「霊障、ですか……」
「みたいだね」
研究室のこたつ。そこに入っているアグネスタキオンの姿。
「タキオンさんの姿の霊は、あの時以来です」
「私もだよ。全く、どこから出てきたのやら」
本当だよ。マジでどこから?私の中からか?いるいないはわからないけど、目の前では実体化してる霊がいるしなぁ……。
「まぁ、問題は無いんじゃないか。たぶん」
「そうですけど……お友達も困惑してまして……」
「困惑するんだ」
何がだろうか。
「とりあえず、放置でいい気がする」
「ですね……」
考えても無駄なことは考えない。
「それで、まだ治らないのですか」
「ま、私の所為だからな」
「そもそも、退行化なんて、初めてだぞ。そんな薬作るわけがない」
そりゃそうだ。だって、君が作ったものではないからね。
「というか、何色だったんだ?その薬」
「赤色だね」
「赤色……?その色は普段、筋力増強とかの色にしているんだが……イレギュラーがあったのか、変質したのか」
違うよ。その色は普段、わかりやすいように君が付けている色。元の色じゃない。
「というより、そもそもそこに薬は置いていない。ライネル君。いったい誰の薬なんだ?」
「さぁてね」
「おい、逃げようとするな」
こちらを強く睨みつけてくるけど、そもそも私が薬を作れるとでも思ってるのか。
「その薬の製作者は誰だ」
「………」
「言え。でないと薬が作れない」
「はぁ……」
正直に言いますか。
「私だ」
「は?」
「私が作った。レシピは教えん」
「は?はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」
突然大声をあげたかと思えば、そのまま椅子を倒す勢いで立ち上がり、こちらへと詰め寄って来て、私の肩を掴んでユッサユッサと前後に揺らしてくる。
やめろやめろ今それされると小さくなった身体の三半規管が悲鳴を上げてあばばばばば。
「私でさえ作ることのできない薬を、ライネル君が!?あり得ない。あり得ない!!だが、こうやって実際に起きてしまっている!!」
興奮したアグネスがなんか言ってるが、何も聞こえない。揺れ酷い。酔う。吐きそう。
「私はこの一年走るのをやめたいんだから、それ相応の理由を作っておかないと走らされるんだかあばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」
「タキオンさん。ライネルさんが」
〜少々お待ちください〜
「うげぇ……地球が滅びそう……」
「どんな理由でそんなこといってるのですか……はぁ」
私という地球が滅びそうです。
「私5人分くらい吐いた……」
「どれだけですか」
「5人分……」
窓の枠って、こんなにも渦巻いてたっけ?
「酔い止め……酔い止め……」
「酔い止めは私に効かないよ。偽の薬だって知ってるから……うぇ……」
アグネスは今黙々となんかしてる。
「ところで……なんで今年は一切出ないつもりなんですか?」
「足の不調……」
「え!?ライネル、足が悪くなってるの!?」
トレーナーさんが食いついてきたけど、それどころじゃない。吐きそう。
〜再び少々お待ちください〜
「んで…………理由、だっけ…………?」
「明日でいいですから。もう休んでください、今日は」
んなバナナ。話させてくれまいか。
「……………」
「?」
夜。自室でベッドに座ってたら、ルドルフが帰ってきたのだが……固まっている。私を見て、固まっている。
口開いてるし、なんか、バックに宇宙が見えるし。
「ルドルフ?」
「あぁ……いや、すまない、何故か幻覚が見えてね……」
「どんな幻覚だ?」
窓の外を見つめて、どこか見てきたことのあるような顔で、ルドルフが言った。
「まるで、姉がいたかのような感じがしただけだよ」
「でも、いないのだろう?」
「あぁ。何故なんだろうな」
いや、そんなことより、身体が縮んでることにツッコミを入れてくれないのかい?
「ところで……それ、制服のサイズが余ってるんじゃないか?」
「余ってるねぇ」
「もしかして、制服が大きくなってしまったとかか?」
違うねぇ。逆だねぇ。ギャグじゃねぇ。
………はっ。そういうことか。
「なるほど」
「え、何がなるほどなんだライネル」
「いやいや。会長さんの素晴らしいギャグセンスの一端を垣間見ただけだ」
「???」
ルドルフが首傾げてる……。
………あれ??
「え、今のギャグじゃなかったの……?」
「え……ギャグとして受け取ったのか……?」
……………。
はい寝ようもう寝ようテッペンが近いんだあと5時間しかないもう寝る時間だ早く寝ようそうしよう!!。
「ちなみに……どういうギャグだと思ったんだ?」
「逆なこととギャグじゃないことをかけてるかと……」
「それ、かなり無理がないかい?」
「うぅ……今無理があると気がついたんだからさ……」
はっず。はっずい。こりゃもう超新星爆発級だわ。このままチリ一つ残さず消えそう。てか、消えたい。
「やはり、身体が縮んでいたのか」
「まぁね」
「トゥインクルシリーズはどうするんだ?」
「でない。出れなくなるようにするために、小さくしたんだから」
背中にひんやりとしたものが這いつくばるが、こんなもの慣れっこだ。
明らかにルドルフの視線。ルドルフのトレーナーに何かあった時とかにたまに食らうやつ。
「……それは、理由があるんだな?」
「もちろん。理由なしでこんなことする奴じゃないって、知ってるだろ?」
「あぁ。なら、理由を聞かせてくれ」
「理由はー」
その日。ルドルフは静かに私に笑いかけて、それ以降、私を悲しんでいるような目で見てくるようになった。主に足を見つめて。
少しの間、休載です。
外伝との話の掛け合わせがありますので、メインストーリーは停止です。
サブストーリーは新しく出来るかもしれません。
アグネスじゃないタキオンの裏話(設定とかそうゆう系の考え等)を別の場所で
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読みたい(リンクは貼ります)
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読みたくない
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ハーメルンの活動報告でしてほしい