【急募】ヤンデレな彼女と別れる方法【助けて】   作:しろとらだんちょー

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まっ、ギリギリ二か月じゃないんで……
過去登場キャラの一問一答とかも考えてたんで……


偶像系アイドル(下)

何気なく付けたテレビ、気まぐれに眺めた広告、ふと手に取った本。

そのすべてに雨流流がいて、例外なく主役を飾っている。とても誇らしげに感じる一方で、少し物悲しくもあった。これだけ身近な存在になったはずなのに、距離は遠くなるばかりだったから。

 

もちろん、これは俺がそう望んだものだ。

ここ半年。メッセージは一定間隔を開けて返信して、遊びの誘いは何かしらの理由をつけて断った。でも、本当はすぐに返したかった。『最近どう?』なんて他愛ない話を交わしながら、お茶でも飲んで楽しみたかったよ。でも駄目なんだ。俺は『望んだ』と言ったけど、本当はそんな生易しいものじゃない。

 

『そうあるべき』、『そうでなくてはならない』という重圧。

足を引っ張りたくなかったんだ。雨流流がやっとこさ掴んでモノにした夢を、俺程度の存在で邪魔したくなかった。今はまだ不安定な時期だから、長年愛され続けたアイドルとは周りの評価が違う。心の底から雨流流の幸せを願うファンなんて、今のところは俺か紗雪さんぐらいのものだろう。

 

……でも、やっぱりこれは言い訳だ。

 

俺が勝手にそう思っただけの話。

雨流流にとっては知ったことではない話だ。だから『望んだ』でいいんだ。見返りなんて求めてないし、いつか認められて報われる可能性だって一切考えてない。最初から最後まで、完璧なまでの独りよがりなわけだ。

 

うん……そうだ。

納得してるし、ちゃぶ台を返すこともしない。

 

けど、けどさぁ。

 

「少しぐらいは考慮してくれてもいいんじゃねぇの~~?? 神様よぉ~~!!!!」

 

落選。

その二文字だけが強調されたメールに、思わず膝から崩れ落ちる。予見はしてたさ。倍率560倍の狭き門、そう易々と通り抜けられるわけがないと思っていたさ。でもこれはあんまりだろう。俺以上に雨流流を推している奴なんていないのに、何でよりにもよって初のワンマンライブを見させてくれないのか。

 

「こういうところなんだろうなー……俺」

 

下心というやつだろうか。

少しでも下品な魂胆が含まれていれば、善行として認めてくれないということだろうか。一体何様だ、神よ。普段は神なんて存在は信じちゃいないが、この怒りとやるせなさをぶつける相手がいなきゃ発狂しそうだ。クソッタレめ。

 

「スタッフ席かぁ~~……!!」

 

最大級の溜め息と同時に薄汚い思考を吐き出す。

いや、大丈夫。少し思考を整理したかっただけ、決して甘い誘惑に乗ろうとは考えてない。大体、だいぶ前に一度断っている。もし乗るとして、一体どんな面して乗ればいいのか。図々しいってレベルじゃない。

 

「……うん、大人しくオンラインで見よう」

 

往生際の悪さを発揮したとして、得られるものは精々冷ややかな視線だろう。

ここは食い下がるのではなく引き下がって、少し遠くで輝く雨流流を見届けよう。ただ、転売とか見つけたら容赦しないからな。マジで。

 

『晴人は今度の日曜日予定空いてる?』16:27

 

ピコンッ、と音を立てて表示されるメッセージ。

差出人は雨流流だった。休日は基本バイトが入っているが、時間帯によっては対応できなくもない。だが、それはあくまで一般人の場合だ。相手が雨流流だとそうはいかない。

 

既読『ごめんな。その日もバイトだわ』

 

例によって、1・2時間ほど置いてから返答した。

心苦しいが、言い訳を考える時間として活用できることは素晴らしい。肝心の言い訳は使い回しだが。

 

『最近ずっとそうだよね』18:34

『バイトって少しも休めないのかな? 今忙しい時期なの?』18:34

 

既読『特段忙しいわけじゃないが、理由が理由だから休みづらさはあるよな』

 

『うーん……融通きけばいいのにね』18:36

『ライブの日はどうなってるの? ちゃんと見に来てくれるよね?』18:36

 

思わず息をのむ。

意図せずしてワンテンポ置いてしまう質問が来た。さてどうする。正直、嘘を吐いてもバレないとは思う。ライブが開催されるアリーナはだいぶ広いし、席を偽ったとしても数万人から一人を見つけることは至難の業だ。何より、ライブ中に俺一人を探し出すために気力を費やすとも思えない。

 

既読『心配しなくてもその日はちゃんと予定空けてるぞ!』

 

ゆえに俺は嘘を吐くことにした。

 

『良かった~!!! 席はどこ取れた? まさか柱の陰とかじゃないよね笑』18:45

 

既読『それは当日のお楽しみだな』

 

『もったいぶらないで教えてよー、めちゃめちゃファンサするから!!』18:46

 

既読『H席辺りとだけ言っておくわ』

 

どうやら予想に反して気力を費やすつもりでいるらしい。

いやしかし、我ながら中々良い塩梅の嘘を吐いたものだ。H席はステージから遠い一階席。ステージからはもちろん見えにくく、二階席とは違い目立たない。ここにペンライトや応援うちわが加われば、発見は更に困難を極めるだろう。唯一の欠点はいない俺を探し続ける可能性を孕んでいることだが、そこは割り切らなければ嘘を吐いた意味がない。

 

『わかった! 絶対見つけるからね!!』18:46

『だから、晴人も私のこと見ててね』18:48

 

少し遅れて追加された意味深なメッセージ。

どう返していいか分からず咄嗟にスタンプで返したが、これはどういう意図で言ったんだろうか。言葉通りに受け取るなら、俺は端から雨流流のことしか見ていないと胸を張って返せる。一番の古参ファンとして他のファンの鑑になれるように、圧倒的時間と金銭と振る舞いで応援してきたつもりだ。

 

嘘を吐いたことを除けば、何一つだって後ろめたいことはない。

その嘘だって必要なことだった。プライベートな誘いを断ってきた分だけ、アイドル活動に貢献しようと思っていた矢先の落選だったから。たとえ正直に落選を伝えたとしても、悪い方向に受け取られることは目に見えている。それなら、バレない嘘を吐いた方がマシだ。

 

それに、雨流流の勇姿を見届けないわけじゃないんだ。

オンラインだけど、現地に届くくらいの声量で応援することはもう決めている。そのために防音室のついたホテルの一室も借りた。

 

「見てるよ、ずっとな」

 

何度だって背中を押してきた。

大丈夫、今の雨流流なら成功は約束されているも同然だ。

まぁ、不安だから来てほしいわけじゃないだろうけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人気アイドル、『枢木 雨流流』の初ワンマンライブは成功した。

活動を迎えてから僅か半年ながらファン層は厚く、所属事務所史上類を見ない大成功を記録したそうだ。また、ライブから生まれた熱は世界すら包み込み、またも全SNSのトレンドを独占したそうだ。単なる日常の小話を載せるだけだった公式アカウントも今やフォロワーは億を超え、ライブ後に撮られたスター性溢れる一枚は、掲載されたSNS媒体での歴代最高のgood数を獲得した。

 

そんな、大きな大きな波に乗り始めた頃。

これから更に人気になり、世界進出も遠くないと噂され出した頃。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨流流は引退を発表した。




こわいよ


感想、評価めちゃくちゃ待ってます!!
きたら舞います!!
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