真剣で衛宮士郎を愛しなさい!   作:Marthe

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みなさんこんばんにちわ。気分であちらこちらと書く作者です。

今回はいよいよ士郎の子供の出産です。
こちらはしばらく書いていなかったですが落ち着いて書いていこうと思います。

では!



英雄の子

「荷物はこんなところか?」

 

「うむ。足りなければ持ってきてもらえばよかろう。その時は皆、頼む」

 

大事そうに膨らんだお腹を撫でながら史文恭は言った。

 

史文恭が荷造りしているのは出産が間近となったため病院に入院するからだ。

 

「任せておいて。がんばんなさいよ。史文恭」

 

凛の言葉に、うむ、と彼女は頷き、

 

「必ず無事産んで見せよう」

 

「あの・・・これ、安産祈願です」

 

「私と桜ちゃんで選んだんだよ!」

 

「俺は毎日通うから、何かあれば言ってくれ」

 

緊張の面持ちの士郎だが、史文恭はフッと笑って、

 

「お前はまずこの子の名前を考えておけ。まだ決まっておらんのだろう?」

 

そう言われた士郎は困ったように、

 

「一応候補はあるんだけどな・・・まだいい名前がないか考えてる」

 

「マスターの第一子ですからな!良い名を送ってやらねば!」

 

「私たちも一丸となってサポートします。万全の状態で挑んでください」

 

セイバーとレオニダスも力強く頷いた。そんな時、

 

ピンポーン。

 

呼び鈴が鳴った。

 

「史文恭様をお迎えに参りました」

 

「来たな。それでは行ってくる」

 

「史文恭お姉さま・・・」

 

「あんずるな。案ずるより産むが易しと言うだろう?」

 

そういってがっちりとつかんでいた美鈴の手をほどき、

 

「では頼む」

 

「「「行ってらっしゃい!!!」」」

 

最大の激励と共に史文恭と士郎は九鬼の迎えの車に乗り込んだ。

 

ふう、と車に乗るのも一苦労な様子の史文恭に、

 

「大丈夫か?」

 

「うむ・・・なんだな。最強の傭兵であれと思っていた私が、こんなに弱弱しい姿をさらすとはな・・・」

 

「妊婦が最強である必要はないだろう。ましてや、この子は恵まれた環境で生まれてくるんだ。無理をする必要はない」

 

「お前の旅に恵まれぬ妊婦がいたのか?」

 

史文恭は直球で聞いた。それに対し、士郎は、

 

「ある町のスラム街で・・・清潔な布も、助産婦すらいない場所で命を懸けて自然分娩する強い女性がいた。俺は何もできず苦し気な声を聞くしか出来なかった」

 

深刻そうな顔をする士郎を見て、

 

「ならばなおのこと奮起せねばな。その女に比べればなんと恵まれた環境だろうか。必ず、私も腹の子も無事にあることを約束するぞ」

 

「史文恭・・・」

 

力強く頷く彼女に士郎は何とも言えない気持ちになった。

 

「そういえば揚羽はもう病院か?」

 

その問いには運転手である従者が答えた。

 

「はい。揚羽様も既に九鬼の病院に入院なされています。幾分、揚羽様の方が早く生まれるかもしれません」

 

「早産になりそうなんですか?」

 

「そのようですね。しかし、母子ともに健康なので心配無用だと伝えるよう仰せつかっています」

 

「そうですか・・・」

 

まだまだ緊張の面持ちの士郎。その姿に苦笑して、

 

「行く場所は同じなのだろう? 会いに行ってやれ」

 

「そりゃあもちろん・・・」

 

「うっ・・・!」

 

直後史文恭の顔が苦痛にゆがんだ。

 

「史文恭!」

 

「心配するな・・・本番ではない・・・」

 

しかしその時は近いような気がする。

 

「少々急ぎましょう」

 

「安全運転でお願いします」

 

「心得ております」

 

静かな言葉とは裏腹に、エンジンが唸りを上げる。

 

九鬼家従者部隊としても正念場と心得ているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ぬうう・・・!」

 

「揚羽!」

 

史文恭と九鬼の病院に到着して間もなく揚羽の陣痛が始まったと聞かされいても立ってもいられなくなった士郎が病室に駆け付けると、揚羽は必死に戦っていた。

 

「揚羽・・・!」

 

「これはなかなかに手ごわいな・・・! 我であっても内蔵は鍛えられぬからな・・・!! だが!」

 

「もう少しです! 揚羽様!」

 

「ぬあああああ!!!」

 

気合一閃。揚羽はかつてないほどの力を振り絞った。

 

オギャー!オギャー!

 

「揚羽・・・」

 

ポロポロと涙を流して生まれ落ちた子供を見る士郎。

 

「はは・・・母になるとはこういう感覚なのだな・・・いや、腹の中にいた時から薄々感じてはいたが」

 

はぁ、はぁ、と荒い息を吐きながら感無量という風に言う揚羽。

 

「我が子を」

 

「はい・・・」

 

助産にきた従者も涙を隠せないようだった。

 

「ふふ・・・くにゃくにゃで今にも折れそうではないか・・・なのにこの鳴き声ときたら・・・。おい、お前まで赤子のように泣くでない」

 

「だって・・・! 初めてだから・・・!」

 

ボロボロと涙をこぼしてその尊き命を見やる士郎。

 

「はは。29年の歳月でも初めてか。これでお前の最初の女になれたな」

 

「・・・! ・・・!!」

 

「間違ってもこの子のために自らを犠牲にするでないぞ? そんなこと、我も、この子も願わぬ」

 

「ああ・・・! 今度こそ・・・! 今度こそ・・・!!」

 

「それでこの子の名は――――」

 

「揚羽様! 史文恭様も産気づきました!!!」

 

その言葉に一瞬ぽかんとして、

 

「行ってこい。転ぶなよ、『お父さん』」

 

「這ってでもいくさ・・・!」

 

揚羽とその子をしっかり目に焼き付けて次なる戦場へとひた走る士郎。

 

今思えばどれだけの月日が経ったであろうか。世界をまたにかけた正義の味方行脚からどれだけの月日が流れただろう。

 

この日士郎は、らしくもなく立ち眩みするような出来事に出会う。それは己の子というまばゆい光だった。

 

「はぁ、ふぅ、こちらも無事産んだぞ士郎」

 

「お疲れ様。史文恭」

 

「クック・・・わが子とはここまで愛おしいとはな。おい。抱いてやれ」

 

「お、俺は・・・」

 

史文恭の一言に躊躇う士郎。

 

(こんなに純粋無垢な子を・・・血塗られたこの手で抱いては・・・)

 

「はん。考えが顔に出ているぞ。お前がそうなら私もだ。この手でどれだけ潰してきたと思ってる。いいから抱いてやれ」

 

「士郎様・・・どうぞ」

 

まだ生まれたばかりで首も座っていない赤子がゆっくりと手渡される。

 

「・・・ああ。温かい」

 

まるで心を温められる老人のように、また涙が出そうになる。

 

士郎の腕の中でもぞもぞと動く赤ん坊は本当に愛おしかった。

 

「これで旅には出られぬな」

 

「・・・ああ。そうだな」

 

燻っていた最後の火が消えるのを、士郎は感じた。

 

もう迷わない。自分はこの子と、この子達と歩んでいくんだという希望の光が差したのだ。

 

 

 

それから幾日かの月日が流れて、子供たちのお披露目が秘密基地で仲間たちに行われていた。

 

「うわー! どっちの子も可愛い!」

 

「これぞ赤ちゃんって感じだな。本当に可愛いな」

 

一子と大和が揚羽と史文恭に抱かれた二人を見る。

 

「うおっ、赤ん坊なのに強い力だな!」

 

ガクトは、その大きな指をつかんだ小さな手に驚いて硬直してしまった

 

「名前はもう決めたのか?」

 

こちらもちょんちょんと突くクリスに士郎は頷き、

 

「史文恭との男の子が『刀也(とうや)』。揚羽との女の子が『(かなで)だ』

 

「刀也くんに奏ちゃんかー。二人ともぴったりね!」

 

「刀は士郎の能力からとったのか?」

 

百代の言葉に史文恭が答えた。

 

「ああ。この子には強くしなやかな刀身のようにいてほしい。そう思ったからとった」

 

「なるほど・・・抜き身の刀のようにはしないようにしないといかんな?」

 

揚羽の言葉に士郎は力強くうなづいて。

 

「この子に俺のような人生は歩ませないよ」

 

それは誓いだった。自分と同じ轍は踏ませないという明確な誓いだ。

 

その言葉に揚羽も史文恭も満足そうに、

 

「さて、挨拶せねばならない所はまだあるのでな。今日はこの辺でお暇させてもらうか」

 

「家の住人には紹介済みだけどな。まぁ川神院とかはまだあるか」

 

「そうね! じいちゃんとかすっごく喜ぶと思う!」

 

「次は私だな」

 

ふんぞり返って言う百代に、

 

「百代。同じ女だから言えることだが・・・気を引き締めないと後悔することになるぞ」

 

「同じくだな。一人の子ですら我々は死力を尽くした。セイバーは三人は産むと豪語していたが、どうであろうな」

 

うんうんと頷く二人。実際に母となって思うことが多々あるようだ。

 

「なにはともあれ二人と赤ちゃんが無事でよかったよ。俺も父親として頑張っていくからな」

 

「士郎は頑張りすぎないほうがいいんじゃねーか?」

 

「そうそ。子供が大変なことになる」

 

わはははと笑われる士郎。当の本人としては耳が痛い話で、

 

「うむむむ・・・」

 

と唸っていた。

 

その後行く先々で祝福の言葉をかけられ、ある程度したら子供の体力も考え、自宅に戻った。

 

それからも大忙しだった。

 

「はーいお姉ちゃんですよー」

 

そんな中精力的に赤ん坊の面倒を見たのは清楚だった。

 

「お姉ちゃんが板についてるな清楚」

 

「そりゃそうだよ。何せ、二回目だしね」

 

「二回目? そっか。義経達より早く生まれたんだっけ」

 

凛がなるほど、とうなずくとおずおずとセイバーが歩み寄ってきた。

 

「清楚。子供のあやし方を教えてください」

 

「いいよー。最初あんなに泣かれたら苦手意識もつくよね」

 

そう。セイバーは初めて親しくする赤ん坊、ということで表情が固まっていたせいか、刀也にギャン泣きされて以来、適度な距離を置くようになったのだ。

 

「大丈夫ですよ。あの時のセイバーさんは緊張もしてたし、赤ちゃんって背中にセンサーがあるっていうくらいお母さんか見極めるんだよ?」

 

「そうなのですか・・・」

 

「そうだな。奏もベッドに寝かせても、すぐに起きて泣くのだ。育母を数人つけているが・・・一日抱っこしたままという日も少なくないようだ」

 

「一日・・・わかってはいましたが母親とは強くあらねばならないのですね・・・」

 

深刻そうに頷くセイバーを見た史文恭は悪戯小僧のように、

 

「どうだ、怖気づいたか?」

 

と、言った。それに対しセイバーは、

 

「いいえ。こんなに愛らしいのなら二人でも三人でも産みます」

 

「セ、セイバー・・・」

 

真顔で言うセイバーに士郎はたじたじだった。

 

「なにオタオタしてんのよ。私たちもなんだからね」

 

顔をほんのり赤くしてツン!とそっぽむく凛。

 

「私も! 先輩の赤ちゃんほしいです!」

 

「さ、桜は今高校生だろ・・・?」

 

嫁たちの子作り欲が高まっており士郎はいっぱいいっぱいだった。

 

 

 

 

「士郎様。こちらです」

 

「あ! 士郎君ー!」

 

「お、来たねぇ大将」

 

九鬼ビルを訪れると、義経と弁慶に出会った。

 

「奏ちゃん見に来たの?」

 

「ああ。家で二人とも見れればいいんだけど・・・衛宮性になったとはいえ九鬼の申し子だからなぁ・・・」

 

そこのところ大変シビアなのである。

 

「まって。すみません士郎様。今授乳中とのことで少しの間お待ちください」

 

「そうですか。じゃあ適当なところで待たせてもらおうかな」

 

そんなことをのたまった士郎の背中をぎゅむりとつねり上げる手が。

 

「あ痛!」

 

「はぁ・・・大将だめだよ。主をないがしろにしちゃ」

 

気づけば義経がぷくっとかわいらしく頬を膨らませていた。

 

「揚羽さんとだけじゃなくても・・・」

 

「ああ、悪い悪い! もちろん義経のことも忘れてないぞ! ほら、折角接待されてるし、お茶でも飲もう!な?」

 

「そういうことなら・・・」

 

「私は邪魔かねぇ・・・大和よぼっかな」

 

そんなことを画策する弁慶。

 

どうしても意識が自分の子供に行きがちな士郎。ちゃんと彼女らも見てあげないと、と自分を戒める。

 

「義経は最近どうだ? 調子のほうは」

 

「あ、そう! それ!!」

 

食い気味に反応した彼女に何事かと思う士郎。

 

義経は一つ呼吸を整える。そして、

 

「はっ!」

 

気合とともに腰に帯びた刀を抜き放った。その刀は――――

 

「義経・・・それ・・・」

 

「どう? びっくりした?」

 

扱えている。刀身が光ることもなく未熟ではあるが刀の芯まで気の行き届いたその姿は、一種の芸術だった。

 

「ずっとね。この子の声が聞こえてたんだ。内に秘めたものを解き放て、って」

 

ヒュン、と刀をくり返し振るう。

 

「最初は怖かった。義経の失敗でこの子が壊れてしまうんじゃないかって・・・壊してしまうんじゃないかって」

 

「それはない」

 

士郎はその姿を目に焼き付けながら言った。

 

「それは義経の一部だ。正真正銘の分身。それが義経を受け入れられないなんてことは、ない」

 

まばゆいものを見るように目を細めながら、士郎はここでも我が子が大成したことを知った。

 

「ふふ、そうだね。まさか刀から歩み寄ってくれるとは思わなかった。ずっと義経は一人でこの子を扱えるようにって必死だった。けれど――――」

 

最後に華麗に刀を返してスゥっと鞘に納める。

 

「義経は一人じゃなかった。ずっとこの子は待っていてくれた。多少無理矢理になっても耐えきって見せる。そう叫ぶ声に答えることができたんだ」

 

そして義経は士郎に深い一礼をした。

 

「ありがとう。士郎君。義経は掛け替えのない相棒を見つけることができたよ」

 

「そっか。じゃあこれからは上がるだけだな」

 

「うん! 義経も、一子さんみたいになるから!」

 

「はは! 一子も今じゃ師範代候補だからな。その道は険しいぞ?」

 

士郎は敢えて険しさを物語った。しかし義経は、

 

「大丈夫! この子と一緒なら! どこまでも行けるよ!」

 

最高の笑顔とともに義経は言ったのだった。

 

 

 

 

 

「士郎様。揚羽様と奏様の用意ができました。こちらへどうぞ」

 

「す、すみません! 義経も・・・奏ちゃんに会ってもいいですか・・・?」

 

義経がそう従者に問うと、

 

「もちろんでございます。さぁ、こちらへ」

 

そうして案内された先には愛おしい存在が目に入ってきた。

 

「ふっは・・・いかんいかん。大きな音を立ててはな。よく来たな、士郎、義経」

 

柄物の幼児服を着た奏とそれを大事そうに抱っこする揚羽。

 

「奏・・・」

 

「おっと。うちの旦那は涙腺が脆くて困る。涙でぐしゃぐしゃになる前に抱け」

 

「いや・・・流石にもう泣きはしないけど・・・」

 

それでもおっかなびっくり奏を抱く士郎。

 

「まだ首が座ってないな」

 

「そうであろう。今しばらく抱き方には注意せねばな」

 

無邪気に手を伸ばす奏を覗き込むように見ていた義経は、

 

「ほああ・・・可愛い・・・」

 

「ほら義経お姉ちゃんですよー・・・ってもうやったか」

 

「弁慶もお姉ちゃんだろ」

 

「いやー主のお姉ちゃんと私のお姉ちゃんは違うでしょ? 主は腹違いのお母さんだし」

 

「お、お母さん!?」

 

ぎょっとして弁慶を見る義経。だが弁慶は至って平常心で、

 

「だってそうでしょ? 主は大将の奥さんなんだから義母ってことになるじゃないか」

 

「義経が・・・お母さん・・・」

 

「はっは! 敏いな、弁慶。士郎の縁者はすべてこの子の母であろうよ」

 

愉快気に笑う揚羽に士郎もしっかりと頷いて、

 

「違わない。義経もこの子のことよろしく頼むぞ」

 

「う、うん! 立派なお母さんになれるように頑張るよ!」

 

「いいねぇ。よかったじゃん主。予行練習しとかないとね?」

 

「べ、弁慶!」

 

自分の子のことを連想したのだろう。顔を赤くしてポカポカと弁慶をたたく義経をクスクスと笑うのだった




はい。士郎の子、ついに出産!の回でした。年内中には出したいなと思っていたところで何とか書き上げられてよかったとホッとしています。

最近始めた仕事に関しては順調…なのですが、朝眠くて眠くて困ってます。時には寝ぼけ眼で会社へと向かうことも…。睡眠薬飲んでるので一概に気合でどうにかはできなくて…どうしたもんかなぁと思っています。

体力の消耗が激しいので尚のことチビチビ更新になるかと思いますが、来年もどうぞよろしくお願いします!
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