真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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皆さんこんばんにちわ。今期アニメの続きが毎日待ち遠しい作者です。

今回も御前試合の続きとなります。本編では登場しなかったオニュクス王国騎士団に焦点を当てていければなと思います。

では!


御前試合(中編)

――――interlude――――

 

私は無意味だと知りながら剣を振るう。この戦いは座興と、古びた者達の処刑場に過ぎない。

 

そんなことが分かっていながら一回戦の相手を倒したのはひとえに、僅かな希望の光が見えたからだった。

 

(少年少女が多いというのにこの濃密な戦い。陛下はさぞ喜んでおられるだろうな)

 

私には陛下の策略を聞かされていない。ただ、この作戦が無事終わったなら騎士団を解散、すべて解雇すると一方的に通達されたのだ。

 

「団長、俺たちどうすれば・・・」

 

顔を伏せる部下にかける言葉が見当たらない。

 

これまで私達は身命を賭して王国を守ってきた。団員の練度も申し分ない。まだまだ王国を守って行く。そう思っていたのに――――

 

私は当然、王に進言した。なぜ今になって解雇処分なのか。これから王国をどうやって守って行くと言うのか。

 

王は言った。

 

『お前たちなぞ、歯牙にもかけぬ戦力が手に入る。そして全ての国が我が手中に収まるのだ。無駄なものは切り捨てるべきであろう?』

 

その一言で私の思考は真っ白になった。戦力が手に入る?全ての国を手中に収める?何と愚かな。先代オニュクス王も奇抜な方だったが、あんな野心にとらわれた方ではなかった。

 

結局、私達は川神の人間の実力を推し量る捨て駒とされてしまった。

 

「考え事か?」

 

思考する間に目の前にいた少女が語りかけて来た。

 

「・・・相対しておきながらすまぬ。色々とあってな」

 

「いいさ。あの王様、邪悪だからな」

 

「・・・!」

 

言葉少なく語る少女は的を射ていた。

 

「でも、この舞台だけは違う。どんなに上の人が酷かろうとも、ここには勝利か敗北しかない」

 

「そう、だな。いや年端も行かぬ少女に諭されてしまった。そなた、名前は?」

 

「大友ぞ!いずれは衛宮だが・・・」

 

「その歳で既に結婚済みか。なんと珍しいこともあったものだ」

 

ガシャン、と互いに盾と大筒を構える。

 

「大友嬢。貴女に敬意を表して、本気で行かせてもらう」

 

「もちろんだ!大友も本気で行くぞ!」

 

「いざ」

 

「勝負!」

 

開始の合図と共にぶつかり合った。

 

 

――――interlude out――――

 

 

「あの騎士団長、強いな」

 

「ああ。焔が完全に手玉に取られてる」

 

武器の形状から砲撃を警戒された動きで、焔は上手く戦えずにいた。

 

「このまま押し切られる・・・わきゃねぇよな?」

 

「焔なら一矢報いるさ」

 

「なんだか大友さんが負けるような言い草だな」

 

大和がそんな風に言うと、

 

「あの騎士団長、川神院の師範代レベルだぞ」

 

「「「ええ!?」」」

 

と士郎が答え、驚きに満ちた声が上がる。

 

「まてまて。マジでルー先生レベルなのか?」

 

「一応な。ルー師範代は得意な拳法を使おうとしないから、あくまで平常時と同じならだけど」

 

「へぇー。ルー先生も得意な拳法あるんか」

 

「考えて見りゃ当たり前の事だよな。普段からつえーから意識してなかったけどよ」

 

「焔ちゃん・・・」

 

桜は祈るように目を閉じた。

 

 

 

ガン!と強烈な音を立てて互いが弾かれる。

 

「はぁ、はぁ・・・」

 

「見事だ大友嬢。私はこんななりだが、武芸には自信を持っているのだが」

 

騎士団長も少しばかり息を乱しながら言う。

 

常に焔の大筒を警戒した動きは体に負担をかけていたのだろう。全く無事というわけでもなかった。

 

「だがその様子では次が最後だろう。貴女に敬意を表すると言った以上、最後まで本気で行かせていただく」

 

「・・・ッ」

 

一瞬。ほんの一瞬焔の態勢が崩れた。無理もない。彼女の大筒は重量級の武器だ。それを疲労した体で支えるのは並大抵の事ではない。

 

だが、本気でいくと言った以上騎士団長はその隙を見逃さず攻めた。

 

「これで――――!」

 

終り。疲労した彼女は大筒を構えられず・・・

 

「クックック・・・そう来ると思っていたーッ!!」

 

「!?」

 

そうは問屋が卸さなかった。

 

「大友嬢・・・!?」

 

焔の新調した大筒に沢山のブルーのラインが走り、

 

ガキン!

 

大筒が一際長く展開した。

 

「バカな!この距離で砲撃などすれば――――!」

 

「織り込み済みよ!大友の本気、とくと味わえい!!」

 

騎士団長は咄嗟に盾を構えた。盾が間に合ったのは偶然と言っていい。そのくらい絶妙なタイミングだった。

 

(盾が来た!だが大友の国崩しは・・・いや、この焔砲は――――)

 

ギイイイイン!という鉄が振動する音と共に、

 

「焔砲!発射ッ!!!」

 

ズドン!という腹の底に響く轟音を立てて発射されたそれは、

 

「ぐぬぬぬぬッ!」

 

盾をかまえた騎士団長を押し込み、

 

ドカン!!!と盛大に大爆発した。

 

『強力な衝突力と爆発・・・騎士団長、ミスター・モードと言えど立っていられますまい』

 

『現場確認急いで。こういうのは心臓に悪いね、全く・・・』

 

『事前申請はありました。ありましたが・・・これほどとは・・・』

 

ゴゴゴゴ・・・とまだ遠雷の名残が響く中、舞台では

 

「クッ!!」

 

ガラン!と盾だったものが転がった。騎士団長――――モードは膝をつき盾を持っていた手を摩る。

 

「折れている・・・な」

 

盾を持っていた右手は、青くなり爆発で焼け酷い有様だった。

 

幸いにも比較的軽いやけどだが、もう盾を持つことは出来ない。

 

相対する少女を見ると、うつ伏せに倒れていた。あの爆発を至近距離で受けたのだそれも――――

 

「うぬぬぬ・・・ここ一番だったのだがな・・・」

 

「まさか・・・あれほどの自爆で立ち上がれるのか・・・!?」

 

「言ったろう。織り込み済みだとな。だが、大友はここで退場だ。次の試合に出るほど余裕はない」

 

「何という・・・」

 

何という少女か。聞けばまだまだ学生の身分だというのにあの根性。

 

是非騎士団にも教授してほしいものだ。

 

それはさておき、自分もここで退場だろうが、

 

チキ。

 

「降参してもらおうか」

 

「構わぬ。・・・まだやる気なのか?」

 

「・・・。」

 

少女の問いにモードは答えなかった。

 

「まぁいいさ。大友に勝ったのだ。好きにするがいい!」

 

そう言って彼女は仰向けに倒れた。

 

「ギブアープ」

 

その言葉を皮切りにどっと声援が湧く。

 

『大友焔のギブアップにより、オニュクス王国騎士団長・モード氏の勝利だ!』

 

『激しい戦いとなりましたが今回はオニュクス王国の勝利となりましたな』

 

『というか、おじさんまだ耳がキーンとしてるんだけどあれ、殺傷力高くない?』

 

『ではVTRで確認してみましょう』

 

チ、チ、チと焔が放った砲弾が発射される姿を見る。

 

『新しく弾が込められていますが、大会規定に則った通常の砲弾のようです』

 

『だがあの砲塔が展開されてからとんでもない威力になってるな』

 

『モード氏の怪我も爆発というより、その衝突力に堪え切れなかった、という事でしょうね』

 

『という事でこちらでも判定が出た。大友焔はルール違反をしていない。いいか。していない(・・・)からな』

 

パチパチパチパチと拍手が送られる。

 

第二試合次のカードは・・・

 

第一会場、椎名京VSオニュクス王国兵

 

第二会場、尼子晴VSオニュクス王国副団長

 

「今度は副団長か・・・」

 

「尼子・・・さん?大丈夫かなぁ・・・」

 

「晴はああ見えて結構強いんだぞ」

 

「そ、そうなのか?」

 

士郎の言葉に驚く大和。

 

「あの子・・・お姉さんの方ね」

 

「よくわかったな」

 

「同じ女性ですから」

 

「そう言えばバゼットはこの戦いに参加しなかったのか?」

 

士郎が疑問を口にすると、

 

「まだ戦力分析が終わってないからですって」

 

「戦力分析?バゼットにしては消極的だな」

 

「なんでも、川神には強者の気配が多数するからって言ってました」

 

「ふむ・・・」

 

確かに、川神の住人は異常に強いものが多い。いくら元封印指定執行者とはいえ川神鉄心やヒュームといった存在に圧勝できるかと言えば未知数としかいえない。

 

「参加はしないけど来てはいるんじゃないかしら」

 

「確かに戦力分析には――――」

 

そこまで言って士郎は違和感を覚えた。

 

「士郎?」

 

(戦力分析・・・そうだ。オニュクス王国の目的が戦力分析だとしたら・・・)

 

士郎はようやくオニュクス王国の狙いが見えてきたような気がした。

 

「だとしたら全て繋がるな」

 

「先輩?」

 

「いや、こっちの話だ。それにしても副団長か。あの人も強そうだな」

 

「そうですね。団長が負傷して興奮状態にあるのが些かいただけませんが」

 

「マルギッテさんもそう思う?」

 

「俺様もなんだか平常心ではねぇ気がする。尼子ちゃん、本当に大丈夫か?」

 

「大丈夫だ。いい戦いをすると思う」

 

士郎は一滴の不安を感じながら、それでも彼女を信じた。

 

(晴、頑張れ!)

 

舞台では。

 

「副団長さん、だっけそんなに怒り狂ってると手元が狂うよ」

 

「・・・わかっている。しかし私達にも憤る理由があるのだ」

 

「そっか。じゃあこれ以上は聞かない。勝負と行こうか」

 

開始の合図がなる。

 

一瞬間合いを詰めかけた副団長だが、途中で後退した。

 

「なんだ・・・今のは」

 

「へぇ。そんな状態でもよく見てるんだね」

 

彼が後退したのは何故か。どういうからくりかは分からないが、強烈な蹴りが自分に炸裂するのが見えた。

 

「ほら、どんどん行くよ」

 

「くッ・・・!?」

 

ガシャンと盾を構え、防御の構えを取る副団長。

 

「あれ、何やってるんだ?」

 

「さっきから対戦相手の人フラフラと・・・」

 

「殺気だよ」

 

士郎が答えた。

 

「殺気って・・・よく姉さんがキレた時とかに使うあれか?」

 

「そうだ。晴は副団長が動く前に強烈な殺気を叩きつけて幻惑を見せてるんだ」

 

「幻惑?じゃああの人は・・・」

 

「尼子さんの攻撃を防いだり躱したりしてるつもりなのか」

 

「つもり、じゃない。避けないと本当にそこに攻撃が飛んでくる。あれは中々に厄介だぞ」

 

「晴は気配の使い方が巧かったですからね」

 

「ていうことは・・・」

 

「俺が教えた」

 

「「「・・・。」」」

 

どうしてこう大体の事が士郎に繋がるのかなぁと思う一同であった。

 

「京の方は?」

 

「うまい具合に兵隊さんが立ち回ってるけど・・・」

 

ドゴーン!

 

『勝者!椎名京!!』

 

またもや爆弾を括り付けた矢の一撃で退場することになってしまった。

 

「・・・やっぱ京強くね?」

 

「元から強いけど異様な迫力があるね」

 

「・・・。」

 

士郎は言わない。何故か京がいつもより強化されていることを。

 

「まぁ賞金、大和とのハネムーンって言ってたからな」

 

「そうだね。京らしいや」

 

「・・・。」

 

そんなのんきな会話をしている仲間達にため息を吐き士郎は試合を見る。

 

「くッ・・・!」

 

「上手だね。うまく躱しては防いでる。これは困ったな」

 

「はっは・・・厄介だが見えている!易々と――――」

 

ドガン!

 

「ぐあっ!?」

 

強烈な晴の蹴りで副団長が吹き飛ばされた。

 

「んー、油断大敵。私が油断を誘うためにあえて見せてたとは考えなかったの?」

 

「ぐう・・・見せられていた、か・・・そこまで余裕があったとは」

 

「余裕と言うか、虚実混ぜてただけだけどね。それよりどうする?今の、結構痛手だと思うけど」

 

「確かに痛手だ。一撃でこうも下されるとは考えもしなかった」

 

だが、と副団長は立ち上がる。

 

「モード団長は立ち上がった。ならば私も立ち上がらねば」

 

そう言って姿勢を低く構えを取る。

 

「その獣のような構え。神速で相手の急所を狙う技と見た」

 

「バレているか・・・だが防げるかどうかは分からない」

 

「うん。そうだね。だから私も切り札を切るよ」

 

晴は両手をポケットに入れた。

 

「あれは・・・」

 

「無防備に見えるけど・・・」

 

「誘いだな」

 

男子陣はたらりと冷や汗をかいた。なぜなら・・・

 

「いざ!」

 

「・・・。」

 

ドン!と副団長の姿が消える。中々の俊足だ。壁越え間際まで来ているかもしれない。

 

しかし、

 

「っと」

 

「なっ・・・」

 

晴の喉笛を狙った一撃は。いつの間にか自分の喉笛に当てられた拳で止められた。

 

「なんで止めたか、わかるよね?あのまま突っ込んできたら潰れてるよ」

 

「なぜ・・・手はポケットに・・・」

 

「ああ、“居合”だよ。見えなかったでしょ?結構苦労したんだよ、これ」

 

「・・・。」

 

「まだ、やる?」

 

「・・・ギブアップだ」

 

ワアアアア!!と歓声の声が上がる。高レベルな戦いに皆興奮を隠しきれないのだろう。

 

『オニュクス王国副団長、アンセルム選手のギブアップにより決着!』

 

『鮮やかな・・・居合?おじさんちょっと分からなかったんだけど・・・』

 

『ポケットを鞘、拳を刀に見立てた、“居合拳”でしょうな。中国武術などに登場するマイナーな技です』

 

『へぇ。アンセルム選手の剣より先に喉に当たってるあたり、相当な速さですよね』

 

『一見不利に見えますが、居合拳は手をポケットから抜くのではなく、体捌きによって抜くので速さは劣らない。よくて五分ですな』

 

『あの歳でよくもまぁそこまで体得したもんだね。怖い怖い』

 

そんなコメントで締めくくられた。

 

「・・・あれも士郎が教えたんか?」

 

「ああ。決定打になる技が無いからって言われてな。先の殺気の幻惑との相性もいいし基礎は教えて後はレオニダスの鍛錬でひたすら磨いた感じだな」

 

「ハルの奴、もうお姉さんに逆らえないんじゃ・・・」

 

「まぁ仲良し姉弟だから大丈夫だろ」

 

そんなことを士郎が言っている時。

 

「ガタガタガタ・・・」

 

「尼子弟も大変やなぁ」

 

「同情するぞ。あんな姉がいたとあれば・・・」

 

「ダ、ダイジョウブ・・・姉さんよめにいったから」

 

「それにしたって全く会わない訳じゃないんだから気を付けるんだぜ?」

 

「ガタガタガタ・・・」

 

そんな会話があったとさ。

 

 

 

 

 

 

「次の試合は・・・」

 

第一会場、源義経VS但馬景紀

 

第二会場、武蔵坊弁慶VS那須与一

 

「いやだああああ!!?」

 

控室から大きな声が響いてくる。

 

『与一選手出てきませんね・・・』

 

『なんでも、弁慶との戦いに否を突き付けてるらしい。ま、普段から色々されてるからね』

 

『厳正なくじ引きで決まったトーナメントなのですが』

 

「お、俺はやらない!死んでも姉御なんか相手にするか!!」

 

「困りましたね・・・このままですと弁慶選手の不戦勝となりますがいいのですか?」

 

「いい!大いに結構!!俺は一回戦止まりのつまんない奴だ!」

 

ひしっ!と柱に引っ付いて離れない与一。仕方なしと大会運営委員が弁慶の不戦勝を告げに行こうとした時だった。

 

「すみませーん。こっちに私の対戦相手がいるはずなんですけど」

 

「ヒィイ!?」

 

やって来たのは何を隠そう、弁慶だった。

 

「あ、ああ・・・しかし与一君は君との戦いを拒否していてね・・・」

 

「そんなこったろうと思った。おい与一。源氏の恥を晒すんじゃないよ」

 

「あ、姉御はいいだろう!?楽して次に進めるんだから!」

 

「楽はしたいけど、そう言う問題じゃない。ほら行くよ」

 

「いやだあああ!!?」

 

結局与一は弁慶によって舞台まで引きずられて行くのであった。

 

弓矢は手放さないあたり、自己防衛本能が発動しているようだった。

 

「む。与一殿が現れましたぞ」

 

「弁慶に引きずられて・・・本人は拒否してるっぽいが」

 

「だらしない子ね。ここまで来たら腹くくりなさいよ」

 

「と、遠坂さん、あまり与一を責めないでやってくれ」

 

「直江君、与一君の肩もつの?」

 

「そうじゃないけど・・・弁慶にも怖い所があってだな・・・」

 

「いでででで!キマってる!キマってるから!チョークスリーパーはやめ・・・」

 

得意の弓矢で応戦していた与一だったが結局弁慶に掴まり、意識を飛ばされた。

 

『勝者、武蔵坊弁慶!』

 

『矢を見切ってからのキレイなチョークスリーパーだったな』

 

『危険な技ですが・・・あ、喝を入れられて意識を取り戻したようです』

 

『おじさんとしては刀も大砲も大差ない気がするけどね・・・』

 

『何はともあれ二回戦も残り一試合となりますが・・・』

 

「勝者!大村ヨシツグ!」

 

『こちらも順当に勝ち進んでいるようですな』

 

『今の試合で次の試合が決まったぞ』

 

残るは、一子、クリス、京、義経、弁慶、晴、鉢屋、ヨシツグ、田中、モード

 

モードは負傷しているため、棄権を提案されたが本人は断固拒否。その為応急手当のみ行い次の試合に出るようだった。

 

「あの騎士団長、大丈夫なんか?」

 

「腕折れてるって話だけど・・・」

 

「何があの人をそこまで駆り立てるのでしょうか・・・」

 

「・・・。」

 

一方ならぬ思いがあるように見えた士郎は、

 

『あずみ』

 

『!?ああ、念話、だっけか・・・なんだ?』

 

『向こうの騎士団長、何か抱えてると見える。探ってくれないか?』

 

『いいけど・・・期待すんなよ。他国の問題だ、おいそれとは干渉できねぇ』

 

『構わない。あそこまで躍起になるのには理由があるはずだ。この情報戦に勝つ一助になるかもしれない』

 

『わあったよ。分かったから、変な気起こすんじゃねぇぞ』

 

『あずみを信頼してる。大丈夫さ』

 

『・・・。』

 

『あずみ?』

 

急に無言になったあずみに士郎は再度問いかけるが、

 

『なんでもねぇ。ったくうちの旦那は――――』

 

ぶつぶつと文句を垂れ流すあずみに苦笑を浮かべて、

 

『頼んだぞ』

 

『分かった』

 

そう言って念話を切った。

 

『それじゃあ対戦カードを発表するぞ』

 

試合自体は順調に進んでいるのだった。

 

 

――――interlude――――

 

 

モードの控室にて。

 

「無茶です団長!片腕が折れているというのに・・・!」

 

「そうです!陛下の思惑は分かりませんが、自分達はやれることをやり切ったはずです!どうか・・・!」

 

部下たちがモードの続投に異議を唱える。だが、

 

「まだだ。諦めるわけにはいかん。我々にはまだ利用価値があるのだと、陛下に示さねば・・・」

 

「わかります!分かりますが・・・もう・・・!」

 

部下たちは涙を流してモードを止める。騎士団長は解雇処分となる兵達を救いたいのだ。

 

出なければ彼のような思慮深い人物がこんな無茶をするとは思えない。

 

「さぁ試合だ。ゆかねば・・・」

 

「まった。話は聞かせてもらったぜ」

 

あずみが入場口を塞ぐように現れた。

 

「・・・どいては、もらえないかね」

 

「退いてやってもいい。けど、まずはお前らの抱えてるもんを話しな。本当なら棄権扱いなんだ。そのくらいはしてもいいと思うんだけどな?」

 

「・・・。」

 

「団長・・・」

 

「・・・わかった。お話ししましょう」

 

そうして明かされたのは騎士団の突然の解雇と何やら悪事を王が企んでいるという事だった。

 

「なるほどな。(士郎の予想は当たりか)で?お前はその怪我でどうすると?」

 

「陛下に我らの力を認めさせる」

 

「認めるわきゃねぇだろ。あのふてぶてしい面を視りゃわかるぜ。お前達は捨て駒だ。川神の力量を図るな」

 

「しかし・・・」

 

「まぁまて。お前らの王様が何か企んでるのは確定として・・・お前ら、九鬼に下るつもりはねぇか?」

 

「なに・・・?」

 

あずみの言葉に険しい顔をするモード。

 

「それはそちらの軍門に下れと。祖国を裏切れと、そういう事か?」

 

ギシッと空気が張りつめる。だがあずみは恐れることなく言った。

 

「祖国を裏切るも何も王様の事話したんだから裏切りもんだろ。だがまぁ、祖国を裏切れって話でもねぇ。要は体裁だ」

 

「体裁?」

 

「ああ。お前ら、国に残してきた家族とかいるんじゃねぇのか?解雇されたらどうする気なんだよ」

 

「・・・。」

 

「そこでさっきの話だ。お前らが家族ぐるみでうちに来れば衣食住は確保してやる。と言っても一時だろうけどな。あの王様の事だ、準備が整い次第すぐさま動くだろうからな」

 

「つまり貴方達は――――」

 

「あの王様が何してこようとぶっ潰す。その後に国に帰りぁいい。それまでは九鬼で保護してやる」

 

「・・・。」

 

「団長・・・」

 

黙するモードに部下たちが言葉なく訴えるもういいのだと。

 

「・・・わかった。我々は九鬼に下るとしよう」

 

「団長!」

 

「だが!」

 

片腕を釣ったまま彼は剣を片手に立ち上がった。

 

「この戦は私のケジメだ。最後までやらせてもらう」

 

「いいぜ。そういうのは悪くねぇ。さぁ、行きな」

 

そう言ってあずみは入場口からどいた。

 

「団長!」

 

「「「ご武運を!!!」」」

 

剣を持った手を上げることで彼は答えたのだった。

 

 

――――interlude out――――

 

『次の試合はこちらです』

 

第一会場、川神一子VS騎士団長・モード

 

第二会場、クリスティアーネVS鉢屋壱助

 

『注目は第二会場かね』

 

『いえいえ。モード氏が何処まで粘るかも必見ですよ』

 

『それでは試合開始です!』

 

「「「行け―!ワン子ー!!!」」」

 

「「「クリスさん頑張って―!!」」」

 

精一杯の声援を送る風間ファミリー。戦いは半ばを迎えようとしていた。

 

 

「モードさん・・・よね。片腕、大丈夫?」

 

「心配のほども無いよリトルレディ。できれば、君には万全の態勢で挑んでみたかったが・・・」

 

「焔ちゃんのド根性に負けたのね」

 

「ううむ。否定しがたいな。何はともあれ一手参ろうか」

 

「そうね。あたしも遠慮なんかしないから!」

 

一子の薙刀が閃く。それを繊細な動きで受け流すモード。

 

「今のを受け流されるなんて・・・!」

 

「なに。手負いの獣は危険だぞ?」

 

鋭い剣の一閃が一子を襲う。一子は俊敏な動きでそれを躱し、

 

「川神流、雷光一閃!!」

 

閃光の如き一撃を見舞う。

 

「くっ!!」

 

しかしモードも負けてはいない。本来ならば盾で防ぐだろう一撃を剣捌きだけで受け流す。

 

「おい、ワン子が上手くいなされてるぞ!」

 

「大丈夫、きっと大丈夫だよね・・・」

 

「一子さん・・・」

 

真剣に祈るファミリーに対して凛やセイバーは賞賛の声を上げていた。

 

「片腕無しでよくやるわね」

 

「リンの言う通りかと。一子の一撃を片手でいなすとはすばらしい腕前です」

 

「ですが、一子殿の動きが鈍いですな」

 

レオニダスが首を傾げて言う。

 

「大方、負傷した腕を攻撃しないようにしてるんだろうさ」

 

「甘いわね」

 

「ですが、その意気や良し、と言った所でしょうか」

 

一子とモードの戦いは高レベル帯の膠着状態となった。

 

一方クリスは・・・

 

ボン!

 

「分身だ」

 

「くぬぬ・・・」

 

周囲を鉢屋の分身に囲まれて苦戦を強いられていた。

 

「だが大した腕前だ。それがしの攻撃にはきっちり反応してくる」

 

「そう言いながら!木々に紛れるように逃げていくとは卑怯だぞ!」

 

「それがしは忍者故。卑怯で結構」

 

鉢屋は一撃入れたら分身の中に隠れる戦法を取っていた。

 

彼とてよく知っているのだ。クリスという少女の腕前を。

 

(攻撃が防がれるのは癪だが、いずれスタミナが切れよう)

 

(忍者がこうまで厄介とは・・・少し侮っていたかもしれないな)

 

こちらも膠着状態だった。だがクリスは息を整え焦る自分を落ち着かせる。

 

(落ち着け。手はある。どんなに分身が厄介でも――――)

 

「そこだー!!!」

 

「ぐふっ!?」

 

あえてレイピアを使わず最も迎撃が早かった右足での蹴りを優先し、見事打撃を入れた。

 

『おっと。クリスの一撃がもろに入った!』

 

『あえてレイピアを使わなかったのは、方向的にその方が早いからですね。見事な一撃です』

 

「お嬢様・・・」

 

マルギッテは心配そうにつぶやく。

 

「大丈夫だってマルギッテさん。クリスも強くなってるんだから」

 

「だな。流石の反射神経だぜ。鉢屋が動くのと、ほぼ同時だったじゃないか?」

 

大和達は笑顔を見せる。その姿にふっと笑い、

 

「そうですね。お嬢様は強い。誰よりも、私が信じねば」

 

「マルの心配もわかる。今までとは異なる動きだ。カウンター特化なんて今まで経験無かったろうしな」

 

そう言って士郎はマルギッテの手を握った。

 

「大丈夫。クリスはきっと切り抜けるよ」

 

「士郎・・・」

 

握ってくれた手をそっと頬に当ててマルギッテは目を閉じた。

 

「・・・ちょっと。いつまでいちゃいちゃしてるのよ」

 

「いちゃいちゃじゃありません。夫の存在を身近に感じているのです」

 

「いちゃついてんじゃない!」

 

ビュオ!とパンチが迫る。・・・士郎に。

 

「危な!?凛、やきもち焼きはよせ!」

 

「誰がやきもちよ!」

 

ブンブンと迫る一撃を回避しながら士郎は思う。

 

(変則的な準準決勝だけど・・・最後はクリスと一子かな)

 

激しく激突する両者をみて士郎はそう予想を立てるのであった。

 

 

 




はい。ちょっと前編後編では収まりませんでした。まだまだ戦いは続きます。

トーナメントと対戦人数に疑問を抱く方。すみません。その通りです。作者的にはこれで8人かなーって思ってたらいつのまにか10人になってました。準準決勝が終わったらくじ引きでシード権を作るつもりです。10人みんなに見せ場を作りたいのでどうかお付き合いください。

体調の方ですが、残念なことに回復したり崩したりを繰り返していますドン亀更新が続くと思いますがご了承ください。次の診察で相談してみる予定です。

それでは次回お会いしましょう。
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