今回は史文恭とのことを書きたいと思います。
傭兵引退して縁の下の力持ち的な存在になった彼女ともちゃんと愛が紡がれていることが伝われば幸いです。
では!
早朝の鍛錬後、朝食を口にしていた士郎はふと史文恭に話題を振られた。
「士郎。今日空いているか?」
「どうしたんだ?」
突然の事で目を点にして問う士郎に史文恭はフッと笑う。
「なにもそう構えるな。行き場の無くなった本をどうするか考えていてな。今のまま空き部屋を潰して行っては、今後に差し支えるだろう」
「それも・・・そうだなぁ。ただ何処に保存するのか当てはあるのか?」
士郎は首を傾げて言った。
「それをお前と相談するのだ。何か場所を確保できるサービスなど知らないか?」
ふむ。と士郎は腕を組んで考える。
「無くはない。ただ継続的に金がかかるぞ?それでもいいなら手はある」
「コンテナサービスの事?」
清楚がご飯をモグモグとしながら言った。
「ああ。あれならお金さえ何とかなれば大丈夫だ」
士郎の言葉に史文恭は渋面を浮かべた。
「ううむ・・・金はあるが、継続的となるとな・・・他にいい案は無いか?」
「他に?」
うーんと考える士郎。
「史文恭は本を処分する気無いの?」
凛が不思議そうに言う。
「うむ。あれらは私の財産だからな。できれば処分などしたくない」
「でも・・・それじゃ永遠に溜まってしまいますよ?」
と難しい顔で桜が言う。
「史文恭の書物は知識の宝庫です。それを手放すのは惜しい事ですね」
「なにかいい方法があればいいんだが」
先は見えないが、士郎は一先ず彼女と一緒に考えることにした。
「うーん・・・」
史文恭とは放課後落ち合う事になったが、士郎は相変わらず頭を悩ませていた。
「どうしたの衛宮君」
「悩み事でしたら、おねーさんが聞いてあげますよ?」
千花と真与がやって来た。
「ああ、二人とも。実はな・・・」
と、今朝の事を話すとあれよあれよと集まる2-Fのみんな。
「なんだ衛宮はまた人の事で頭を悩ませてるのか?」
「いつもの事だけど、士郎も大変だねぇ」
スグルとモロが苦笑を浮かべながら言った。
「で、実際どうする系?何か筋道通さないとやってられない系」
「うーん・・・空いてる格安の土地ってないかな・・・うちみたいな」
ダメもとで士郎はみんなに聞いてみる。
「川神幽霊屋敷みたいなところが沢山あったりしたら、安心して暮らせないだろうが」
「忠勝の言う通りだよなぁ・・・」
ため息を吐く士郎。
「考え方を変えて、どのくらいため込んでるのか、から考えてみたらどう?」
クマちゃんが中々いい案を出してくれた。
「うちの、八畳一間と四畳半一間が段ボールで埋まるくらい・・・かな」
「そりゃまたためこんでるなぁー。なぁエロ本とかないのか!?それならうちでグエッ!」
「はいはい。色ボケ猿は置いといて。それにしてもあるわねー」
「それを収めてる士郎の家もすごいわー・・・」
「まぁ部屋はあるからな。でも今後部屋を空けておかないといけないし・・・何より家が物置になっちまう」
「だよなぁ・・・いっその事、九鬼のねーちゃんに相談してみた方がいいんじゃねーか?」
「何でもかんでも揚羽に相談するのはな・・・ともかくやれるだけの事はやるよ」
という事で士郎は、うんうん唸りながら休み時間を過ごすのだった。
授業を終えて放課後。士郎は史文恭と待ち合わせをしていた。
「置く場所、なぁ・・・いいこと上手くいかないものか」
彼女は本に囲まれていることに幸せを感じると言っていたし、何より自分の財産とまで言うのだから、読み終えた本もいずれまた読む機会があるだろう。
「そんな本を処分なんかできないよな」
納得したはいいがはてさてどうしたものか。
そんな考えを巡らせていた時、目の前に黒いファミリーカーが止まった。
「またせたな」
「いや、大して待ってないから大丈夫だ。行くか」
士郎は助手席に乗り込んでシートベルトをつける。
「史文恭は何かいいアイディア、浮かんだか?」
「それが全くでな。いよいよ、揚羽を頼らねばならんな」
「やっぱりそうなるかー・・・」
何かと迷惑をかけているので、今回ばかりは自分達で何とかしたかったのだが。
「出発する前、揚羽に連絡しておいた。九鬼ビルに来いとのことだ」
「もう相談してたのか?」
「うむ。出来ぬことに傾倒するほど私もバカではない。それが努力で何とかなるならまだしも、こういうどうにもならんことはな」
「そうか。んー・・・埋め合わせ、必要だよなぁ」
数多くを持つ彼女に何をしてやれるのか考えながら車に揺られる士郎だった。
九鬼ビルに着くと李という人が来客対応してくれた。
「ようこそおいでくださいました。中にご案内します」
「お願いします」
「うむ」
彼女の先導で九鬼ビルに入ると応接間に案内され、少し待つよう言われた。
「揚羽はやっぱり忙しいよな」
「そうだな。世界を股にかけるのもいいが、良く体が保つものよ」
史文恭をして尋常ならざる、という評価に士郎も同意だった。
待つ間出された紅茶を楽しんでいると誰かが入ってきた。
「失礼します」
「あずみ?ていうことは・・・」
「フハハハ!九鬼英雄!降臨である!」
なんと、出てきたのは揚羽ではなく英雄だった。
「英雄?なんでここに・・・って、まぁここが家なんだろうけど」
「揚羽は一緒ではないのか?」
「うむ!今回の件は我に一任されたのでな!遠慮することはない!これも我の担当であるからな」
確かに、彼は経済部門の仕事をしている身だ。何か妙案があるかもしれない。
「それで!兄上と史文恭殿の悩みというのはなにか?」
「ああ、実は・・・」
朝教室でした話をもう一度すると英雄はいい笑顔でカリカリとメモを取って逆に問いかけて来た。
「なるほど。溜まり行く書物の保管場所か。兄上の家の大きさを考えるに、いつか書物で埋もれてしまおうな」
「そうなんだ。ただ、史文恭は出来るだけ処分はしたくない様で・・・」
「なんとかなるか?」
この時ばかりは史文恭も困り顔だった。
しばらくぶつぶつと英雄は口の中で言葉を返し、用意された用紙にカリカリと何かを書き連ねて行く。
そして、
「うむ!こんな所であろう!」
ぺらりと書き連ねていた用紙を士郎側に回して英雄は説明した。
「まず、史文恭殿の本は空いている廃ビルにでも持ち込む」
「廃ビル?・・・あ、うちのファミリーみたいにするのか」
英雄は風間ファミリーの秘密基地からヒントを得て思いついたようだ。
「しばらくはそれで凌げるであろう。そして廃ビルをも行き場が無くなったら・・・」
用紙の廃ビルという吹き出しから、図書館、という項目に辿り着いた。
「読み終えた本を遊ばせておくのはもったいない!という事で小規模から中規模の図書館を建造する。そこで誰でも見れるようにするのだ」
「最終的には図書館か。随分規模が大きいな」
士郎も、まさか図書館まで作るとは考えもしなかった。
「これならば顧客を得ると同時に仕事が出来る。仕事としては史文恭殿や清楚が適任であろう。そうすれば金を失うどころか賃金を得ることも出来るぞ」
「確かに、これならば廃ビルを買う金をいずれは取り戻せるか」
「風間ファミリーが根城にしているような廃ビルは存外多い。九鬼でも数件持っているくらいだ。これも発展するための礎よな」
「それで?九鬼はいくらで廃ビルを史文恭に売るんだ?」
士郎は確信を突く形で切り込んだ。だが、
「いや、売る気は毛頭ない。むしろ管理者を探していたところだ。史文恭殿には管理者になってもらって本をため込む。そして頃合いを見て図書館建造と運び込みをする。その後は運営となろうな」
なんと金をとる気はないらしい。
「それは・・・その」
「兄上と史文恭殿が九鬼の縁者だから、というわけではないぞ」
英雄は紅茶で喉を休めながら言った。
「最近、電子書籍という物が反響を呼んでいるのは兄上も知っていると思うが・・・」
「ああ、史文恭もいくつかサービスを利用してるよな?」
「うむ。便利だが、あれは・・・」
皆まで言う必要はないと英雄は止めた。
「あれは便利な一方で様々な問題も抱えている。全てを電子化したとて本の需要はある。例えば、電子書籍は管理が簡単だが、端末と書籍自体に安くない金がかかる」
電子書籍は少しばかり実物の本よりも高い。中古なども無い為通常よりもお金がかかる。
端末は言わずもがなだ。
「今後電子化が進む一方で、実物の書籍を保存する行動も必要だと我は考えている。だから、史文恭殿が話を持ち込まずともこの件は実行に移していた。要は本をかき集める作業を史文恭殿に一任する形だ」
「ていうことは・・・」
「うむ。今後は本の代金として援助金も出そう。史文恭殿、よろしくお願いしますぞ」
「ああ。その点なら心配ない」
結局そういうことでまとまりがついて史文恭と士郎はしばらく九鬼ビルに滞在した後、その場を後にするのだった。
「ただいま」
「おかえり、士郎、史文恭。何かいい解決方法は見つかったか?」
林冲が出迎えと同時に聞いてくる。
「ああ。最終的には図書館に行くことになってな・・・」
「それは随分大きな話になったわねー。それで史文恭は?」
「図書館行きになる前段階の、貯蔵する廃ビルを見に行ったよ」
「士郎は一緒に行かなかったのですか?」
マルギッテに問われた士郎は、
「一緒に行くと晩飯が遅れる、って言ったら近くで降ろされた」
「あっはっは!史文恭らしいわ」
「今日は天衣も居ないしな。桜がその分意気込んで作るって言ってたけれど」
「今日は桜主体か。洋食風になるかな。桜と相談しよう」
そう言って一足早く士郎は帰宅した。今日も沢山食べる皆のため腕を振るうのだ。
「桜。今日は・・・」
「あ、先輩!今日の夕飯は――――」
いつかの光景のように楽し気に話す士郎と桜。今日は桜お手製のリゾットという事で足りないものを買いに行くことになった。
「いっそ大きい耐熱皿でも買って取ってもらう形にするか?」
「いえ、それじゃ見た目が悪くなってしまいますし・・・」
結局人数分の耐熱皿を買って食材の調達だ。
「リゾットならモードさん達も食べやすいと思いますから」
「モードさんも骨はくっついたからな。まだ脆いけど食事くらいなら大丈夫だろ」
本人は鍛錬に混じりたいと言い出したが、そこは奥さんと娘さん総出で我慢してもらった。
「――――♪」
「ん?史文恭だ。もしもし?」
『待たせてすまないな。今見学が終わった。食材の買い物だろう?今迎えに行くから』
「それは助かる。割れ物もあるからな。今――――」
いつものスーパーだという事を告げ、士郎と桜はのんびりと買い物をすませるのだった。
「待たせたな。荷物は後ろに乗せろ」
「了解。本の置き場はどうだったんだ?」
「年季の入った廃ビルだったが元が鉄筋コンクリートの物件でな。それほど脆そうには見えなかった。これからはあちらに移すとしよう」
「そうか。・・・結局九鬼の手を借りちまったな」
「毎度迷惑をかけているからな。彼らが喜ぶことは何だろうか?」
「やっぱり鍛錬とかじゃないか?仕事の方は手伝えなさそうだし・・・」
「先輩、執事の仕事出来るんじゃありませんか?」
「ええ?」
士郎はかつてルヴィアゼリッタの所で執事のバイトをしたことがあるが、所詮バイトだ。なにより、ルヴィアが自分を特別扱いしていたので、参考になる程度だ。
「ほう、桜、士郎はそんなこともしていたのか?」
「そうなんです!ルヴィアさんって言う大富豪の所で・・・」
「あー・・・」
楽しげに話し始めてしまった桜に。いずれ揚羽に執事のバイトで呼ばれそうな士郎。
「・・・いいか」
彼女の手伝いが出来るならそれもいいか、と割り切って桜が自分の事のように士郎を絶賛する声を聞きながら車に揺られるのだった。
「みんな揃ったな。それじゃあいただきましょう」
「今日はリゾットです。熱いので注意してくださいね」
「了解した。――――。」
モードが家族に熱いから注意しなさい、とでも言っただろう頃を見計らって、
「いただきます」
「「「いただきます!」」」
一斉に唱和して各々匙をつけた。
「!」
「――――。――――!」
「ああ。美味しいね」
「ほふほふ!美味しいです桜殿!」
「今日のは珍しいな」
「あんまり見ない晩飯だが・・・うむ。うまい」
「美味しいよ!桜ちゃん!」
士郎の料理は和洋中どれでもござれだが、これほど洋食に
「ううむ・・・これほど立派な料理を桜殿のような歳でか・・・川神は本当に様々な分野で活躍する者が多いな」
「立派だなんて・・・先輩に教えてもらったんですよ」
「なるほど。桜の師匠も士郎なんだな。それなら納得だ」
ゆっくりと冷ましながら食べる林冲。清楚も桜を絶賛しながら食べている。
「それで、史文恭の本の行先は決まったのですか?」
マルギッテがやけどをしないように食べながら言う。
「それなんだが・・・最初は借りている廃ビルに集め、その後新造の図書館に行くことになった」
「図書館か・・・九鬼にまた借りが出来たな」
「何か借りを返したいところだがどうにもいい案が無くてな」
「本の問題が解決したら今度はそっちの心配か」
「これでも元傭兵だ。貸し借りはきちんとしたい」
「うーん・・・やっぱり鍛錬の指導じゃないかな?」
「私と一緒にやれば効果アップ間違いなしですな!」
「まぁそれもいいだろう」
まんざらでもない顔をして史文恭は食事を進めた。
「ふぅー・・・」
鍛造の仕事を終え、ゆっくりと湯船に浸かる士郎。
「何とか形になって良かったなぁ」
てっきり、何件も不動産屋を回るのかと思いきや、英雄が見事にまとめてしまった。それもこちらにも利益がある方法で。
「感謝しきりだな」
何かと言えば九鬼がバックアップしてくれるので士郎は何か返さねばと思っているのだが、
「なにをしたもんかなぁ・・・」
鍛錬の手伝いはレオニダスやセイバー、今回の事で史文恭も行くだろうし、過剰だろう。
もっと何か出来ることは無いか・・・。
ぼんやりとそう考えていたところに、
ガチャ。
「・・・。」
おなじみの展開だなと思って一応返事をする。
「入ってるぞー」
「知っている」
裸身を晒してやって来たのは史文恭だった。
「・・・少しくらい恥じらいってもんをだな・・・」
「あれだけ激しく愛し合ったのだから変わらんだろう」
ぐぬぬと呻いて目を閉じようとした士郎だが、
「目を閉じるな」
史文恭が強めに言った。
「な、なんだよ」
驚く士郎だが、史文恭は至って真面目に、
「お前も九鬼に恩義を感じているのだろう?」
「そうだけど・・・それとこれ、なんの意味が・・・」
「私もだ。当然日々私の為に心を砕いてくれるお前にも。だから考えたのだ」
士郎の正面に膝立ちして、
「士郎。お前の子が欲しい」
「え?」
カチリと士郎は固まった。
「なに、なにも不思議なことはあるまい?好いた男子の子が欲しいのは女の本能だ」
「でも、え、は?」
「私以外にも同じ事を思う嫁は多いはずだ。だから士郎。私と、私達と子を作ろう」
「・・・。」
士郎はもう何も言えず口をパクパクさせていた。
「無言は肯定とみなすぞ」
「ちょ、ま」
何とか声を上げたものの史文恭は聞こえないとばかりに腰を下ろした。
後日、士郎は揚羽から火急の電話を取り、
『聞いたぞ士郎!我とも子作りするぞ!』
「あー・・・」
史文恭との一件が瞬く間に広がり、嫁達は士郎との子供の存在を大きく感じることになった。
「揚羽・・・火急の電話って言うから授業から抜け出してるんだけど・・・」
『そんなもの関係ない!我はお前との子が欲しいのだ!』
「まてまて揚羽!そんなに興奮した様子で喋るなって!電話口から声が・・・」
など、そんなこともあったが、愛は順調に育まれているらしく。
「「士郎!」」真っ先に。史文恭と揚羽の懐妊が知らされるのであった。
投稿が遅くなってすみません。今回も難産でした…。史文恭って実直なイメージがあったので彼女との愛も堅苦しいものになってしまいそうで、悩みました。
そして遂に士郎との子供ができました!これによって今まで出てこなかったあの子も出てきます。とはいえ、お腹が目立つまでは二人とも大暴れしそうですが…。(笑)
次回はオニュクス王国の作戦始動!という事でやっていきますのでよろしくお願いします!
では次回!