アグネスじゃないタキオン   作:天津神

5 / 50
2021/10/22 「馬身」を全て「バ身」に変更しました


No.5

「タキオンさん、珍しいですね」

「なに、好奇心が湧いただけさ」

 

 さぁ、見せておくれよ、もう一人の私。いや、ライネルタキオン。

 君は、どんな走りをするんだい?

 

 

『さぁ、やってまいりました。ジュニア級メイクデビュー戦。ここで、新たな伝説の卵が生まれてくるか』

『今まで、沢山の強豪ウマ娘がここから走り始めましたからね。とても楽しみです』

 

 京都競バ場。スタンドには、多くの人で埋め尽くされ、パドックが始まるのを待っている。

 そして、その様子を私は覗いていた。

 

『さぁ、出走するウマ娘の紹介です』

 

 あぁ……始まった……。

 

 

『1枠1番……あ、あれ?』

『なかなか出てきませんね……』

『職員に腕を引かれて出てきました。1枠1番、ライネルタキオン。1番人気です』

『これがプレッシャーになってないといいですけどね』

 

 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!恥ずかしい……なんで1番人気なんだよぉ〜……。

 ま、仕方ないけど……この格好も恥ずかしい……。なんで体操服なのさ…。

 

『さて次は5番人気、2枠2番サクラチラズ』

 

「気にしてても、しょうがない、か」

 

 さっさとゲート入りして、走りたい。

 そう思ってた。

 

「そこのあなた!!少しいいですか!?」

 

 どこかの学級委員長を彷彿とさせるハツラツな声。

 

「どうも!!私はサクラチラズ!!」

「はぁ……ライネルタキオンです」

 

 なんだろう。日本の太陽の現人神を思い出す熱さ。季節間違えてませんか?

 

「私は、あなたに勝ちます!!絶対に!!なんたって、副委員長ですから!!」

「いや、ちゃんとした理由じゃないじゃん」

「副委員長、ですから!!」

「人の話は聞こうね?」

「副委員長ですから!!」

「ダメだ。人の話を聞かない系だ、この子」

 

 暑苦しい。さっさと行くか。

 

「ちょちょ!?無視ですか!?」

 

 そちらが無視したからね。

 

「このサクラチラズ!!奮進してまいりますよ〜!!」

 

 

 

『各ウマ娘のゲートイン、完了です』

『3番、少し落ち着かない様子』

『さぁ、ジュニア級メイクデビュー戦、京都、芝、2000m……今スタートです』

『先頭は、1番ライネルタキオン。これは大逃げか。後方と差を大きく開いていく』

『5バ身後ろ、3番クェルクルー、5番サクラチラズ。先頭にしがみつこうとしてます』

 

 え?しがみつこうと……?逃げよ。

 

『おおっと!?先頭、スピードを上げた!!最後まで持つのか!?』

『これはかかってますね。冷静になれるといいのですが』

『その7バ身後方に5番サクラチラズ。6番カトリセーメン。3番はその1バ身後ろ』

『ハイペースですね』

『未だ先頭は変わらず1番ライネルタキオン』

『後方からは5番サクラチラズ。その後ろに6番カトリセーメン』

 

 もうかなり離したでしょ。いや、まだ足りなさそうなのかな?

 

『ライネルタキオン、後方が気になるのか』

『落ち着けてませんね。このまま先頭だといいのですが』

 

 放送!!距離を教えてくれやぁ!!(突然の関西風)

 もういい。かっとばす。

 

『おっと、第2コーナーでライネルタキオンさらに仕掛けた!!後方を3バ身4バ身とどんどん引き離していく!!』

 

 そうだ。それでいいんだ。

 やはり、ウマ娘の耳はいいねぇ……遠くの音を簡単に拾う。

 

『さぁ、残り500m。先頭はライネルタキオン。後方とは10バ身も離れている。これは大逃げか?』

 

 もっとだ。もっと……速さの終着点はここじゃないはずだ。

 心を、燃やせ、私!!ライネルっ!!

 なんか、どっかの次回予告みたいだな……はっず。

 

『おや、ライネルタキオン、ペースダウンか?』

『体力切れですかね』

 

 あぁ、もう!!変な事に思考シフトしたから速度落ちたぁぁ!!

 

『おおっと!?5番サクラチラズ差をどんどん詰めていく!』

 

 ふぅん……。えっ!?やばい、やばい、やばたにえん。

 

「こんなところで……負けてられるかぁ!!」

 

 叫ぶ、声を上げる。

 回せ、回せ!!限界まで、回せ!!

 どんな悪路も、走ってきたんだ!!どんな相手に対しても、冷静に走ってきたんだ!!

 だから、だから……こんなところで!!

 意気込むと同時に、目の前が白くなる。

 ははは……なにホワイトアウトしようとしてるんだ。見るべきは、ゴールだろう、ライネル!!

 

『残り300m!!先頭は変わらずライネルタキオン!!後方とは……15バ身差!!完全に逃げ切った!!もう誰も彼女に追いつけない!!』

 

 あと、少し……最後まで、油断しては、ダメ。

 油断と慢心が、最大の敵だ。

 

『ライネルタキオン!!今先頭でゴール!!後方を大きく突き放しました!!』

 

 終わった……の………?

 

「はぁ……はぁ……逃げ切っ………た……?」

 

 頭が回らない。酸欠だ。

 

「ライネルー!!」

 

 えっと、この声は……誰だったかなぁ……。

 

「ちょっ……大丈夫!?ひどい汗よ!!」

「んぁ……トレーナーさん、かい……?」

「ほら、タオル!!早く汗拭いて!」

「あとは……お願……い……」

 




スキル発動拒否!!
感想等、お待ちしてます……

ライネルタキオンの同室は

  • シンボリルドルフ
  • サクラバクシンオー
  • ツインターボ
  • ナカヤマフェスタ
  • メジロアルダン
  • サクラチヨノオー
  • シリウスシンボリ
  • ミスターシービー

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。