アグネスじゃないタキオン   作:天津神

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ミス多発してすいません。


No.5 再臨、ライネルタキオン

 トレーナーがつき、メイクデビューを難なく史実と同じように勝ったころから、1年が経った頃。

 

「大丈夫?」

「大丈夫だ」

 

 12月。今年のレースは、有記念。

 

「顔色が悪いように見えるけど……黒色に見える」

「それは多分照明のせいだろう」

 

 実際、体調には問題はない。あるとしたら、緊張ぐらいだ。

 今のところ、私は史実通りに勝っている。京成杯しかり、クイーンカップしかり、エリザベス女王杯しかり。

 

「ま、転倒しなければいいだけだからな……」

「ん?何か言った?」

「いいや。何でもないさ。それじゃ、レース後に」

 

 私は、運命を否定する。定めを否定する。

 そのための、レースだ。勝つことは、最低条件でしかない。

 

 

 

『さぁ、始まりました。有記念。今年の注目ウマ娘達が集結。一体、どのウマ娘が今年最後のウイニングライブのセンターを取るのか』

 

 ゲート前。様々なウマ娘達が集まる。

 この全てが強者。そして、私の定めに抗おうとする者達。

 

「ちょっと……」

「ん?あぁ……君か。アグネステスコ」

「覚えてたんだ」

「まぁ、強かったからねぇ」

 

 勝負した相手は基本的に覚えている。

 

「そう。ならいいわ。手短に済ませる」

 

 アグネステスコが顔を近づけてくる。顔ちっか。

 

「絶対に負けない。負けてあげない。前に立たせない」

「なら、今私の前に立つなよ」

「今度は、絶対に私が勝つ」

「他のやつにも勝てよ」

 

 宣戦布告してきたので返事をしてあげました。

 なんで泣くの?

 

「あんたに勝てればいいもん!!」

「えぇ……1着目指そうよ……」

 

 そう言って去っていった。は?

 

「物騒だな」

「ん?あぁ……メジロファントムさん」

 

 入れ替わりでメジロファントムがやってくる。あらやだ、イケメン。

 

「ファントムでいい。見ていたよ、エリザベス女王杯」

「ありがとうございます」

「見事だった。だが、私は負けない。その意気込みで挑む。よろしくな」

 

 拳を突き出してくる。なるほど。

 

「こちらこそ、望むところです。ファントムさん」

 

 ファントムさんの勝負服は、所々にサメをイメージしている部分がある。

 なるほど、そういうことか。モチーフにしてるもの、わかったぞ。

 

「RF-4EJ………」

「ん?」

「あ、いえ、なんでもないです」

「そうかい。んじゃ、ゲート入りだから」

 

 危ない危ない。ここにはないんだった。

 さてと。

 

「そろそろ集中しないと……」

 

 

 

 

 

 

 カチタイ……。

 

『出走ウマ娘、姿勢整いました……綺麗に並んでスタートです!!』

 

 カチタイ……カチタイ。

 

『先頭を行くのは、アグネステスコ!!その後ろにはメジロファントムが食らいつく』

 

 マケタクナイ。

 

『ライネルタキオンは8番手!!少し出遅れたのか!?』

 

 マケルワケニハイカナイ。

 

『やや!?後ろから追い上げてきたのはアンバーシャダイ!!メジロファントムを交わしてアグネステスコに並ぶ!!』

 

 マケタクナイノ。

 マケナイ。スベテヲクツガエシテヤル。

 

 

 

 

 関係者席から、レースを眺めていた。

 ライネルはいつものように先頭で大逃げをすることはなく、中団やや後ろ側を走っている。

 

「作戦変更……?まぁ、ライネルのことだから、何か理由があるのだろうけど……」

 

 せめて、一言言って欲しかった。

 

『さぁ、先頭はアンバーシャダイ。続いてメジロファントムー』

 

 流れる実況が、3番手のウマ娘を語ろうとした時だった。

 突如として掛かる重圧。胃の中身が煮えたぐりそうなほど、重い。

 どうやらこの重圧を感じているのは私だけでなく、観客やアナウンサーにも伝わっているみたいだ。

 先ほどからかなり静かになっている。

 

「い、一体何が……」

 

 あたりに目を向けても、全員が固まっている。重圧で動けないでいる。

 だが、全員の視線の先は一致している。

 黒。黒いウマ娘。勝負服から見て、ライネルタキオン。

 勝負服はミホノブルボンよりももっと機械的なパーツが多く、腕部や胸部、脚部、背部に白色の金属が取り付けられていて、部位ごとの継ぎ目部分から赤色の光が出ているのが普段。

 だが、今はその赤色の濃さが違いすぎる。

 普段はピンクに近い赤だが、今は完全に紅に染まっている。

 そして、顔は黒色になっていた。表情が読み取れない。闇だ。完全に闇だ。

 

『ラ……ライネルタキオンが一気に追い上げてくる……!!メジロファントムを交わして、アンバーシャダイと並んだ……!!』

 

 ライネルより後ろにいたウマ娘達は怯えてライネルからかなり距離をとる。

 ライネルより前にいたウマ娘達は、なりふり構わず全力で逃げようとして、追い抜かれた。

 

『ライネルタキオン!!ライネルタキオンだ!!』

 

 アナウンサーが立ち直ったのか、実況が再開される。

 

『ライネルタキオン先頭に今ゴール!!有記念を制したのはライネルタキオン!!』

『も、物凄い走りでしたね……気迫がここまで届きましたよ』

 

 いや、気迫で済んでいい類じゃない。

 アレは、もはや別物。あんなの、私の手に……。

 

「少しいいだろうか」

 

 後ろから話しかけられて、振り返るとそこには、シンボリルドルフさんがいた。

 

「お尋ねしたい。あなたは、彼女のあの力を知っていたか?」

「い、いえ……あ、あんなの、知っていたら、私は今、ここにいません……」

 

 怖い。怖すぎる。あんなのと一緒にいたら、壊されてしまう。

 

「これで、4人目か……」

「はい……?」

「我々ウマ娘がレースの時に発動する領域のさらに上。覚醒を保有するウマ娘のことだ」

「覚醒……」

 

 そんなのがあるだなんて……。

 

「とりあえず、おめでとうございます。有記念、優勝ですね」

「え、あ、はい……ありがとう、ございます……」

「はっきり言って、今、彼女に必要なのは、君のような支えてくれる人物だ。早くいったほうがいい」

 

 支え……私に務まるかな……。

 

 

 

 

 

 

 カッタ。ヨカッタ。

 

 

 

 

 

 

「頭痛い……ふらつく……なぜ……」

 

 身体が熱い。肺が潰れてる。足が寒い。手が震える。胃が燃えてる。腸がダンスしてる。お腹痛い。

 なぜ、全力で走っただけで……。

 視界も暗転したし、何か、強い感情が押し寄せてきたし。

 倒れそう。横になりたい。でも、倒れたくない。動けるままでいるんだ。これだと、あの夢の時と同じになる。

 

「まだ、だ」

 

 踏ん張って、背筋を伸ばす。

 

「まだ、止まるわけには」

「止まれ、ライネル」

 

 あぁ……その声は……ルドルフ。君か。

 

「そこを……どいてくれないか?」

「無理だ。君をここから先に向かわせることは到底できない」

「そこを、どけ!!」

「駄目だ!!」

 

 くっ……叫んだせいで、また視界が……。

 

「今は休め、ライネル。第4の覚醒者よ」




感想等、お待ちしてますよ。はい。


お知らせ
ライネルタキオンなら外伝作品制作決定です!!アニメのように、ライネルタキオンの史実を元に制作してまいります。もう一つのライネルの物語、一体どうなるのか。
そして、裏話の件ですが、今現在、イラストを作成中で、イラストと共にpixivにて投稿しようと思います。

アグネスじゃないタキオンの裏話(設定とかそうゆう系の考え等)を別の場所で

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