真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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みなさんこんばんにちわ。今日も今日とて眠い作者です。

今回はゲームで遊ぶ第二回となります。熱いあの人が出るかも?ご期待です。

では!


ゲームで遊ぶ 2

ブゥン・・・とヘットギアが起動する。

 

最近ちょこちょこやっているFate/imagination lifeをやるためだ。

 

階層も10階層に到達し、京と由紀江は魔法とMPポーションのつり合いが取れ、大和とモロはリボルバー式ながら拳銃を手に入れたところだった。

 

「・・・ふぅ」

 

慣れない浮遊感の後目を開けば十階層の宿のベッドの上だった。

 

「くぁ~・・・現実世界は夜なのにこっちは昼か」

 

なるべく現実世界との差異を無くすように創意工夫されているようだが、なかなかうまくいかないところもあるのだろう。

 

「夜は特に狂暴なモンスターが出現するしな」

 

なのでこの世界の夜は短く昼は長いのだろう。

 

「おはよう、ガクト」

 

一階で様々な冒険者と話していたガクトに挨拶する。

 

「ん?ああ士郎か。もうみんな町の探索に出てるぜ」

 

「もうみんな来てるのか。テストが無いからって緩んでるな?」

 

「そうこまけぇこと言うなよ。みんなこの世界が楽しいんだ。やりすぎは防止されてるし、早く始めりゃ早く退場しなきゃならんだろ?」

 

「まぁそうだけど・・・」

 

その辺は医療機器らしくちゃんとした機能が付いている。

 

「そろそろ11階層に手ぇ出そうかってみんなで話してたんだ」

 

「それで聞き込みを?」

 

このゲーム。各階層に階層主がおり、階層主を倒すことでその先の階層に行けるのだが、

 

「油断するとこの前みたいになりかねないからな」

 

実はここ、10階層に上がるための階層主戦で士郎を残して全滅しかけたのだ。

 

原因はボスの持つ固有能力と、ボスの体力が三割を切った後に仕掛けてくる特殊行動だ。

 

元より危険な魔術生物と戦った経験のある士郎は問題なかったが、ある程度ゲームに慣れてきていた風間ファミリーはまんまとこのコンボの餌食になり、あの百代ですら脱落したのだ。

 

「この階層に来れた時は士郎一人に任せちまったからなぁ・・・俺様達も油断なくってな」

 

「いい心がけだな。情報を収集して次の戦いに向けて武装や作戦を整えるのは実戦の基本だ。じゃあ俺も情報収集するか・・・」

 

「それなんだが・・・ほれ」

 

ガクトがコマンドを押すと目の前にウィンドウが出た。

 

「5000G?こんな大金受け取れないぞ」

 

「いいから受け取っとけって。士郎はいつも俺様達を優先してろくに装備も整えられてねぇじゃねぇか」

 

「でも・・・」

 

正直自分は十分楽しめている。それなのに・・・

 

「俺様も士郎の装備があんま更新されてねぇのには胸が痛むからよぉ・・・団体戦だと思って、このGで装備を更新してこいよ」

 

「・・・そういうことなら」

 

士郎は受け取りのボタンに触れた。

 

「しかしガクトはこんなに溜め込んだのか?」

 

「いんや。みんなと話し合って出し合ったんだ。幸い前の階層主戦のおこぼれで懐あったたかったからな」

 

「・・・そうか。ありがとう。大事に使わせてもらう」

 

そう感謝して士郎はこれからの予定を決める。

 

「次の階層主の詳細も調べたいけど、まずは装備か」

 

指摘された通り士郎の装備はかろうじて双剣士?に見える程度である。

 

「鍛冶屋を訪ねよう」

 

現実世界なら自分で作るのだが、などと考えて、苦笑する。

 

「行こう」

 

士郎は宿屋を後にして街に出た。しかし、

 

(どれも雑だな)

 

これで三件目の鍛冶屋だというのに士郎は武装を選べずにいた。

 

「よう!兄さん!お目当てのものは見つかったかい?」

 

一件目と二件目の店主は士郎が何も買わずに退店すると嫌な視線を向けてきたが、ここの店主はにこやかに話しかけてくれた。

 

「この店の武器はこれですべてですか?」

 

率直に士郎は言った。

 

「あー・・・その通りだ。お眼鏡にかなわなかったか」

 

「良い腕をお持ちのようですが・・・」

 

士郎もなんともいえない顔で言った。

 

士郎は現実世界で至高ともいえる刀剣類を量産している。ゆえに刀剣には目利きだ。ゆえに、ある程度腕はよさそうだが素材の扱い方がまだまだというのがうかがえた。

 

「やっぱ見る奴は見てるんだなぁ・・・素材の扱い方が雑、だろう?」

 

「それは・・・」

 

「いいんだいいんだ。俺も師匠に言われ続けてるからよ。やっとこさ店を構えられたが、まだまだ基本が疎かでいけねぇな」

 

「確かに素材の扱いがまだまだです。しかし、貴方の“魂”のようなものは感じ取れますよ。頑張ってください」

 

そう言って士郎は踵を返したが、

 

「魂・・・か。兄ちゃん、待ってくれ」

 

「え?」

 

鍛冶屋のおじさんは一振りの小太刀を見せてくれた。

 

「これは・・・」

 

士郎はこの時ほど解析ができないことを恨んだ。

 

「いい出来だ。材料の扱いも鍛冶の腕も申し分ない。なにより――――」

 

鼓動だ。まるで小太刀から鼓動が聞こえてくる。それが小さな見た目の小太刀を一回りも二回りも大きく見せていた。

 

「兄ちゃんにはわかるかい。この“鼓動”が」

 

「はい。あの、この小太刀はどこで?」

 

「コイツぁ師匠の作だ。これで本気じゃねぇ、手習いの作だってんだから驚いちまうだろ?」

 

「・・・。」

 

士郎は思った。この現実世界によく似た架空の世界にも一流はいるのだと。

 

「興味ねぇか?師匠の腕に」

 

その言葉とともにフォン、とウィンドウが出た。

 

『クエスト、鍛冶職人の魂を開始しますか?』

 

(これ、件の裏クエストか!)

 

あれはそう、5階層での話だ。

 

『アルト?なんでこんな場所に』

 

『シロウではありませんか!実はこの階層付近に裏クエストがあるようなのです』

 

『裏クエスト?』

 

『はい。通常では発露しないクエストで何かをキーに突如として現れるクエストなのですが・・・』

 

『そんなものもあるんだな。でも、5階層のものじゃアルトたちのステータスに追いつけないんじゃないか?』

 

『いえ。今までいくつかの裏クエストが見つかっていますが、どれも自分の最先端のツールを提供しているんです。つまり、レベル60ならそれに合った装備を取り扱うのです』

 

『へぇ・・・便利だな』

 

『便利どころではありません!!裏クエストの装備は最高ランクのレア度で・・・!!!』

 

などと、アルトがマルタが来るまで熱く語っていたのを思い出した。

 

(キーは恐らく“魂”。それと小太刀の鼓動を聞き取れるか、だな。5階層近辺って話だからアルトが探していたのもこれかもな)

 

恐る恐るクエスト開始のボタンに触れる。

 

「そうか!じゃあ行こうか。師匠は今も剣を鍛えているはずだ」

 

店に閉店の看板をぶら下げて、鍛冶屋の店主と街に出る。路地を曲がりどこか暗い雰囲気の街並みになってきたところで、

 

「ここだ」

 

カン、カンとわずかに鉄を鍛つ音が聞こえる。

 

「正面は・・・だめだ、閉まってる。裏口に行こう」

 

「え? そこまでしてもらう訳には・・・」

 

「いいんだ。師匠は自分の作品を認めた相手にしか売らないからな。師匠!師匠!」

 

そう言って裏口から入り、問答無用で師の工房に突撃する鍛冶職人のおじさん。

 

「なんだいこの馬鹿弟子が!今更泣き付こうたってそうはいかないよ!」

 

と女性の怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「違うんだ!魂を感じ取れる上客がいるんだよ!」

 

おじさんの耳を引っ張りながら出てきた女性と目が合う。

 

「・・・。」

 

「ど、どうも・・・」

 

なんとも気まずいことだが、師匠と呼ばれた女性はじっと士郎を見続けた。そして、

 

「・・・入りな」

 

顎でクイッと示した。

 

言われた通り中に入る。中には轟々と燃える鍛造窯があり、打ちたての剣などが飾られていた。

 

(どれも名刀だ。でも、俺の戦闘スタイルに合わないな・・・)

 

飾られているすべてのものが名刀であるが長剣が主であり、小刀もあったがこちらは切り裂く用だ。自分の防御型の武器としては扱いづらい。

 

「この中で眼鏡に叶ったものはあるかい?」

 

「・・・どれも名刀ですが、その・・・」

 

大まかにこういうのが欲しいんだと伝えると、

 

「あんた、手を見せな。それと腰に下げた得物も出しな」

 

「わかりました」

 

手近な椅子とテーブルをとり、どっしりと座る彼女を見て士郎も同じようにした。

 

「・・・あんた、カウンター型の剣士だね?」

 

「ええ。まぁ」

 

士郎の手をつぶさに見ながら彼女はすぐに看破した。

 

「短剣の方は・・・」

 

今度はテーブルに置かれた短剣を見る。

 

「・・・はっ!これは傑作だ!ここまで酷使してひび割れ一つない。こんな雑な短剣によく命を預けられたもんだ」

 

「そりゃあそれしかありませんでしたから」

 

それが事実なのである。士郎の戦闘スタイルに最も近かったのがこの短剣なのだ。

 

「ふむ・・・握りはもう少し短くていい・・・刀身は短剣ギリギリの範囲で・・・」

 

ブツブツと目算を初めてしまった女性鍛冶師に、一緒に来たおじさんに救いの手を求めて探すが、すでに工房には居なかった。

 

「あんた予算はどのくらいだい?」

 

「・・・25000G」

 

それは士郎の持ちうる全財産だった。

 

「25000か。鍛つにはちと安すぎさね。魔物の素材がありゃ買い取るよ」

 

流石に安すぎたらしい。しかし譲歩もしてくれているので、

 

「結構な数になりますよ?」

 

士郎はそう聞いた。

 

「かまわないさ。あんたの出す素材にいいものがあったらそれで剣を鍛つ。ほら、出してみな」

 

と、言われたので士郎はここに来るまで獲得した素材を並べることになった。

 

その数は士郎が警告した通り床の一部が山になるほどだった。

 

「こいつは驚いた!グレートコーカサスの角に雪狼の毛皮がこんなに!防具屋に持っていけば高値で買い取ってくれるよ!」

 

グレートコーカサスというのはクワガタとカブトムシを合体させたような角を持つ虫の魔物。雪狼はその名の通り雪のように白い狼。

 

一見どれもその魔物を倒せばいいように思うが、これもまたこのゲームの醍醐味の一つ、部位破壊システムがある。その名の通り特定の部位を破壊することが出来、基本的には部位破壊すると敵は弱体化するのだが、部位破壊してしまうと得られなくなる素材がある。

 

グレートコーカサスは巨大な角が厄介だが、これを部位破壊してしまうと角は手に入らなくなる。雪狼は徐々にダメージを与えると毛皮が部位破壊状態になり、士郎が持ち込んだような完璧な毛皮にはならない。どれも一瞬で片を付けた印だ。

 

それに・・・

 

「ガルガド鉱石!?こんなにたくさん・・・あんた山一つくり貫いたってのかい!?」

 

「いやぁ・・・レアな鉱石と聞いて集めてみたくなって・・・」

 

希少な武具に扱われると聞いて士郎は冗談抜きで山にこもり、採掘し続けたのだ。

 

「ゴルゴ―石に天雹石(てんひょうせき)も・・・価値観がぶっ壊れそうだよ」

 

やれやれと頭を振る女性に士郎は苦笑ものである。

 

(まるで物の価値を知らなかったな・・・現実でも使ってみたい意欲が出過ぎた)

 

そう。士郎が異常なまでに素材を集めていたのはこれで最高の剣を鍛ったなら、どんなものになるだろうと考えたからであった。

 

淡い想いとして消えるかと思ったが、どうやら叶いそうである。

 

「これとこれは買い取り。これとこれは防具屋で使いな。鉱石は武器と防具両方に使うから均等に分けて・・・」

 

いつの間にかパチパチと算盤をはじいて仕分けする女性。

 

「よし!あんたの剣、ここにある素材で作ってやる。それと・・・」

 

ジャラ!と重たそうな音を立てた麻袋が置かれた。

 

「これは・・・?」

 

「剣を打つ分を引いた買い取り分だよ。希少なものが多かったから多少色を付けておいた。これと素材持ち込みで防具も新調してきな」

 

「あ、ありがとうございます・・・」

 

いやにとんとん拍子で怖いくらいだ。

 

(これが裏クエスト・・・確かに血眼になって探すだけあるな・・・)

 

「防具屋はあたいの店を出て二番目の角を曲がった先にあるフィンって男の店がいい仕事をする。行ってきな」

 

「わかりました」

 

一体いくらあるんだと思わんばかりの渡されたGをインベントリにしまって士郎は言われた通りフィンの店を訪ねた。

 

「ごめんください」

 

「は~い!ちょっとお待ちになって!」

 

と声が聞こえ思わず、

 

「“男”の店って言ってたよな・・・」

 

嫌な予感がしたがその予感は的中することとなった。

 

「お待たせ・・・キャー!」

 

「!?」

 

「すっご~い!私好みぃ!!私が手取り足取り教えちゃうわ!うふふ・・・!」

 

うわぁ、と思いつつも鍛冶屋の女性の言葉を信じて素材の買い取りと新調を頼む。

 

「わっ!?雪狼の毛皮がこんなにいい状態なんて!貴方腕が立つのねぇ。思い切って全部買い取りしちゃうわ!」

 

「ほかにもこんなのがあるんですけど・・・」

 

「ジャイアントケイブバットの翼!これまた激レアだわぁ~!こんな獲物を狩ってくるんですもの、身なりにも気を付けないとね♪」

 

バチンとウィンクされてまた苦笑気味の士郎。

 

「買い取り価格を考えると予算は大丈夫そうだけど一応聞くわね?予算はおいくら?」

 

「えっと・・・」

 

先ほど渡されたGを数える。すると、

 

「・・・50000Gで」

 

予想外の金額に士郎はドン引きした。

 

「あらあらまぁまぁ!予算はあるに越したことはないけど今の貴方の装備限界をはるかに超えるものになっちゃうわ。半分の25000Gで十分よぅ」

 

「では・・・」

 

ドスン!と半分に分けた25000Gをテーブルに置く。

 

「毎度ありぃ!って、あら?この袋・・・」

 

フィンは袋を見て小首をかしげたが、

 

「まぁ今はいいことね。ささ、こっちにいらして!採寸よぉ」

 

「・・・。」

 

士郎はどこかいやいやながらもカーテンの奥へと進んだ。

 

(キャスターの服を嫌がるセイバーの気持ちが分かった気がする)

 

などと思いながら士郎は目を閉じた。

 

しばらくして。

 

「うーん雪狼だけじゃ華やかさに欠けるわね。お兄さん血狼の皮はお持ちになって?」

 

「いえ、持ってません」

 

「今の貴方の装備限界は血狼シリーズだからそのほうがいいんだけど・・・」

 

「雪狼じゃダメなんですか?」

 

「雪狼の皮は装飾にはいいけど、耐久性に難があるの。だからこそ貴重な品なんだけども・・・」

 

どうやらその血狼の毛皮とやらが必要のようだ。

 

「では取ってきます。血狼はどこにいるんですか?」

 

「あらあら逞しい!東にある『血路の街道』は知ってる?」

 

「ええ」

 

確かに、あの辺は10階層でも高レベル帯になるのでまだ行っていない場所だ。

 

仲間たちに遠慮していたが一人なら問題あるまい。

 

「血路の街道に普通にポップする狼よ。ただ一つ注意なのは、そこいらの魔物と違って連携してくること。それと毛皮も雪狼と同じでボロボロになっちゃったら使えないわ」

 

「なかなかに厄介な魔物ですね・・・」

 

獣の連携は時に格上のものすら牙の餌食にする。注意しようと士郎は心にとどめておくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、士郎~」

 

「一子?」

 

聞き込みをしていたであろう一子に出会った。

 

「聞き込みは順調か?」

 

「うん!もう大体聞き終えたかしら。士郎は?」

 

「俺は・・・」

 

これから高レベル帯の血路の街道に行くことを話す。すると当然・・・

 

「はいはーい!あたしも行くわ!」

 

「いいのか?高レベル帯だぞ?」

 

「もちろんよ!あたしも腕試ししたいし・・・」

 

モジモジとして、

 

「折角の旦那様との時間、見過ごせないもの!」

 

「はは。そっか。じゃあ一緒に鍛錬だな」

 

「うん!」

 

ぎゅっと士郎を抱きしめる一子。その頭を撫でて、

 

「どんなモンスターなのかな」

 

と呟いた。

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

「せや!」

 

血路の街道にて。出現したのは赤茶けた姿の狼だった。血狼と言われるだけあって、まるで血が固まったような色合いの毛並みだ。

 

「士郎!そっち行ったわ!」

 

「了解!」

 

あらかじめ挟むようにポジショニングしていた士郎が剣を振り上げ、

 

ザシュ!っと狼の首をはねた。

 

「ナイスだ一子。毛皮も無事だ」

 

「えへへ!ゲームの中でも鍛錬は裏切らない!でしょ?」

 

ピコピコと頭の上についた耳を動かす一子に、士郎は笑みを浮かべてその頭を撫でた。

 

「しかし、随分散発的だな。もっとうじゃうじゃいるって話だったけど」

 

「もしかしてほかのパーティがレベリングしてるのかも?」

 

その可能性は否めなかった。ここ、血路の街道は何度も言うが10階層の中でもトップレベルのモンスターが出現するのである。

 

ソロでは難易度が高いが、複数人でのレベリングならば効率もよかろう。

 

「どんな人が――――」

 

そんな時だった。

 

「助けてくれ!」

 

「しろ・・・うきゃあ!?」

 

助けて。その声にいち早く反応した士郎は恐ろしいスピードで声の主の元に向かった。

 

現場では血狼が二頭プレイヤーに襲い掛かっていた。

 

(一頭はいい。二頭目は――――)

 

一瞬の思考。だが心配せずともそちらにも駆けつけるプレイヤーがいた。

 

「はああ!」

 

「ふっ!!」

 

ザザン!と士郎の短剣は一頭目の血狼を切り裂き、二頭目は軽鎧を着た若い男性の槍が串刺しにした。

 

互いの視線がぶつかる。だがそれはすぐに笑いへと変わり、

 

「やるね、兄さん」

 

「そちらも」

 

パッとドロップした毛皮を持ち上げ、

 

「おい、こいつも持っていきな」

 

軽鎧の男が仕留めた毛皮も渡された。

 

「いえ、そちらは貴方が仕留めたものでしょう?」

 

士郎は一度断った。が、

 

「いんや。お前さんが助けに入った男な、うちのクランメンバーなんだ。レベリングに来てたんだが・・・助けてくれた礼だ。・・・おい!誰か坊を呼んで来い!」

 

そういうことならと士郎は毛皮を受け取った。

 

「し~ろう~!」

 

「・・・しまった」

 

思わず、隋腱反射で助けに入ってしまい、一子を置き去りにしてしまった。

 

「はぁ、早すぎ!で、助けられたの?」

 

「ああ。悪い。体が動いちまった。一子は平気か?」

 

「うん!この程度で危ない目になんか遭わないわ!」

 

そうか。とその頭を撫でながら、

 

(旦那、失格だな)

 

いくら一子を信頼しているとはいえ、置き去りにするのは家族を守る味方としては落第だ。

 

士郎は改めて心を固め、戒めるのだった。

 

「ごめんな、一子」

 

「・・・ううん。あれこそが士郎の本質でしょ?確認出来てよかったわ」

 

一子は凛とした顔で士郎を見た。

 

「大丈夫よ!今みたいなことがあってもあたしたちは士郎におんぶにだっこじゃない。そうでしょ?」

 

「ああ・・・」

 

士郎は改めて感謝した。このどうしようもない男の心を信用してくれていることに。

 

「第一小隊は第二小隊が回復するまで血狼を防げ。・・・さて」

 

大きな赤い鬣のような風貌をした大男が、立派な黒馬に乗ってやってきた。

 

「プトレマイオス。こ奴がか?」

 

「ああ。遠くにいた兵のもとに駆け付けた、いわばヒーローさ」

 

「ほほう。地面の跡を見るによほど離れた位置にいたのだな」

 

「・・・。」

 

「あわわわわ・・・」

 

士郎は無言で一子をかばう位置取りをする。広く展開されているが、ここにいるのはすべての人間がこの男のクランメンバーであろうことを知って。

 

「そなた、名を何という?」

 

「・・・まずは自分から名乗るべきだと思うが」

 

「かっか!それもそうだな!余はイスカンダル二世!彼方を目指す者たちの王よ!」

 

「イスカンダルときたか・・・俺はシロウこっちが・・・」

 

「一子です!」

 

一子がぴしっと背筋を伸ばして言った。

 

「シロウ・・・おおっ!星屑のが執心という凄腕の剣士か!」

 

「・・・どこで広がったんだ」

 

あれからも熱心な勧誘は続いており、正直困ってしまっている所だった。

 

「此度の救援見事であった!何か返礼をしたいところだが・・・」

 

ふうむ。と考える姿勢になったイスカンダル二世。

 

そして士郎の手にある血狼の毛皮を見て、

 

「おおっ。血狼の毛皮を集めておるのだな?」

 

「ええまぁ」

 

士郎は頷く。

 

「プトレマイオス。少しばかりシロウと一子と共に血狼狩りに励め」

 

「御意。見張りは?」

 

「別の者を配置する。お主はわが軍の恩返しに勤しめ」

 

プトレマイオスはもう一度御意、と頷いて士郎と一子の方に向き直った。

 

「ということで手伝わせてもらうぜ。三人いりゃあもう少し奥に行っても大丈夫だろ」

 

「大したことはしていないんだが・・・」

 

「いんや。お前さんの腕は一級品だ。聖槍の奴らが引き抜きたいのもわかる」

 

「士郎、その聖槍?にお呼ばれしてたの?」

 

一子が首を傾げて言う。

 

「ああ・・・前に一緒にパーティを組んで以来な。でも大丈夫、キャップがクランを立ち上げるのはわかってたから断ったよ」

 

キャップはレベリングして統率能力ありと認定されるよう頑張っていた。

 

「パーティリーダーの経験は問題ないし、あとはレベル上げだけだからな。近日中には立ち上がるだろ」

 

「なるほど。お前さんらもクランを立ち上げるか。イベントが楽しみだな」

 

「ええ。そのために頑張ってますよ」

 

そんな話をしながら街道から大分外れの方に来た。

 

 

 

 

――――グルルルル

 

 

 

低いうなり声が聞こえる。イスカンダルたちがレベリングしている場所から離れたようだ。

 

「さ、来るぜお二人さん!武器を構えな!」

 

「言われずとも!」

 

「・・・。」

 

一子とプトレマイオスも武器を構え、士郎はいつも通り双剣を手に両腕をだらりと下げ敵の視認を済ませていた。

 

(なるほど。これが本来の頭数か。これは確かに脅威だな)

 

殺気を追うに先ほどの倍はいるだろう気配に士郎は気を引き締める。

 

――――アオーン!!!

 

飛び込んできた一頭をそのままカウンターで首を落とし、さらに近場にいた一頭を無骨な剣舞を舞うように首を落とす。

 

四足歩行相手でも士郎は問題なく対応していた。

 

(一子は)

 

ふっと一子のほうを見ると、

 

「てい!せやぁ!」

 

一気呵成に切り込む。気の使えないゲームの中で大したものだと思うが獣との戦闘経験が無いからか、苦戦しているようだ。

 

(架空の世界だが、いい経験になりそうだな)

 

「一子!大丈夫か?」

 

「う、うん!大丈夫よ!」

 

口ではそんなことを言う一子だが段々と血狼に惑わされている。

 

なので士郎は弓で援護をすることにした。

 

「・・・。」

 

ヒュンッ!

 

「ぎゃう!?」

 

一子が対応しきれなくなってきたところに予想外の矢で仲間をやられ、血狼達に動揺が走る。

 

「士郎?」

 

「一子。今まで四足歩行の敵と戦ったことあんまりないだろ? いい機会だから経験を積むんだ」

 

「! 押忍!」

 

士郎はもう剣ではなく弓で一子の援護を決めた。

 

「弓で血狼の額を一撃か。兄さん弓の腕もなかなかだな」

 

「それはどうも」

 

それからしばらく血狼を狩る時間が続き、ログアウトの時間が迫ってくる頃に狩りを終了した。

 

「狩りを手伝ってくれてありがとう。貴方のおかげでたくさん集められた」

 

「こっちこそだな。低階層だと俺たちは暇になっちまうがなかなか歯ごたえのある戦いだった。・・・そっちの嬢ちゃんも大丈夫か?」

 

問われた一子は、はぁ、はぁ、と肩で息をしているが、

 

「もちろん! いい経験積ませてもらいました!」

 

一子はビシッと頭を下げた。

 

「かっか! そうかい。いい装備になるといいな」

 

「それじゃあイスカンダルさんによろしく言っておいてください」

 

「承った。時間的にもう行かなきゃならんか?」

 

「ええ。次回でもいいんですが・・・」

 

鍛冶職人の魂のクエストがいつまで有効なのか気になる士郎は、先を急ぐことにした。

 

「承知した。坊にはうまく伝えとくぜ。じゃあ、またな」

 

「ありがとう。また」

 

「ありがとうございました!」

 

そうして士郎と一子はその場を後にした。

 

 

 

―――――――interlude―――――――

 

 

二人が去った後、プトレマイオスはイスカンダル二世に報告を上げていた。

 

「ほう。数多迫りくる血狼を弓で、か・・・」

 

「最初の時もそうだが、相当の手練れだぜ。対策会議を進言するぜ」

 

「うむ。シロウといったな。いずれ戦うことも無きにしもあらず。注意深く見るとしよう」

 

ふっと空を見上げ一雨来そうだと感じたイスカンダル二世は、

 

「全軍に撤退命令!今日のところはここまでとする!」

 

はっ!とイスカンダル二世の大声に、監督役となっていた兵士が撤退の準備を始める。

 

(ふむ。シロウか・・・なかなかに難題であろうな)

 

敵対しなければこの上ない味方となろう。だが、このゲームにはイベントクエストがある。大規模となればそうもいくまい。

 

(楽しみが増えたな!)

 

ふーふっふと不敵に笑う彼を見て兵士の一人がびくりとしたとか。

 

Fate最大のクランとの邂逅はこのようにして終わった。

 

今後彼らが敵となり立ちはだかったならば苦労を余儀なくされるであろうことは、今からでもわかることだった。

 

 




今回はここまでです。更新が遅くなり誠に申し訳ありません!中々物語がまとまらず、苦戦していました。

待っててくださった皆さんありがとうございます!また一話更新できました!鈍ガメ更新ですが頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いします!
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