【急募】ヤンデレな彼女と別れる方法【助けて】   作:しろとらだんちょー

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遅れてごめんね


メスガキ系後輩(中)

キーンコーンカーンコーン…

 

学校特有の特徴的なチャイムが鳴り響き、俺は弁当を喰うのも忘れて一直線に屋上に向かう。普段は陽キャのたまり場として避けていたが、今日は特別だ。なぜならセナに呼ばれたから。

 

金せびりも視野に入れたが、普段はうざい感じで直接言ってくるので今回ばかりは違う。と思う。俺は今までにない気持ちの軽やかさで屋上に向かい、辿り着いて重い扉を開ける。

 

初めて見る屋上のフェンス、初めて感じる強い風、初めて聞いた校庭からの騒がしい声。高揚を更に強める感覚に脳が揺らされるが、目的のものに辿り着くまでは精神をどうにか保って俺はセナの姿を探した。

 

「あ、せんぱ~い! こっちですこっち!」

 

「…!」

 

「えへ、やっぱり来てくれましたね」

 

体を左右に揺らしながら、俺の姿を楽しそうに見つめるセナ。普段は非常にウザく感じるその仕草も、今は可愛くも思える。俺は極度の緊張でどもりながら、話が何なのかを聞く。

 

「そ、それで、話ってなんだ?」

 

「あぁ~、それはですねぇ~…」

 

「…!」

 

"ゴクリ"と息を呑む。この数秒間の空白が待ち遠しい。この言葉の続きがもし『付き合ってください』だったら、俺の世界は瞬く間に青く染まる事だろう。あぁ、そんな事を考えていたら視界が徐々に青く染まっていっている気がする。これは確定演出…

 

「アゲハちゃんとお買い物とか行きたいんで、ついてきてくれませんかね?」

 

じゃなかった。俺の視界は一気に灰色へと戻り、思考も普段の冷えたものに戻る。期待した俺が馬鹿だった。はっきり言って大馬鹿だった。普段と伝え方が違うのも悪いと思うが、結局のところ俺の陰キャ童貞ぶりが遺憾なく発揮されたというところだろうか。

 

「ま、要は荷物持ちって事ですよ! 両手に花なんて考えないでくださいねぇ~?」

 

「…おう」

 

「あれ? もしかして他の何かを期待してた感じですかぁ~? それってもしかして…告白、とか? あ、図星でしょ! アハハッ! ワタシがせんぱいに告白とかありえないですって! 逆ならまだしも!」

 

よく通る声で図星を突かれてしまい、周りの陽キャ達が反応して返事すら困難な状況になってしまう。セナはすぐに謝るが、そんな事で俺の心の傷も陽キャの視線も収まる筈がない。もはや俺の手に負いきれない状況に、俺はか細い声で返事をしてその場から撤退した。

 

屋上から遠ざかっていく間にも俺の恥や後悔は捨てきれず、せめてどうにか昇華しようと必死に丸め込む。

 

(微かにあった恋心的なものを切り捨てれたんだし。ある意味円満な別れになるだろ! 大丈夫、これは必要なイベントだったんだ! そう、必要なイベント…)

 

「……必要だったかなぁ…」

 

無駄に傷付いた感じが拭えないが、とりあえず無理やりにでも納得しないとやってられない。今手元にある金で鬱憤を晴らしたいところだが、そこをぐっと堪えて精神を持ち直す。

 

(あ、そういやいつ行くのか聞いてなかったな)

 

かなり重要な事を聞き忘れていた事を思い出し若干焦るが、それに反応するようにスマホの通知がピコンッと鳴る。どうやらセナからのL〇NEの通知らしかった。俺は通知を開いて中身を確認する。

 

『もぉ~先輩!まだ話したい事あったのにいなくならないでくださいよ!』 12:45 

 

『いまどこにいますか?』 12:45

 

俺は逃げるように…ていうか実際あの場から急いで逃げたため、屋上からも自分の教室からも離れたところにいる。教えたらまた馬鹿にされそうな気がするので明確には教えずに、いなすようにして返事をする。

 

          12:47 『屋上から遠いとこ』

 

『いやわかんないですよ!具体的に教えてください!』 12:47

 

          12:50 『用件を言ってくれ』

 

『待ち合わせ時間ですよ!』 12:50

 

『てかどこですか!』 12:50

 

          12:54 『屋上から遠いとこ』

 

『もう!』 12:54

 

『今週の土曜日の13時で、駅前集合ですからね!

 絶対遅れないでくださいね!』 12:54

 

             13:12 『りょうかい』

 

どうやら土曜日の昼に駅前に行けばいいようだった。休日に関しては起きるのが遅いので少し心配だが、そもそもあまり重要な約束でもないため気負わずに把握をする。

 

土曜日まではあと三日。今日の朝した決心は空回りしたが、再び心を整えられる時間が出来たのは丁度いい。俺は結局終わることがなかった心労を死んだ目で表しながら、速足で教室に戻った。




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