と、いうことで新章Narra Numberのスタートです!!
NN.1
世界は、とても狭かった。
家の中だけだった。
日の光を浴びることもなく、ただ、電気の灯りの下でしか、暮らすことができなかった。
1人寂しく、部屋の中に置かれていたおもちゃで遊ぶしかなかった。
絵本を読んでくれる人はいない。文字を教えてくれる人もいない。
ただ、部屋の外からは、騒がしい声が聞こえてくるのみ。
一度だけ会ったことのある姉も、ずっと部屋の中で塞ぎ込んでる。
ご飯を持ってくる人は、とても大きくて、怖かった。
ふと、扉が開く。
とても大きな人が入ってきて、私の頭を掴んで……。
「またか……」
悪夢。そう呼ぶにふさわしい夢。
寝ている間にかいた汗が、服を肌に引っ付けているその感覚が、あの時を思い出して、さらに気持ち悪くなる。
「時間か……」
けたたましく鳴り出した目覚まし時計に拳骨一発プレゼントして黙らせてから着替え出す。
「おや、ナラティブか」
「む、シンボリ会長」
シンボリと廊下で出会い、何気ない会話を試みる。姉からの命令である『交友関係を広めておきなさい』を実行中である。
「君は相変わらずその呼び方なんだな」
「何かおかしいか?」
「普通、ルドルフ会長、とかシンボリルドルフさん、とかになるからな」
「私が呼びたいように呼ぶ。それでいいだろ」
「まぁ、確かにそうだが……じゃあ、シリウスシンボリのことはどう呼んでるんだ?」
「獅子舞」
私の使う呼び方に頭を抱えるシンボリ。何がおかしいのだ?
「んで、私に何か用か?」
「いや、挨拶しとこうと思っただけさ」
「そうか。なら失礼する」
廊下の奥側から誰かの足音がするため、さっさと逃げるが吉という勘に従い、さっさと逃げることとする。
「あ、ナラティブ」
「ゲ」
「逃げるな!!たわけ!!」
「逃げるだろ。それと、その言葉はトレーナーにしか言わないはずではなかったのか」
突如廊下の角から現れたエアグルーヴに背を向けて駆け出す。
「………えっと……まぁ、気をつけて、な……」
勢いに取り残されたシンボリがなんか言ってるが、よく聞こえなかった。
「昼まで逃げ続けるとは……」
「いいトレーニングだった……」
食堂でカツ丼を頼んで、席に着く。
今日は他が空いてなかったので、シンボリとエアグルーヴとナリタブライアンと同じ席についている。エアグルーヴは走り疲れたのかまだ顔が青い。
「ところで、何があったんだ?」
「肉くれ」
「あいよ。まぁ、あった事はとても些細な事だ」
ブライアンにカツを一切れプレゼントしながら、シンボリの質問に答える。
「普段通り、エアグルーヴが担当トレーナーを叱っているところに出くわしてな。それを見ていたら、つい心の声が飛び出してな」
「ほぅ。それで、なんて言ったんだい?」
「『学園の中でトレーナーを尻の下に敷くのはやめろ』ってな」
「だから貴様、私はトレーナーを尻の下に敷いてないと言ってるだろ!!」
「ほら、否定するだろ?そういうことだ」
肩に置かれたエアグルーヴの手を払い除けながらシンボリを真っ直ぐ見つめる。
そして、アイコンタクトで『失礼する』と送る。
「?」
わかってないが……まぁいいか。
「おい、逃げるな」
「拒否する」
さて、午後のトレーニングと行こうか。
「んで、ここに隠れに来たのか」
「そうだ。邪魔をするぞ」
「手は出さないでくれよ。あと、暴れないでほしい。危ないからな」
研究室の机の下に籠りながら、アグネスタキオンと軽い挨拶程度に暇潰しをする。
「多分、アイツはここには来ないだろう」
「いや、来るね。彼女はここに来ても君の姉がいないから、怒られる心配なく来るさ」
なに、そうなのか?
「おい、アグネス」
「ほら来た」
「ここにナラティブは来なかったか?」
「いるさ。そこの机の下に」
「チッ……」
裏切ったな、アグネス!!
「もう逃げられんぞ!!」
またしばらくの間逃げ続け、行き止まりに追い込まれてしまった。
壁には窓が無く、外に逃げるという手も使えない。壁は壊せないからな。
「大人しく捕まれ」
「嫌だ、と言ったら?」
「無理矢理にでも捕まえる!!」
エアグルーヴがダッシュで迫ってくる。
残念だな。この壁に窓がないからできることがあるということを知らないとは。
壁に向かって走る。勢いをつけて、壁に向かって飛び、天井近くまで上がる。
「なっ……!?」
勢いそのまま、壁を押し、エアグルーヴの頭を飛び越えて、走る。
「残念だったな。じゃあな」
「待て!!」
ま、窓が無かったらこんなもんよ。
姉に見つかったら説教ものだけどな。今はいないから問題ない。
「失礼する!!」
扉を勢いよく開いて、中に急いで入る。
「ナラティブ!?ど、どうしたの?」
「少し隠れさせてくれ!!」
トレーナーの足元の空間を無理やりこじ開けて、そこに隠れる。
『どこ行った、ナラティブ!!』
廊下を走るエアグルーヴの叫びが通り過ぎていく。
「よし」
「いや、“よし”じゃないからね?」
トレーナーからツッコミをもらいつつも、隠れて過ごすことができた。
「後で叱られときなー?」
「拒否する。それで、トレーニングを知りたいのだが」
トレーナーの机の上を覗き込みながら、尋ねる。
机の上は紙の束が新たな平面を作り出している。
トレーナーは「確かここら辺にー」と言いながら紙を引っ張り出そうとしている。
ふと、机の端の方に視線が行き、そこに置いてある写真立てに納められた、写真を見る。
その写真は、あの時の写真だ。
アグネスタキオンやマンハッタンカフェ、そのトレーナーと普段発光している筈の人と恥ずかしそうな顔をしたトレーナーと、肩に腕を回された勢いで少しバランスを崩している私と、その肩に腕を回した張本人である、私の姉の写真。有馬記念を見事に勝利したあの時に、一緒に撮影されたもの。
「どうしたの?」
「いや、あれから3ヶ月が経ったのだな、と思って。それで、トレーニングは?」
「はい、これ。まずは反省文ね」
渡された紙の量に空を仰ぎながら、心にあることを誓う。
必ず、姉に勝ってみせる。姉が出た全てのレースで、姉を超えてやる。
ライネルナラティブのヒミツ①
実は、トレーニング直後はカツ丼を食べる。
アグネスじゃないタキオンの裏話(設定とかそうゆう系の考え等)を別の場所で
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ハーメルンの活動報告でしてほしい