京都芝内回り1600mのタイムを
1分08秒0
↓
1分38秒0
に変更しました。
『新たな希望が生まれる新馬戦。ここ、京都競馬場にて、お送りいたします。では、ゲートインと共に、出走する馬をご紹介しましょう』
スタンドに集まる観客の数はいつもと同じくらいか、自分の立っているところを取るのは苦労しない程度だ。
「勝ってくれよ……9番、もしくは5番」
金に困ってるわけではない。お小遣いには困ってるが、生活するための分は残してある。
いつもは一番人気の馬の馬券を買うが、今日はそんな余裕ないので、博打をうつ。
9番人気のライネルタキオン。パドックでの暴れっぷりと、血筋的な分、そして、牝馬であることが不人気の理由の馬。
自分は、この日から、趣味が変わった。そう言わせてくれる馬だ。
『ゲートイン完了。京都競馬場新馬戦……今スタートしました!!全頭綺麗にスタートを切りました』
スタートと共に上がってくるのは、一番人気の馬だ。
でも、その名前は忘れてしまった。それ程、9番ライネルタキオンの印象が強かった。
『9番ライネルタキオン、先頭の後方1馬身……いや、半馬身……どんどん伸びて今並んだ!!』
早めのスパート。スタートしてまだ100mも行ってないぐらいの時に、だ。
『交わした!!先頭は9番ライネルタキオン!!伸びる伸びる!!後方と差を広げていく!!』
最初は、ほんのわずかな可能性に賭けただけだった。
でも、その可能性が、今、絶対に近づいていく様は、心を熱くさせた。
「行け、行け!!逃げろ!!」
気がつくと、馬券を握りしめ、大声をあげていた。
『後方とは8馬身!!8馬身差だ!!いや、まだ伸びる!!まだ伸びる!!』
圧倒的、まさにその言葉しかない。2番手はもう届かない。
「逃げ切れ!!そのまま!!」
『ライネルタキオン、今1着でゴール!!記録は……1分38秒コンマ0!!』
周囲が騒ぎ出す。普通、新馬戦ならもう少し時間がかかるものだが、ライネルタキオンはそれを成し遂げた。
飛び交う馬券と罵声。その全てが、ライネルタキオンへと向けられた。
やめろ、折角勝った馬に、なんてことをするんだ。
そう言いそうになった。でも、言えなかった。もし、言っていたら、自分は二本足で立てていたかどうかわからない。
ふと気づくと、スタンドを見つめる熱い眼差しがあった。
芝の上で、威厳ある立ち姿。背中には、乗り替わりせざるを得ず、交代した騎手が跨っている馬がただ、見つめていた。
その姿に釘付けになる。
周囲の期待を覆し、いや、期待通りに走り、見事勝利した牝馬、ライネルタキオン。
あの馬の熱い眼差しは、阿鼻叫喚と化したスタンドの大人を一瞥すると、落ち着いている自分を見つめているかのように思えてくる。
まるで、自分が馬券を買って当てたことを知っているかのように思えた。
ふと、言葉が漏れ出る。
「王だ……」
周囲を俯瞰し、冷静に生きる。なによりも、その立ち姿が、綺麗だった。だから、つい、自分の思い描く「王」という言葉と重なった。
でも、あの馬は、王じゃない。ライネルタキオンという名前がある。それに、牝馬だ。
なら、こう呼ぶべきだろう。
『女王』ライネルタキオン。
期待の有無に関わらず、結果を残す馬。
私は、この馬を見てから、ある思いで胸が満たされていく。
今までは単なる遊戯だった競馬は、単なる遊戯ではない。夢を託し、希望と共に、走る姿を祈りながら、応援しながら見届ける競技だと。
私たちは、伝説の始まりを見たのだろうか。そんな走りをしていた。
〜1980年11月第2週発売の競馬雑誌より〜
「よくやった!!」
デビュー戦の後、藤峰くんは普通に目を覚まして、トレセンに来てくれている。
でも、その骨折した右腕は痛そうだ。
「おぉ……ごめんなぁ、ライネル。まだしばらくは乗れそうにない」
大丈夫だって。今は乗れなくても時間はたっぷりある。
完全体になって、走ろうね!!
「元気だなぁ」
「ほんと、すごい元気でしたよ」
「加藤も、本当にありがとう」
藤峰くんが、加藤くんの背中を叩く。
仲良いなぁ。
「それで、大体どのくらいかかりそうですか?」
そう、そこ気になるんだよね。
「全治1ヶ月。リハビリもあるから……乗れるとしたら、2ヶ月後かな」
「まぁ、それぐらいかかりますよね」
だろうねぇ……。
「藤峰さーん。病院に戻りますよ〜!!」
「じゃあ、戻るよ。またな、ライネル、加藤」
「えぇ」
じゃあな!!はよ治せよ。
「馬、好きなんですね」
「えぇ。可愛いでしょう?甘えてくるんですよ、あんなに大きくても」
「そうなんですか……今度、私も触れ合いに行ってみようかな」
「なら、ライネルタキオンがおすすめですよ。賢いですし」
「今度、ですよ。まずは、その怪我を治しましょうね」
はい。ということで、Nomal numberでのデビュー戦と似た結果になりました。距離が2000mだったら、15馬身差になってましたね。
感想等、お待ちしております。
ウマ娘シーン、流石にチョロチョロと投稿しても
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いい!!
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ダメ、時間系列を守って読みたい!!