アグネスじゃないタキオン   作:天津神

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アグネスタキオンの考察


Extra Number
Extra No.1


 

「もう知らん!!」

「はは、そこまで怒る事じゃないじゃないか」

 

 実けん対象、いや、ライネルタキオンが席を立ち、早足で部屋から出ていく。

 

「はぁ……ただ、紅茶を淹れてあげただけで、ここまで怒るとは……」

 

 ライネルに出した紅茶。

 

「はぁ……一体どこがいけなかったのか」

「それは砂糖の量だと思います……」

「ふむ。なら、次はこれよりももっと多めにするか」

「それは問題の方向性が間違ってます……多すぎるんですよ……彼女は、ライネルさんは、甘すぎよりも、程よい甘さが好きみたいですし……」

「そうか……ライネルは苦いのがいいのか」

「あなたが甘すぎるんです……」

 

 甘すぎるって……紅茶で糖分も摂取できるのは効率がいいだろうに。

 

 「ところで、だ。ライネルタキオン。彼女はいささか不思議だと思う。君はどう思うんだい?カフェ」

「ライネルさん、ですか?」

「あぁ。そうだ」

「そうですね……狂わなかったアグネスタキオン……ですかね……?」

「おい、それだと私が狂ってるみたいじゃないか」

 

 失礼にも程があるぞ。親しき仲にも礼儀あり、だぞ。

 

「でも、どこが不思議なんですか……?」

「カフェ、君はよく周りで『運命的な何かを感じる』ってことはないかい?」

「あぁ……私はないですが……たまに耳にしますね……」

「そう。だが、そのデジャヴに近い感覚……現象Aと呼ぶとしよう。現象Aは、姿形に似ていない者同士で起きている。なら、姿形が同じ私とライネルとで現象Aが起きないはずがない。だが、起きない。他人の空似といえども、名前まではそうはいかない。絶対に何かあるはずだ」

「そこまで考えているんですか……」

「だって、普段から間違われるんだぞ?『ライネルさーん』って、ライネルの友人らしき人物からな」

「あぁ……確かに、よく間違いが起こりますよね……」

「この前なんて、トレーナー君が間違えてたからな。あれは酷かった」

「あの時、ですか……まぁ、確かに、間違われすぎですよね……」

 

 1週間に2回も間違われるというペースが続いている。

 はっきり言って異常。

 

「さて、なんで私とライネルは間違われるほど似ているのか。それを考えているのだが……当の本人がいない。はぁ……」

「怒らせたのはあなたですよ……」

 

 ふむ……。

 

「謝る、しかないか」

「もういい」

 

 扉を開けてライネルが入ってくる。

 

「走って憂さ晴らししてきた。アグネスが砂糖入れすぎるのはいつものことだし……。ずっと怒ってたら、太る」

「太るのか」

「太る。それに、生活習慣病になりかねん」

 

 なにを!?効率食なんだぞ!?

 

「効率よく糖分と水分を摂取しているに過ぎないのだが……」

「それをこっちに押し付けんな」

「あ、ハイ……」

 

 何故だろうか……ライネルくんの顔が少し怖いんだが……。

 

「んで、少し聞こえてたけど……私に質問とかあるんでしょ」

「あぁ。私と君の関係性についてだ」

「友人、でしょ」

「いや、そこじゃなくてな。何故ここまで似ているのか、だ」

 

 ライネルが私の言葉でしかめる顔。そして声。その全てが、私と同じ。

 

「はぁ……私にそれを言われても。三女神様が決めたのかもしれないことを、説明ねぇ……無茶だということは承知かい?」

「もちろん」

「なら答えはこれだ。知らん」

 

 

 

「逃げられた、か」

「ですね……」

「だが」

「?」

「それもまた、面白い」




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