真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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みなさんこんばんにちわ。相変わらず投稿の遅い作者です。

今回は前回のフレッシュさとは違い落ち着いた雰囲気が出せればいいなと思っています。


それでは!


夏祭り

「ねぇ衛宮君。衛宮君は夏祭り行くの?」

 

「夏祭り?」

 

唐突に千花から振られた話題に、士郎はすぐには返事を返せなかった。

 

「夏祭りか・・・みんなは当然行くんだよな?」

 

「はい!浴衣を着て~夏を満喫するのです!」

 

「そんで、ヨンパチは誘蛾灯のごとく浴衣女子に吸い寄せられて写真撮るんだろ?」

 

「あったりまえじゃねぇか!夜の花って感じで・・・!」

 

「猿がまたなんか言ってますけどー」

 

相変わらずのやり取りに士郎は苦笑を浮かべた。

 

「いつやるんだ?」

 

「今週の金曜日。お嫁さん達と一緒にどう?」

 

「うーん・・・確かに良さげ、かも。ここのところ仕事に掛かり切りだったからなぁ」

 

うれしいことに、剣と包丁の依頼がドサッと入ったところで、士郎はここ数日てんやわんやだったのだ。

 

「ちょうど休憩も必要だろうと思ってたし、行こうかな」

 

悩んだ末、行くことに決めた。これもいい機会だろう。

 

3-Sに赴き、義経やマルギッテ達に夏祭りのことを伝える。

 

「夏祭り!?うん!義経も行きたい!」

 

「夏祭り・・・ですか。お嬢様も行くのでしょうか?」

 

「夏祭り・・・ねぇ」

 

「みんなどうだ?行かないか?」

 

「義経は行く!士郎と行きたい!」

 

「マルギッテはどうだ?多分クリスも来ると思うけど」

 

「お嬢様次第ですが・・・問題なければ私も同行しましょう」

 

「あたいはパス。英雄様の護衛が・・・」

 

「その日は別の者に頼もう。羽を伸ばしてくるがいいぞ、あずみ」

 

「英雄様!?」

 

当然だとでもいうように言う英雄にあずみは思わず振り向く。

 

「よろしいんですか・・・?」

 

「うむ。これも兄上の妻として必要なことではないか。我に遠慮などせず行ってくるがいい!」

 

「ありがとうございます、英雄様!」

 

「英雄、俺からもありがとう。あずみの予定は心配だったんだ」

 

士郎からも礼を言う。社会人として活動しているあずみには一筋の不安があったのだ。

 

「なに、これも福利厚生の一部よ!帰ってきたらまた頼むぞ?あずみ」

 

「かしこまりました、英雄様」

 

「これでS組は大体かな・・・あ、そういえば心がいないな。心はいないのか?」

 

あたりを見回し姿が見えないことに気づく士郎。

 

「不死川なら休みだぜ」

 

「え?」

 

「なんでも家庭の用事と言ってましたね」

 

「家庭の用事・・・あ」

 

そういえば心の家で作ったブランド菓子の発売が今日だった気がする。

 

「後で心にも連絡しとこう」

 

今は忙しいだろうから夜にでも、と考えて士郎はS組を後にする。

 

 

 

 

 

放課後。仕事が溜まっているので依頼は受けず、普通に帰宅した士郎。

 

「ただいまー」

 

「おかえり」

 

「おかえりー!」

 

史文恭と天衣が出迎えてくれた。

 

「あれ?凛達は?」

 

「桜は弓道部。凜は買い物に出かけたし、セイバーはまた決闘だろうよ」

 

と史文恭が教えてくれた。

 

「清楚は文学を頑張っているし、バゼットも「呼びましたか?」うわぁ!?」

 

背後に立っていたバゼットに士郎は仰天した。

 

「帰ってきたんだな・・・」

 

「そうですが・・・士郎君、気が緩みましたね?この程度の接近に貴方が気づかないわけがない」

 

「うう・・・面目ない」

 

お小言をもらって小さくなる士郎。

 

「まぁこの辺りは平和ですしいいでしょう。それで、私に何か用ですか?」

 

「ああ、今度の金曜、夏祭りがあるらしいんだ。一緒にどうかと思って・・・」

 

士郎の言葉に、ふむ、と考え、

 

「申し訳ない。今回私は一緒には行けそうもない」

 

断られてしまった。

 

「大学、忙しいのか?」

 

「いえ、今回は出店する側なので。依頼の一つですね」

 

「へぇ、珍しい依頼もあるもんだな・・・何を売るんだ?」

 

「ビールとイカ焼きです。なんでも、依頼主の家が酒造らしく・・・」

 

と、これまた珍しいことにも出会い、士郎は嫁たちに連絡するのであった。

 

「それじゃ」

 

「「「いただきます」」」

 

「もぐもぐ・・・金曜日夏祭りなんだってね」

 

清楚がおかずをもぐもぐとしながら言った。

 

「ああ。みんなとも一緒に行けたらと思うんだが・・・」

 

「私は問題ありませんよ、シロウ」

 

「先輩、私も・・・」

 

「まぁ軒並みOKでしょうよ」

 

セイバーはキリッと返事をし桜はやや控えめに、凛は堂々と答えた。

 

「翔一達も来るのでしょうか?」

 

「みんなくるってさ。百代が依頼中なのがちと懸念点だけどな」

 

百代はまたもや護衛依頼らしく海を渡っている。

 

「武神を護衛につけるなんて、どんな荒事を警戒しているのかしら」

 

「一応裏の人間とは接触しないようにしてるらしいけどな」

 

川神院というバックがあれば面倒ごとにも巻き込まれないだろうが、一応注意しているらしい。

 

「シロウの仕事のほうはどうですか?」

 

「なんとか落ち着きそうだよ。やっぱり蔵のものを放出したせいか、刀剣類が多いな」

 

衛宮邸改修の資金稼ぎとして死蔵していた蔵のものを放出し、それを聞きつけた剣術家が買い求め、それに間に合わなかった人たちが注文に振り切ったという形だった。

 

「包丁のほうも順調なんでしょ?」

 

「そっちはまずまずだな。なまじ刀剣類を初めに売り出したこともあって、こっちの知名度はまだまだだな」

 

「リンの買ってきた雑誌に士郎の打った包丁の特集が掲載していましたよ」

 

「本当か?いやーうれしいな」

 

どうにも、有名な板前さんの仕事道具の一つとして活躍している記事が出たようだ。

 

「夏祭りか。どんな感じなんだろうな」

 

林冲が首をかしげながら言った。

 

「屋台が立ち並んでイベント事とかもあるそうだぞ」

 

「イベントかぁ・・・この前の士郎とセイバーが買ってきたお菓子の優待券みたいなのがいいわね」

 

「あの後個人的に買いに行ったんだろう?」

 

「ええ。でもさっぱりだったわ。流石、二時間で売り切れるって噂は伊達じゃなかったわね」

 

「もう一度くらい食べたかったんですけどね」

 

凛と桜は一緒に買いに行ったようだが、並んでる途中であえなく閉店という事態に見舞われたようだ。

 

「あれは美味しかったですね。もう一度食してみたいものです」

 

セイバーもケーキの味を思い出しているのかコクコクと頷いている。

 

「菓子もいいが今回はバゼットが酒の売り子をやるのだろう?」

 

「そうだったそうだった!売るのはビールだけなの?」

 

「ええ。他にイカ焼きもありますが・・・依頼主が酒造ということで酒がメインですね」

 

「そういえばバゼットは年齢的にも酒はOKなのだろう?おまえ自身、どのくらい飲めるのだ?」

 

と、史文恭に問われたバゼットは、

 

「酒など、感覚を乱す飲み物にすぎない。なので私は飲みません」

 

きっぱりと断言するバゼット。

 

「そんなバゼットさんがなんでお酒の売り子に?」

 

清楚の言葉に、痛いところを突かれたという風に一瞬ピタリと止まるバゼット。

 

「・・・その、川神大にも決闘をよしとする気風があります」

 

後ろめたいことを話すようにバゼットは切り出した。

 

「そんな噂は聞いてるな。清楚の文化大でもそうなんだろ?」

 

「うん。私も何度か決闘してるよ」

 

清楚の言葉に、相手方の心配をした士郎だがブンブンと頭を振って考えないことにして、続きを促した。

 

「登校初日から絡んでくる馬鹿を懲らしめたところ何やらボスのように扱われてしまって・・・」

 

「あっはっはっは!!それで?」

 

凜が子分を引き連れるバゼットを想像したのだろう、大きく笑った。

 

「む・・・何やら納得のいかない笑い声ですが・・・ともかく、子分のような存在が決闘を繰り返すごとに増えてしまって・・・あまりに慕ってくるので、私も邪険にはできず・・・」

 

その中に酒造の子がいて・・・ということらしい。

 

「いいことだと思うけど、バゼットにしては珍しいじゃないか」

 

「そうね。あんまりずるずるしないタイプだと思ってたけど」

 

「バゼットさんあんまりそういうのしないタイプですからね」

 

士郎や凛、桜も不思議そうにしていたが事実らしく、バゼットもこの川神で順調に影響を受けているようだった。

 

「あ、そうでした。この前の甘味ほどではありませんが、ビール一杯無料券がありますので、後ほど配ります」

 

「俺たちはまだ飲めないけど・・・史文恭と天衣にはよさそうだな」

 

当日は、あずみやマルギッテも来ることだしそちらに配るのもいいのかもしれない。

 

「楽しみだな」

 

士郎はそう呟いて残りのご飯を食べるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

夏祭りの話が出て数日。いよいよ今日は金曜日。今日は鍛造を早めに終わらせた士郎は、予定地に出向こうとしていた。

 

「おーい、そろそろ行くぞー」

 

そう士郎が声をかけるとパタパタと浴衣姿のみんながやってきた。

 

「みんな似合ってるよ。綺麗だ」

 

「し、士郎・・・」

 

きゅむっと恥ずかしそうに士郎の袖をつかむ林冲。

 

今日は揚羽が融通してくれた、みんなの浴衣の初披露でもあるのだ。

 

「揚羽には感謝ですね。こんな艶やかな装いを貸してもらって」

 

「懐かしいですね・・・前は藤村先生が貸してくれましたっけ」

 

「あれでも藤村組の三代目だからな・・・いろいろ無茶もしてくれたよ」

 

今は懐かし冬木の虎を思い出しほろりとする士郎達。

 

「遅くなった」

 

「ごめんねぇ!それでどう!?」

 

「うう・・・私なんかに似合うかな・・・」

 

史文恭と清楚、天衣も浴衣姿でやってきて一層華やかになった。

 

「うん。みんな綺麗だよ」

 

それぞれのイメージに合った浴衣姿に士郎は自然と答える。

 

「さぁ行こう」

 

「おー!」

 

「うふふ。先輩」

 

「あー!抜け駆け!」

 

「今更そんなことでワタワタすまいよ。なぁ、天衣」

 

「・・・。」

 

天衣は林冲と桜に腕を抱かれた士郎を羨ましそうに見ていた。

 

「なんだ。お前もか?」

 

「な、ななななな!?」

 

先ほどの顔を隠すようにバタバタとする天衣。

 

「あっはっはっは!うちの旦那は罪作りだな」

 

そんな天衣に笑って史文恭はきょろきょろとあたりを見渡す。

 

「そろそろ出店があってもいいころ合いだが・・・」

 

「よう」

 

「あずみ」

 

ひょこっと通路から出てきたあずみに士郎は、

 

「あずみも今日は浴衣なんだな。綺麗だよ」

 

「・・・ッ」

 

恥ずかしそうに身悶えしながら、

 

「行くぞ!」

 

「ああ!?あずみさん!」

 

「独り占めはずるい!」

 

彼女が強引に引っ張っていったため、振りほどかれた林冲と桜は文句を言いながら追いかける。

 

「私たちも行こう?」

 

「うむ。・・・天衣、何を悶絶しているのだ。いくぞ」

 

「だって・・・!でも・・・」

 

「天衣。シロウならばいつでも貴女を受け入れてくれますよ」

 

などなど、姦しくも夏祭りが行われている所へと向かっていくのであった。

 

 

 

 

 

「ついたな」

 

「わあ!」

 

やんややんやという喧噪と、屋台の明かりで照らされた通りを見て一様に驚く。

 

「なかなかの規模ではないか」

 

「そうだな。キャップ達はと・・・」

 

士郎があたりを見回すと、

 

「あ!」

 

ピコン!と耳としっぽが反応するように、

 

「士郎~!」

 

一子がやってきた。

 

「ほら、パスだ」

 

「おっとっと・・・一子も浴衣か可愛いぞ」

 

「えへへ~」

 

撫で繰り回されて幸せそうに一子もくしくしと頭を擦り付ける。

 

「お、来たなー?」

 

「し、士郎先輩!」

 

「いけーまゆっちー!お前の色気でシロ坊のダウン取って行けー!」

 

「またこの駄馬は・・・あなた、私も忘れちゃいやですよ?」

 

だ・・・ッ!?と驚いている由紀江を置いて、風間ファミリーのみんなは思い思いに挨拶してくれる。

 

「やっと来たな」

 

「嫁さん山ほど抱えて・・・うらやましいぜ」

 

「あ、今の南さんに・・・」

 

「うおお!?言葉のあやだ!勘弁してくれや!」

 

「・・・しょーもない」

 

「どうだ!士郎!マルさんの浴衣は!」

 

「お、お嬢様・・・」

 

「ああ、よく似合ってるさ」

 

「・・・。」

 

「そういえばこんな時一番はしゃぎそうなキャップは・・・」

 

「ああ、見ての通りもう堪能してるよ」

 

モロに促されて屋台群を見ると。

 

「またゲットだぜ!」

 

「おうおうこのガキャー!うちの景品全部持ってく気か!?」

 

「お前は出禁だ!一発で一等当てる奴があるかこん畜生!」

 

「うわー・・・」

 

もはや豪運の独壇場である。

 

「あのままだと風間君、全部出禁にならない・・・?」

 

「ま、まぁ食べ物系はちゃんとお金払ってるし問題ないんじゃないか・・・?」

 

なんとも言えないところである。

 

「士郎、あっちの屋台の焼き鳥がおいしそうだったんだ。いっしょに・・・・いかないか・・・?」

 

と林冲は最近覚えた上目遣いを行使した。

 

「ああ、いいぞ。まずはそこから行こうか」

 

「・・・。」

 

ところが士郎には全く効かなかった。

 

「・・・マジ?今のスルーなの?」

 

「士郎のことだから背丈の差があるからとか思ってんだろ」

 

「ほんとに鈍いよね」

 

不発した林冲が陰ながら悶えているのを見てガクト達はひそひそと話していた。

 

そんな折、

 

「おい。串焼きもいいがまずは喉を潤したい。バゼットの店に行くぞ」

 

「もぐ・・・それもそうだな。こっちだぜ」

 

あずみは祭りの内容や屋台の位置まで頭に入っているようで先導してくれた。

 

そんな中にもかかわらず、

 

「は?この最難関の龍を最速クリア?長いこと型抜き屋やってるけどお嬢ちゃんには脱帽だぜ・・・」

 

とか、

 

「マルさん!射的にもコツとかあるのかなぁ?」

 

「はい。手振れは最低限に景品の重心を考えて・・・」

 

とか、

 

「わあ、わたあめ!」

 

「美味しいですね!」

 

とか。移動しながら出店に寄って行く。

 

衛宮家+風間ファミリーなので実に姦しく忙しなかったが、

 

「「「!」」」

 

凛や桜、セイバーは幸せそうに笑う士郎を見て感慨深くなった。

 

(ああ、シロウ。貴方はそういう風に笑うのですね)

 

(この子達にも感謝かな)

 

(先輩、よかったですね・・・)

 

各々感動を胸に士郎の姿を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

そうこうしているうちにバゼットの店へとやってきた。

 

「イカ焼きにビール!この最高の組み合わせいらんかねー!」

 

「今日のビールは一味違うぜ!」

 

「・・・失礼だ。本当に失礼だけど・・・」

 

バゼットのイカ焼き屋はなぜチンピラっぽそうなメンバーで固まっているのか。

 

「一杯無料券というのをもらったのだが。バゼットはいるか?」

 

そこにチンピラも裸足で逃げ出す武術指南の女性。

 

なんだか無駄に戦闘が起きそうである。

 

(まぁ、よく躾けられてるみたいだから大丈夫だろ)

 

「あねさんいい飲みっぷりだねぇ!」

 

「そっちの小柄なお嬢さんも負けてないぜ!」

 

「そらあたいは飲みなれてるからな。史文恭もいける口だろ?」

 

「ふむ。この程度造作もないが・・・毒の効かぬお前には流石に勝てんな」

 

ニヒルに笑う二人だが、

 

「あー!?史文恭さんお酒ダメって言ったのに!」

 

桜が大反応してやめるように叫ぶ。

 

「一、二杯はよかろう?祭りを肴に飲まずにはいられまい」

 

「それはそうですけど~・・・」

 

「そういえばお腹の子は順調ですか?」

 

大和が少し心配げに言った。

 

「うむ。まだ腹は膨らんでこないがな。順調だ」

 

「史文恭さんもだけど揚羽さんもだっけ」

 

「どんな子供が生まれるんだろうね」

 

「史文恭さんに似て強いのかな?」

 

「士郎の血も入るんだろ?多分めちゃくちゃ強いぜ」

 

「こらこら。これから生まれてくる子供にプレッシャーをかけるんじゃあないよ」

 

それもそうだなぁ・・・とどこか納得する一同。

 

「みなさんはバゼットさんと戦ったんですか?」

 

清楚が無邪気に問う。するとあちらは、

 

「姐御にゃあそれこそお世話になりやした!」

 

「こんくれぇじゃ恩返しにもならねぇが姐御が困ってるならすぐ参上だぜ!」

 

「ふふ。だって、バゼットさん?」

 

「余計な口は叩かんでよろしい。それより!ビールとイカ焼きの売り上げはどうなのですか!」

 

喝をいれるバゼットにチンピラ店員はわたわたと動き出す。

 

「まったく・・・そういえば、この夏祭りでもイベントを行うようですよ」

 

「え?本当か?」

 

「ええ。大射的大会というものだそうです。今は設営準備に駆られています。よければそちらも行ってみてはいかがでしょう?」

 

「射的大会か・・・でもなぁ・・・」

 

既にいくつかの屋台を荒らしてしまっているしここでさらにというのも・・・

 

「だぁ!やっと解放されたー!」

 

「百代」

 

ギュン!と空間を捻じ曲げ現れたのは百代だ。

 

「仕事終わったのか?」

 

「ああ。今回はアメリカまでの護衛だったからなぁ・・・長かったぁ」

 

へにょりと士郎にしなだれかかる百代。その背をポンポンと叩いて、おかえり、と労ってやる。

 

「あー!モモちゃん発見!旦那様になにしてるのさー!」

 

カランコロンと下駄を鳴らして現れたのは燕だ。

 

「やっと見つけたと思ったら!独り占めしないでよう!」

 

「なんだなんだぁ?嫉妬かぁ?燕には悪いけど私は仕事明けで愛でてもらっているのだ!」

 

バチバチと視線がぶつかるが、

 

「士郎」

 

「あずみ?」

 

すっと接近したあずみが教えてくれた。

 

「向こうで風間の野郎が喧嘩に巻き込まれてやがる。どうする?」

 

「キャップ・・・」

 

頭が痛い。

 

「どうせ屋台を荒らしまわったからだろう?」

 

「ああ。自業自得だな」

 

やれやれと頭を振り、

 

「みんな!ちょっとキャップのほうに行ってくる!」

 

おーうと返事をもらって士郎とついでに百代と燕、あずみは一層の喧噪中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

着いてみると憤った男性がキャップに襲い掛かっている所だった。

 

「キャップ!」

 

「んぁ?士郎!こいつ何とかしてくれ!」

 

ひょいひょいと攻撃を避けながら、たまに自慢の脚力で蹴り飛ばしている。

 

だが、相手は未熟なれど頑健らしくキャップの攻撃を物ともせず襲い掛かっている。

 

「はぁ・・・一応聞くけど、金は払ったんだな?」

 

「あったり前よ!襲い掛かられるいわれはないぜ!」

 

逃げながらも普通に話すキャップに比べ、屋台の店主らしき人物は怒りで我を忘れているようである。

 

「仕方ない」

 

ヒュッという神速の踏み込み。そしてストンと手刀を落とし、鎮圧する。頑健なはずの店主はそれだけで意識を失った。

 

離れてみていた野次馬からおー!という声が上がる。

 

「やれやれ・・・一体何をしたんだ??キャップ」

 

「そこのくじ屋で一等から十等まで全部引いてやったぜ!」

 

「商売あがったりじゃないか・・・」

 

さもありなんと頭を振った。

 

「おい、店主は無事か?」

 

「ああ。この通り――――」

 

そこではたと気づいた。

 

「この缶バッヂ・・・」

 

店主が景品の飾りとしてだろう、身に着けている缶バッヂからただならぬ気配を感じた。

 

「あん?その缶バッヂがなんだっていうんだ?まさかほしいとか言わねぇよな?」

 

店主を縛り上げていたあずみが茶化してくる。

 

「まさか。むしろ手元に置きたくない類のものだな」

 

士郎はそういって、清らかな気配のする剣を投影して缶バッヂを切り捨ててしまった。

 

「なにもそこまで・・・」

 

「あれには呪いがかかっていた」

 

クイっと切った缶バッヂを見るように促すと、

 

「!」

 

青白く燃えていた。

 

「これは・・・」

 

「不浄を清める効果を持った剣だ。呪いが燃えている」

 

「・・・。」

 

パチパチと青白く燃えていたそれが事実を物語っていた。

 

「こいつが暴動騒ぎを起こしたのは・・・」

 

「ただ品物を持っていかれたからじゃないな。みるに、収集を促す呪いみたいだから、手放したくないという衝動が強化されたのも関係あるんだろう」

 

「なんだってそんなもの・・・」

 

「そこまではわからない。たまたま持っていてこの機会に身に着けた、というのが有力そうだ」

 

フッ・・・と手にした剣を風景に溶かし士郎は切ったそれをゴミ箱にいれた。

 

「もう大丈夫なのか?」

 

「ああ。呪いはもう浄化したからな。これで正気に戻るだろう」

 

なんとも物騒なものを見てしまったと溜息を吐く。

 

「せっかくの縁日なのに、ろくでもないものを見てしまった・・・」

 

「まぁいいじゃねえか。呪いは浄化されたんだろ?」

 

「そうだけど・・・」

 

(あずみにはああ言ったけど、あんな強い呪いの品を一般人が手にするだろうか?)

 

なにかキナ臭いものを感じる士郎だが、

 

「今考えても仕方ないか」

 

そう結論付ける士郎だった。

 

「そちらはどうでしたか?」

 

バゼットの屋台に戻ってくるとバゼットが聞いてきた。

 

「問題なくおさめられたんだけど・・・」

 

士郎は呪いの缶バッヂについて話した。

 

「ふむ。ここ川神は闘気にあふれる街だ。そんなものもぐりこめるとも思いませんが」

 

「少し注意したほうがいいかもしれない。こんなものが出回っていたら事件になりかねない」

 

「いいでしょう。この件に関しては凛とも共有します」

 

力強く頷いてくれたバゼットが頼もしい。

 

そんなどこか不格好に終わった夏祭りだった。

 

 

 

 

「ただいまー」

 

と士郎が言い、

 

「「「おかえりー」」」

 

とほかのメンツが言う言葉遊びのあと士郎達は様々な景品を手に自分の部屋へと解散した。

 

「ふう・・・」

 

士郎はお茶を入れて一口飲む。

 

「短い時間だったけど濃密だったな・・・」

 

あちらこちらから嫁が集まってきて大変なことになっていた。

 

「揚羽はまた飛び回ってるのか。メール入れておこう」

 

労いの言葉と数言メールに書いて送っておいた。

 

と、

 

ピピピ・・・

 

「ん?心?」

 

ピッ

 

「もしもし?」

 

『あう・・・その、今よいか・・・?』

 

「いいぞ。心とも縁日回りたかったんだけどな。忙しいのか?」

 

『うむ・・・士郎と完成させた菓子の反響がすごくてな取材がひっきりなしなのじゃ』

 

「そうか。うれしい悲鳴だな。あんまり無理するなよ?」

 

『うむ!此方は士郎のことが認められているようでうれしいのじゃ』

 

「心・・・」

 

心の言葉に歓極まる。

 

「あれは紛れもなく心の菓子だよ。もちろん俺も手を加えたけど、それも含めて心の功績だよ」

 

『うぬぬ・・・とことん己を褒めぬ奴じゃな・・・』

 

「いや、俺には心のさっきの言葉だけで十分さ」

 

『・・・。』

 

士郎には本当に心の言葉だけで十分だった。それだけで満たされた気持ちになった。

 

「インタビュー、どんなこと聞かれるんだ?」

 

『それはもう――――』

 

そうして賑やかだった一日は心との電話で終わる。

 

(あの缶バッヂ、警戒しないとな)

 

わずかなしこりを残して。

 

 

 




はい。今日はここまでです。もっといろいろ書きたかったんですが人数多すぎ。パンクしました。

それと今後の布石を一つ置かせてもらいました。呪いの缶バッヂなんか本当にあったらビビりますよね。集めてる人とかどうすんだいって話で…まぁ次回に続きます。では!
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