インフィニットストラトス‐四神の力を受け継ぐ者‐ 作:フジパンホンジコミ
プロローグ1
世界とは不公平だ。誰も俺のことを見ていなかった。いや見ようとしなかった。
優秀すぎる姉と弟と比べて、俺にはなんの取り柄がなかったために周りから虐められていた。
だから俺は周りを見返してやろうと必死に努力し続けた。
それでも姉は事有る度に『なぜお前はこんな簡単なこともできないのか。』と言い、常に弟と比べていた。
その為、褒められたことなど一度もない。
しかも自分は全部わかってるって言って勝手に決め付けて俺の話なんて聞こうともしなかった。
それだけではない弟からは『なんでお前みたいなのが兄なんだ。』と見下されるようになり、家にいても肩身が狭いことが多くなった。
でも俺はいつか見返そうと頑張り続けた。
だがその俺の頑張りを一瞬にして取り払ったモノが現れた。
《インフィニットストラトス》
通称ISと呼ばれるパワードスーツが世界を変えてしまった。
しかもこのISは女性にしか扱えないという事が判明した途端、世界のバランスが崩れ女尊男卑一色に染まってしまった。
そして第一回モンド・グロッソの試合で姉が総合優勝したことにより俺の扱いは更にひどくなった。
今まで一生懸命頑張ってきたのに俺はブリュンヒルデの弟としか見てもらえなくなった。
家にいても学校にいても常に姉と弟に比較され続け、俺の精神はボロボロになっていった。
心が折れそうになることが度々あったが『何があっても家族は守る』と言ってくれた千冬姉の言葉を信じて自分を保つことができた。
でもそれは思いがけないことによって裏切られた。
それは第二回モンド・グロッソで起きた。
――――――――
――――――
―――
「(くそっなんで俺ばっかりこんな目に遭うんだ。俺が何したって言うんだよ!!!)」
俺は今、廃工場の中で口と手足を縛られていた。
周りには拳銃を装備した人間が5人ほどいた。
そう俺は誘拐されてしまったのだ。
本来なら俺は家で過ごしていたはずなのだが、モンドグロッソの決勝戦に姉が出場することになった。
姉の応援のためだけに政府の連中に無理やり連れてこられ、会場に入ろうとした時に誘拐されてしまった。
そしてその決勝戦の映像を誘拐犯の一人が見ていた。
「これ見ろよ、織斑 千冬のやつ決勝に出てるぜ!?」
「そんな馬鹿な!ちゃんと日本政府に伝えたんだろうな!?『弟は預かった』と。」
「伝えたさ、間違いねえって!!!」
俺は耳を疑っていた。
千冬姉が俺を見捨てた?
なんだよ俺よりも大会の方が大事だっていうのかよ!!!
『何があっても家族は守る』って言ったくせに結局は俺のことなんてどうでもいい存在ってことかよ!!!
「ちっ!!」
誘拐犯の一人が俺の側により口に縛られていた布を解き、聞いてきた。
「おい、坊主、お前・・・織斑 千秋か?」
「違う!!俺は、織斑 一夏だ!!!」
俺は叫ぶように答えた。
「なんだと!間違えて兄の方を連れてきちまったのかよ!!」
「おいおいそりゃねぇぜ!?よりによって出来損ないの兄貴の方を連れてきちまったなんてあれだけの苦労が水の泡だなんて!!!」
「しょうがねぇ、坊主恨むならお前を見捨てた姉に言えよ。」
俺は誘拐犯の構えている銃を見ていることしかできなかった。
「じゃあな坊主。」
誘拐犯が引き金を引こうとしたら、廃工場が揺れた。
そして天井を破壊しながら鳥のような化物が俺たちの目の前に降り立った。
「な、なんだこいつは!!!」
「う、撃て!?撃ち殺しちまえ!!!」
誘拐犯たちは鳥の化物に銃を撃っているがその化物には意味がなかった。
化け物に対して銃が効かないと分かるや否、俺を置き去りにして逃げ始める誘拐犯たち。
だが化物は俺に気づいていないのか誘拐犯たちに襲い掛かった。
そして俺はとても信じられない光景を見た。
化物が誘拐犯を貪り喰っていた。一人また一人と化物は誘拐犯たちを喰らっていった。
俺は恐怖で震え上がっていた。俺もあの人たちとおんなじ運命をたどるのか?
いやだ、まだ死にたくない!
だが逃げようにも手足を縛られた状態。逃げる手段なんてはじめからなかった。
誘拐犯たちを食い終わり、俺に気づいたのか今度は俺に狙いを定めた。
「あ・・・あ・・・あ・・・」
俺は恐怖で言葉が出なくなった。
「ギュアアアアアァァァァ~~~!!!!」
雄叫びを上げながら俺に向かってくる化物。
俺はもうだめだと目をつぶった。
ズーーーーーーーン!!!
そんな音が俺の耳に入ってきた。うっすらと目を開けてみると男性と女性が俺の目の前におり男性は化物を両腕で取り押さえていた。
「安心して、もう大丈夫だから。」
俺の隣にも誰かいた。
薄紫の長い髪に右目が真紅左目が翡翠の瞳をした女性が縛っていた俺の縄を解いていた。
俺は急いであることを伝えた。
「で、でも、あの化物ひ、人を喰べてたんですよ!!!だから・・・」
「それでも大丈夫です。なんせあの人は―――――アレを退治する専門家ですから。」
ドゴクシャ!
そんな音が聞こえたので、音のした方を見てみると首のない化物と首のある場所に掌を突き出した男の人が見えた。
「すごい・・・」
拳銃を使っても勝てなかった化物を素手で倒したことに俺は言葉を失っていた。
「そろそろ行きましょう、先ほどの崩壊音で気づかれたみたいです。」
「そうだな。」
男性と女性は踵を返してこの場から去ろうとしていた。
「あ、あの!俺も連れて行ってください!」
男性と女性は俺の方に顔を向け、理由を聞いてきた。
「何故連れて行って欲しいんだ?理由を言ってご覧。」
「家に帰りたくない。」
「帰りたくない理由があるんですか?」
「家に帰っても居場所がない。」
俺はそう答えた。
そしたら女性が俺のことをじっと見ていた。
(なぜだろうこの人に嘘は付けないと感じるのは。)
そして女性は俺から目を離し男性の方に顔を向けこういってくれた。
「連れて行きましょう。」
「おいおい、いいのかそんなことして。この子の家族が心配するんじゃないのか?」
「事情は後で説明します。それにこの子をほおっておいたらそれこそ危険です。」
女性の真剣な眼差しを受けて男性は納得してくれた。
「わかった。それじゃあ行くぞ少年。」
「は、はい!」
俺は二人のあとに着いていった。
この出会いが俺の人生を大きく変えてくれるものだと思ってもみなかった―――