お休みを頂いて、いい題材が浮かんだので書きたいと思います。
タイトルにもある通り今回はセイバーとの回です。
腹ペコ負けず嫌い王を士郎は満足させられるのか!?
初夏。元々暑かった春が過ぎ、夏がやって来た頃。
士郎は一枚のチケットを前に唸っていた。
「うーん・・・」
士郎の前には前にみんなと行った、グラウンドワンの遊び倒し券なる物。
昨日の買い出しの際、福引が行われていたので参加した所、三等のこの券が当たったのだ(一等はまた箱根旅行)。
士郎の悩みはというと、
「お二人様・・・なんだよな」
そうこの券はお二人様限定。団体様なら良かったのだが今回は二人だけ。
「手放すってのもありだけど・・・」
それはなんだかもったいない気がして。どうするか悩む士郎。
そんな時ふと思い出した。
『あんたもいい加減察しなさいよ!セイバーは士郎と遊びたいのよ!』
前にグラウンドワンに行くときにそんなことを言われた記憶がある。
「・・・よし」
予定は決まった。今日はセイバーと遊びつくそう!
決まれば即行動。今日は学園も休みなので一日遊べるだろう。
「セイバー。いるか?」
「はい。シロウ」
セイバーの部屋に行って遊び倒し券の事を話す。
「それはいい!あそこはもう一度行ってみたかったのです。暑くなってきましたし、プールも興味深いです!」
「あはは。じゃあプールに行こうか」
「はい!・・・しかしシロウ、本当に良かったのですか?」
「ん?なにがだ?」
「その・・・私と・・・二人きりで・・・」
赤くなってもじもじとするセイバーに、
「いいんだ。俺がセイバーと遊びたいって思ったんだ。それに約束したろう?必ずセイバーとの時間を作るって」
「シロウ・・・」
「善は急げだ。この後予定とか無いか?」
「はい。すぐに準備します。30分くらい時間を貰っていいですか?」
「ああ。俺も準備するからな。玄関で待ってるよ」
そう言って士郎はセイバーの部屋を後にした。
「・・・。」
セイバーを待つ間士郎は何処かそわそわしていた。
(うーん。セイバーとデートか・・・少し緊張する)
結婚したとはいえ、この世界に来てから彼女と二人きりなど初めてだ。二人で買い物に行ったりはするのだが・・・
「シロウ」
「ああ、セイ・・・」
出かけた言葉が引っ込んだ。
「・・・似合いますか?」
恥ずかしそうにもじもじとするセイバーの姿に目を奪われる。
いつもとは違う、動きやすさをメインにした服装だ。だが、セイバー本来のまるで絵画から出て来たかのような雰囲気は残っている。
とても可憐であった。
「・・・」
「シロウ?」
不安そうにセイバーが呼びかけると、士郎ははっと夢から覚めたように、
「あ、ああ。凄く似合ってる。セイバーは綺麗だから服装が変わるとインパクトが凄いな・・・」
思わず目をあちらこちらに彷徨わせてしまう士郎。
「私が・・・綺麗・・・」
セイバーも顔を赤くして俯いてしまった。
しばらく互いに恥ずかしそうにしていた二人だが、士郎がおずおずと手を出した。
「えっと・・・行こうか」
「・・・はい」
セイバーは士郎の手を取り、二人は衛宮邸を後にした。
ジリジリと強い日差しが降り注ぐ中、士郎とセイバーは手を繋ぎグランドワンへと向かっていた。
「楽しみですね」
「ああ。もうこの暑さだからな。きっとプールは涼しくて気持ちいいぞ」
ミーンミーンと鳴くセミの声に、プールは最高だろうな、と思う士郎。
しばらく歩き、グランドワンに到着し、遊び倒し券を見せ、着替えの為それぞれの更衣室に分かれた。
男の士郎は着替えがすぐ終わってしまうので案内板の前で待っていた。
「流石夏。お客も満員御礼だな」
外は暑いからかプールはお客で賑わっていた。
「どこから回るのがいいかな・・・流れるプールでひとまず置いて・・・」
等と予定を考えていると、
「シロウ」
セイバーがやってきた。
「ああ、セイ・・・」
振り返って返事をしようとした士郎だったが、セイバーの新しい水着に心を奪われた。
「・・・」
「リンとサクラに、こんなのも似合うだろうと勧められて着てみたのですが、どうですか・・・?」
「ああ・・・とても似合ってるよ素敵だ」
セイバーは過去に見た白のビキニではなくブルーのビキニだった。
たかが色を変えただけと思うなかれ、セイバーは絵画から出てきたような美しく、凛々しい容姿。加えて白い肌がブルーのコントラストに実に似合っている。
「さぁ、行きましょう。今日は遊び倒さねば!」
「・・・よし!行こう!セイバー!」
ということでまずはセイバーの希望でスライダーを選ぶことにした。
「この川下りはとてもいい。以前来たときはこの大きな川下りはできなかったので期待しています!」
「あはは。セイバーは怖いもの知らずだな。この高さになると怖がる人も多いらしいぞ?」
ウキウキとするセイバーに笑いかける士郎。
結構な列だったがセイバーと楽しく話していれば束の間のことだ。
「ついに私たちの番ですね!」
「ああ。結構高いな・・・」
これは確かに怖がる人もいるなと、士郎は下を覗きこむ。
「お二人様ですね?」
その言葉に返事をし、係員の人からドーナッツが二つくっついたような浮き輪を預かる。
「スタートまでは後ろで抑えてますのでゆっくり乗ってくださいねー」
「シロウ。ここは先陣を切らせてください!」
「ああ。いいぞ」
ということでセイバーが前、士郎は後ろに乗る。
「では!行ってらっしゃいませー!」
それまで浮き輪をつかんでいた手が離される。
「お、お、おおおおおおおお!」
「うおおおおお!」
中々早い初速でパイプの中を勢いよく滑り、所々で軽くジャンプしたり。パイプの天井部分が無くなり、景色が見えたと思ったらまたパイプの中へ。ぐわりぐわりと激しい揺れに揺られてラストスパート。
「シロウ!出口です!」
セイバーの声が聞こえたと思ったら、ざっぱん!とプールに放り出される。
「ぷはぁ!」
「素晴らしい!長い列を待ったかいがありましたね!シロウ!」
「ああ!こりゃ人気も出るな!」
勢いのあるスライダーは中々高得点だった。
「もう一度・・・いや、列が・・・」
なんてブツブツ言いながら、もう一度並ぼうか悩んでいるセイバーの姿にクスリと笑い、
「セイバー。スライダーはほかにもあるぞ?一通り制覇してみたらいいんじゃないか?」
「なるほど。その通りですね!次はどの川下りにしましょうか・・・」
浮き輪を返してパンフレットとにらめっこするセイバーを見て、
(連れてきてよかったな)
士郎も自然と笑顔になるのだった。
しばらく、様々なスライダーを回り、士郎とセイバーはいったん休憩にすることにした。
「はぁ。結構疲れたな」
「そうですね。こんなにも様々な川下りがあるとは思いませんでした」
施設の天井ギリギリまで使われているここの様々なスライダーは見事セイバーのハートを射止めたようだ。
「スライダーはほぼ行ったから波のあるプールでも・・・」
買ってきたトロピカルジュースを飲みながら士郎がそう言った時、
『レディース&ジェントルメェン!!ご来場の皆さん今日もありがとうございます!!!』
「?」
「何か始まるのでしょうか?」
突然の放送に士郎とセイバーだけでなく、休憩していた様々なお客が放送に耳を傾けていた。
『本日は、当店最高入客数を記念しましてこのような催しをさせていただく形になりました!!』
その言葉と同時にザパン!と大きな水上ステージが浮き上がった。
『カップル二人一組にて登録可能!水上の戦場で勝利を競う、ウォーターバトルロイヤルです!』
「「「「おお~」」」
圧巻の水上ステージに歓声が上がる。
『ルールは簡単!カップルは手をつなぎ、空いた手には水鉄砲を装備してもらいます!参加者をプールに落とし、勝ち残ったカップルにこちらを贈呈!』
ババン!とモニターに移されたのは、高級洋菓子店、ミシェルの季節の洋菓子贈呈券の文字が。
「シ、シロウ!ミシェルというのはあの雑誌にあった人気の菓子の店ですか!?」
「多分そのミシェルだろうな。何気にすごくないか?販売開始2時間でほとんどの菓子が売り切れるって噂のお菓子屋さんだったはずだぞ・・・」
かく言う士郎も実際に行ったことはなく、商店街のはずれから長い行列があるのを見ただけである。
『受け付けを開始します!出場は必ず男女一組のカップルでの出場です!さあ高級洋菓子店ミシェルのお菓子を手に入れるのは誰なのか!奮ってご参加ください!』
今から受け付けを開始し、戦場となるステージは、しばらく水上アスレチック扱いで遊べるようだ。
「参加してみようか?」
うずうずとしているセイバーに言ってみると、
「はい!騎士たるもの、いかなる戦場であろうと勝利を掴んで見せます!!」
セイバーの目にはすでに火が灯っており、やる気十分のようだ。
「じゃあ登録しに行こうか」
セイバーを楽しませるにはいいイベントが開催されるなと、士郎も内心ワクワクしていた。
「水上バトルロイヤル受け付けはこちらでーす」
「押さないでくださーい!」
「どうやら盛況らしいな」
「ええ。どのカップルも闘志に燃えているようです」
それほど、高級洋菓子店ミシェルの菓子・・・(特にケーキ)は人気なのだろう。
「次の方、どうぞ」
「お、俺たちの順番みたいだぞ」
登録を済ませ、士郎とセイバーは戦場となる水上アスレチックに来てみた。
「水上だけあってとても不安定ですね」
「ああ。それに滑りやすい。こりゃあかなり苦戦を強いられそうだな」
他の出場者も戦場視察に来ているようだがその顔は一様に厳しいものだ。
(セイバーは滑る陸地での戦闘の心得はあるのかな)
水上を走ることのできるセイバーだがあえて、滑る戦場というのは経験がないように思えるが・・・
(まぁ大丈夫か。セイバーを信じよう)
セイバーほどの強者ならきっと大丈夫だと信じることにした。
そしてイベント開催と相成ったわけだが、
「せい!てや!」
「うわああ!?」
「きゃああ!?」
手をつないでいなければならない上、もう片方の手には水鉄砲を装備しているので直接押したりはできないのだが、セイバーは華麗な足さばきでライバルをプールに落としている。
「これはいいものですね!シロウ!鍛錬にもなりますし戦いがいがあります!」
「そう言われると俺も張り切らないとな!」
無謀にもこちらに走ってきたカップルの足元に水鉄砲を向ける。着弾した水で滑りやすくなり、カップルはそのまま滑って落ちてしまった。
「やりますね!ではこちらも!」
セイバーは士郎の的確で堅実な戦いに一層闘志を燃やし、素早い動きで挑戦者達をプールに落としていくが、
「これは信頼されてるというべきなのか・・・」
割と頻繁にセイバーのパワーで宙に浮かされる士郎は着地に非常に気を使っていた
「そこ!」
「うおおおお・・・」
ブンブンとこん棒か何かのように振り回される自分。もはや戦闘のことなど考える暇もない。
ついには、
「行きますよ!シロウ!」
「え?」
遠心力がついたなと思ったら敵対するカップルにムチか何かのようにぶつけられた。
「あ痛!?」
「うおおおお!?」
「そんなのありぃいい!?」
ドボーン!とカップルがまたプールに落ちた。
「つつ・・・セイバー、さすがに俺をぶつけるのは――――」
「むむ。シロウ。最後の相手のようです」
へ?と見上げてみると、
「お前さんらがダークホースだな」
「あんなに華奢な体で彼をブンブン振り回すんだもの。人は見かけにはよらないのね」
マッスルなカップルがいた。ミチミチと聞こえてきそうな上腕二頭筋に、シックスパックに割れた腹筋。
どうにも出場する場所を間違えている気がするが、彼らもオフなのだろうと考えを改め頭を振った。
「貴方方も、優勝狙いですか」
「ああ。ちょうど減量期間も終わったんでよう。噂の菓子、気になるじゃねぇか」
「そうよー。たまには甘いものも食べたいわ。減量から解放されたら余計にね!」
フンス!と闘志を燃やすマッスルカップルに士郎も油断なく構える。
「いいでしょう。他の挑戦者も粗方片付きましたし、決戦と行きましょう」
セイバーも完全に乗り気で士郎としてはいささか頭が痛い。
が、セイバーの口はすでに高級スイーツの形になってしまっているのだろうし、何より勝負とくればセイバーは決して引かないだろう。
「本気出すか」
「ええ。私も少々抑え気味でしたが彼らとなら多少解放してもいいでしょう」
「・・・。」
抑え気味だったのはいいとして、もう少し自分を大事にしてほしいと思う士郎であった。
「さあ!いくぜ!(わよ!)」
「迎え撃ちますよ!シロウ!」
「ああ!俺たちのチームワーク、見せてやろうぜ!」
ドンドン!と水上アスレチックを踏みしめてやってくるマッスルカップル。
「シロウ!」
「任せろ!」
トン、と地を蹴り、男性の背後に。
「はああ!」
ドン、と男性を踏み台として押し出す。
「こんなもんじゃ――――」
「私もいることをお忘れなく!」
士郎を軸に同じく地を蹴っていたセイバーも彼の背にトンと乗り、踏み台にする。
「うお、うおおおおお!」
制限を一定解除したセイバーの圧力はすさまじく、流石のマッスルボーイも態勢を崩しかけた。
だがそこで、
「こらこら!早々にリタイアする気!?」
ぎゅん!と力技で引っ張り上げられる。マッスルボーイは体勢を立て直し、逆に彼の背に乗る形になっていた士郎とセイバーは体勢を崩す。
「セイバー!」
「はい!」
今度はセイバーが跳躍。それにつられる形で士郎も飛び上がる。
「あぶねぇあぶねぇ・・・助かったぜ」
「油断大敵。見なよあの二人。ピンピンしてる」
二人が見る先には無事着地したセイバーと士郎。
先ほどの一撃必殺体捌きに態勢を崩されてもすぐ対応する。
互いに強者だと再認識し構える。
「いくぜ。ケーキは俺らのもんだ!」
「その意気だよ!」
そうしてマッスルカップルは士郎とセイバーに持ち前の鍛え上げた体で挑む。対する士郎達は・・・
「なかなかの膂力だ。ちょっとやそっとじゃ落ちてくれないぞ」
「ええ。正しく体を鍛えている者のようです。ならば・・・」
またも不安定な地面を蹴ろうとしているセイバーに、士郎も動きを合わせる。
果たしてミシェルの購入権を獲得したのは・・・
「ぬぬぬ・・・俺らのマッスルボディでも駄目だったか・・・」
「いい線行ってたんだけどねぇ・・・」
マッスルカップルは二位の表彰台に上がっていた。
「やったな!セイバー!」
「ええ、ええ!勝利を掴みました!」
授与された高級スイーツ店ミシェルの優先購買プレートを持ってはしゃぐ士郎とセイバー。
あの後激しい戦闘の末、優勝を勝ち取った二人はこの特設表彰台に、一位の栄冠を手にして立っていた。
『それではインタビューと行きましょう!』
三位のカップルから順番にインタビューに答え、ついに士郎とセイバーに。
『最後に、見事優勝を勝ち取った若い二人組に聞きたいと思います!イベントはどうでしたか?』
顔を見合わせ照れた様子でセイバーは、
「彼が・・・シロウがいなければ勝ち取れなかった。そう、思います」
「俺も彼女でなければここに立ってはいなかったと思います」
『かーっ!なんともお熱いカップルのようです!それでは以上、特設イベントでした!引き続きお客様におかれましてはプールを楽しんでいただきますようお願いします!危険な行為はだめダゾ☆』
パチパチと拍手の鳴る中、士郎とセイバーを含めたカップルは降壇し、通常の静けさが戻ってきた。
「チケットも手に入れたし、セイバーはどうする?」
「シロウが迷惑でなければ、もう少し遊んでいきたいです・・・」
顔を赤くしながらセイバーは言った。
「せっかくの遊び倒し券だしな。俺ももう少しセイバーと居たい」
「はい。では早速・・・」
また水上スライダーらしき場所に行こうとした二人。しかしそこに声をかける人の姿があった。
「よう。さっきはお疲れさん!」
「お邪魔してごめんなさいね」
「貴方方は・・・」
最後に競ったマッスルカップルだった。
「先ほどは失礼しました」
「いやいやいいってことよ。遊びだったわけだしな。それよりお前さんら強いなー。そこのボーイはともかくそっちの彼女なんて華奢な体してるのによう!」
「普段から鍛錬はしていますから。そういえば貴方方は・・・」
「ああ、名乗るのが遅れたね。彼はケビン。そして私はマーレだよ。この通り二人でボディビルやってるんだけど、ちょっとした話を聞いてね。日本に来日したのさ」
「ケビンさんとマーレさんか。俺は衛宮士郎、こっちはセイバーです。ボディビルを初めて長いんですか?」
「結構な。これでも有名な大会で優勝してるんだぜ?」
むん!とマッスルポーズをするケビン。
「ぼでぃびる・・・何かのスポーツのようですが・・・すみません私はそういうのに疎くて・・・」
「おや。そうなのかい?ボディビルってのは・・・まぁ、いかに美しい筋肉のついた身体を作れるか、ってことさ。詳しくは彼にでも聞いてみて。ハマると追及したくなっちゃうから!」
「はい。帰ったらシロウに聞いてみます。そういえば、お二人はどこの出身なのですか?」
来日した、という単語に疑問を覚えてセイバーが聞いてみると、
「自由の国、アメリカだぜ!」
「ほうほう・・・では大陸を渡ってきたということですか・・・」
「そうそう。それでね、トレーニングしてる時に面白い話を聞いたのよ」
「面白い話?」
首をかしげるセイバーだが、
(あー・・・なんとなく読めたぞ・・・)
士郎は苦笑を禁じえなかった。
「なんでも、スパルタの英雄レオ・・・レオ・・・」
「レオニダス、でしょ?」
「そう!そんなビックネームの人が鍛える肉体てのがすごいらしくてな?興味があって来日したんだ」
「このカワカミっていう場所にいるらしいんだけど・・・お二人さん知らない?」
やっぱりか。というか海越えたのか・・・
と士郎が何とも言えない顔をしていると、
「レオニダス王ですか。それなら家にいますが・・・」
「「What!?」」
何気なく答えたセイバーにケビンとマーレは驚き、
「もしかしなくても家主!?」
「ぜひ!ぜひ会わせてくれ!」
「お、落ち着いてください!」
過剰反応した二人を落ち着かせ、連絡先を交換することにした。
「君たち二人に会えてよかったよ!」
「連絡まってるからね!」
「あはは・・・はい」
バシバシと肩をたたかれマッスルカップルことケビンとマーレが去っていき、はあ、とため息をつく士郎。
「シロウ、すみません。あんなに迫られるとは思いもよらず・・・」
「セイバーが悪いわけじゃないさ。しかしそうかー海越えちゃったかー」
わかっていたことではあるがもう噂が広がってるのかーと頭を抱える士郎。
「・・・まーた凛に魔術の秘匿がーとかいわれるんだろうなー・・・」
「あはは・・・そればかりは仕方のないことかと。本来はリンが正しいのですよ?シロウ」
深~い溜息をついて頬をパンと叩き、
「まぁなるようになれだ。行こうぜセイバー。またスライダー行くつもりだったんだろう?」
「は、はい。次はあちらの・・・」
そうして日が暮れるまでプールを堪能した二人は後日、
「これ、購入優待券です」
噂のミシェルでスイーツを買い、
「美味い!」
「ええ!美味しいです!シロウ!」
これは並ぶ人もいるわけだと納得の美味さに舌鼓を打ち、
「なになに?」
「スイーツじゃないか!」
「凛、天衣。みんなも食べるか? 食べるだろうなと思ってホールケーキを・・・」
「「「食べる!!!」」」
家にいた者たちが一斉に皿をとった。
「どれにしようかしら・・・」
「この人数だ食べられるのは一種類のみだな」
「私はこっちのイチゴの・・・」
「天衣さん、私のと少し交換しません?」
「あ! ずるい! 姉さん、私も・・・」
一気に姦しくなった居間に、士郎とセイバーはお互いの顔を見つめてクスクスと笑った。
「また行こうな、セイバー」
「はい。是非とも」
輝かしいセイバーの笑顔に士郎も笑顔を浮かべて、次の機会を楽しみにするのだった。
なんとか、何とか書けました。せっかく復調してきたというのに外出先で何やら喉に異常を感じまた臥せっています。
たくさんお休みをいただいてしまい、申し訳ありません。しかし、たとえノロノロ更新でも、最終回とか終わりにします、など言わない限り続けていきますのでどうぞよろしくお願いします!