No.1
「やぁ、カフェ。実はだね……」
「薬は飲みませんよ、タキオンさん」
おかしい……。
「タキオンさん、トレーナーさんが来てますよ……」
「んん?あぁ、ほんとだね。助かるよ、カフェ。さぁ、トレーナーくん、実験しようじゃないか」
やはり、おかしい……。
「ふむ。ウマ娘にも効果があるか調べたいのだが……、……カフェ、手伝ってくれないか?」
「嫌です」
おかしい。
研究室。
そこは、私とタキオンさんが普段いる教室。
タキオンさんは、そこで研究。私はコーヒーを飲みながら、お友達と少し会話したりなど、ゆったりと過ごす部屋。
「トレーナーさん……あの、少し話が……」
「ん?どうした?カフェ」
トレーナーさん。私のお友達も気に入ってる人になら、話していいのかも知れない。
「実は、ですね……ここ最近、違和感を感じてまして……」
「ふむ。それは俺に、か?」
「いえ、トレーナーさんではなくて……ここ、研究室に対して、なんですけど……」
前までは感じてなかった違和感。
「研究室に?どんな違和感なんだ?」
「その……何か、足りていない、と言いますか……」
不足。何かがない。
例えて言うなら、いつもならこの消しゴムを使うのに、何故かない、という感じの違和感。
「うーん……足りてない、ねぇ……」
「はい……」
「研究室らしくない、ではなさそうだし……タキオンにも聞いてみたらどうだ?」
タキオンさんにですか……。
「聞いてみます……」
「タキオンさん」
「ん?おや、カフェじゃないか。なんだい?」
カフェテリアにタキオンさんはいた。
「実は、相談がありまして……」
「なるほど。相談ねぇ……私でよければ聞こう」
やはり、タキオンさんと一緒にいると、違和感が強い。
「実は、研究室のことについてで……」
「研究室?」
「はい。何か、物足りないと言いますか」
「物足りない、ねぇ……」
不思議そうにするでもなく、ため息を出すタキオンさん。
「君もだったか」
「はい?」
「いや、私も研究室にいると、何かが不足しているって感情が出てくるんだよ」
まさか、タキオンさんと同じだったなんて……不覚。
「私なりにも考えていたのだが……これは私とカフェとの共通点から考えるしかないねぇ……」
「それで、タキオンさんは、何が足りないと思いますか」
「私は……わからない」
「私もわからないのですが……私のお友達はわかってるみたいなんですけど、なんでこういってるのかが分からなくて……」
私の、他の人には見えないお友達。
「ほぅ。なんて言ってるんだい?」
「タキオン」
「私かい?」
「タキオンが足りていない、だそうです。この意味、わかりますか?」
タキオンが足りない。タキオンさんがいても、いつもそう言う。
「ハッハッハ!!私が足りないと私に聞いて、何かわかりますか、か!!なるほど面白い!!私が足りない。いや、“タキオン”が足りてない、か」
突然笑い出したかと思うと、急に真面目な顔をする。
「言われてみると、スッキリするよ。君のお友達が言ってることは、嘘じゃないみたいだ。でも、辻褄が合わない。私がもう1人?そんなことはありえない。他には何か言っていたかい?」
「いえ、他には特には何も……」
タキオン。この言葉には、何か懐かしいとも思えますが、一体、どんなものなのでしょうか。
感想等、お待ちしてます。
競走馬シーンの続きを
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早く読み終えたい
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もう少しゆっくりと進んでほしい