インフィニットストラトス‐四神の力を受け継ぐ者‐   作:フジパンホンジコミ

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刀奈と簪が初めて一夏出会ったときのエピソード


外伝1
幻想に生きる少年との出会い


 

舗装された山道を、一台の車が走っていた。

 

 

「そろそろ着くぞ。」

 

 

父親と思しき人が後ろの席に座る姉妹に、声をかける。

 

 

「はーい」「・・・うん」

 

 

姉妹は返事をするも、別々の方に顔を向けていた。

 

父親と助手席の座っている母親は、悲しい表情をする。

 

一台の車は、一軒の農家の前に止まる。

 

 

「いらっしゃい、よく来たね」

 

「ご無沙汰しています。これから1週間、よろしくお願いします」

 

 

父親と母親は家から出てきた初老の女性に挨拶をする。

 

 

「もしかして、その子達は・・・」

 

「はい、姉の刀奈と妹の簪です」

 

「あらあら、こんなに大きくなって」

 

 

初老の女性がニッコリと笑顔を浮かべながら呟く。

 

刀奈と簪もきちんと挨拶を返した。

 

 

「一週間よろしくねお祖母ちゃん」

 

「よろしくお願いします」

 

「ええ、よろしくね、さあ暑かったでしょ冷たい飲み物があるから入りなさいな」

 

 

初老の女性に続き、家に入っていく。

 

久しぶりの祖母の家と17代目当主としての重圧から開放されたのか、外に出て羽を伸ばす刀奈。

 

しかし、妹の簪はほとんど外に行かず家の中に引きこもっていた。

 

祖母は、二人がスクスクと育ってくれたことに嬉しく思ったのと同時に悲しいと思ってしまった。

 

それもそうだ、姉妹が一緒にいるのを見かけたのは、朝昼晩の食事の時と寝るときだけだったのだから。

 

滞在日3日目の時に、両親と祖母が出かけてることになり、刀奈と簪だけで留守番する事になった。

 

刀奈はチャンスだと思い、簪に話しかけようとするがどんなことを話せばいいのか迷ってしまう。

 

 

「えっと簪・・・ちゃん」

 

「・・・」

 

「その・・・学校の勉強はどう?・・・お友達は出来た?」

 

 

必死に簪に話をかけるが、簪は全部無視。

 

 

「あの・・・簪ちゃん」

 

 

刀奈は手を震えさせながら、簪に手を伸ばすが簪は振り返ると同時に刀奈の手をバチンと弾いた。

 

 

「・・・・私のことはほっといて」

 

 

そう言って簪は、森の中に入っていってしまう。

 

 

「簪・・・ちゃん」

 

 

刀奈は、目頭に涙を浮かべながら弾かれた手を押さえただその場に突っ立っていることしかできなかった。

 

 

森の中に入った簪は、行き先を決めずにただただ彷徨うように歩き続ける。

 

そして、途中で見つけた木の幹に座りこむ。だがその表情はとても悲しそうにしていた。

 

 

「・・・なんで・・・あんなことしか言えないのかな私は・・・」

 

 

涙を流しながら呟く簪。

 

本当は嫌いではない、仲直りしたいと思っている。

 

でも、いざ話そうとすると暗い感情に支配され、突き放すようなことしか言えない。

 

 

「・・・お姉ちゃん・・・」

 

 

膝に顔を埋めながら、簪は泣き続ける。

 

すると、近くの茂みでガサガサと物音がした。

 

簪は、その音にびっくりしてしまう。

 

好奇心からか簪は、涙を拭きそこへ足音を立てずに進む。

 

そして、茂みから顔をのぞかせると、何かが動いていた。

 

でも、まわりはうす暗くて何かはわからない。

 

しかし、暗闇に目が慣れてきた時、簪は目を疑った。

 

 

「なに・・・あれ・・・・」

 

 

簪は、顔を真っ青にしながらそれを見る。

 

一匹の赤黒い鳥の化物――ギャオスが、クチャクチャと動物の肉を食っているところだった。

 

 

「ひっ!?」

 

 

簪は生々しい光景を見て、恐怖のあまり声を出してしまう。

 

その声に反応し、ギャオスは食べるのをやめ、口に肉片を咥えながらゆっくりと簪の方に顔を向けてきた。

 

簪は、蛇に睨まれたカエルのごとく恐怖で固まってしまう。

 

ギャオスが鳴き声をあげながら、簪に襲い掛かってきた。

 

簪は、逃げようにも恐怖で足が動かない。

 

 

「あ・・・あ・・・あ・・・」

 

 

口を広げたギャオスに食われそうになったその時、誰かが簪を引っ張り助けた。

 

簪は何が起こったのか分からないでいたが、顔を上げるとそこには姉である刀奈の姿があった。

 

 

「お姉・・・ちゃん?」

 

「簪ちゃん立って!ここから逃げるわよ!」

 

「っ!?う、うん!」

 

 

刀奈は急いで簪を立たせる。

 

そして、立ち上がった簪の手を握り走り出す。

 

簪を食い損ね茂みに突っ込んでいたギャオスも二人が走りだしたことに気づき、翼を広げて追いかけ始めた。

 

刀奈と簪は、森の中をガムシャラに走る。

 

もはや、自分たちがどの辺りを走っているのでさえわからない。

 

それでも二人は走り続けた、自分たちを追っているであろうギャオスから逃げるために。

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

「逃げ切れたの・・・かな」

 

「わからないわ。とにかくここがどの当たりなのか確認しなくちゃ」

 

 

二人は、手をつなぎながら森の中を進む。

 

 

「それにしてもあの生き物一体何なのかしら・・・あんなのおぞましいの初めて見たわよ」

 

「・・・・・・」

 

 

チラチラと刀奈を見る簪。

 

そして、簪は勇気を振り絞って、刀奈に話しかける。

 

 

「お、お姉ちゃん・・・その・・・助けてくれて、ありがとう」

 

「簪ちゃん・・・」

 

 

今まで口を聞いてくれなかった簪が、喋りかけてくれたことに嬉しく感じる刀奈。

 

刀奈は、簪に触れようと手を伸ばす。

 

しかし、ピカッと黄色い閃光のようなものが視界の隅に映り、嫌な予感がし刀奈はすぐに簪の手を掴み、自分に引き寄せ後ろに飛び退く。

 

突然の姉の行動で簪は驚く。

 

そのすぐあとに黄色い閃光が自分たちのいた場所を通り過ぎた。

 

 

「お姉ちゃん、今の何?」

 

「わからないわ」

 

 

二人は立ち上がり、自分たちのいた場所を見ると言葉を失う光景があった。

 

 

「な、何、これ・・」

 

 

まるで鋭いもので切断されたように、大量の木が地面に転がっていた。

 

 

「ギギャアアアア!!!」

 

 

鳴き声が聞こえ、刀奈と簪は声のした方に顔を向けた。

 

刀奈と簪の頭上を飛行するギャオスの姿が見えた。

 

 

「あ、あれってさっきの化物!」

 

「まさかさっきの攻撃はあいつが!」

 

 

ギャオスは旋回し、刀奈と簪の目の前に降り立つ。

 

暗闇で見えなかったギャオスの全容を目の当たりにして、二人は恐怖で足が震え始めた。

 

それでも刀奈は簪を守ろうと、近くにあった木の棒を手に持って、ギャオスに対峙する。

 

 

「か、簪ちゃんには指一本触れさせないわ!?」

 

「お姉ちゃんっ!?何してるの!?」

 

 

姉の行動を見て、驚かずにはいられない簪。

 

しかし、刀奈は簪の前から退かなかった。

 

 

「私は簪ちゃんのお姉ちゃんなのよ!?妹を守れなくて当主が勤まるものですか!?」

 

「お姉ちゃん・・・・・・」

 

 

そんな二人の空気を読まないギャオスが、口を広げ襲い掛かる。

 

刀奈は木の棒を当てられるように構え、簪は刀奈の服の裾をぎゅっと握りしめた。

 

だが、二人が食われることはなかった。

 

なぜなら

 

 

「出りゃあああああ!!!」

 

 

自分たちと同じ歳くらいの男の子がいきなり目の前に現れて、ギャオスを殴り飛ばしていたのだ。

 

ギャオスを殴り飛ばした男の子は、すぐさま追撃に移る。

 

殴る、蹴るを繰り返しギャオスに浴びせる。

 

刀奈と簪は、この光景から目を離せないでいた。

 

すると、彼の右腕がいきなり炎で包まれたのを見てギョッと目を見開く刀奈と簪。

 

炎で包まれた右腕でギャオスを殴りつけると、凄まじい爆発が起こった。

 

刀奈と簪は、両腕で爆風を防ぐ。

 

両腕を下ろして、爆発の起きた場所を見ると上半身が完全に消滅したギャオスと右腕を突き出した状態の男の子しかいなかった。

 

男の子は、後ろを振り返り、刀奈と簪に近づく。

 

 

「大丈夫か?」

 

「え、ええ」「・・・うん」

 

 

頬を赤く染めながら、刀奈と簪は返事をする。

 

 

 

これが後の恋人である一夏との出会った日だった。

 

 

 




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2017/12/18
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