皆さんは暑い中どうお過ごしでしょうか?作者はエアコンバンバンかけてます。
今回でオニュクス王国編は一度終幕となります。書きたいことを書きなぐって行くので分かりずらかったらすみません。その代り全力で書きますので見届けてください。では!
「おい!確認急げ!」
「向かわせてます!ですが・・・!」
耳に刺さる雑音に百代達は著しく機嫌を損ねていた。
「これ、士郎が固有結界使ったからだよな」
百代の言葉に旭が頷く。
「そのようね。固有結界が発動すれば、現実を幻想へと塗りつぶす。デジタル機器が飛び込んだってデータの送信は出来ないわ」
「でも凛ちゃんのことだからその辺も完璧だろうね」
うんうんと皆頷いて、先ほどから罵詈雑言をまき散らしている男へと向かう。
「おい。この勝負は私達の勝ちだ。いい加減こっちも片をつけようじゃないか」
「・・・チッ。ついて来い」
舌打ちしてついてくるようイムベルは告げた。
イムベルについていくと、地下が広いホールになっておりそこで待っていたのは王冠を被ったいかにも王っぽいやつと可憐な女性だった。
「よく来たな。褒めて遣わすぞ。川神の戦士達」
「・・・。」
こんな状況で未だに下品な、勝利を確信したかのような顔をするオニュクス王国国王に、はぁ、と一同はため息を吐いた。
「散々待たせて出てきたのがこんな三下か。士郎と一緒の方がよっぽど楽しかったろうにな」
「そう言わないの。でもま、私も同じかなー。未だに現状把握できてない小物が相手とか、もう最悪」
「き、貴様等・・・!!」
百代と燕の評価にイムベルの額の青筋が切れそうなほど浮き出る。しかし、王の手前、戦意を喪失することなど出来なかった。
「クックック・・・その強気が何処まで・・・」
「強気も何も平常心だよ。お前らは変態の橋で会うゴロツキと一緒だ。何を隠してるか知らないがとっとと出しな。しょうがなく相手をしてやる」
「小娘共が!」
そう叫ぶと同時にイムベルと王、女性がそれぞれ独特の衣装の鎧に身を包んだ。
「これが我らの最高傑作!この力で我らは――――おぐ!?」
パァン!と王がくの字になり、吹き飛んだ。
「おい。この粗末な鎧で全てか?そうでないならさっさと本気を出せ」
「ごふ・・・!馬鹿な・・・この鎧は・・・」
「どうやらこれだけのようね。役割はどうしようかしら?」
「俺はあのふざけた王モドキを貰う。後は好きにしろ」
「清楚ちゃん怒ってるなぁ・・・じゃあ私はあの秘密兵器っぽいおんにゃの子で」
「えー私三下ー?」
「私は雑魚の掃討かしらね。じゃあお互い気を付けて」
「もちろんだ!士郎が心配するからな!」
百代は旭にそう返して黄金の鎧を身に纏う女性の前へと立ちはだかる。
「さ、始めようか」
「構いませんわ」
百代達の戦いが始まる。
――――interlude――――
川神採石場、無限の剣製状況下。
既にミーレスの大半が消失し戦いは終りを告げようとしていた。
「ミーレスが次々影に飲み込まれちゃうから、カエル修理できないよう・・・」
「これは負け戦だね。・・・川神の連中の実力を甘く見たのが原因か」
困ったように頭を振るカエルレウスとため息を吐くフラーウス。ウィリディスとアウランが倒され、既に三機だけとなってしまった彼らは終幕の時が来るのを感じていた。
「ふっ!!」
「はっ!!」
ガシャン、と最後のミーレスがガラクタへと変わり、間髪入れず影が取り込んでしまった。
「・・・どうやら俺達だけになっちまったようだな」
「だねぇ・・・こういう時はどうすればいいんだろう?」
最後まで抵抗するのか。それとも降参するのか。
「・・・いずれにしろ俺たちはスクラップだぜ」
ギリ、とルベルの手に力が入る。だが、
「勝負は決した。潔く投降しろ」
「「「!?」」」
赤い外套の男、衛宮士郎はそう告げた。
「・・・できないよ。ここで結果を出さないとカエル達は・・・」
「・・・。」
オイルで汚れた顔を拭いながら士郎は、
「投降する気があるのかないのか、それさえ聞ければいい。幸い、ここの事は外には洩れない。君達の意思を尊重しよう」
「・・・それ、本当なのかい?」
「フラーウス!?」
しばし考えたフラーウスが確認を取った。しかし、本当に監視をされてないのでなければ、この時点で反逆行為として取られるだろう。
「本当だとも。何ならそちらの主と通信を取ってみるがいい」
「・・・本当だ、誰にも繋がらない」
呆然としたようにカエルレウスが呟いた。
「この勝負は既に我々の勝利だ。それとも・・・この軍勢を前にまだ戦えると?」
「「「・・・。」」」
後方には続々と歴史上の人物の旗印が見える。フラーウス達の知らない所ではあるが、呼ばれているのは全て英霊だ。何をもってしても、絶対に突破できない対象が続々と集結している。打つ手など、はなから無いのだ。
「で?私らが仮に投降したとしてそっちになんの利があるっていうのさ」
自分達はロボットだ。多くの代替可能な部品の一部に過ぎない。現に、彼らは何度も機体を変えている。ここで破壊されても記録は本国に残る。それが分かっていないのかとも思ったが、
「なに。これも性分でね。可能な限り無益な殺生は好まない。それだけだ」
「「「は?」」」
三機は何を言われたのか分からないとほうけた声を上げた。
「私らに・・・死?」
「カエル達はロボットだよ?」
「お前がそんなことを気にするなんて・・・」
レオニダス率いる川神の人々にも、アウランを撃破した銀の騎士にも驚かされた。
だが、何を持っても一番はこの男だろう。
無限の剣の主。この丘に塗り替わってから、彼は誰よりも容赦なく、一片の隙も与えずにフラーウス達に襲い掛かった。
そんな男がロボットである自分たちの心配?
「わけがわからない・・・」
「む?そんなに難しいことではない気がするのだが。我々は命を狙われたから応戦しただけで、そもそも君達と・・・オニュクス王国を亡き者にしようとしているわけではない」
「王国もって・・・私らの主は、」
「そちらももう、ケリがつく。タイミング的には頃合いのはずだ」
「・・・信頼してるんだね」
「信頼も何も川神の力は身に染みたのでは?あちらはその精鋭だぞ?信じない訳が無い」
本当は、必ず大丈夫だろうと思う中で心配はある。だが、彼女達は選ばれたことを誇りに勇んで行った。
そんな彼女等を士郎は信じたいと思っている。
「・・・投降する?」
「!カエルレウス・・・」
控え目に言った彼女にルベルが振り返る。
「カエル達はもう負けてるよ・・・予備のミーレスも、カエル達の機体だってもうないんだよ?これ以上ルベル君やフラーウスが傷つく所見たくないから・・・」
「「・・・。」」
カエルレウスの言葉に二機は沈黙した。
そして重々しく声を上げたのはフラーウスだった。
「・・・いいさ。降参だ」
「フラーウス!」
「この言葉は向こうに届かない。それは確認済みさ。後はログだけ。それもどうにか出来るんだろう?」
「ああ。この領域内でもはや不可能なことは存在しない。君達のログも、クッキーが何とか出来るだろう」
そう言って士郎は、ふうっと夫婦剣を景色に溶かし、
「・・・我々の勝利だ!!!」
おおおおおおお!!!
沢山の鬨の声が鳴り響く。この熱気は川神だけでなく、無限の剣製に連鎖召喚された者達の声も混ざっているのだろう。
「ほっほ。勝利という物は、いつの時代もいいものじゃの」
朗らかに笑う信玄に謙信は、
「杯の一つも交わしたいところだが・・・我らは時間か」
ゆっくりと英霊達が一人一人川神の市民と思い思いの挨拶をして還ってゆく。
――――握手を交わすもの
――――礼をするもの
――――手を取り合い、僅かな温もりを残して消えていく。
「牛若丸さん!!」
「義経・・・殿」
言いずらそうに義経の名を口にする。
「もう還っちゃうんですか・・・?」
「ええ。これは本来ならあり得ぬ奇跡の時間。我々はレオニダス王やセイバー殿達のような存在ではありません。今この時のみの影法師」
黄金の光が満ちる中、牛若丸は満足そうに頷いた。
「ほんの一時でしたが、迷いは晴れたようですね」
「はい。義経はもう迷いません。義経として、一人の人間として歩んでいきます」
「憧れるのは伝承だけにしてくださいね。・・・もっとも、良いものではないでしょうが」
悲し気に目を伏せ、しかしすぐに顔を上げ、
――――これからの貴女の人生に幸多からんことを
そう言い残して彼女は、彼女達は消えた。
「こちらも閉幕としよう。クッキー」
「我が命ずる!・・・その時まで眠るがいい」
「眠る・・・」
ヒューンと、最後の勢力だった三機も眠りに落ちた。
――――interlude out――――
「ぐっ!っく!?この!」
「そらそらどうした!その程度で世を手にすることなど出来ようか!!」
ドン!とまたも王が、くの字に吹き飛んでいく。
(確かに小娘の気は吸収しているはずだ!なのにどうして・・・)
「気を吸収しているのにと不思議なようだな?」
「!!?」
図星を言い当てられた国王はたじろぐ。
「鎧の衣装を見るに、本命は娘の方だろうが・・・貴様、自分の娘に何をした。あれだけ吸収した気を集約させては何が起こるかわからんぞ」
「・・・そうだとも。この装置には安全性という物が付けづらい。本来ならば我が纏うべきだろう。だがそんな危険なモノを身に付けられるか!我には我に逆らわぬ忠実な娘がいる!娘を介し・・・うご!!?」
ドン!という重い踏み込みと拳の威力にまたも無様に飛んでいく王。
「安全装置の無い鎧を娘に着せただと?貴様何処まで下種であれば気が済むのだ」
ギリリ、と清楚の手に力が籠る。清楚は何時しか国王の娘と自分を重ねていた。
――――誰よりも都合よく使われ孤独に苛む女性を。
「・・・そちらは百代に任せるしかあるまい」
フルフルと頭を振って清楚は拳を構えた。
「国民を守らず、あまつさえ自身の娘さえも犠牲にする貴様に王を名乗る資格はない」
「ぜ・・・ぜ・・・なにを・・・!」
相手はもう死に体。このまま一撃決めれば片がつく。だが、清楚はそれだけでは自分の気が済まない気がした。
「・・・んは。そうだ、いいことを思いついたぞ。確かこうであったな――――」
神速の踏み込み。そこから清楚は、
「オラァ!」
「うぐげ!?」
パァン!と鎧がひしゃげる。
「オラオラオラオラオラオラオラァ!!!」
「つ、潰れる・・・!」
間髪入れずに猛ラッシュ。清楚は気づいてしまったのだ。そう言えば最近読んだ漫画に、オラァ!という掛け声と共に拳の連打を叩きつける少年(というには随分と体がデカイ)の物語が。掛け声と共にラッシュを浴びせる痛快の漫画が。
「裁くのは!俺の拳だ!!!」
拳の連打で宙に浮いていた顔面を渾身の一撃がとらえる。そのまま天井を突き破りキラリと果てに消えた下種を見て、
「ああ!スッキリした!!空想の真似ごとというのもいいものだな!」
実にスッキリした!と背伸びする清楚だった。
「ほいほい。まだやる?」
「ぐ、が・・・」
イムベルと戦闘を始めた燕も鎧を装着したイムベルを圧倒。
神経毒をまき散らしていたものの、燕は自前のスーツと川神院での鍛錬により有害な毒が効かない体となっていた。
「この・・・小娘が・・・!」
「その小娘にやられてるのは誰かなぁー?はじめっから勝ち目なんかないのに、何処からともなく湧き出る自信には笑わせてもらったよん」
「くっ・・・だが姫様が必ずや・・・」
「姫様ってあれ?」
百代と共に宇宙にまで跳んでいた黄金の鎧の姫が落ちてくる。そちらは百代がしっかりと抱きとめているので大丈夫だろう。
「そん、な・・・」
「じゃあ君もおさらばだねん」
――――バンカー!
平蜘蛛の右手が変形し、パイルバンカーのような形を取り、
「いっけぇ!!!」
ドゴーン!
「ぐわぁああああ!!!」
彼もまた壁を突き破ってキラリと星になった。
「はぁ、やっぱり三下ー。毒まで使っておいて本人そんなに強くないんだもん」
盛大にため息を吐いてパイルバンカーとなった手甲を優しく摩っていた。
「それよりモモちゃん
燕の問いにうん?と百代は首を傾げ、
「友達になったんだ。オニュクス王国に居場所は無いだろうから、しばらく
「相手の総大将を友達に、ね。相変わらず百代はなんでもありね」
「旭ちゃん。そっちは?」
「全部片づけたわよ。それにしても清楚。漫画の真似はいいけどどの辺に飛ばしたかちゃんとわかってるの?」
「ふゅーひゅー」
分からないようである。
「まぁ生命維持装置もあるようだしあとは揚羽に任せましょう」
「士郎は!?」
百代の食いつきに旭は苦笑をこぼして、
「もう通信も回復したわ。後は合流するだけね。さ、行きましょう」
旭の掛け声の元、百代達も士郎達の元へ戻る。
――――オニュクス王国の謀略は、屈強な川神の住人と神秘の軍勢の前に脆く崩れ去ったのだった。
後日川神に帰ってきた揚羽によると、
「もういざこざが起きぬようにしてきたから安心せよ!」
「流石揚羽。でも随分早かったな?」
士郎が聞くと、
「あちらの首脳陣は至ってまともだったのだ。絶対王政が暴走していたという事だな。これからは民主主義の日本や他国と同じような政治に替わるであろう」
何処か拍子抜けとばかりに言う揚羽に、
「今回の事を企てた前国王とイムベルは更迭された。処分をどうするかは、見ものだな」
危険な匂いをぷんぷんさせるヒュームに士郎はため息を一つ。
「ヒューム爺さん。あんまり無茶なことするなよ。ひ孫が抱けなくなるぞ」
「・・・ふん。この程度あと数十年は持ちこたえられるわ」
そう言う問題では無いとは思うのだが、ひ孫、という単語に反応していたので大丈夫だろう。
「私達の取り分の話もつけて来たんでしょうね?」
凛が腕を組みながらドーンと告げる。
「もちろんだ小粒から大粒までカット込みで流してくれるぞ」
「それはいい・・・本当に良かった・・・」
凛は、原石だけの提供なら、士郎にカッティングをさせる気だったので、士郎は遠い目をして本当に良かったと空を見る。
「士郎の報酬には時間がかかろう。今しばらく待つが良いぞ」
「そうか。まぁそんなことより揚羽と赤ちゃんが無事戻って来てくれて嬉しいよ。お疲れ様」
「うむうむ・・・労い方を分かっているな・・・腹の子も元気であるぞ」
よしよしと頭を撫でられてポッと頬を朱に染める揚羽にみんな苦笑。
しかし、重要なのはこの戦いに無事終止符が打たれ、また日常が戻ってくるという事だった―――――
「しーろうー」
「・・・うっとおしいぞ百代」
さしもの士郎も毎日文句を言われてはイラつくのも仕方なかった。
「だってぇー」
百代は精鋭部隊としてオニュクス王国と対峙したわけだが、とてもつまらないどころか不愉快だったらしい。それなのに帰ってきてみれば――――
「俺、武田信玄と挨拶しちゃったよ・・・」
「私なんか上杉謙信よ」
「義経は牛若丸さんと・・・」
ワイワイガヤガヤとあの夢のような一時を話す川神学園のみんな。緘口令が敷かれているが、あの戦いに参加したのは川神学園の高等部全てである。
故に、高等部の中では特に縛りもなく、語り草になっているのだ。
「英霊の連続召喚なんて・・・私も色んな偉人に会いたかったー」
「あのな。一応緘口令が敷かれてるんだからそう易々と口にするもんじゃない」
士郎はと言えば、無限の剣の主、ソードマスターの異名で呼ばれることとなり、なんとも言えない気持ちなのだ。
英霊を連続召喚しただけの凛は目立たなかったのでそこまで騒がれなかったが、士郎と桜は別格だった。
「魔術が公の目に触れても大丈夫なんて、違和感が凄いですね」
と桜も言っていたほどだ。しかし桜は、守られる側から守る者へと変化を遂げて内心とても嬉しいらしい。
「今度は桜ちゃんと士郎の一騎打ちが見たいな」
「おいおい。俺も桜も争いごとなんかしないぞ。・・・というか、本当に怒った桜は怖い・・・」
何せ、全方位影の侵食に加え、触った時点でアウトの影の巨人が複数体現れ、サーヴァントすら無効化し取り込んでしまうという特級危険人物に早変わりだ。
殺しはしないだろうが、サーヴァントの属性が反転してしまうなど、人間の精神にどんな影響を及ぼすか分からない。
だから、桜は虚数魔術を学ぶ上で厳しく自分を律していた。もう悲劇を起こさないようにと。
「それよりも、お姫様を川神院で預かることにしたんだろ?大丈夫なのか?」
士郎はいつまでも離れない百代に別な質問を投げかけた。
「うん、戸惑ってはいるみたいだけど、コーラルちゃん・・・ああ、お姫様の名前な?元から結構強くてな。一子と仲良く鍛錬してるよ」
「一子と?そりゃまた・・・」
今の一子は一線級の薙刀使いだそんな彼女について行けるとはなかなか侮れない。
「一子はさー真田幸村さんに褒められたんだってー私も戦国武将に一目会いたかったなー」
「・・・。」
また話が堂々巡りである。
(やれやれ・・・武闘派もこう絡まれると面倒な性格してるな)
というのも、いつもの士郎なら今度機会があったらな、とか適当に濁すのだが、燕と清楚にも羨ましいなぁー。私達も会いたいなーと圧をかけて来てるのでもう何度断ったか分からないくらいなのだ。
当の連続召喚を起こした魔女はというと、
「はぁ?切羽詰まっても無いのにあんな大規模術式使うわけないでしょ。無視よ無視」
とすっぱり言い切っているので、場を整えられるだけの自分ではどうにもできなかったりする。
「はぁ・・・」
「・・・まぁなんだ。奇跡が起きたらな」
「それ、士郎達が奇跡的に大事件になるまで気づかなかったらってことじゃないかー!」
わぁーん!とだだをこねる百代。
はてさてどうしたものかと考えていると、
「ここにおったか!川神院をほっぽり出して何をしとるんじゃ!」
「えー。士郎に愛でられに・・・」
「おい。誤解を招くことを言うな」
ビシ!とツッコミを入れて士郎は佇まいを正す。
「学園長。緘口令の件ありがとうございます」
「なぁに。お安い御用じゃよこの地に来てくれた英霊をもてなすのはそれが精一杯じゃろうて。のう、レオニダス王」
「はい。元々我らは歴史に埋もれた影法師。私やセイバー殿は奇跡が重なって現界し続けておりますが、本来は一時の夢のようなもの。無用に騒がれるより、自分と出会った機会を大事にしてほしいのではないかと思います」
「そういうわけじゃ。モモ、お主もいつまでも衛宮君に絡んでおらんで川神院の仕事をせんか。皆同じ気持ちなんじゃぞ」
「・・・ていうことはジジイもじゃないか」
「そりゃそうじゃ。歴史上の人物に会うなど、どれ程の宝になるか。じゃが、ワシ等はその尊い時間を有意義なものにする使命がある。決して軽んじているわけでもないし、会ってみたかったという気持ちに嘘偽りはない」
「ぶー・・・」
「それにな、コーラルちゃんがお主が居ないと寂しがるでのう。早く行ってあげなさい」
「・・・わかった。じゃあ士郎また」
「ああ。元気に鍛錬つけてこい」
渋々納得して百代は教室を後にした。
「すまんのう衛宮君。モモの悪癖が出てしまって・・・」
「いえ、百代だけじゃありませんよ。あの場にいた生徒達も、皆一様にキラキラした目をしていますから」
「そうか・・・小島先生も前後不覚に陥っていたからのう。余程の奇跡だったんじゃろうて」
「まぁ・・・」
あれほどの奇跡はそうは無かろうと思う。
「じゃが、この話はここまでじゃ。幸い、レオニダス王とセイバーちゃんがおるからのう。二人には迷惑をかけるがよろしくのう」
「おまかせを。残ったものとして存分に鍛え上げましょうぞ!!」
胸筋をピクピクさせながら言うレオニダス。その様子にあはは・・・と返して、
「それより学園長。レオニダスは仕方が無いにしても、セイバーはちゃんと隠してくださいね」
「それなんじゃが・・・何故セイバーちゃんは本名を頑なに隠すんじゃ?レオニダス王のように胸を張ればいいじゃろう?」
聖杯戦争を経験したことのない人の率直な意見だった。
「英霊は過去の偉人をセイバーやランサーという枠に落とし込んで使役する最強の使い魔です。ですが、過去の偉人という事は何が得意で何が不得手か、何が原因で没したのか調べればわかってしまいます。無いとは思いますが『聖杯戦争』のような英霊を使役し戦うことになれば・・・」
「なるほどの。知名度があるという事は、それ即ち弱点ともなりうるか」
アーサー王は?と聞かれれば最強の騎士王で剣と槍が得意で軍団の指揮にも長けた人物、くらいは誰でも出てくる。そう言った情報が敵対者に付け入る隙を与えることになるのだ。
「じゃが、レオニダス王は何故“ランサー”と名乗らないんじゃ?」
「それは・・・」
士郎も頭の痛い問題だった。
「私はスパルタの王!王が名を隠しては軟弱に思われることでしょう。まぁ、セイバー殿ほどともなると考えようですが・・・私は己の名前にも、過去に行った業にも誇りを持っています!故に、たとえ聖杯戦争が訪れても私は堂々と告げましょう!スパルタ国王、レオニダスであると!!」
「この通り、聞かないもので・・・」
「使い魔と言えど人の意思があるか。それはまた難儀なことじゃのう」
ふぉふぉと笑って学園長も教室を後にする。
「今回は衛宮君と凛ちゃんのおかげで助かったわい。また何かあれば知らせてほしい」
「ええ。凛は川神を自分のテリトリーにしたみたいですし、何かあればご相談しますよ」
よろしくのう、と言って学園長も去って行った。
「はぁ・・・」
士郎は深くため息を吐いた。
「マスター?」
「いや、戦いも大変だったけど日常もそれに引きずられて大変だなって」
「はっはっは!それも戦後の醍醐味でしょう。なにより、マスターの勇猛さが広く伝わって私は嬉しい限りですぞ?」
「本当は落ちこぼれなんだけどな・・・まぁ、精々聖杯戦争が起きないよう注視しておくとするさ」
そう言って窓から空を見る士郎。
戦力的には申し分ないが決して油断が出来ないのも確か。一つの大規模な戦いを終えて、士郎は勝って兜の緒を締めるがごとく、警戒を怠らないのだった。
はい。オニュクス王国編終了です。個人的にこっちは消化試合かなぁと。スパルタ化した川神兵の精鋭ですよ?お姫様は百代じゃないとダメっぽいですけど他はねぇ…。
某オラオラは完全に思い付きです。私の物語上、勝手に利用されるという事を清楚は嫌っているはずなので遠慮なくボコボコにしました。
オニュクス王国編も終わったという事でまた日常かな。何かリクエストもあれば考えていくのでどしどし感想お願いします。
投稿が遅くなり、とても申し訳ありません。最近涼しくなってきたのもあり、ようやっと回復に向かっています。度々体調を崩す貧弱作者ですがまだまだ続けて行きますのでよろしくお願いします。