真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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皆さんおはこんばんにちわ。毎度投稿の遅い作者でございます。

今回は感想にもあった李視点で書きたいと思います。

愛嬌を持てと言われながら、明るくできないのでジョークの研究が趣味という李。

二人の上司に恋人ができたことで彼女にも変化が・・・?

では!


幕間:李 静初

「李、これよろしく」

 

「はい」

 

目頭を揉みながら渡された書類をチェック、担当部署に持っていく。

 

「あずみ、差し出がましいようですが、そろそろ休みを取った方がいいのではないですか?」

 

「あん? あー・・・そういやここんとこ休みとれてねーな」

 

彼女が最後に休みを取ったのはこの間のシンジケートを潰した翌日だったはずだ。

 

結婚してから彼女は、徐々に仕事を無くすように動いていた。ところが、現在九鬼は3トップの揚羽様が妊娠していてそのバックアップで大忙し。

 

日程調整やら護衛の増員、万が一のための準備。九鬼家の申し子ということであらゆる面で配慮がなされている。

 

「そうだなぁ・・・今日は旦那の所に帰ろうかな・・・」

 

「そうではなくてきちんとした休みを取っていないでしょう」

 

李がそういうと頭をぐしゃぐしゃとして、

 

「そいつはわかってるけどよう、魔術がらみの報告がチラホラするんで気が抜けねーんだ」

 

そう。彼女が忙しくしている理由はもう一つある。この“魔術”だ。

 

揚羽様のご懐妊と経過観察から、揚羽様の仕事を極力削ろうということになっている。

 

すでにお腹も大きくなり、臨月とは言わないものの、安定期はとうに過ぎ、過度な運動(いつもの激しい動きも)も控えるようにしてもらっている。

 

そんな中唯一彼女が単独で指揮、統括をとっていたのが、衛宮士郎に端を発する魔術関連のことだ。

 

気という力が闊歩するこの世界で、衰退したとされる魔術の痕跡が多数見つかっているのである。

 

魔術師というものはとにかく秘匿性が強く、念入りに調べていかないと痛い目をみることがすでに分かっており、そちらの調査結果がぽつぽつと出ている。

 

今までは最終判断は揚羽がしていたが、揚羽が動けない今、従者部隊序列一位のあずみがその判別や対処の指示をしている。・・・通常の九鬼の業務に加えてだ。

 

九鬼(ここ)でブラックだ、なんて一度も思ったこともねぇけど、ブラック企業顔負けだな。最近は」

 

一応寝てはいるが、いつも早朝出勤で従者部隊を回す彼女は流石だと言いたいが、いい加減にやり方を変えるべきだろう。このままでは彼女が潰れてしまう。

 

「あずみ。貴女の仕事をいくらかこちらに回してください。私はそれなりにやれます」

 

「・・・ステイシーが言ったらちょいと不安だが・・・李なら大丈夫か。そうだな・・・」

 

ピ、と携帯を出してどこかに電話をかけるあずみ。優しい眼差しになっていることから恐らく旦那様である衛宮士郎だろう。

 

軽口をたたいた後、何やら真剣な表情で話し始めた。

 

「?」

 

「ああ。んじゃあ頼むぜ」

 

最後にそう言って電話を切った。

 

「李」

 

「はい」

 

「今晩付き合え」

 

言葉少なくあずみはそう言った。

 

 

 

 

 

「あずみ。旦那様の家に行くのですか?」

 

ここはあずみと揚羽様の旦那様である衛宮士郎の家に続く道だ。

 

「まぁな。晩酌とちょっとしたテストを、な」

 

「?」

 

あずみは多くを語らなかった。

 

ただ、テスト、ということは昼間の自分のやれる、という言葉を試すつもりなのだろう。

 

これは引き締めないとと、李は思った。

 

「ここだ」

 

目の前には報告通りの立派な武家屋敷があった。

 

「今日は特別(・・)なご招待だ。ぬかるなよ」

 

「特別・・・?」

 

目の前の武家屋敷に何の特別な要素があるのだろうか。

 

「じゃいくぜ」

 

「あず・・・ッ!?」

 

み、と続く言葉は続かなかった。何せ目の前を歩いていたあずみが、何かに吸い込まれるように消えたからだ。

 

「・・・。」

 

咄嗟に彼女を追いかけようとした自分を律する。これはテスト。彼女はそう言った。ならば、うかつに足を踏み入れるのは愚策だ。

 

「すぅ・・・ふぅ・・・」

 

息を整え感覚を研ぎ澄まし、李はあずみが消えた先へと足を踏み入れた。

 

 

 

――――interlude――――

 

 

李がそのままついてこないのを見て仕掛けはばっちりだとあずみは思った。

 

「さて今回はどんな神秘が待ち受けてるのかねぇ・・・」

 

あずみも今回どんな仕掛けが張り巡らせられているのかは知らない。少なくとも、自分の名を呼び掛けて門の前で止まった李を見るに、すでにテストは始まっているらしいことは分かった。

 

「あずみ、おかえり」

 

「ただいまっと。もう始めてんのか?」

 

出迎えてくれた士郎にそれだけ聞くあずみ。

 

「ああ。少なくともいきなり君が消えたように彼女の眼には映ったはずだ」

 

それを聞いて目を見開くあずみ。

 

「魔術にはそんなものまであんのかよ・・・」

 

「まだまだ。こんなものは手品程度だ。居間に来てくれ。みんな集まってる」

 

「じゃあまぁ、見物と行きますかね(気ぃ抜くなよ李)」

 

そうしてあずみは家に招かれ、自分のあつらえたテストを見学するのだった。

 

 

――――interlude out――――

 

ゆっくりと敷地に入ると屋敷はシンとして物音ひとつ立たない。

 

「ごめんください」

 

ピンポーンと呼び鈴が鳴る。が、誰も出てこない。

 

(日は落ちていますが深夜ではない。皆眠っているとは考えづらい。ということはこの状況がすでに試験ということですか)

 

そう。これはあずみの用意した試験なのだと認識し、思考を切り替える。

 

(表のほうに行きましょう)

 

チャキ、と暗器を構えて庭に向かう縁側のほうも窓は閉められており明かりもついていない。

 

異様な空気にさしもの李もごくりと喉が鳴る。

 

(・・・あれは)

 

ごつごつとした何か岩の塊のようなものがたたずんでいた。

 

(報告書にあった“ゴーレム”というものでしょうか。魔術師の工房となる場所に比較的設置してありやすい魂の宿らぬ人形)

 

これに関しては李もオカルトとして軽く知っている。主に屋敷や門を見張る役目を帯び、侵入者には攻撃を行って排除するというオカルトの中でもポピュラーな代物だ。

 

(まだ動かないということは射程圏外だということ。一度出直しましょう。ゴーレム相手では今の武装では対処できない)

 

相手は少なくとも石、もしくは鉄製だろう。対して李が持っているのは対人間相手の小型の暗器しかない。これでは話にならない。

 

そっと門の方へと戻る李。だが、

 

「通り抜け・・・られない?」

 

まるで透明な壁でもあるように門の外に出られない。

 

しかも、

 

「・・・。」

 

上から出られないかと外に向かって石を放るが、カツーンと跳ね返される。上もまた塞がれているようだ。

 

(出るには主の許可が必要というわけですか)

 

となると真っ先に考えられるのは庭のゴーレムの排除か。しかしいかに暗殺術に長けた李とはいえ無機物相手では分が悪い。

 

(仮に首をひねれたとしても・・・意味はないでしょう)

 

相手は魂のない石の塊だ。そんなことをしても無意味だろう。

 

「・・・。」

 

ではどうするか。あずみが準備させたのだ。突破口がないわけはない。

 

逆にうかつに踏み込んだら死が待っているぞと教えられているのかもしれないが、これは何度も言うが試験だ。

 

(諦めるな。思考を止めるな。なにか、なにかあるはず)

 

李はがむしゃらに動き回らず敷地内をゴーレムが反応しないように回る。

 

すると、

 

「短剣・・・?」

 

見えづらい位置に短剣が突き刺さっていた。それを前に李は思考する。

 

(刃は引かれていない・・・こんな物騒なものを無造作に配置するか・・・?いや、これはもしや)

 

これも報告書にあった結界という奴ならば。その起点となるものが必ずあるはずだ。この短剣はその起点となりうるのではないか。

 

短剣を引き抜こうとしたが、李の手が止まった。

 

(もしこれが結界の起点ならば・・・ゴーレムが反応しても不思議はない。となれば・・・)

 

まずは短剣の位置を把握すること。すべての短剣を把握したところで無駄なく回収する。

 

突破口は見えた気がした。

 

それから李は時間をかけながらも、ゴーレムを動かさず七つの短剣の位置を特定した。

 

(七つか。敷地を囲むように配置されているし間違いない。始めるなら――――)

 

庭先の離れた位置の物がいいだろう。短剣は敷地を囲うようにあるためどうしても回り込まなければならない。

 

離れた位置から起動し、誘導して残り六つの短剣を回収する。

 

それが最適だろう。

 

「ではいきますか・・・」

 

庭先の一本目に手をかけ深呼吸する。

 

ここからは間違いなく戦闘になる。心を静謐に保たねば、やられる。

 

「1・・・2の」

 

ぎゅっと短剣を握りしめ、

 

「3!!!」

 

ズ!っと短剣を引き抜いた。

 

 

――――interlude――――

 

「仕掛けに気づいたみたいだな」

 

居間には全員勢ぞろいして、庭を必死に探索する李の姿を見ていた。

 

「こんなに明るいのに李のやつ見向きもしねぇ。これも幻覚か?」

 

「ええ。彼女には窓は閉まっているし電気もついてないように見えてるはずよ」

 

「徹底しているな」

 

「当然よ。これでも甘いくらい。本来なら即死トラップもいくつか仕掛けるところよ」

 

「凛ちゃん。どうしてここまでするの?」

 

清楚の疑問に凛は、

 

「魔術師の工房は気づかれず、いざ入られたら中のものを絶対に逃がさない。それが基本よ」

 

「家で工房というと、士郎の鍛冶場なんかがそうなるのか?」

 

「そうだな。まぁあそこに俺の魔術に関するものは何もないから何も仕掛けてないけど」

 

「地下室は?」

 

「あそこは・・・まぁいいか。鍵を使って入れば問題ないよ。“鍵”さえ使えばな」

 

「「「・・・。」」」

 

それは、鍵なしであれば何か仕掛けてあると言っているようなものだ。

 

「シロウ。彼女が短剣に手を掛けました」

 

油断なく様子を見ていたセイバーが告げる。

 

「次が突破出来れば、合格かな」

 

「・・・。」

 

なんだか自分でも辛いテストになりそうだなと思うあずみだった。

 

 

 

――――interlude out――――

 

 

 

「3!!!」

 

ズボ、と刺されていた短剣を抜く李。

 

「・・・ッ!!」

 

すかさずゴーレムを見る。すると、目らしき部分を赤く光らせてゴーレムが起動していた。

 

(起動した! あとは速度勝負!!!)

 

この時、李は一つ油断していた。それはゴーレムの移動(・・)についてだ。

 

当初、李は人型っぽい形状から、足を生成してこちらに来るものだと考えていた。

 

しかし実際は――――

 

「ッ!?」

 

地面をもこもこと隆起させ後ろ側は隆起が収まるという土砂崩れのような移動をゴーレムはしてきた。

 

(速いッ!)

 

足に頼らない無限軌道に李はすっかり騙されたのだ。しかし李とてスピード重視。速さとしては互角というところか。

 

(二本! 三本!)

 

李は慌てず予定の通り短剣を回収する。だが途中で回り込まれてしまった。

 

「グオオオオオ!!!」

 

「ハッ!」

 

ズンッと李の体が沈む。そして強烈な掌底を見舞う。

 

ドゴン!という強烈な音を立ててゴーレムがひっくり返った。

 

「四本! 五本!」

 

残り一本。間に合う。ゴーレムがひっくり返った以上足止めは十分だ。

 

だが、

 

「!?」

 

ゴーレムは天地が入れ替わるように元通りとなり再び李を追い詰める。

 

それもそのはず。ゴーレムは土くれだったのだから。足を作る必要もなければ頭を作る必要もない。

 

(あと一手!!!)

 

ゴーレムの手が迫る。あの形状からして掴まれれば最後、全身を圧縮されて死ぬ。その前に――――

 

「短剣だッ!!」

 

「!!!」

 

その声に応じて、李は反射的に手に持った短剣をゴーレムに投げつけた。

 

「グオオオ・・・オオオ」

 

バチバチと何かに捕らえられた様子のゴーレムを見て李はすぐに最後の短剣を目指し、

 

「これで、最後です」

 

七本目の短剣を引き抜いたのだった。

 

瞬間、

 

ピシッ

 

風景が、崩れる

 

ガシャンという音とともにそれまで真っ暗だった風景が崩れ去り、衛宮邸の温かい光と、

 

「あずみ・・・」

 

居間からこちらを見る複数の視線に気づいたのだった。

 

 

 

 

 

 

「もう。あそこからが面白いところだったのに」

 

凜はそう言ってため息をつく。

 

「シロウ。これは試験なのでしょう? 手助けしてしまっては意味がないではありませんか」

 

セイバーも真面目な顔でそう諭してくる。

 

「いや・・・李さんとっても危なかったから・・・」

 

「だからと言ってテストに助言しては意味なかろう」

 

「あはは・・・でも李・・・さん?も魔術師の怖いところは理解できたでしょうから」

 

その李はというと、散々土埃にまみれたとしてお風呂に入っている。

 

「それにしてもあの金食いゴーレムがここまで役に立つとは思わなかったわ」

 

「発想の転換だ。こっちの世界の人からすれば十分に脅威だろう」

 

今回使われたゴーレム、通称金食いゴーレムは宝石を魔力で精製した強力なコアを有した贅沢品である。

 

使われている宝石の質、数に比べてそこそこ戦闘力のある土くれにしかならないため、前の世界でボツにした代物なのだ。

 

「あたいも注意してるつもりだけどよ。ここまで恐ろしいものかね」

 

あずみがしみじみという。今回テストした李は序列16位と九鬼の中でも上の方に位置する人物だ。

 

実力も折り紙付き。にもかかわらず、今回士郎の一声がなければ危うかっただろう。

 

「あの短剣、何か効果がついてんのか?」

 

あずみがグラスに注がれた酒を傾けながら言った。

 

「ああ。あの短剣には“遮断”の効果が付与されてる。だから外の李さんには部屋の明かりも何もかも見えなかったんだ」

 

「遮断、か。だからあの短剣が突き刺さったゴーレムが動きを止めたのか」

 

「そうよ。コアと各部位に仕込んだ宝石の連携が文字通り遮断されたのね」

 

「あれだけでも一級品ではありませんか?」

 

「李・・・怪我はねぇか?」

 

風呂から上がってきた李がそう言った。

 

「ええ。旦那様のおかげで命拾いしました。流石ですね。スピードには自信があったのですが」

 

貸し出した浴衣に着替えた李は肩をすくめた。

 

「それで今回の試験は落第、ですかね」

 

「いや、士郎の一声があったとはいえ仕掛けに気づけたのと実際の戦闘経験的に合格だ。どうだ? 魔術師ってのはろくでもねぇモンだろ?」

 

「そうですね・・・二重、三重のトラップに、強力な守護者。正直生きた心地がしませんでした。まるで異界にでも踏み込んだような不気味さ・・・どれをとっても想像以上でした」

 

「ま、それを体験してもらえただけでも御の字ね」

 

「では・・・」

 

「ああ。今後、魔術関連のことは李に任せる。経験を積みはしたが無理しねぇでいざってときは判断を仰げよ」

 

「わかりました。注意深く調査します」

 

これであずみの仕事が一つ減ったことになる。そんなわけで、

 

「もうちっと帰ってこられるかなぁ」

 

「無理するなよ。あずみ」

 

「折角徐々に仕事減らしてたのによぅ・・・最近また増えてきたぜ・・・」

 

「あずみさんって、従者部隊統括なんでしょ?」

 

「ああー・・・そうだな。お前のことも相当苦労させられたんだぜ?」

 

悪戯小僧の顔で清楚に言うあずみ。

 

その言葉にプイッと顔をそらして、

 

「あれは九鬼が悪いんですー」

 

「あはは。清楚の覚醒の時はとんでもなかったな」

 

大怪我をした時なので非常にコメントしづらい士郎であった。

 

「さて、試験も終えたことだし、遅めだけど夕飯にするか」

 

「私のために夕食を遅らせてしまったのですか?」

 

それは悪いことをしたと小さくなる李。

 

だが、

 

「いや、こっちの都合もありましたし、何より安全にしたかったので。気にする必要はありませんよ」

 

そういって士郎はキッチンに行き料理を運んでくる。

 

「! これは・・・」

 

「李さんの好物はシューマイってことだったからな。黒ウーロン茶も準備してますよ」

 

「ありがとうございます。このお礼は・・・そうですね・・・」

 

李は少し考え、

 

「今度中華街を案内しましょう」

 

「お、それはありがたい。あの辺はまだ・・・」

 

探索したことがない。そう言おうとして鋭い視線に複数睨まれていることに気づく士郎。

 

「な、なんだよ・・・案内してもらうだけじゃないか」

 

「そーいうところから、なんだよね」

 

「おい、わかってんのか? あたいら結婚したんだぞ」

 

清楚とあずみに言われてたじろぐ士郎。

 

「わ、わかってるって。浮気なんかしないぞ」

 

「その割にはデートの約束を取り付けていたがな・・・嫁の前で」

 

「デート・・・」

 

「おいおい、一応李さん立派な大人なんだから・・・」

 

「どうだか・・・」

 

みんなからじっとりと睨まれて、

 

「も、もう何品かあるから運んでくるなっ!」

 

お盆をもってキッチンに逃亡した。

 

「まったくもう・・・」

 

「シロウはすぐこれです・・・」

 

「セイバーさん。貴女にとっても中華街は魅力的だと思いますが?」

 

「どういうことですか?」

 

李は数々の名店の料理を語った。

 

「・・・じゅるり」

 

「はいはい。今から食べるのにセイバーもじゅるりしないの」

 

「り、リン・・・!」

 

「騎士王は意外と早く陥落しそうだな」

 

「そうだな・・・」

 

ため息をつく史文恭と林冲。

 

「そこ、もう少し詰めてくれ」

 

「あ、天衣さん、お料理乗りそうですか?」

 

「大丈夫だ。桜のはそっちに・・・」

 

広いテーブルにいっぱいご馳走を並べて。

 

「それじゃあ、いただきます」

 

「「「いただきます!!」」」

 

そうして食事が始まった。

 

「ほら李。遠慮なく食えよ」

 

「は、はい。それでは・・・」

 

彼女が箸を伸ばしたのはやはりシューマイ。

 

大ぶりなそれを箸で半分にして食べる。

 

「これは・・・ッ!!!」

 

「な? 美味いだろ」

 

めったに表情を動かさない李が驚いていることから相当な衝撃だったのだろうことをみて、あずみは笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから李は魔術関連の仕事を任されるようになった。

 

「はい。その調査結果はこちらに。それとこれはあちらにファイリングしてください」

 

「なんだか李、最近忙しそうじゃん」

 

忙しなくパタパタとする李を見て、ステイシーが補佐をしながら呟く。

 

「旦那様にはより安全に過ごしていただきたいだけです。それにしても、各支部からこんなに魔術の痕跡が見つかるとは」

 

かつては魔術師が潜んでいたのであろう箇所が数々報告されている。だが、あの試験を受けた李は、こんなに簡単に見つかるのなら危険性は低いと考えていた。

 

「残されたトラップに気を付けて。・・・あの夜に比べれば洗い易いことこの上ない。ですが確実に存在した、ということはわかりますね」

 

それだけは事実だった。こんなにも多くの痕跡があるのなら生き残っている魔術師もいるのかもしれない。

 

「気を付けて。・・・では私はあがります」

 

「あ? 随分早くねぇか?」

 

まだ昼の三時頃だ。いつもならまだまだ仕事だ。

 

「今日私は休日出勤なので。それに・・・」

 

「それに?」

 

ステイシーの言葉にクスリと笑って、

 

「中華街を案内する約束がありますから」

 

「・・・お前人の男に手ぇ出すなよ?」

 

「なに、帝様暗殺よりも容易いでしょう」

 

「あ! おい!」

 

そんな物騒なことを言って李は去っていった。

 

「・・・。」

 

そんな李をあずみがじっとみていた。

 

 

 

 

 

「えっとこの辺だよな」

 

薄暗くなり中華街がライトアップされているころ。

 

士郎は中華街の入り口にいた。

 

「こちらですよ士郎君」

 

李が少し離れたところにいて、声をかけられた。

 

「李さん」

 

「まずは入口の天津甘栗屋から行きますか? それとも三件目の茶屋から行きますか?」

 

なんだか楽しそうに案内する李。

 

「なんだか楽しそうですね」

 

「そうですね士郎君はとても強いですが・・・」

 

そういって振り返って、

 

「年下の子は私がリードしないと」

 

「(ホントは俺、年上なんだけどなぁ)」

 

そんなつまらないことを思ったが、口には出さない。

 

「さ、行きましょう」

 

「あ、はい・・・」

 

背後の気配に若干の恐怖を感じながら士郎は李に手を引かれ中華街に赴いた。

 

 

 

 

 

――――interlude――――

 

 

李に士郎が手を引かれ中華街に入っていくのを陰から監視する目。

 

「ちょっと・・・近すぎない?」

 

「手をつなぐのは・・・」

 

「クスクスまた女の人引っ掛けてきたんですかせんぱぁい・・・」

 

気づいているだろう背中にじりじりと焼け焦げそうな視線を送る凛、林冲、桜。

 

桜は黒化しそうになっているが・・・

 

三人は李を家に招いた時に中華街を案内すると言っていたのが今日であるのを突き止め、尾行しているのだ。

 

「それにしても林冲。中華街っていうなら貴女のテリトリーじゃないの?」

 

「日本の中華街は網羅していなくて・・・来たことはあるんだけど・・・」

 

林冲は生粋の中国人であるが日本の中華街まで頭に入れていなかった。

 

というのも、七浜の中華街は治安がとてもいいのである。

 

喧嘩なども起こるとはいえシンジケートが居を構えていることもなく。

 

いたってクリーンな場所だ。

 

「あそこはですね――――」

 

「ここは――――」

 

「・・・。」

 

「り、凛?」

 

鋭いまなざしで様子を伺う凛。

 

(あれ、私たちに気づきながらやってるのよね)

 

李はあれでも戦闘力はピカ一だという話だ。自分たちの尾行に気づいていないはずがない。

 

「あーもうっ! やめやめ! 馬鹿らしくなってきたわ」

 

それまで電柱に隠れるようにしていた凛が、身をかがめるのをやめて立ち上がった。

 

「姉さん?」

 

「あの人、凄腕なんでしょ?こうしてることもわかってるって感じだし」

 

「確かに・・・かつて龍とよばれた彼女ならそうだろうな」

 

林冲も隠れるのをやめ、はぁ、とため息をついた。

 

「むむ・・・それなのにあの態度ですか・・・」

 

桜は面白くないようだ。それも仕方ないことだが。

 

「折角だし、尾行がてら中華街を楽しみましょう?」

 

「それなら多少案内できると思う」

 

「もうっ! 先輩ったら・・・」

 

その後尾行しつつ凛達も中華街を楽しむのであった

 

 

 

 

――――interlude out――――

 

 

 

「李さん、ありがとうございます」

 

士郎はたくさんの袋を手に、李に感謝した。

 

「いえいえ、士郎君を案内できてよかったです」

 

目もとで微笑んで李は言った。

 

「今度お礼させてください」

 

「そんな、お礼をしてもらうほどのことでは・・・」

 

断ろうとした李だが、

 

「――――」

 

士郎のまっすぐな瞳に、

 

「・・・これにあずみもやられたんですね」

 

「李さん?」

 

「いえ、お返し、楽しみしています」

 

この時李は気づいていなかった。

 

心の底から楽しそうな顔をしていることに。

 

 

 

 

 

~~~~後日~~~~

 

「なぁ李。お前・・・お洒落にでも目覚めたのか?」

 

「いえ、決してそんなことはありませんが」

 

そっけなく返す李。だがステイシーはその首元に光るものを見逃さなかった。

 

「・・・ネックレスつけてんじゃん。それに肌艶もいいし」

 

「・・・。」

 

「おい。本当に人の旦那に手を・・・」

 

「つけていませんよ。これはちょっとしたお礼にもらったものです」

 

「・・・。」

 

それにしてもなんだか綺麗になった気がするステイシーであった。

 

 

 

 

こうして、九鬼に新たな魔術部門担当が生まれた。

 

彼女は以後、優秀な魔術部門担当者として君臨する。

 

「・・・。」

 

それと新たな芽生えがあったのは、ほかの従者部隊員にも目に見えていたのだった。




今回はこの辺で李さんについて語りましたが彼女が第二陣の嫁になるかは…未定です。

でも李さん、書いてていいキャラだなぁと思いました。これで元は無名のキャラだったっていうんですからどう転ぶかわからないものです。

次回はどうしようかな。またリクエストなどありましたら感想、DMでお待ちしています。
ではまた次回!
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