インフィニットストラトス‐四神の力を受け継ぐ者‐ 作:フジパンホンジコミ
誰にも見つからずに一夏の部屋まで来たラウラとシャルル。
「ふうここまでくれば安心だな。」
「えっとラウラ。」
「なんだシャルル。」
「なんで一夏の部屋の合鍵持ってるの?」
そうラウラの手にはこの部屋の合鍵が握られていた。
「何かあった時のために兄様から渡されたものだ。」
ものすごく嬉しそうに胸を張りながら言うラウラ。
その姿に苦笑いを浮かべるシャルル。
するとドアの方から話声が聞こえてきた。
「どうやら来られたようだ。」
ガチャとドアの開く音がしたら声が部屋の中まで聞こえてきた。
「ちょっと一夏ちゃんと説明してよね。」
「そうですわ。せっかく食券が買えるところまできていたというのに。」
ブーブーと文句を垂れるセシリアと鈴の声が部屋に響き渡る。
この声を聞いてシャルルはきた人たちが誰なのか理解した。
「それは済まないと思っている。でもこればかりは見過ごす事はできないからな。」
部屋に姿を現した一夏はベットに座るラウラとシャルルに顔を向ける。
「ラウラにシャルルじゃない。なんで一夏の部屋にってあれ?」
シャルルを見て違和感を覚える鈴。
じっとシャルルを見る鈴。
「な、何?」
シャルルは鈴に見られているのを感じて身をよじる。
そして鈴はあることに気づく。
「(えっと見間違いよね、ええそうよ見間違いに違いないわ。だって男であるシャルルに胸があるなんて・・・・・)」
目を何度か瞬きをしてゴシゴシとこすったあと、またシャルルを見るが見間違いではなかった。
「(夢じゃないのよ・・・・ね。)」
はぁーとため息をはいた鈴はラウラに顔を向けて口を開いた。
「・・・・どういうことか説明して。」
「うむ、まずは事の経緯から説明するとだな、私がシャルルの―――――」
3分程ラウラの説明が続いた。
「――――ということだ。」
「そ、そのようなことがありましたのね。」
口元をヒクつかせるセシリア。
「にしてもラウラ、あんたね平気で不法侵入してんじゃないわよっ!?」
「だが返事がなかったのだ、それはいささか仕方ないであろう。」
「携帯に電話をかけるとか、もう少し大きな声で呼び出すとか方法あったでしょうが!?」
「おおーその手があったか!」
「忘れてたんかい!」
鋭いツッコミをかます鈴。
そこへ口を閉じて話を聞いていた一夏が喋り始めた。
「漫才はそこまでにして「漫才じゃないわよ!」とにかく、今はシャルルの話を聞くのが先だ。」
全員がシャルルに視線を向ける。
一斉に視線が向けられてシャルルは少々萎縮してしまう。
「さて話してもらおうかなぜ男装して転入してきたのかを。最も嘘をつくのはなしだからな。」
「もし、嘘をついたら・・・」
刀奈が『お仕置き』と書かれた扇子を開く。
この二人には嘘は通用しないだろうと実感したシャルルは正直に話し始めた。
「僕が男装して学園に転入するよう指示したのは実家の方からなんだ・・・・・」
「実家といえばデュノア社の社長さんだよね。」
「うん。」
「ということはその人の命令ってことか。」
「そうだよ。」
覇気のない声で返答を返すシャルル。
実家の話をし始めてから誰が見てもわかるくらいにシャルルの顔は顕著曇りだしていた。
「命令って・・・その方はシャルルさんのお父様なのでしょう?なぜそのような――――」
「僕はね、愛人の子なんだ。」
「「っ!?」」
ラウラとレオナは事前に一夏からシャルルの素性を聞いていたが、それ知らないセシリアと鈴は絶句してしまう。
「引き取られたのは二年前くらいかな。ちょうどお母さんがなくなって時にね、父の部下がやってきたの。それで色々と検査をする過程でIS適応が高いことが分かって、非公式ではあったけれどデュノア社のテストパイロットをやることになってね。」
一夏たちは一言もしゃべることなく話を聞くことに専念する。
「父にあったのは二回くらいかな。会話もたった数回交わしただけ。普段は別邸で暮らしているんだけど一度だけ本邸に呼ばれた時があってねその時に本妻の人から『泥棒猫の娘が!』って言われながら殴られたっけ。」
あはは、と愛想笑いを繋げるシャルルではあるが、その声は乾いていて笑ってはいなかった。
セシリアと鈴は怒りをこらえるかのように拳をきつく握りしめる。
事情を知っている一夏たちでさえも本人の口から話されたその時の惨状を聞いてセシリアと鈴と同じことをする。
「それから少し経って、デュノア社は経営危機に陥ったの。」
「え?デュノア社って量産機ISのシェアが世界第三位だったはずよね?」
「そうではあるけど、結局リヴァイヴは第二世代型なんだよ。ISの開発っていうのはものすごいお金かかるんだ。ほとんどの企業は国からの支援があってやっと成り立っているところばかりだよ。それで、フランスは欧州連合の統合防衛計画『イグニッション・プラン』から除名されているから、第三世代型の開発は急務なの。国防の為もあるけど、資本力で負ける国が最初のアドバンテージを取れないと悲惨なことになるんだよ。」
「えっと聞いてもいいかしら。その『イグニッション・プラン』ってのは何?」
イグニッション・プランについて知らない鈴が質問をする。
「わたくしがご説明いたしますわ。『イグニッション・プラン』というのはですね現在、欧州連合では第三次イグニッション・プランの次期主力機の選定中なのですわ。今のところトライアルに参加しているのは我がイギリスのティアーズ型、ドイツのレーゲン型、それにイタリアのテンペスタⅡ型の3機。そして今のところ実用化という点ではイギリスとドイツがリードしていますが、まだ難しい状況なのです。そのための実稼動データを取るためにわたくしとラウラさんがIS学園に送られましたの。」
「あ、そういことだったのね。」
「理解していただけましたか鈴さん。」
「ええ、ありがとうセシリア。」
「話を戻すね。それでデュノア社も第三世代型を開発していたんだけど、元々遅れに遅れての第二世代型最後発だからね。圧倒的にデータも時間も不足していて、なかなか形にならなかったんだよ。それで、政府からの通達で予算は大幅にカットされたの。そして、次のトライアルで選ばれなかった場合は援助を全面カット、その上でIS開発許可も剥奪するって流れになったの。」
「なんとなく話はわかったわ、でもそれがどうして男装に繋がるのよ?」
「簡単だよ。注目を浴びるための広告塔。そして――」
シャルルは一夏達から視線を逸らし、どこか苛立ちを含んだ声で続けた。
「同じ男子なら日本で登場した特異ケースと接触しやすい。可能であればその使用機体とデータを取れるだろう………ってね」
「やはり目的は俺の四神と織斑の白式のデータか……」
自分が思っていたことが当たったことに一夏はしかめっ面をする。
「とまあ、そんなところかな。でも一夏たちにばれちゃったし、きっと僕は本国に呼び戻されるだろうね。デュノア社は、まあ……潰れるか他企業の傘下に入るか、どのみち今までのようにはいかないだろうけど、僕にはどうでもいいことかな。」
言いたいことを言い終えたシャルルの顔は何もかもを諦めた表情をしていた。
「あなたはそれでいいの?」
「か、簪?」
「そうですわ!良いように扱われて使い終わったら捨てられるだけの人生でよろしいのですか!」
「僕だってそれは嫌だよ!でも僕ひとりの力じゃどうしようもないじゃないか!」
「それなら心配いらないわ。」
「えっ?」
「IS学園特記事項第二十一『本学園に置ける生徒はその在学中に置いてありとあらゆる国家、組織、団体に帰属しない。本人の同意が無い場合、それらの外的介入は原則として許されない物とする。』つまり、今から三年間はあなたが嫌だと言う限り誰も手を出す事は無いってことよ。」
「つまり―――」
「今すぐじゃなくてもいいわ。その間にあなたがどうしたいか決めなさい。」
「まあそれでも考えつかなかったときはウチを頼ればいい。」
「いいの?みんなを頼っても?」
「友人を助けるのに理由はいるのか?」
「ありがとう。」
涙を流しながら笑顔でお礼を言うシャルル。
その表情は眩しく思える程の笑みだった。
「とりあえず話は終わったとして、夕飯どうしょうか。」
「「「「「「「あ・・・・・」」」」」」」
時計を見れば既に9時すぎ、つまり食堂はもう閉まっている時間。
「仕方ない、刀奈さん、簪みんなの食事作るからちょい手伝って。」
「オッケーよ。」
「わかった。」
3人は早々に立ち上がら、簡易キッチンへと消えていった。
このあと8人は楽しく食事を済ませた。
―――――――――
――――――
―――
月曜日の放課後、いつもどうり訓練に行こうとした一夏。
「よし、行くか。」
セシリアたちに声をかけ一緒に教室を出ようとしたら―――
ドドドドドドッ・・・・・・・
「な、なんだこの音?」
地鳴りのように聞こえるそれは、廊下から響いてきていた。
しかもだんだんと近づいてきている。
そしてドカーン!と音を立てて教室のドアが吹き飛ぶ。
『亀山君!』
『デュノア君!』
雪崩のごとく次々と女子が教室に入ってきた。
そして、一夏とシャルルを見つけるなり一斉に取り囲んでバーゲンセールの取り合いのごとく手を伸ばしてきた。
人垣から伸びる無数の手。それがちょっとしたホラーのように思えて恐怖を感じるシャルル。
「え、えっとどうしたの、みんな・・・・・・ちょ、ちょっと落ち着いて。」
『これ!』
女子生徒一同が出したのは学内の緊急告知文が書かれた申込書だった。
「えっと『今月開催する学年別トーナメントでは、より実践的な模擬戦闘を行うため、二人組での参加を必須とする。なお、ペアができなかった者は抽選により選ばれた生徒同士組むものとする。締切は――――』ああこれね。」
「亀山君は知っているのね。なら話は早いわ!」
またしても一斉に伸びてくる手。
「私と組もう、亀山君。」
「あーごめんそれ無理なんだわ。」
『えええええぇぇぇーーーーー!!!!」
「実は教師陣から俺は一人で出るように言われているんだ。」
「ど、どうして!」
「まあ理由は俺のISが原因なんだけどね。」
『そういうことだ。諦めるのだな女子たちよ。』
突如龍王機が現れた。一夏の肩に乗るほどのサイズで。
一瞬可愛いと思ってしまう女子生徒たち(その中にはセシリアたちも含まれていた。)
「な、なら私と組んで、デュノア君。」
「ご、ごめん。僕更識さんと組みことになってるんだ。」
「そ、そんなぁ・・・・・」
ガクッと落胆する女子たち。
一夏たちと組めないことがわかるとトボトボと教室から出ていく女子一同。
その背中は哀愁が漂っていた。
女子たちが消え去ったあと、シャルルは安心した表情をする。
「あー危なかった。昨日一夏に聞いておいて正解だったよ。ありがとう。」
「なにシャルルの秘密を守るためだ。」
シャルルに二カッと笑って答える一夏。
「それにしてもそのような機能があるとは思いませんでした。」
一夏に群がる龍王機たちを見ながらラウラが口を開く。
それに龍王機たちは答えた。
『つい先日出来たばかりのシステムなのだ。』
「では新しいシステムなのですね。」
『そうだこれのおかげで我々は自由に動くことができる。』
「それは良かったね。」
『じゃがその分、デメリットもあるんじゃよ。』
「デメリット・・・そんなものまであるのか。」
『ええ主から8m以上離れることができないというデメリットが。』
「そ、そうなんだそれは大変だね・・・・」
どう答えたらいいのか困ってしまうシャルル。
「ほら、楯無さんと簪と鈴が待ってかもしれないから早く行くぞ。」
既に教室のドアのところまで進んでいた一夏がセシリアたちを呼ぶ。
『むっ主が行ってしまう!皆の者ゆくぞ!』
『『『おう!』』』
ミニサイズの龍王機たちは浮かび上がり一夏の元へと飛んでいった。
龍王機たちがそばに来たのを確認し一夏は教室から出て行く。
それを追いかけるようにセシリアたちも教室から飛び出していった。
おまけ
部屋で夕食を食べ終わったあとみんなでお茶を飲んでいる時にふとシャルルは思い出す。
「そういや、ラウラが言ってたけど一夏たちっていつから僕が男装しているって気づいたの?」
「え、転入してくる以前からだが。」
「「「えっ!!!」」」
まさかそんなに早くから知っていたことに驚くセシリア、鈴、シャルル。
「ほれ。」
そう言って一夏は一枚の紙を三人に渡した。
そこにはシャルルのプロフィールが書かれていた。
「まさか、ここまで調べられてたなんて・・・・僕が男装して転入してくる意味なんて最初から無駄だったんだ。」
相当ショックだったのか影を落として落ち込むシャルル。
その姿はなんともいたたまれなかったとか