アグネスじゃないタキオン   作:天津神

29 / 50
カフェとタキオンのお話


Another Number
No.1


 

 

「やぁ、カフェ。実はだね……」

「薬は飲みませんよ、タキオンさん」

 

 おかしい……。

 

「タキオンさん、トレーナーさんが来てますよ……」

「んん?あぁ、ほんとだね。助かるよ、カフェ。さぁ、トレーナーくん、実験しようじゃないか」

 

 やはり、おかしい……。

 

「ふむ。ウマ娘にも効果があるか調べたいのだが……、……カフェ、手伝ってくれないか?」

「嫌です」

 

 おかしい。

 

 

 

 研究室。

 そこは、私とタキオンさんが普段いる教室。

 タキオンさんは、そこで研究。私はコーヒーを飲みながら、お友達と少し会話したりなど、ゆったりと過ごす部屋。

 

「トレーナーさん……あの、少し話が……」

「ん?どうした?カフェ」

 

 トレーナーさん。私のお友達も気に入ってる人になら、話していいのかも知れない。

 

「実は、ですね……ここ最近、違和感を感じてまして……」

「ふむ。それは俺に、か?」

「いえ、トレーナーさんではなくて……ここ、研究室に対して、なんですけど……」

 

 前までは感じてなかった違和感。

 

「研究室に?どんな違和感なんだ?」

「その……何か、足りていない、と言いますか……」

 

 不足。何かがない。

 例えて言うなら、いつもならこの消しゴムを使うのに、何故かない、という感じの違和感。

 

「うーん……足りてない、ねぇ……」

「はい……」

「研究室らしくない、ではなさそうだし……タキオンにも聞いてみたらどうだ?」

 

 タキオンさんにですか……。

 

「聞いてみます……」

 

 

 

 

「タキオンさん」

「ん?おや、カフェじゃないか。なんだい?」

 

 カフェテリアにタキオンさんはいた。

 

「実は、相談がありまして……」

「なるほど。相談ねぇ……私でよければ聞こう」

 

 やはり、タキオンさんと一緒にいると、違和感が強い。

 

「実は、研究室のことについてで……」

「研究室?」

「はい。何か、物足りないと言いますか」

「物足りない、ねぇ……」

 

 不思議そうにするでもなく、ため息を出すタキオンさん。

 

「君もだったか」

「はい?」

「いや、私も研究室にいると、何かが不足しているって感情が出てくるんだよ」

 

 まさか、タキオンさんと同じだったなんて……不覚。

 

「私なりにも考えていたのだが……これは私とカフェとの共通点から考えるしかないねぇ……」

「それで、タキオンさんは、何が足りないと思いますか」

「私は……わからない」

「私もわからないのですが……私のお友達はわかってるみたいなんですけど、なんでこういってるのかが分からなくて……」

 

 私の、他の人には見えないお友達。

 

「ほぅ。なんて言ってるんだい?」

「タキオン」

「私かい?」

「タキオンが足りていない、だそうです。この意味、わかりますか?」

 

 タキオンが足りない。タキオンさんがいても、いつもそう言う。

 

「ハッハッハ!!私が足りないと私に聞いて、何かわかりますか、か!!なるほど面白い!!私が足りない。いや、“タキオン”が足りてない、か」

 

 突然笑い出したかと思うと、急に真面目な顔をする。

 

「言われてみると、スッキリするよ。君のお友達が言ってることは、嘘じゃないみたいだ。でも、辻褄が合わない。私がもう1人?そんなことはありえない。他には何か言っていたかい?」

「いえ、他には特には何も……」

 

 タキオン。この言葉には、何か懐かしいとも思えますが、一体、どんなものなのでしょうか。




感想等、お待ちしてます。

競走馬シーンの続きを

  • 早く読み終えたい
  • もう少しゆっくりと進んでほしい

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。