アグネスじゃないタキオン   作:天津神

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Season Number
No.12/24


 

 

 季節は冬。12月。

 トレセン学園は冬の様相を醸し出し、自由時間に外に出ようとするウマ娘が減っていく。

 

「やぁ、トレーナー君。少し、気晴らしに外に出てみないか?」

「えぇ……まぁ、いいか。許可取ってくるから」

 

 研究室では、6人がそれぞれ過ごしていた。

 アグネスタキオンはトレーナーと研究を。今から出かけるみたいだが。

 マンハッタンカフェはトレーナーと静かにコーヒーを堪能している。心なしか、トレーナーを見つめている回数が多い気がするが。

 そして私は……。

 

「何やってるの?」

「トレーナーさんか。まぁ、トレーナーさんになら言ってもいいか。あ、ナラティブには絶対に言うなよ」

「わかった」

「サンタの衣装の準備」

「へぇ」

「妹に毎年あげているんだ。ま、今年は片付ける時に袋が少し破けたみたいで、今直してるところ」

 

 針片手だから、トレーナーさんがどのように覗き込んでいるのかは分かりにくい。チラッと黒髪が見えるから、上からなんだろうけど。

 

「ライネルは優しいんだね」

「姉らしいことが全くできないからな」

 

 できた妹を持つのも大変なんだ。

 

「さてと……終わったから、後はシャンプーを別の匂いにしとかないと……」

「そこまでこだわるんだ」

「じゃないとバレる」

「な、なるほど……」

 

 鼻いいからね、ナラティブは。

 

「それで、今日は12月24日じゃない」

「あぁ、そうだね」

「時間があったらでいいんだけど、少し出かけない?」

「なら早めに行こう。今すぐに。でも、8時までには帰るよ」

「わかった」

 

 研究室には私服を置いていない為、急いで自室に戻って、私服に着替え、必要書類を手にして、事務室前まで走った。

 

「失礼、この書類の確認を頼む」

「はいはい。今日は書類はいらないんだけどねぇ……」

 

 しまった。忘れていた。今日は特別に許可無しでも出れるんだった。

 

「ま、律儀なのはいいことだよ。ほら、行っておいで」

「ありがとうございます」

 

 

 

「すまない、トレーナーさん。少し遅れてしまった」

「大丈夫だよ」

 

 

 

 

「クリスマスだもんね……」

「ん?クリスマスだからどうしたんだ?」

 

 イルミネーション等で明るく照らされている夜の街中を2人で歩いてると、トレーナーさんがボソリと呟いた。

 

「いや、何でもないよ……うん」

「あー、配慮が足りなかった。すまない」

 

 目の前にはカップルばっかり。そうだよね、好きな人と一緒に過ごしたいよね。

 

「あ、いや、好きな人とかと一緒にいたいとかじゃないよ?単に、人の数が一気に多くなる上、リア充の比率がかなり高くなるから」

「一体リア充に何されたんだ……」

「なに、労働している中、目の前でイチャイチャされたりするのはかなりムカつくから」

「あーはいはい。さっさとケーキと飲み物買って、研究室に戻るよ」

 

 今いるところから近いところにあるケーキ屋を目指し、早めに帰路についた。

 

 

「あ、おかえりなさい」

 

 研究室に帰ると、カフェ達が待っていた。

 

「アグネスはまだか?」

「はい。もうすぐ帰ってきそうですが」

「お、噂をすれば影が差す、だな」

 

 話をしていると、アグネスタキオンが帰って来た。

 

「おや、全員お揃いかい?」

「だな」

「食べます?クッキーですが……」

「私のはチキンだな。丁度全員分トレーナー君が買ってたなぁ……」

「こうなるだろうと思って買っといたんだ」

「ほう。なら、トレーナーさん、みんなでパーティーといこうか」

 

 偶然、にしてはできすぎてる気がするが、そんなことを気にしていても仕方ない。

 ナラティブを電話で呼んで、全員で楽しんだ。

 

 

 

「いやー、楽しかったね」

「そうだね……」

 

 パーティーの後、ベランダでサンタの格好をしているライネルと話す。

 

「もうすぐ年末か〜」

「まぁ、確かにそうだな」

 

 1年の終わりが見えてくる。

 

「流石に2回目の有マ記念は簡単だった?」

「勿論。周りが強いことに違いはないが、簡単になったよ」

 

 1年前のは悲惨だったからね……。

 

「ま、来年もまた一緒に、暴れまわりましょうや」

「そうだね……」

 

 残る後1年の期限。もう、会えなくなるのかなぁ……それだと、寂しいなぁ……。

 

「あ、私はまだまだ現役やるつもりだよ。あと最低4年はね」

「え!?」

 

 嘘、そんなにも長くやるの!?

 

「だから、一緒についてきてくれないと、困っちゃうな〜」

「はいはい。一緒にいるから」

「んじゃ、これからも、よろしく」

 

 未だにコロコロと変わり続ける私の担当ウマ娘、ライネルタキオンは、いつも通りだった。

 

 

 

 

「さーて。メリクリだ」

「あぁ。窓は開いてるから」

「助かるよ」

 

 ミスターシービーが事前に窓の鍵を開けておいてくれたようだ。

 

「相変わらず、凄いね」

「伊達に姉をしている訳ではないからな」

 

 窓から部屋に入り、ナラティブの所にプレゼントを置く。

 

「んで、はい。シービーにも」

「おや、いいのかい?」

「こうして迷惑かけてるからね」

「そうかい。ま、ありがとうね」

 

 さてと……そろそろ戻りますか。

 

「窓から出るのかい?廊下からでいいと思うけど。鍵閉めとくし」

「助かる」

 

 さ、今年もライネルサンタの出番は終わり終わり。寝ますか。

 

「それじゃ、おやすみ」

「あぁ、おやすみ」




メリークリスマス。作者からのプレゼントです。
感想等お待ちしてます。

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