで読んで誤字報告とかしてください(傲慢)
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