「ところでライネルさん」
「ん?なんですか?」
カフェテリアでカフェと成り行きで一服。
会話無しで進むのかと不安になっていたら、カフェの方から話しかけてくれた。
「トレーナーさんは、いらないんですか?」
「…………」
トレーナー。トゥインクルシリーズを走る指導をしてくれる存在。
「まだ、いらないかな……」
「そう、ですか……」
「あと、名前が、ね?」
「なるほど……確かに、呼ぶとなると、“タキオン”ってなりますからね」
そう。そこが問題なのだ。
まだ、“メジロ〜”だったら、家名が同じだけなんだけど、下の方だからな。
「というよりも、まだ走ったことない」
「あ、そうでしたね……」
トレーナーがいないよりも、スカウトされないよりも、走ったことがない。
ここ、テストに出るほど重要だぞ〜。
「走れる機会が来ればねぇ……」
「大抵、やばい方のタキオンさんに薬飲まされて周りが集中できなくなるから出走停止ですからね……そろそろ痛い目見た方がいいと思いますけど」
うん。さらっと毒吐かないで欲しいな。心臓と耳と脳みそと胴体と上半身と下半身に悪いんだ。
…………全身じゃん。
「……………」
「……………あ、時間」
「トレーニングだろう?行っていいさ。片付けておくから」
普段、というかウマ娘相手ならこの口調なのになぁ……もっとも、最初はもっと酷かった。
喋りから、「あ、タキオンさん」って。
そこまで似るかねぇ!?って。
「………ありがとう、ございます」
一礼して、カフェテリアからでるカフェ。
うん。ややこしや。
『このたわけ!!』
『お兄様……ライス、頑張ったよ……!!』
カフェテリアをサラーッと眺めながら、コーヒーを一口。
「さて、楽しみと行くか……」
カフェが残したミルクとシロップ。そして、すでに空になっている私の分のミルクとシロップ。
いうまでもないだろう。私は甘党だ。
あ、紅茶に砂糖の山作るとかは流石にしない。飽和水溶液も作らない。アレが異常なだけだからな。
「禁断の、2倍……」
あと一つずつ欲しいくらいだ……通常の3倍。
コーヒーが赤くなったりしないだろうか。赤いコーヒーとか、あんまり飲みたくはないが、3倍と聞くとどうしても考えてしまう。
「甘ぁ……」
一口飲むだけで、ほっと声が出る。
うん。甘い。甘すぎず、苦味が混じりつつも甘味を感じれる……なんと絶妙なバランス。
「あの、ライネルタキオンさん」
「?」
そんな風に甘めのコーヒーを堪能していると、たづなさんが声をかけてきた。
時刻にして午後3時。授業等はない時間帯。私に用があるとは思えない。
「今日、何の日かわかりますか?」
「平日……?」
今日は単なる授業のある日のはず。
「今すぐ体操服に着替えてください。そして、グラウンドに来てください」
「え……?」
グラウンド……?なにそれ、走れと?補習は大嫌いなんだが?
「今日は、選抜レースの日ですよ」
「・・・・・・・・はぁ?」
「ですから、選抜レースですので、ライネルさんは出場することが決定されています。ですので、呼びに来たんですよ」
猛ダッシュ〜!!
〜選抜レース〜
はい、やって来ました選抜レース。今回の注目株は無し!!誰も走ったことないから!!私も含めて無し!!
私は、1枠1番!!
「はーい、位置について〜」
背中を押されてゲートに入れられる。
やだやだ。もっと集中してからにしたい〜!!
「行くぞー」
ヒシアマゾン先輩の声が遠くから聞こえる。
まだかまだかと待っていると、ゲートが開いた。
さて、私はどこまで走れるかな?
ライネルタキオンの同室は
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シンボリルドルフ
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サクラバクシンオー
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ツインターボ
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ナカヤマフェスタ
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メジロアルダン
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サクラチヨノオー
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シリウスシンボリ
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ミスターシービー