今回は心とのイチャコラ回にしたいと思います。
では!
十勇士が西に帰って数日。士郎は心にお昼を共にと呼ばれていた。
「今日は定食も休みだしゆっくりできそうだな」
珍しくも今日は学食を素通りする士郎。果たして件の心は・・・
「いた」
学園内の日当たりのいい場所に陣取り、千花や委員長と仲良く会話していた。
「それでねー・・・あ」
「すまん。お邪魔だったか?」
「全然!じゃあ私達は学食いくから」
「心ちゃん!頑張るんですよ!」
「な、なにをがんばるのじゃ!?」
意味ありげに笑いながら去って行く千花達。何はともあれ無事合流した士郎は、
「隣、いいか?」
「お、お主は此方の、は、はは伴侶ぞ!気遣いなどしなくて良いのじゃ」
「そっか。じゃあお邪魔して・・・」
パカリと心のものとは比較にならないほど小さなお弁当を開ける。
「そ、そのように小さなものでは足りなかろう?此方のも分けてやるのじゃ」
「そうか?じゃあ有難く分けて貰おうかな。どんな味付けなのか気になってたんだ」
「うむうむ・・・折角だから交換、なのじゃ」
「・・・俺のおかずじゃ釣り合わないかもだぞ」
「そのようなことは心配しておらぬ。衛宮定食からして此方の弁当以上の美味しさであるからのう・・・それじゃ、交換じゃ」
「・・・。」
デーン!と出てきたのは五段くらいの重箱。あんまりな光景に士郎は、
「心・・・それ全部食べる予定だったのか・・・?」
ちょっと引いている士郎に心は、
「ち、違うのじゃ!此方もこんなに食べきれぬ!しかしな、料理長が・・・」
『これだけあれば心お嬢様にもお友達が出来るはず!!』
「と言っておってな・・・」
「・・・。」
何という力押し。質はもちろんだろうが、数による暴力である。
「その・・・昔は料理長の言葉も嬉しくて、食べられる分だけ食べていたのじゃが・・・」
「今は友達もいるし何より食材がもったいない、か」
士郎の言葉にコクリと頷く心。
「最近の此方の仕事は、見た目も良く、美味な和菓子ブランドの確立なのじゃ。だから尚更もったいないと感じてしまって・・・」
「うーん・・・」
心も胸を痛めているという事を聞いて何とかできないかと感じる士郎。
しかし、何事にもめげない彼女は、
「さ、早速おかずの交換じゃ!ほれ、あ、あーん・・・」
「もぐ」
「!」
「モグモグ・・・」
心があーんに成功して固まっている中、士郎は味を確かめていた。
「ん、美味いな。手順も完璧だし何より食材が痛まないように調理されてる。この暑さだからな。とても心遣いの行き届いた料理だ」
「そ、そそそうか・・・どれ、交換じゃぞ?此方にも、あ、あーん・・・」
「あーん」
パクリ。
「・・・(モグモグ)」
「どうだ?」
士郎の言葉にふんわりと笑みを浮かべた心は、
「美味しい。家庭的なおかずではあるが、食べる人の事をよく考えておる一品じゃ」
「ありがとう。これでも自信作だからな。嬉しいよ」
士郎も笑みを浮かべて言った。
その後は、最初の恥ずかしい空気も何のその。互いに食べさせ(途中からは心のお弁当で)合ってそれを見ていた生徒も、思わず笑顔になるほど微笑ましい空間だった。
その後学業を終えた士郎と心はいつぞやのように心の家に行くことになり迎えの車で楽し気に会話していた。
「中々味のバランスが・・・」
「それなら栗のペーストを加えて・・・」
と、このように心の新ブランドの話をしていた。
「はぁ・・・士郎は本当に物知りじゃのう・・・此方の考えが浅はかに思えるわ」
「そんなことないさ。心だって日ごろから舌が鍛えられてるだろう?」
士郎は柔らかい笑みで言った。
「それに、食べる相手の事が良く考えられてる。友達が出来たおかげだな」
「そ、それは~そのう・・・確かに昔の此方では考えられぬことかも・・・」
テレテレと照れ笑う心は士郎に出会えて本当に良かったと感謝しきりだった。
(仮にこの事業に辿り着いたとして、昔の此方では大したものを作れんかったじゃったろう・・・)
きっと贅を尽くしたものを作り、それで満足していたに違いないと心は思う。
(しかし大丈夫なのじゃ!今回は友もおるし、何より士郎がいる!百人力ならぬ千人力じゃ!)
そんな事を思ってキリッとした表情をしていた心だが、
「そう言えば心。心は別邸で暮らすのか?」
何気ない士郎の問いに、
(そうじゃったー!!!)
ガクゥと崩れ落ちる心。
(嫁に行く許可はなんとかもらったが、新ブランドが安定するまで此方は士郎の元に行けぬではないかー!)
「あ、あんまり気にしないでくれ。ただ心の屋敷はいつも豪華だからさ。うちじゃ見劣りするかなって思って」
「それならば心配いらぬ。此方の選りすぐった庭師を連れて行くからのう」
「斎藤さんか?」
「いや、斎藤は不死川家に代々仕える者じゃから他の庭師じゃ。今選定中でのう」
そう言って、まるでもうすぐ行くよ!的なことを言ってしまう心。
(失敗じゃあ!これではすぐにでも行くと言わんばかりではないかぁ!?)
「そっか。俺も習おうかな。土や木をいじるのも嫌いじゃないし」
「そ、それがいいのじゃ!士郎も学ぶが良いぞ!」
と、結局修正をかけられず、ズルズルと言ってしまうのだった。
そんなことを話していれば心の家に着くのも自然と早く着く。
今日はブランドの菓子を一手に引き受ける菓子職人と、ブランド菓子の相談をしてほしいという心の希望で士郎は再び心の家にお邪魔することになったのだった。
「心お嬢様、旦那様、おかえりなさいませ!」
おかえりなさいませ!!と唱和されてちょっとビビる士郎。
(そうか・・・俺はこれから旦那様呼びでこの人たちと出会うのか・・・)
何とも複雑な士郎。だがとりあえず、どうも的な感じで適当に挨拶しながら移動する。
「それで、俺はどうすればいいんだ?心」
「まずは此方も楽な服装に着替えるので、案内する応接間でゆっくりしておれ」
「そうか。わかった」
ここでも心はサプライズを用意していた。
(しめしめ・・・此方のかじゅあるな姿に恐れおののくが良いぞっ)
と何やらカジュアルな服装を披露しようとしているようだが、
(心お嬢様、カジュアルでは恐らく無いです・・・)
(楽な服装ではあると思いますが)
はぁ、とため息を吐く侍女達であった。
案内された応接間で心を待っている間、士郎は紅茶を頂きながら幾分リラックスして待っていた。
「心の家も二回目だしな・・・ただ」
とにかく自分に刺さる視線、視線。結婚式を挙げたわけだが、あまり顔合わせをしていないのでこちらを見る視線がすごい。
幸い、悪意ある視線ではないので物珍しい、くらいなのだろう。この手の視線は何度も出会ったので士郎的には問題なかった。
「まぁ仕方ないよな」
そうして紅茶を一口。何気に休む暇も無かったよなぁとちょっぴり反省。
(義経達が休ませたがるのもちょっと分かった気がするぞ)
こんなわずかな時間でリラックスできるのだから、普段から働き過ぎなことを考える士郎。
(今度大々的に休みを取るか・・・ん?)
コンコンコン
「士郎様。心お嬢様の準備が出来ました」
「はい。じゃあそちらに行きま――――」
す、という前にガチャリと扉が開かれ、
「――――」
「・・・。」
綺麗な白地のワンピースを着た心がいた。
「ど、どうじゃ・・・?」
「あ、ああ・・・」
白地のワンピースを基準に透明な羽衣のようなものを肩からふわりと纏い、羽衣に書かれた様々な柄が白地のワンピースに映える。
ただワンピースと言うと子供に見られがちだが心のそれは大人な、しかしふんわりとした大人な印象を受けた。
「似合ってるよ。綺麗だ」
「・・・!」
士郎の反応に顔を赤くする心。
士郎もなんだかばつが悪そうに後ろ頭を掻く。
「ごめんな。口下手で・・・でも本当に綺麗だぞ、心」
「よ、良いのじゃ。士郎のそれは心から出たものだという事はよくわかる・・・さぁ!厨房に行くのじゃ!」
恥ずかしさを振り切って心は士郎の片腕を抱いて厨房へと案内した。
「ここが厨房じゃ。マル秘公開じゃぞ。感謝するのじゃ」
「ああ。秘密は守るよ」
「では」
ついてきていた侍女が扉を開けてくれた。
銀色が目立つ部屋にポツンと立つ人影。多分、あの人が菓子職人だろう
「国光、国光!」
「うーん・・・ここはこうして・・・」
菓子作りに集中している様子の
癖っ毛なのかびょんびょんと飛び出た髪が何本も伺える。
「まったくこ奴ときたら・・・スゥ――――」
心は一度大きく息を吸い、
「国光ッ!!!」
「はひゃいー!?」
心の怒声に、奇妙な声を上げて女性は椅子から転げ落ちた。
「こ、心お嬢様・・・」
「まったく・・・お主ときたら、菓子の事となるとすぐに周りの事が入らなくなるのう・・・」
「うう、申し訳ございません・・・」
どうやら集中するとどっぷり浸かってしまう人のようだ。
「それよりほれ。此方の伴侶を連れて来たぞ」
「おおお!貴方が心お嬢様の心を射止めた方ですか!噂はかねがね・・・」
「は、はぁ・・・」
両手を掴まれてブンブンと振られる士郎は複雑だ。
「それでそれで!お勉強は何処で?」
「あ、あー・・・昔専属菓子職人の方と合同で出したことがあっただけで独学ですよ」
「そのパティシエとは!?」
「すみません。極秘にしてほしいとのことなので」
「くう~!悔しい!でもそんな方と菓子作りが出来るなんて感激です!どうぞよろしくお願いしますッ!!!」
「は、はぁ・・・」
怒涛の勢いに士郎はたじたじだ。
「すまんの。腕は確かなんじゃが・・・色々すっぽ抜けておってのう・・・」
流石の心も士郎の腕をきゅっと掴んで謝る。
「まぁまぁ、頑固一徹の逆だと思えばいいさ。それより心。ここからは調理だ。その見事な服を汚してしまうかもしれないから・・・」
「そう言うと思っていたのじゃ!」
ばさりと羽衣だけを脱ぎ白いワンピースの上に心(ハートマーク)と書かれたピンクのエプロンを着用した。
「おお、準備万端だな。俺も・・・」
投影しようとして待ったがかかった。
「士郎様こちらを」
「え?」
青地に旦那様(ハートマーク)と印字がされたエプロンが出て来た。
「・・・これ着るの?」
コクコクコクコク!と頷く心。
「それとも嫌か・・・?」
上目遣い(士郎相手だと自然とこうなる)で見つめる心に、
「ええい!俺も男だ!!これでやるぞ!」
シュっと腕を通しビシっと紐を結び、ドドン!と腕を組む士郎。
「おおー!(パチパチパチ)」
「にょわぁ・・・」
国光はそのいで立ちに拍手。心は今更ながらに恥ずかしくなって惚けていた。
「ふう・・・それじゃあ国光さん、早速始めましょう」
「もちろんです!さぁ始めるぞう・・・」
また没頭しそうな雰囲気を出す国光。
「心もやるか?」
「も、もちろんじゃ!そのために此方もエプロンを身に付けたのじゃからの」
その後士郎と心は、いくつものサンプルを作り出し、
「これは・・・」
「こっちの方が・・・」
等など、様々な意見を言い合った。その中でも頭一つ抜けていたのは、やはり士郎と国光の合作だった。
「やっぱり本場の職人の作ったものは違うのう・・・」
「そんなことないさ。心と一緒に作った奴もいい線行ってると思うけどな」
「しかし、富裕層を相手取るならば、士郎と国光の菓子でなければ話にならん」
ぷくりと頬を膨らませて心は言った。
「心は富裕層だけをターゲットにした菓子ブランドにするつもりなのか?」
「い、いや・・・庶民にも、ちょっとした贅沢という感じで受け入れてもらえるものにしたいのじゃ・・・」
「ならやっぱりさっきのサンプルもいい線行ってるよ。万人受けすることを考えるならこの菓子はダメだ。完全に富裕層向けだよ」
「あの・・・なら、二種類作ればいいんじゃないですか?富裕層向けと万人受けように・・・」
「確かに。予算があるならそれがいいかもな。心、どうする?」
「・・・。」
心は僅かに考え、
「・・・二種類にしよう。富裕層向けと万人に人気が出そうな菓子。両方作るのじゃ」
「良し。なら国光さん。この菓子をベースにいくつか考えましょう」
「はい!」
「万人受けターゲットの方は俺と心でサンプルを作って三人で味をみよう」
「わかったのじゃ」
「日暮れまでは時間がある。今日は出来るだけサンプルを作って絞れるだけ絞ろう」
「はい!」
「やるのじゃー!」
二人とも気合は十分と作業に取り組むのだった。
菓子作りを始めてどれくらい経っただろうか。既に日は暮れ、国光と士郎は富裕層向けの最終チェックに入っていた。
「・・・。」
「・・・。」
最終的に出来上がった桃をモチーフにした小さな菓子、三種類の最後の味見をする。
「国光さんいいですか?」
「はい」
二人が指さしたのはBと書かれた菓子サンプルだった。
「はぁ~・・・決まったぁ・・・」
「お疲れ様です」
「士郎様こそ。心お嬢様と私、二人に挟まれて忙しかったでしょうに・・・」
「まぁその辺も慣れですよ。心は一足先にギブアップしちゃいましたので」
寝室で仮眠をとっているという事だったので間もなくこちらに来るだろう。
と、
キィ・・・
「心」
「心お嬢様、何してるんですか?」
厨房の扉に隠れながら中を伺っていた心が恥ずかしそうに出て来た。
「や、休んでしまってすまなかったのじゃ・・・」
「なんだそんなことか」
国光と顔を見合わせてクスリと笑い。
「おいで心。菓子の一つが完成したぞ」
「心お嬢様、味見をお願いします」
「・・・!うむ!」
恥ずかし気にパタパタとやって来た心も富裕層向けの三種を味見し、結果三人一致でBと書かれたサンプルに決まり、心の新菓子ブランドの先駆けが出来上がるのだった。
――――interlude――――
一方衛宮邸では中々帰ってこない士郎を心配する声が上がっていた。
「士郎・・・遅いな」
「今日は不死川の所に行ったのだろう?」
食べ終えた夕食の皿を洗いながら林冲は呟き、近くにいた史文恭が答えた。
「なんでもお菓子の新ブランドを立ち上げるそうですよ」
桜がちょっと怒りながら言った。
「それにしても連絡の一つも寄越さぬとは・・・セイバーよ。これは良くあることなのか?」
「あまりない事柄ですね。ただ、士郎は没頭すると時間や日にちの概念があやふやになる所があるので、今回もそうでしょう」
「襲われないと良いんだけど・・・」
「ぷっ・・・林冲、今の士郎に酔漢や不良ごときが何かできるとでも思ってるの?」
林冲の心配振りに、凛が笑いと共に返した。
「それは・・・そうだけど・・・」
「オニュクス王国の事があるから心配なのだろうよ。そちらはどうなのだ?」
「続々とガラクタが運び込まれてるわね。この国の治安維持ってどうなってるの?」
「十中八九、手引きしてる奴がいるんだと思う」
「はぁ・・・武闘派揃いな世界なのは分かったけれど、犯罪者まで武闘派なのがいただけないわね」
「まぁそれを売りにしてるわけだからな。しかし、これだけの期間ため込んで仕掛けてこないとは随分と慎重だな」
「御前試合で警戒レベルを上げたんだと思う。予定の倍は想定してるんじゃないかな」
「林冲、貴女の考え当たりよ。今日運び込まれたので丁度倍の量ね」
「ガラクタをいくら増やそうがどうでもいい。近々暴れられるのならな」
「史文恭、ストレスでも感じてるの?」
「別に。ただ私も年なのでな。早く子を授かりたいのだが・・・中々手を出してこないのでな」
「こ、子供!?」
「し、史文恭さん・・・!」
林冲と桜が動揺する。だが史文恭は恥じらう事もなく、
「?お前達もいずれはそう動くのだろう?子がいらぬ奴などいるのか?」
「それは・・・」
「私は三人は産みます」
「せ、セイバー!?」
顔を赤らめながら宣言するセイバーに凛もが動揺した。
「最終的にあいつの子は何人になるんだろうな?」
はっはっは!と笑う史文恭だが、
「子育て、覚悟が必要ね・・・」
神妙に頷く凛達であった。
――――interlude out――――
「やば・・・遅くなりすぎた」
慌てて家に電話する士郎。当然、遅い!とお叱りを受けたわけだが、
「士郎。今夜はもう遅い。此方の家に泊って行かぬか?」
「え?」
それは考えもしなかったとぽかんとする士郎。
『ちょっと?衛宮君?今聞き捨てならない声が聞こえたんですけど』
「あ、ああ・・・俺も予想外で・・・心、いいのか?」
「か、構わぬ。士郎と此方はもう伴侶だからのう。お泊りくらいいいのじゃ」
期待した目でチラチラと士郎を見る心。その視線に気づいた士郎は、
「・・・凛、今日は心の家に泊っていくよ」
『・・・はぁ。私、知らないからね』
「うう・・・どうにか穏便に済ませてくれ・・・」
『貸し一つよ』
「宝石以外な」
『チッ』
明確に舌打ちしよった凛であった。
「宝石?なんじゃ士郎は宝石の趣味でもあるのか?」
「い、いや、俺にそんな高等な趣味はない。ちょっと事情があってな・・・。ともかく、今日は心の家に泊めてもらうから。説明頼んだぞ」
『はいはい。でもホント知らないからね。あと、林冲には謝っておきなさいよ。すごく心配してたから』
「分かった。じゃあ」
『ええ。おやすみなさい』
ピ、っと電話を切って士郎ははにかむように笑った。
「それじゃあ心、一晩お世話になる」
「!!良いぞ良いぞ!」
心は嬉しそうに小さくガッツポーズをした。
(やったのじゃ!これで今日は・・・)
あんなことやこんなことを想像して、にょわぁ・・・ととても人様に見せられない顔をする心。
そんな緩やかな空気のまま士郎は心の家で心づくしを頂き、風呂に案内され、入浴していた。
「はぁ・・・染みる」
何だかんだ集中していたからかお湯がとても気持ちいい。
「心のお菓子、売れるといいな」
自分としてもあの菓子はよくできたものだった。富裕層向けにはなってしまうだろうが多くの人に味わってもらえたら嬉しい。
「後は万人向けか・・・」
心が休息を取るまで、中々の量から絞り込めたが、まだまだ改善点は多い。それに、富裕層向けとは違う、ここが売り、という所も考えなければいけない。
でないと、ただ値段の高い菓子にしてしまっては買い手もつかないだろう。
「んー・・・まぁいいか。また明日考えればいいわけだし」
グイっと背伸びをしてパチャンと体を沈ませる士郎。
と、
ガラ。
「・・・。」
このパターンは良く知っている。だが、言わねばなるまい。
「あの、入ってますよ?」
「し、知っておるのじゃ」
体にタオルを巻いた心が入ってきた。
「なんでみんな同じ事をするのかねぇ・・・」
「それは士郎と少しでも触れ合いたいからじゃ」
そう言って掛け湯をして洗い場に座る心。
「せ、折角じゃ。此方の背中を流しても良いのじゃぞ・・・?」
「・・・。」
また期待した目でチラチラ見る心、士郎はため息を一つ吐き、
「お嬢様、いつも侍女にやらせてるでしょう?」
「な、なんのことじゃ!?」
ビクーンと肩を上げる心に、士郎はクックと笑い、
「さあお嬢様、まずは髪の毛からですよ」
「にょ、にょわぁ・・・」
士郎が洗ってやると気持ちよさそうに目を閉じる心。
「慣れておるな」
「そりゃあ子供のお相手くらいは」
「此方は童と同じ扱いか!?」
「そりゃそうだろう?あんなに期待した目で見られたらな」
「・・・。(ぶっすー)」
「あはは、そう拗ねるなって。十分心は大人びてるよ」
「本当じゃろうな?」
「本当本当」
髪の毛を洗い終わり背中を流して士郎は湯船に戻る。
「お嬢様、ちゃんと洗えますよね?」
「当然じゃー!」
「おわっと。危ない危ない」
たらいを投げつけられたのを、ひょいと避けて士郎は笑う。
少しして心が士郎の隣にやって来た。
「気持ちいいな」
「う、うむ・・・」
きゅっと士郎の腕を抱き込み、静かに湯船に浸かる心。
「士郎はその、こういう事には慣れておるのか?」
「慣れてるってわけじゃないけど、嫁がもう家に沢山いるからなぁ・・・よく悪戯されるんだ」
「そ、そうなのか・・・」
どこか寂し気に俯く心。
「心?どうかしたか?」
「鈍感もそのくらいにするのじゃ。ん・・・」
ちゅ、とキスを交わして心はふにゃ、と笑った。
「流石にこれは初めてじゃろう?」
「ああー・・・どうかなー」
「お、お主不謹慎じゃぞ!」
「言っただろう?よく悪戯されるって。それより俺は先に上がるよ。また悪戯されちゃ困るからな」
「あ、待たぬかー!」
そうして長湯になる前に撤退した士郎だが、
「これは・・・」
「~~~~~!!!」
二人でお休みくださいと言わんばかりに布団が一つに枕が二つ。
「あっはっは。寝るか心。明日も頑張らないといけないしな」
「う、うむ・・・」
士郎が布団に入ると心もゴソゴソといいポジションを見つけ、
「おやすみ、心」
「おやすみなのじゃ、士郎」
二人は向かい合って眠りにつくのだった。
はい。これ以上は砂糖吐きそうなのでこのくらいで。というか大人びた感じ出てない…完全に子供扱い、イリヤみたいな扱いになってしもうた。申し訳ござらぬ。
次回は誰にしようかなぁSN勢の誰かかも。今しばらく幕間続きます。ではまた次回!