アグネスじゃないタキオン   作:天津神

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No.9

 

『えっほ、えっほ』

「どうだい、妹の様子は」

「んー……かなりいい方だけど……あの年齢であれだと、足の負担が少しきついかな」

「やはり、か」

 

 ターフの上で、ナラティブが精一杯走っている。

 他の練習しているウマ娘が隣を駆けて行くと、ナラティブの顔がどんどん変わっていく。

 負けず嫌いだなぁ……。

 

「あーそうそう。ホープフルステークスのメンバー。決まったって」

「ほぅ。後で見せてくれるかい?」

「もちろん」

 

 ホープフルステークス。初めて、アグネスタキオンと走ることになる。

 はっきり言って、怖い。

 アグネスタキオンが怖いのではなく、勝負して、決着がつくことが怖い。

 仲がいいのに、どうしても不安が湧き上がる。

 もし、もし、私が勝って、疎遠になってしまったら……。

 

「………ねぇ、ライネル」

「ん?」

「悩み、いつでも聞くよ?」

 

 どうやら、顔に出ていたみたいだ。

 

「なんでもないさ」

「そう?辛かったら、言ってね」

「はいはい」

 

 全く。心配性なんだな。

 

「さてと……私は私でやることがあるから失礼するよ」

「りょーかーい」

 

 

「やぁ、ライネル君」

 

 ふとした思いで廊下を歩いていると、話しかけられた。

 

「アグネスか」

「あぁ。君に、言っておきたいことがあってねぇ……」

 

 アグネス、お前もか?

 お前も、私に『気をつけろ』とでもいうのか?

 

「カフェにも言われたよ。『気をつけろ』って」

「ほぅ。ま、私は違う言葉なのだがねぇ……ホープフルステークス。そこで、私は君に3バ身以上離して勝つ」

 

 宣戦布告、か。いいだろう、受けて立つ。

 

「ほぅ、面白い。やってみせろよ。できなかったら、私が3バ身離して勝つから」

「それはそれで困るなぁ」

「なに、皐月賞が遠くなるだけだろう?何も問題はないはずだ」

「いや、そっちじゃなくて……」

 

 あー、これは何かやらかしたな?

 ま、手伝う気はさらさらない。

 

「ま、勝つのは私だ」

「いや、私だね」

 

 額がぶつかりそうなほど、顔を近づける。

 薬品の匂いがする……アルコールのも。

 

「真剣に勝負だ」

「いいだろう。手は抜かん」

 

 

 

 実けん室で来る日の為に調合している時、カフェがトレーナーを携えて入って来た。

 

「あれ、今日は来てないんですか……?」

「あぁ。来てないみたいだ。廊下では会ったのだけどねぇ……」

「ん?もしかして、ライネルタキオンのことか?」

「そうだよ、トレーナー君。普段彼女はここにいるんだが……」

 

 私の、私のトレーナーが疑問に思ったみたいだ。

 

「いや、最近何か、鬼気迫るものでもあるんじゃないかって程、なんか、調子が変みたいでな……トレーナー同士で話した時に、どこにいるか教えてほしい、だそうだ」

「へぇ……鬼気迫る、ねぇ……後でやんわりと聞いておくよ」

「いえ、タキオンさんの手は必要ないです。私のお友達が教えてくれました……」

「そうかい……それで、彼女は今どこに?」

「お花を摘んでます」

 

 …………なるほどな。

 あんまり触れないでおこう。

 トレーナー君達はよくわかってないみたいだが……。




次回は、時間をいきなり飛ばしてホープフルステークスです!!
感想等お待ちしております。

(……実はこの何気ない練習の日々を書くのがとても難しくて長々と書くのを諦めた、とは言えない。書いちゃうけど)

ライネルタキオンを生徒会メンバーに

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